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Plant biology: Gibberellins close the lid
Peter Hedden Nature (2008) 456:455-456
Nature11月27日号に、ジベレリン受容体GID1のジベレリン認識およびDELLAタンパク質認識について、結晶構造から解析した論文が2報出た。GID1はその1次構造が脂質代謝に関与するホルモン感受性リパーゼ(HSL)と似ていることが知られており、両者の高次構造の類似点・相違点を明らかにすることがGID1のジベレリン認識の解明にとって重要であった。
奈良先端大学のMuraseらは、シロイヌナズナのジベレリン受容体GID1Aについて、GA3-GID1A-DELLA(GAIのN末端側にあるDELLAドメイン)複合体の結晶構造解析を行ない、GID1Aタンパク質はコアドメインとN末端の伸長部で構成されていること、コアドメインの構成するポケットにGA分子が収納され、N末端伸長部がポケットに蓋をしていること、蓋となったN末端伸長部が糊となってDELLAドメインと結合することを明らかにした。DELLAの結合は、GAをトラップしているポケットをカバーするN末端伸長部を安定化し、GID1AとGAとの結合を強めている。以上の結果から、以下のモデルか考えられる。GAはGID1-DELLA結合を強めるアロステリックインデューサーとして機能し、GID1とGAが結合することによってGID1とDELLAとが結合するN末端伸長部の構造変化を誘導する。これにDELLAタンパク質が結合してDELLAタンパク質の構造も変化する。すなわち、GAによって活性化されたGID1は、SCF複合体がDELLAタンパク質を基質として認識することを促進する「ユビキチン化シャペロン」として機能していると考えられる。なお、このGID1-GA-DELLAの構造モデルは、既知のオーキシン受容体による認識機構とは異なっていると考えられる。
名古屋大学のShimadaらは、イネGID1タンパク質(OsGID1)とGA4の複合体の結晶構造解析を行ない、OsGID1の高次構造はHSLと似たα/β水解酵素型構造をしており、GA結合ポケットはHSLの基質結合部位に対応していること、OsGID1のN末端側の蓋の部分はGAをポケット内に収めるように覆っていることを明らかにした。さらに、OsGID1のGA結合に重要なアミノ酸残基を置換してその結合能を調べたところ、アミノ酸置換したほとんどすべての変異体はGA結合活性がないか、あるいは非常に低い結合活性しか示さなかった。以上の結果から、GID1はHSLに由来し、GA結合に関与するアミノ酸残基が置換することで、生理活性を持つGAに対してより厳密な選択性とより高い親和性を獲得するように進化してきたと考えられる。