Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)サイトカイニンによる葉緑体遺伝子の発現制御

2017-03-24 21:42:55 | 読んだ論文備忘録

Opposite roles of the Arabidopsis cytokinin receptors AHK2 and AHK3 in the expression of plastid genes and genes for the plastid transcriptional machinery during senescence
Danilova et al. Plant Molecular Biology (2017) 93: 533-546.

DOI: 10.1007/s11103-016-0580-6

サイトカイニンは葉の老化を遅延させるが、その過程での葉緑体遺伝子の発現制御については明らかではない。ロシア科学アカデミー チミリャーゼフ植物生理学研究所のKudryakova らは、シロイヌナズナのサイトカイニン受容体であるヒスチジンキナーゼAHK2、AHK3、AHK4/CRE1の変異体を用いて葉の老化を解析した。3週目と7週目の第6葉について、クロロフィル含量、老化のマーカー遺伝子のSAG12 とクロロフィルa/b-結合タンパク質をコードするCAB2 の転写産物量を調査した。野生型、ahk3 変異体、ahk3 ahk4 二重変異体の7週目の植物の全クロロフィル含量は、3週目の植物と比べて大きく減少していたが、AHK2 が機能喪失した変異体(ahk2ahk2 ahk3ahk2 ahk4 )では減少の遅延が見られた。また、ahk2 変異体、ahk2 ahk3 二重変異体、ahk2 ahk4 二重変異体の7週目植物は、野生型、ahk3 変異体、ahk3 ahk4 二重変異体と比べてCAB2 転写産物量が多く、SAG12 転写産物量が少なくなっていた。さらに、AHK2 の機能喪失は、リブロース二リン酸カルボキシラーゼ小サブユニット(RBCS)やPSⅡ集光性クロロフィルタンパク質のLHCB2.4をコードする遺伝子の転写産物量の減少が抑制されていた。ahk4 変異体は野生型と比較して幾分CAB2RBCS 転写産物量が増加し、SAG12 転写産物量が減少している程度で、野生型との差は他の変異体に比べて少なかった。したがって、AHK4はAHK2やAHK3と比較すると植物体の老化における役割は小さいと思われる。AHK2 の機能喪失は、抽だい、花成、長角果形成、種子成熟を遅延させた。したがって、AHK3が老化を遅延させるのに対して、AHK2は老化誘導に関与していることが示唆される。また、ahk2 変異体、ahk2 ahk3 二重変異体、ahk2 ahk4 二重変異体の7週目植物は、野生型よりもクロロフィル蛍光が高くなっていた。次に老化による葉緑体遺伝子の発現量変化を調査した。その結果、AHK2 が機能喪失した変異体の老化葉では多くの葉緑体遺伝子の転写産物量が野生型よりも増加しており、このことが葉の老化遅延の原因となっていると思われる。野生型植物の老化葉はサイトカイニン(trans-ゼアチン)処理によって葉緑体遺伝子の転写産物の蓄積量が増加するが、ahk2 変異体ではサイトカイニン処理による発現誘導効果が低下していた。また、ahk4 変異体は野生型とは異なるサイトカイニン応答を示した。サイトカイニン処理による葉緑体遺伝子の応答がサイトカイニン受容体の変異体で異なることは、それぞれの遺伝子は独立した制御を受けており、葉緑体ゲノム全体の転写が活性化されるのではないことを示唆している。そして、サイトカイニン受容体は老化葉の葉緑体へのシグナル伝達に特異性があり、サイトカイニンに応答した葉緑体遺伝子の転写活性化には1つのサイトカイニン受容体だけでは不十分であると考えられる。葉緑体での転写には核コードのT7ファージ型RNAポリメラーゼのRPOTpとRPOTmpが関与している。野生型植物の老化葉ではサイトカイニン処理によってRPOT 遺伝子の発現が誘導されるが、ahk3 変異体、ahk2 ahk3 二重変異体では発現誘導が低下していた。また、AHK2 が機能喪失した変異体はRPOTp 転写産物量が野生型よりも多かった。よって、個々のサイトカイニン受容体でRPOTpRPOTmp の発現制御が異なり、このことが葉緑体遺伝子の発現量の差異をもたらしていると考えられる。葉緑体遺伝子の転写制御は、核コードのσ因子も関与しており、シロイヌナズナでは6つの因子(SIG1-SIG6)が見出されている。葉緑体遺伝子の発現において、個々の因子は重複して機能しており、発現量は植物体の発達ステージや環境条件に依存している。サイトカイン受容体の変異体では、成熟した葉緑体で最も活性のあるSIG1をコードする転写産物が定常状態において野生型よりも多くなっていた。サイトカイニン処理をすることでSIG1 転写産物量は増加するが、ahk2 ahk3 変異体、ahk2 ahk4 変異体は定常状態での発現量が既に高いためにサイトカイニン処理による増加は僅かであった。サイトカイニン処理は、SIG2SIG3SIG4SIG6 の発現も誘導し、ahk2 変異体、ahk4 変異体、ahk2 ahk3 変異体は発現量の増加が大きくなっていた。定常状態でのSIG3SIG4SIG6 の発現は、AHK2 が機能喪失した変異体で高くなっていた。これらの結果から、老化葉でのσ因子遺伝子の発現におけるサイトカイニンの効果の差異は、核コードRNAポリメラーゼの発現の差異と共に、様々な葉緑体遺伝子の転写産物量蓄積量変化を制御していると考えられる。以上の結果から、老化葉での葉緑体遺伝子の発現は、個々のサイトカイニン受容体によって異なる制御を受けており、これは核コード遺伝子の発現量の変化に依存していると考えられる。

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学会)第64回日本生態学会大会(東京)

2017-03-15 22:24:51 | 学会参加

第64回日本生態学会大会(ESJ64)が、2017年3月14日(火)~18日(土)に早稲田大学早稲田キャンパスで開催された。シンポジウムや口頭発表の会場となった3号館は、旧3号館を改修して2014年に竣工した地下2階、地上14階、高さ67.84mの校舎。古い建物を活かしながら、内部には最新の設備が備わり、大会運営もスムーズに行われていた(ちょっとポスター会場の16号館が窮屈だったか)。このキャンパスは、大隈重信像、會津八一記念博物館、大隈庭園といった見所にもあるれており、散策に訪れる人も多く見られた。

第64回日本生態学会大会(ESJ64)が早稲田大学早稲田キャンパスで開催された

 

キャンパス内にある大隈重信像

 

会場となった3号館

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論文)糖シグナルを拮抗的に制御する2つのMYB転写因子

2017-03-13 22:12:38 | 読んだ論文備忘録

Two MYB-related transcription factors play opposite roles in sugar signaling in Arabidopsis
Chen et al. Plant Molecular Biology (2017) 93:299-311.

DOI: 10.1007/s11103-016-0562-8

植物では様々な遺伝子が糖シグナルによる発現制御を受けている。イネのR1/2-type MYB転写因子 OsMYBS1は、α-アミラーゼの糖による発現制御に関与していることが知られている。台湾 国立中央大学Lu らは、シロイヌナズナのOsMYBS1ホモログのMYBS1(At1g49010)とMYBS2(At5g08520)について糖シグナルとの関係を調査した。MYBS1とMYBS2はR-R-type MYB転写因子に分類される。MYBS1 は、芽生え、ロゼット葉、茎生葉、花芽、花、長角果で発現しており、MYBS2 は植物体全体で恒常的に発現していた。また、MYBS1、MYBS2は共に核に局在していた。OsMYBS1はイネαAmy3 遺伝子プロモーター領域内にある糖応答エレメントのTA-box(TATCCA)に結合して転写を活性化する。TA-boxを含んだ合成プロモーターによるレポーター遺伝子(Luc )の発現解析から、MYBS1、MYBS2ともにTA-boxを含むプロモーターを活性化させることが確認された。種子を1%グルコースもしくは1%マンニトールを含む培地で発芽させ、遺伝子発現量を比較したところ、MYBS1MYBS2 ともにグルコース添加培地での発現量がマンニトール培地での発現量よりも高くなっていた。したがって、MYBS1MYBS2 の発現は糖による制御を受けていると考えられる。T-DNA挿入mybs1 およびmybs2 変異体は、通常生育条件では表現型が野生型と同等であった。そこで、これらの変異体の糖応答性を見たところ、4%グルコース添加培地での発芽率がmybs1 変異体は野生型よりも低くなり、芽生えの成長遅延も見られたが、mybs2 変異体の発芽率は野生型よりも高くなっていた。そして、mybs1 mybs2 二重変異体の発芽率は野生型と同等であった。これらの結果から、mybs1 変異体はグルコースに対する感受性が高く、mybs2 変異体は感受性が低いことが示唆され、MYBS1とMYBS2は糖シグナル伝達経路において対立した機能があると考えられる。糖は光合成、炭素代謝、窒素代謝、二次代謝に関与する様々な遺伝子の転写を制御している。4%グルコース培地で育成したmybs1 変異体芽生えは、ヘキソキナーゼ1をコードするHXK1 、ADP-Glcピロフォスフォリラーゼ大サブユニットをコードするAPL3 、カルコンシンターゼをコードするCHS 、β-アミラーゼをコードするBAMY3 スクロースシンターゼ1をコードするSUS1 の発現量が野生型よりも高く、mybs2 変異体ではこれらの遺伝子の発現量が野生型よりも低くなっていた。また、クロロフィルa/b結合タンパク質をコードするCAB1 、アスパラギン合成酵素1をコードするASN1 の発現量はmybs1 変異体で低く、mybs2 変異体で高くなっていた。グルコースシグナルはアブシジン酸(ABA)シグナルと関連していることが知られている。そこで、ABA添加培地での発芽率を見たところ、mybs1 変異体の発芽率は野生型よりも低く、mybs2 変異体は高くなっており、両変異体はABAに対する応答性が変化していた。野生型植物の4%グルコース添加培地での発芽遅延は、ABA合成阻害剤のフルリドンを添加することによって回復し、mybs1 変異体でも回復が見られた。したがって、mybs1 変異体はグルコース高感受性はABAの過剰生産による可能性がある。一方、mybs2 変異体ではフルリドン添加による高グルコース濃度培地での発芽率の変化は見られなかった。4%グルコース添加培地で発芽させたmybs1 変異体芽生えは、ABA生合成酵素をコードするABA1NCED3AAO3 の発現量が野生型よりも高くなっており、mybs2 変異体では低くなっていた。したがって、グルコースが誘導するABA生合成において、MYBS1はABA1NCED3AAO3 の発現を負に制御し、MYBS2は正に制御していることが示唆される。また、ABAによって発現誘導されABAシグナル伝達に関与するABI3ABI4ABI5 の発現量もmybs1 変異体で高く、mybs2 変異体で低くなっていた。以上の結果から、MYBS1とMYBS2はシロイヌナズナの種子発芽や芽生えの成長過程におけるグルコースおよびABAシグナル伝達において拮抗的に作用し、MYBS1は負の制御因子、MYBS2は正の制御因子として機能していると考えられる。

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論文)傷口からのシュート再生

2017-03-09 18:50:36 | 読んだ論文備忘録

WIND1 Promotes Shoot Regeneration through Transcriptional Activation of ENHANCER OF SHOOT REGENERATION1 in Arabidopsis
Iwase et al. Plant Cell (2017) 29:54-69.

doi:10.1105/tpc.16.00623

植物の器官再生は、2つの植物ホルモン、オーキシンとサイトカイニンのバランスによって制御されており、一般的にオーキシン量が多いと根を再生し、サイトカイニン量が多いとシュートを再生する。近年、理化学研究所 環境資源科学研究センター杉本らは、傷ストレスはシュート再生を誘導する要因となっており、AP2/ERF型転写因子のWOUND INDUCED DEDIFFERENTIATION 1(WIND1)がこの誘導に関与していることを明らかにした。そして、WIND1 を過剰発現させたシロイヌナズナカルスでは、シュート再生を促進することが知られているAP2/ERF型転写因子のENHANCER OF SHOOT REGENERATION 1ESR1 )の発現量が増加していることを見出した。そこで、WIND1とESR1との関係について調査した。切り葉に傷ストレスを与えるとWIND1 の発現量が30分以内に増加し始め、1時間後には最大となった。ESR1 の発現量も30分以内に増加か始まり、3時間後には最大となった。しかしながら、WIND1にリプレッションドメイン(SRDX)を付加したドミナントリプレッサーWIND1-SRDX を発現させた植物体を用いた場合にはESR1 の傷ストレスによる発現活性化は見られなかった。したがって、WIND1はESR1 の発現活性化に関与していることが示唆される。ESR1 プロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトを導入した植物体では、無傷の状態ではGUS活性は検出されなかったが、傷をつけることによって傷口で局所的にGUS活性が誘導された。また、WIND1-SRDX 発現個体では傷口でのGUS活性誘導は起こらなかった。葉柄切片で詳細に活性部位を見ると、木部柔組織や前形成層といった維管束で発現が見られ、細胞分裂によってカルス化すると推測される葉肉細胞においても活性が見られた。傷口ではオーキシンが蓄積することが知られているが、オーキシン輸送阻害剤N -1-ナフチルフタラミン酸(NPA)を処理をしても活性に変化は見られなかった。よって、傷口でのESR1 の活性化に局所的なオーキシン輸送は関与していないと考えられる。 ESR1タンパク質は傷口近傍の細胞の核内に局在していた。クロマチン免疫沈降(ChIP)-qPCR解析から、WIND1はESR1 遺伝子プロモーター領域に直接結合することが確認され、ルシフェラーゼレポーター試験からWIND1はESR1 の発現を活性化することがわかった。また、プロモーターバッシング試験からWIND1によるESR1 の発現誘導には翻訳開始点から上流150 bpまでが重要であることがわかった。この領域には、タバコの傷ストレス遺伝子発現誘導に関与するとされるVWERモチーフに似た配列が2つあり、このモチーフに変異を加えることでプロモーター活性が低下した。これらの結果から、WIND1はESR1 遺伝子プロモーター領域のVWRE-likeモチーフに直接結合して発現を活性化していると考えられる。WIND1は傷口でのカルス形成に関与している。ESR1 の変異体やESR1-SRDX ドミナントリプレッサーを発現させた系統はカルス形成が抑制された。また、ESR1 を異所的に過剰発現させた系統はカルス形成が促進された。よって、ESR1も傷口でのカルス形成に関与していると考えらる。WIND1-SRDX 発現個体でESR1 を異所的に発現させると、WIND1-SRDX 発現個体のカルス形成抑制が打ち消され、カルス形成が野生型と同等になった。esr1 変異体でWIND1 を過剰発現させると、WIND1 過剰発現によるカルス形成促進が幾分抑制された。よって、ESR1はWIND1の下流で機能して傷口でのカルス形成を促進していると考えられる。WIND1は、B-タイプ シロイヌナズナレスポンスレギュレーター(ARR)によるサイトカイニンシグナル伝達系を介してカルス形成を促進している。B-タイプARRシグナル伝達が欠失したarr1 arr12 二重変異体では傷ストレスによるESR1 の発現誘導が見られないことから、ESR1はB-タイプARRによるサイトカイニンシグナルの下流において機能していると考えられる。野生型シロイヌナズナの組織片は植物ホルモンを含まないMS培地で培養するとカルス形成し、しばしば根を再生する。ESR1 を過剰発現させた系統では、様々な器官由来の組織片の傷口からシュートが再生した。よって、ESR1は傷口でのシュート再生を促進することが示唆される。野生型植物の根切片を、オーキシンとサイトカイニンを添加したカルス誘導培地(CIM)で培養した後にサイトカイニンを多く含むシュート誘導培地(SIM)に移植するとシュートが再生されるが、esr1 変異体やESR1-SRDX 個体の根切片ではシュート再生が殆ど見られなかった。また、ESR1 を過剰発現させた根切片はシュート再生能力が野生型よりも高くなっていた。一方、esr1 変異体、ESR1-SRDX 個体、ESR1 過剰発現個体のCIMでのカルス形成は野生型と同等であり、ESR1はホルモンによって誘導されるカルス形成には関与していないと考えられる。ESR1 の発現はサイトカイニンとオーキシンを同時に与えることで活性化されたが、それぞれを単独で与えた場合には活性化されなかった。よって、サイトカイニンとオーキシンはESR1 の発現活性化において相乗的に作用していると考えられる。根切片をCIMで4日間培養するとESR1 の発現が活性化され、続いてSIMで培養することで発現量はさらに3倍増加した。SIMでの培養で発現量が増加するシュート再生関連遺伝子のうち、ESR2CUP SHAPED COTYLEDON1CUC1 )、WUSCHELWUS )、SHOOT MERISTEMLESSSTM )、RELATED TO AP2 6LRAP2.6L )はESR1による発現制御を受けていることが確認された。WIND1-SRDX 個体やESR1-SRDX 個体の切り葉を植物ホルモンを含まないMS培地で培養した際の傷口からの根の再生は野生型と同等であることから、WIND1-ESR1経路は根の再生には関与していないと考えられる。以上の結果から、WIND1は直接ESR1 の発現を活性化することで傷口からのカルス形成やその後のシュート再生を促進していると考えられる。


理化学研究所のプレスリリース

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論文)Aux/IAAタンパク質による非生物ストレス耐性

2017-03-02 05:07:53 | 読んだ論文備忘録

Plant Stress Tolerance Requires Auxin-Sensitive Aux/IAA Transcriptional Repressors
Shani et al. Current Biology (2017) 27:437-444.

DOI: 10.1016/j.cub.2016.12.016

Aux/IAAタンパク質はオーキシン応答の抑制に関与する因子で、植物の様々な生理・成長過程を制御している。米国 カリフォルニア大学サンディエゴ校Estelle らは、Aux/IAA 遺伝子の発現制御機構を解明するために、シロイヌナズナの15のAux/IAA 遺伝子のプロモーター領域をベイトに用いた酵母one-hybrid(Y1H)法によりシロイヌナズナの1956の転写因子をスクリーニングし、38の転写因子ファミリーの173の転写因子を見出した。このうち83の転写因子は幾つかのIAA プロモーターに結合し、90は1種類のIAA プロモーターとのみ相互作用を示した。また、大部分のIAA プロモーターは特定の転写因子ファミリーとの特異性を示した。興味深いことに、これまでオーキシンシグナルとの関連性が指摘されていなかったDREB/CBFファミリー転写因子が、多くのIAA プロモーターと相互作用を示した。DREB/CBF 遺伝子ファミリーはシロイヌナズナに56あり、A1~A6までのサブファミリーに分かれている。サブファミリーA2、A3、A6のDREB/CBFは多数のIAA プロモーターと相互作用を示したが、サブファミリーA1、A4、A5はIAA3 プロモーターとIAA5 プロモーターとの間で特異的な相互作用を示した。DREB/CBFは、乾燥、低温、高塩濃度といったストレスに応答する遺伝子の発現を制御している。そこで、非生物ストレスがオーキシン応答に影響しているかをDR5:3XVENUS-NLS レポーターを用いて調査した。その結果、芽生えを乾燥させたり、ポリエチレングリコール(PEG)を含む培地で成長させることでオーキシン応答が抑制されることがわかった。また、PEG処理はオーキシンに応答した胚軸伸長を強く阻害した。乾燥処理30分後の遺伝子発現を詳細に解析したところ、IAA5 プロモーターに結合する6つのDREB/CBF 遺伝子の発現が強く誘導され、オーキシンコレセプター遺伝子のうちTIR1AFB2AFB4 の発現量に変化は見られなかったが、AFB3AFB1 の発現量は減少した。また、幾つかのオーキシン生合成遺伝子と多くのAux/IAA 遺伝子は発現量が変化していた。乾燥処理で発現が最も大きく誘導されるIAA5 と本遺伝子と関連性の高いIAA19 のプロモーターに6種類のDREB/CBF(CBF1、CBF2、DREB2A、DREB2B、At1G19210、At2G44940)が相互作用をすることが確認された。DREB/CBFはDRE/CRTエレメントに結合し、IAA2IAA5IAA6IAA9IAA19 のプロモーター領域にはDREエレメントが存在していた。Y1Hアッセイの結果、DREB/CBFはDREエレメントに変異を加えたIAA5 プロモーターへの結合が劇的に減少することがわかった。また、IAA5 プロモーター制御下でLUCを発現するコンストラクトを導入した植物は乾燥処理によってLUC活性が増加したが、DREエレメントに変異の入ったIAA5 プロモーターのコンストラクトでは、基底状態のLUC活性が低く、乾燥処理による誘導も見られなかった。クロマチン免疫沈降(ChIP)試験から、CBF1とDREB2AはIAA5 およびIAA19 のプロモーター領域と相互作用をすることが確認された。薬剤によりDREB2A の発現を誘導する系を用いた試験から、IAA5IAA19 はDREB2Aによって発現誘導されることが確認された。DREBによる転写を抑制することが知られているC末端側を欠いたCBF2 を過剰発現させた系統は、ストレスによるIAA5IAA19 の発現誘導が抑制されていた。また、dreb2a dreb2b 二重変異体は乾燥処理によるIAA5IAA19 転写産物蓄積が抑制されていた。これらの結果から、DREB/CBFはIAA5IAA19 のストレスによる発現誘導に必要であることが示唆される。iaa5iaa6iaa19 の各変異体は、通常の生育条件では表現型に変化は見られないが、乾燥ストレス処理に対して感受性が高くなっていた。したがって、IAA5IAA6IAA19 はストレス耐性にとって重要であると考えられる。

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論文)FT転写産物の選択的スプライシングによる花成制御

2017-02-26 12:08:17 | 読んだ論文備忘録

Regulation of FT splicing by an endogenous cue in temperate grasses
Qin et al. Nature Communication (2017) 8:14320.

DOI: 10.1038/ncomms14320

イネ科ヤマカモジグサ属のミナトカモジグサ(Brachypodium distachyon )は、フロリゲン遺伝子FLOWERING LOCUS TFT )のオーソログを2つ(FT1FT2 )持っている。中国農業科学院作物科学研究所のWu らは、ミナトカモジグサでのFT 遺伝子の発現パターンをPCRで調査し、FT2 は選択的スプライシングによって2種類の転写産物が形成されることを見出した。そのスプライシング産物は第1エクソンの5'末端側が84塩基欠失しており、翻訳産物はN末端領域のフォスファチジルエタノールアミン結合タンパク質(PEBP)ドメインに28アミノ酸の欠失が生じていた。FT1 転写産物には変異スプライス産物は見られなかった。そこで、正常な転写産物をFT2α 、選択的スプライス転写産物をFT2β と命名し、解析を行なった。FT2β/FT2α 比は植物体の育成温度によって変化し、高温条件で低下した。FT2α を過剰発現させた個体は花成促進されるが、FT2β を過剰発現させた個体は出穂が遅延し、FTの下流で作用しているAPETALA1 のミナトカモジグサオーソログであるVRN1 の発現量が劇的に減少していた。FT2β 過剰発現個体でのFT2α 転写産物量は野生型と同等であった。したがって、FT2αとFT2βは花成誘導に対する効果が異なっていると考えられる。酵母two-hybridアッセイの結果、FTと相互作用をするFD様タンパク質FDL2は、FT2αとは相互作用をするがFT2βとの結合は確認されなかった。また、ベンサミアナタバコを用いたBiFCアッセイやCo-IPアッセイから、生体内においてもFT2βとFDL2は相互作用をしないことが確認された。FTと相互作用をする14-3-3タンパク質のGF14bとGF14cについても同様のアッセイを行なったところ、FT2αとは相互作用を示すが、FT2βとの相互作用は確認されなかった。したがって、FT2スプライス変異型は14-3-3タンパク質やFDと物理的に相互作用をする能力が失われているものと思われる。酵母three-hybridアッセイの結果、FT2βはFT2αとFDL2もしくはGF14bとの相互作用を抑制することがわかった。また、競合BiFCアッセイから、FT2βは生体内でのFT1、FT2αとFDL2、GF14bとの相互作用を抑制することが確認された。FT2βはFT1やFT2αとヘテロ二量体を形成するが、FT2βのホモ二量体は形成されなかった。これらの結果から、FT2βによる花成遅延は、FT2βがFT2αやFT1と結合することでFDや14-3-3タンパク質との複合体形成が妨げられることで生じているものと思われる。FT2β 転写産物量は、ミナトカモジグサの成長初期4週間目まではFT2α 転写産物量よりも多いが、その後はFT2α 量の方が多くなり、植物体が成長するにつれてFT2β/FT2α 比は減少していった。よって、選択的スプライシングによるFT の転写後制御は、ミナトカモジグサの花成時期の制御に関与し、若い植物体にFT2β量が多いことは早熟な花成を抑制する作用があると推測される。人工マイクロRNAによってFT2β をノックダウンした植物は、対照よりも出穂日が早くなり、VRN1 の発現量が増加していた。この早期花成の程度と人工miRNAの発現量との間には相関が見られることから、FT2βの減少による花成促進は、花成複合体形成がより多く形成されVRN1 発現量が増加することによるものであると思われる。FT2α をノックダウンする人工miRNAを発現させた個体は、花成が遅延し、VRN1 発現量も減少した。したがって、FT2βとFT2αはミナトカモジグサの花成において拮抗的に作用していると考えられる。シロイヌナズナ、イネ、トウモロコシではFT2 オーソログの選択的スプライシングは見られなかったが、ミナトカモジグサと同じイネ科イチゴツナギ亜科のタルホコムギ、コムギ、オオムギではミナトカモジグサと同じ領域が欠失したFT2 スプライス変異型が見られた。また、コムギやオオムギのFT2β は、8週間目の植物体では発現量がFT2α よりも低いが、2週間目の植物体ではFT2α の転写産物量が減少していた。したがって、発生過程でのFT2 選択的スプライシングの変化は温帯のイネ科植物で保存された花成制御機構であると考えられる。

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論文)サイトカイニンシグナル伝達に関与するEXTRA-LARGE Gタンパク質とU-boxタンパク質

2017-02-21 05:56:51 | 読んだ論文備忘録

EXTRA-LARGE G PROTEINs Interact with E3 Ligases PUB4 and PUB2 and Function in Cytokinin and Developmental Processes
Wang et al. Plant Physiology (2017) 173:1235-1246.

DOI: 10.1104/pp.16.00816

ヘテロ三量体GTP結合タンパク質は、Gα、Gβ、Gγの3つのサブユニットから構成されており、シグナル伝達分子として機能している。シロイヌナズナでは、EXTRA-LARGE G PROTEIN(XLG)と命名されたGα様タンパク質が3種類あり、Gβγと複合体を形成する。XGLは様々な成長過程に関与していることが報告されているが、その機構については明らかとなっていない。中国 香港浸会大学Xia らは、酵母two-hybrid(Y2H)スクリーニングによってXGL2と相互作用をするタンパク質を探索し、37のクローンを見出した。このうち12クローンはU-box型E3ユビキチンリーガせのPUB2をコードしており、5クローンはPUB4をコードしていた。また。PUB4をベイトに用いてY2Hスクリーニングを行なったところ、XLG1が16クローン、XLG2が7クローン得られた。そして、Y2Hアッセイから、3種のXLGはPUB2、PUB4と相互作用をすることが確認され、BiFCアッセイやco-IPアッセイからXGL1とPUB4は植物体内においても相互作用をすることが示された。PUB E3リガーゼはシロイヌナズナでは60以上からなるファミリーを形成しており、PUB2とPUB4は相同性が高い。PUB4の機能喪失変異体はロゼットが小さく、稔実率が低いことが報告されている。そこで、T-DNA挿入pub2 変異体の表現型を調査したが、形態的な変化は見られなかった。しかし、PUB2pub4 変異体で過剰発現させると稔性を回復する個体が見られ、pub2/4 二重変異体はpub4 変異体よりも矮化した。これらの結果から、PUB2とPUB4は機能が重複していると考えられる。XGL の変異体について解析を行ったところ、xgl 単独変異体や二重変異体では明確な表現型の変化は見られなかったが、xgl1/2/3 三重変異体は、pub4 変異体のように、草丈が低く稔性が低下した。また、変異体芽生えは野生型よりもやや大型で、根系が発達していた。pub4pub2/4xgl1/2/3 の各変異体の芽生えはサイトカイニン(BA)処理による成長阻害に対して感受性が低く、pub2 変異体やxgl 単独変異体ではBA感受性の変化は見られなかった。pub4pub2/4xgl1/2/3 の各変異体の芽生えは、サイトカイニンによる胚軸伸長阻害においても感受性が低く、BA処理をすることによって葉柄が伸長し、子葉が開いた。また、BAによる根の伸長抑制に対してもわずかに感受性が低下していた。pub4pub2/4xgl1/2/3 の各変異体は、雄ずいの数が4つか5つの花が多く見られた。xgl1/2/3 変異体もpub4 変異体の稔性の低下は、花粉の生育力が失われたことによるものではなく、タペート細胞の変性が不十分なために花粉が葯から放出されないことで引き起こされていた。これまでに示した結果から、pub4pu2/4xgl1/2/3 の各変異体はサイトカイニン応答が低下していると考えられる。サイトカイニン応答の正の制御因子であるタイプBレスポンスレギュレーターのARR10をpub4 変異体やxgl1/2/3 変異体で過剰発現させることで、これらの変異体の表現型が部分的に抑制された。以上の結果から、XGLとPUB2/4はサイトカイニンシグナル伝達に関与する因子として様々な発生過程や生理過程を制御していると考えられる。

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論文)温度変化による成長と免疫性のバランス制御

2017-02-17 18:11:23 | 読んだ論文備忘録

PIF4 Coordinates Thermosensory Growth and Immunity in Arabidopsis
Gangappa et al. Current Biology (2017) 27:243-249.

DOI: 10.1016/j.cub.2016.11.012

気温が上昇すると植物の成長は促進されるが、防御応答が弱くなり、罹病性が高くなることが知られている。英国 ジョン・イネスセンターKumar らは、温度変化に応答した成長制御に関与していることが知られているPHYTOCHROME INTERACTING FACTOR 4(PIF4)が高温時の免疫性の変化にも関与しているのではないかと考え、解析を行なった。シロイヌナズナ ヌクレオチド結合ロイシンリッチリピート(NB-LRR)タンパク質SUPPRESSOR OF npr1-1, CONSTITUTIVE 1(SNC1)の変異体snc1-1 は、恒常的に防御応答が活性化し、成長が抑制さていれるが、高温条件(27℃)では成長が回復し、Psudomonas syringe pv. tomato(Pto )DC3000に対する抵抗性が低下して野生型と同等となる。しかし、snc1-1 pif4-101 二重変異体ではどちらの表現型も高温による変化が起こらなかった。この結果から、PIF4による温度受容シグナル伝達は、温度上昇による防御応答の抑制にも関与していることが示唆される。pif4-101 変異体では、成長に関与しているPIF4のターゲット遺伝子ATHB2EXP8XTR7 の発現が減少していたが、防御応答に関与しているPR1PR5PBS3 の発現量は増加していた。RNA-seq解析の結果、pif4-101 変異体では防御応答関連遺伝子の発現量が高くなっていることがわかった。また、pif4-101 変異体やpifQpif1 pif3 pif4 pif5 )変異体はPto DC3000抵抗性が野生型よりも高くなっていた。PIF4の塩基性ドメインを欠いたPIF4Δbは、過剰発現させることによって優性阻害を引き起こし、成長が抑制され、成長関連遺伝子の発現量が減少し、防御遺伝子の発現量が増加してPto DC3000抵抗性が高くなった。また、PIF4 を過剰発現させた系統は、成長関連遺伝子の発現量が増加し、防御遺伝子の発現量が減少してPto DC3000罹病性が高くなった。これらの結果から、PIF4は免疫性の負の制御因子として作用していることが示唆される。フィトクロムBは、光刺激に応答してPIF転写因子の分解を制御をしており、機能喪失phyb 変異体ではPIFを介した成長が強まるが、Pto DC3000罹病性が高くなっていた。また、PHYB 過剰発現系統は、成長関連遺伝子の発現が減少して成長が抑制され、防御遺伝子の発現が増加し、Pto DC3000抵抗性が高くなっていた。シロイヌナズナの自然変異のNossen(No-0 )は、Columbia(Col )-0 よりも成長が旺盛で、成長の温度感受性が高い。No-0 は成長関連遺伝子の発現量が高く、防御関連遺伝子の発現量が低下しており、Pto DC3000罹病性が高くなっていた。よって、No-0 の温度による成長促進は免疫性性の低下を引き起こしている。No-0 の成長や防御に関する表現型はphyb 変異体の表現型と類似しており、No-0phyb 変異体とのF1雑種はphyb 変異体の表現型を相補しなかった。よって、No-0 ではPHYBの機能が低下していると考えられる。しかしながら、No-0 でのPHYB の発現量はCol-0 と同等であった。No-0PHYB 遺伝子座には幾つかの多型が見られ、それらはPHYBの機能と関連していることが知られていることから、No-0 はPHYBの機能に異常があると考えられる。Col-0No-0 を交雑して作出したF2個体の解析から、成長や防御に関する表現型はPHYBに支配されていることがわかった。また、No-0Col-0PHYB を発現させることで、成長、遺伝子発現、Pto DC3000抵抗性といった表現型がCol-0 と同等になった。PHYBはPIF4を負に制御しているので、No-0 ではPIF4 の発現量が増加していた。また、No-0 でPIF4Δbを発現させると、成長が抑制され、成長関連遺伝子の発現量が減少し、防御遺伝子の発現量が増加してPto DC3000抵抗性が高くなった。したがって、No-0 での成長と防御のバランスの変化は、PHYBの機能低下によるPIF4の増加によって引き起こされていると考えられる。シロイヌナズナの自然変異体のPHYBアミノ酸配列を比較したところ、Edinburgh(Edi )-0 、Kashmir(Kas )-1 、Shakdara(Sha ) にもNo-0 と同じアミノ酸置換が見られ、No-0 と同じ表現型を示した。17℃で育成したCol-0Pto DC3000抵抗性が高く、育成温度を22℃、27℃と上昇させるに連れて抵抗性が低下する。17℃および22℃で育成したPIF4 過剰発現個体の抵抗性は、それぞれ、22℃および27℃育成したCol-0 と同程度であった。よって、PIF4が温度上昇による罹病性誘導をもたらしていることが示唆される。phyb 変異体やNo-0 は低温時の抵抗性が低下していた。また、PIF4Δbを発現させた系統は、対照よりも27℃での抵抗性が高くなっていた。これらの結果から、PIF4による温度受容シグナル伝達系は防御応答の温度感受性の制御において重要であると考えられる。

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論文)カスパリー線形成に作用するペプチドホルモン

2017-02-11 16:56:39 | 読んだ論文備忘録

Root diffusion barrier control by a vasculature-derived peptide binding to the SGN3 receptor
Doblas et al. Science (2017) 355:280-284.

DOI: 10.1126/science.aaj1562

A peptide hormone required for Casparian strip diffusion barrier formation in Arabidopsis roots
Nakayama et al. Science (2017) 355:284-286.

DOI: 10.1126/science.aai9057

カスパリー線は、植物の根に防水機能を付与し、無秩序に水や無機物が流入するのを防いでいる。カスパリー線の形成にはカスパリー線膜ドメインタンパク質(CASP)という膜貫通タンパク質が関与している。そしてロイシンリッチリピート受容体キナーゼ(LRR-RK)のSCHENGEN3(SGN3)/GASSHO1(GSO1)はCASPの細胞膜上の適正な分布に関与していることが知られており、sgn3 変異体はカスパリー線が不連続となる。Science誌1月20日号に、カスパリー線形成に関与し、SGN3のリガンドとなるペプチドに関する論文が2報出た。

スイス ローザンヌ大学Geldner ら[Science (2017) 355:280-284.]は、シロイヌナズナsgn3 変異体と類似した表現型を示すsgn2 変異体がチロシルプロテインスルホトランスフェラーゼ(TPST)をコードするAt1g08030の変異であることを見出した。この酵素は、根の分裂組織の維持や成長に関与する様々なペプチドリガンド(RGF、PSK、PSY1)をチロシン硫酸化することが知られている。しかしながら、既知のペプチドではtpst/sgn2 変異体の表現型を相補できず、既知ペプチドの変異体にカスパリー線の異常は見られなかった。したがって、tpst/sgn2 変異体のカスパリー線の異常は、未知のTPSTの基質によって引き起こされていると考えられる。そこで、tpst/sgn2 変異体でTPSTを各種組織特異的プロモーター制御下で発現させて未知の硫酸化ペプチドが生産される組織を探索した。その結果、中心柱特異的に発現するSHR プロモーターでTPSTを発現させることでtpst/sgn2 変異体のカスパリー線異常が相補されることがわかった。よって、中心柱で生産されるペプチドが内皮でのカスパリー線形成を促進していると考えられる。中心柱で発現するペプチドに関してデータベース検索を行なったところ、At4gg34600が同定された。この遺伝子が生産するペプチド[CASPARIAN STRIP INTEGRITY FACTOR 2(CIF2)と命名]の硫酸化型を合成してsgn2 変異体に与えたところ、1 nM の添加によってカスパリー線の異常が回復した。また、野生型植物に100 nM 以上のペプチドを添加したところ、異所的なCASP形成やリグニンの過剰蓄積が起こった。硫酸化していないペプチドにも活性はあったが、硫酸化型の1/10~1/100程度であった。CIF2およびCIF2のホモログのCIF1をコードする遺伝子のプロモーターの発現特異性から、両遺伝子は維管束で発現していることが確認された。sgn2 変異体とsgn3 変異体の内皮の表現型は類似しており、二重変異体はsgn3 変異体の表現型を悪化させることはなかった。したがって、両者は同一経路において作用していることが示唆され、SGN3は受容体である可能性がある。sgn3 変異体をペプチド処理しても表現型に変化は見られなかった。また、ペプチド処理は細胞膜上からのSGN3タンパク質の消失を誘導し、これはリガンドが誘導するエンドサイトーシスが起こっているものと思われる。これらの結果から、ペプチドはSGN3のリガンドであると考えられる。SGN3とCIF2/3との物理的相互作用を調査したところ、CIF2はCIF1よりも親和性が強く、硫酸化されていないCIF2はSGN3に結合しなかった。受容体様細胞質キナーゼのSGN1は、SGN3の下流に位置するキナーゼと考えられており、sgn1 変異体もカスパリー線に異常が見られる。sgn1 変異体にCIF2処理をしても表現型は相補されず、リグニンやスベリンの過剰蓄積も見られなかった。よって、SGN1はCIFによって活性化されたSGN3シグナルを伝達するために必要であると考えられる。

名古屋大学松林ら[Science (2017) 355:284-286.]は、シロイヌナズナGSO1/SGN3の変異体がカスパリー線に異常を起こすことはGSO1/SGN3のリガンドとなるペプチドが存在することを示していると考え、新規ペプチドホルモンの探索を行なった。その結果、80アミノ酸程度のポリペプチドをコードする2つのパラログ遺伝子At2g16385とAt4g34600が同定された。このポリペプチドのオーソログは植物界に広く分布していた。At2g16385を過剰発現させたシロイヌナズナから分泌されるポリペプチドを解析したところ、21アミノ酸のチロシン硫酸化されたポリペプチドが検出された。光親和性標識したAt2g16385ペプチドを用いてシロイヌナズナ受容体キナーゼ発現ライブラリーをスクリーニングしたところ、サブファミリーXIに属する2つのLRR-RK、GSO1/SGN3とGSO2が見出された。この結合は未標識のペプチドによって拮抗阻害され、他の関連性のないペプチドホルモンによる影響を受けなかった。したがって、At2g16385とAt4g34600は、GSO1/SGN3とGSO2の特異的なリガンドであると考えられる。GUS発現によりAt2g16385プロモーター活性を見たところ、中心柱、特に主根の成熟した領域の師部で活性が見られ、シュートでは活性が検出されなかった。At4g34600プロモーターも主根や側根の伸長・分化領域の中心柱で活性が見られた、活性は側根形成が誘導される領域で消失した。根端部では、伸長を開始する位置の10細胞分後方からGUS活性が検出された。リガンドの二重変異体は、内皮のバリアー形成が欠失し、親水性色素のヨウ化プロピジウムが維管束に侵入した。この表現型はgso1/sgn3 gso2 受容体二重変異体で観察される表現型と類似していた。リガンド二重変異体の表現型は合成At2g16385ペプチド処理することによって回復したが、受容体二重変異体はペプチド処理をしても変化は見られなかった。したがって、At2g16385とAt4g34600のペプチドはカスパリー線の形成にとって重要であり、このことからこれらのペプチドをそれぞれCasparian strip integrity factor 1(CIF1)、CIF2と命名した。リガンド二重変異体ではCASPの蓄積が不連続となり、CASP1CASP2 の発現量も低下していた。リガンド二重変異体をCIF1ペプチド処理すると、不連続に分布していたCASPが融合し、CASP1CASP2 の発現量も増加した。24時間CIF1ペプチド処理をしたリガンド二重変異体をペプチドを含まない新しい培地に移すと、一部のCASPが不連続となり、CASP1CASP2 の発現量が減少した。このことから、CIFペプチドはカスパリー線の形成に加えてカスパリー線の維持に対しても必要であることが示唆される。カスパリー線は、師部と土壌との間でのイオンの流出入を防ぐバリアーとして作用することで植物を環境に適応させる役割があると考えられている。野生型植物は高濃度の鉄に対して耐性を示すが、リガンド二重変異体は高濃度鉄処理によって成長が抑制されて葉が変色した。野生型植物の胚軸から採取した師管液の鉄濃度は培地の鉄含量を高めても一定であるが、リガンド二重変異体では培地の鉄含量の増加に応じて師管液の鉄濃度も増加した。しかも、野生型植物では過剰鉄処理によってCIF1CIF2 の発現量が増加し、培地のpHが低い条件では発現量がさらに増加した。また、低カリウム条件で育成したリガンド二重変異体は成長遅延を起こし、師管液のカリウム量が野生型よりも低下していた。これは、変異体ではカリウムが濃度に依存して植物体外へ流出していることで引き起こされていると考えられる。以上の結果から、中心柱で発現しているペプチドホルモンCIF1とCIF2は、内皮で発現しているGSO1/SGN3とGSO2を活性化することでカスパリー線の形成と維持に作用していると考えられる。

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論文)BRANCHED1による腋芽成長制御

2017-02-05 17:52:01 | 読んだ論文備忘録

Abscisic acid signaling is controlled by a BRANCHED1/HD-ZIP I cascade in Arabidopsis axillary buds
Gonzalez-Grandio et al. PNAS (2017) 114:E245-E254.

doi: 10.1073/pnas.1613199114

シロイヌナズナのクラスⅡ TEOSINTE BRANCHED1, CYCLOIDEA, PCF(TCP)のBRANCHED1(BRC1)は、腋芽の成長を抑制しているが、その機構については明らかとなっていない。しかし、休眠芽ではアブシジン酸(ABA)関連遺伝子の発現が誘導されており、BRC1 は芽においてABAマーカー遺伝子の発現を促進することが知られている。スペイン 国立バイオテクノロジーセンターCubas らは、BRC1 とABAシグナルとの関連を調査し、ABA関連遺伝子のうち26遺伝子はBRC1 に発現が依存しており、このうち12遺伝子は転写因子をコードしていることがわかった。そこで、BRC1 に発現が依存している転写因子遺伝子のうち、HD-ZIPタンパク質をコードするHOMEOBOX PROTEIN 21HB21 )、HB40HB53 に着目して解析を行なった。これらの遺伝子の転写産物量は、BRC1 の発現量や腋芽成長の抑制の程度と正の相関があった。タンパク質結合マイクロアレイ(PBM)によってBRC1のDNA結合モチーフとしてGGgcCCmcが見出され、このモチーフはHB21HB40HB53 遺伝子のプロモーター領域、イントロンおよび幾つかのエクソンに含まれていることがわかった。そして、BRC1がこれらの領域に直接結合することがChIPアッセイによって確認された。HB21HB40HB53 遺伝子のプロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトを導入した形質転換体でGUS の発現パターンを調査したところ、いずれも若い腋芽で発現しており、BRC1 の発現部位と重複していた。HB21HB40HB53 遺伝子のT-DNA挿入変異体のロゼット葉からの分枝形成を野生型と比較したところ、通常の白色(W)光照射条件下では分枝数に差は見られなかったが、W光と遠赤色(FR)光をを照射して分枝形成を抑制した条件では二重変異体、三重変異体で抑制の程度が野生型よりも低下していた。また、三重変異体ではbrc1 変異体よりもW+FR光照射による分枝形成抑制の程度が低くなっていた。短日条件で育成した三重変異体の腋芽から成長した葉は、brc1 変異体と同様に、野生型のものよりも成長が良くなっていた。hb21 hb40 hb53 brc1 四重変異体の分枝の表現型は、W+FR光照射も短日条件も三重変異体やbrc1 変異体を超えることはなかった。したがって、HB21/40/53BRC1 は同一経路で機能していると考えられる。これらの結果から、HB21HB40HB53 は、腋芽の発達と分枝の成長をBRC1 と同じ経路で遅延させるように冗長的に作用しており、この機能は低R:FR光条件や短日条件で発揮されることが示唆される。BRC1 に発現が依存している他の遺伝子としてNCED3 (At3g14440)がある。NCED3 はABA生合成の鍵酵素をコードしており、分枝の成長にも関与している。nced3 変異体は、W+FR光に応答した分枝形成抑制の程度が野生型よりも低く、短日条件での腋芽の成長が促進され、三重変異体と類似した表現型を示す。野生型植物においてNCED3 の発現はW+FR光照射によって誘導されるが、三重変異体では、brc1 変異体と同様に、誘導の程度が減少していた。また、W光照射下の基底状態のNCED3 の発現量も三重変異体では野生型よりも低くなっていた。したがって、HB21、HB40、HB53(そしてBRC1)は腋芽でのNCED3 の発現に必要であると考えられる。エストラジオール発現誘導系によってBRC1HB21HB40HB53 をシロイヌナズナ芽生えで発現させたところ、NCED3 転写産物量が大きく増加し、ABA量も増加した。また、BRC1、HB21、HB40、HB53がNCED3 遺伝子プロモーター領域に直接結合することが確認された。したがって、BRC1HB21HB40HB53NCED3 の発現誘導とABAの蓄積に必要であり、BRC1 によるHB21HB40HB53 の転写活性化は腋芽での局所的なABAシグナル伝達や応答を押し上げていると考えられる。W+FR光照射した三重変異体での分枝形成は、ABAを添加することによって野生型同程度に抑制された。よって、三重変異体の低R:FR光条件での分枝形成は腋芽でABAが蓄積されないことが原因であると考えられる。ABAのシグナル伝達や応答に関与しているタンパク質をコードしている4つの遺伝子ABA RESPONSIVE ELEMENTS-BINDING FACTOR 3ABF3 )、ABI FIVE BINDING PROTEIN 3AFP3 )、G-BOX BINDING FACTOR 3GBF3 )、NAC-LIKE, ACTIVATED BY AP3/PINAP )は、W+FR光照射によって発現誘導されるが、三重変異体では誘導の程度が減少しており、これはbrc1 変異体での結果と類似していた。これらの4遺伝子の発現誘導はnced3 変異体では低下しており、野生型植物をABA処理することで発現量が増加した。よって、4遺伝子の発現誘導はNCED3 によって誘導されるABAの蓄積が関与している。エストラジオール発現誘導系による解析から、4遺伝子はBRC1 およびHB53 の発現誘導によって発現量が増加し、ABF3NAPHB21 およびHB40 の発現誘導によって発現量が増加した。以上の結果から、BRC1はHD-ZIP型転写因子の発現を直接制御し、腋芽においてNCED3 の発現やABAの生合成を局所的に高めて低R:FR光条件や短日条件での腋芽の成長を抑制していると考えらる。

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