Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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植物観察)箱根

2016-09-25 21:33:06 | 植物観察記録

久しぶりに箱根へ行ってきました。しばらく雨が続いていましたが、今日は久しぶりに晴れました。山歩きは盛夏の頃に比べると気温がやや下がり幾分楽になりました。ただ、湿度が高い所為なのか、汗はいつも通りに激しくかいてしまいました。花も徐々に秋めいてきました。特に、林床のトリカブトを見るとそんな気持ちにさせてくれます。長雨の後であったからでしょうか、山道でアズマヒキガエルをよく見かけました。

今日見た主な花
イヌヤカハッカ、モミジガサ、トリカブト、ツルニンジン、ホトトギス、ツリフネソウ、シロヨメナ

 

トリカブト

 

ツルニンジン

 

アズマヒキガエル

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論文)ヒマワリはなぜ東を向くか

2016-09-22 15:48:32 | 読んだ論文備忘録

Circadian regulation of sunflower heliotropism, floral orientation, and pollinator visits
Atamian et al. Science (2016) 353:587-590.

DOI: 10.1126/science.aaf9793

Perspective
How do sunflowers follow the Sun - and to what end?
Winslow R. Briggs Science (2016) 353:541-542.

DOI: 10.1126/science.aah4439

植物は光の入射方向に応答して成長する方向を変化させる光屈性を示す。この成長方向の変化は、フォトトロピンによる青色光の受容と、そのシグナルを受けて生じるオーキシンの非対称分布を介した成長量の差によってもたらされる。ヒマワリは向日性もしくは太陽追尾と呼ばれる光屈性を示し、葉および茎頂が太陽の動きを追尾するようにダイナミックに方向を変化させ、夜間に方向を戻して夜明け前には東を向く。米国 カリフォルニア大学デイビス校Harmer らは、鉢植えしたヒマワリを用いて、1)毎晩鉢の向きを変え、朝に植物体が西を向いているようにする、2)茎を固定して太陽追尾が出来ないようにする、という2種類の方法でこの運動を抑制したところ、このような処理をした個体は乾物重量と葉面積が10%程度減少することを見出した。よって、太陽追尾は植物体の成長を促進すると考えられる。夜間の茎頂の運動は、真夏に合わせて暗期を短くした場合(16L:8D)は秋分に合わせて暗期を長くした場合(12L:12D)よりも速く動き、どちらの条件においても夜明け前には茎頂が完全に東側を向いていた。14L:10D条件で野外で鉢栽培し向日性を示すヒマワリを恒常的に真上から光照射する人工気象器で育成すると、数日間は追尾運動を維持した。日中の太陽の動きを模して四方向から青色光を照射できる人工気象器を用いて、16L:8D条件から20L:10Dの30時間周期にして育成すると、明期の終わりに西を向く動きが見られなくなり、再び24時間周期に戻すと運動が回復した。したがって、概日時計がヒマワリの太陽追尾をもたらしていると考えられる。ヒマワリは成熟するにつれて向日性運動の振幅が減少していった。ジベレリン(GA)合成能を欠いたdwarf2dw2 )変異体は茎が非常に短く、検出されうる向日性を示さないが、GAを外部から与えると一過的に伸長と向日性が回復した。したがって、茎の伸長が向日性において重要であると考えられる。太陽追尾をしているヒマワリの茎は、東側の成長率が日中に高くて夜間に低く、西側の成長率が日中に低くて夜間に高くなっていた。したがって、日中に茎の西側よりも東側で成長率が高いことが、茎頂を東から西へと漸進的に動かし、夜間の西側の成長率の高さが夜明けに茎頂を東に向かせていると考えられる。人工気象器において16L:8D条件で真上から光照射すると、茎の伸長率は日中よりも夜間に高くなり、太陽追尾している茎の西側と類似していた。よって、向日性は。茎の西側での通常の成長と東側で見られる環境に応じた成長の2つの成長様式によってもたらされていると考えられる。太陽追尾運動に概日時計が関与していることから、時計遺伝子LATE ELONGATED HYPOCOTYL およびTIMING OF CAB EXPRESSION の発現周期を茎の東側と西側とで比較したが、差異は見られなかった。しかし、光屈性に関与する遺伝子の発現は異なっており、INDOLE-3-ACETIC ACID19IAA19 )は夜間に西側で発現が高くなり、SMALL AUXIN-UPREGULATED50SAUR50 )の発現は日中に東側で高くなっていた。よって、太陽追尾の周期は、茎の両側において青色光受容体と概日時計から発せされたオーキシンシグナルの統合された制御によって生み出されているものと思われる。一般に、若いヒマワリは太陽追尾をするが、花の発達の最終段階もしくは開花期の茎頂は太陽追尾を止めて常に東側を向いている。この時期の植物は茎の伸長が緩やかになり、茎頂は朝には東を向くが日中に西を向く度合いが低下する。16L:8D条件で育成した若いヒマワリの各時間帯での光屈性応答を見ると、朝は午後や夜間よりも応答性が強くなっていた。したがって、午後や夜間の光屈性の低下と、植物の成熟に伴った西側への運動の減少が組み合わさり、ヒマワリの花盤は開花期に東側を向くものと思われる。ヒマワリの花盤が東側を向くことの生態学的な利点があるのだろうか。舌状花弁が出現する直前のヒマワリを東側もしくは西側に向かせ、花盤の表面温度を見ると、東向きの花盤は西向きの花盤よりも朝の温度上昇が早く、ポリネーターの訪花回数も5倍多くなっていた。また、西側を向いた花盤をヒーターで加温して温度条件を東向きの花と同じにすると、訪花回数は加温していない西向きの花よりも多くなったが、東向きの花よりは少なかった。したがって、花の向きの違いによるポリネーターの誘引性の違いにおいて、温度は直接に貢献しているが、唯一の決定要因ではないと思われる。以上の結果から、若いヒマワリの太陽追尾は成長促進をもたらし、開花したヒマワリの花盤が東を向くことは生殖行動にとって利点となっていると考えられる。

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学会)日本植物学会第80回大会 公開講演会(那覇)

2016-09-19 20:45:29 | 学会参加

今日は、日本植物学会の主催で、沖縄県立博物館・美術館(那覇市)講堂において公開講演会「黒船から始まった沖縄の植物学」(後援:琉球大学,沖縄科学技術大学院大学,沖縄県立博物館・美術館,沖縄県教育委員会 那覇市教育委員会)が開催された。ペリー艦隊が江戸に来航の際に琉球にも寄港しており、その際に行われた植物採集の標本が今でも米国に残されている。黒船来航から始まった沖縄の植物学、そして植物学の観点から見た地球環境の未来といった点と点を繋ぐユニークかつ壮大な視点のシンポジウムであった。

 

はじめに 山崎秀雄(琉球大学理学部長)

ペリー艦隊の来航と琉球 高良倉吉(琉球大学名誉教授、前沖縄県副知事)

黒船が持ち帰った沖縄の植物 小山鐡夫(高知県立牧野植物園名誉園長兼顧問)

世界自然遺産候補地沖縄の植物-過去と現在- 横田昌嗣(琉球大学教授)

地球環境変化と植物:沖縄産クワズイモの光合成・呼吸に学ぶ 寺島一郎(東京大学大学院理学系研究科教授)

 

会場となった沖縄県立博物館・美術館

 

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学会)日本植物学会第80回大会(宜野湾) 2日目

2016-09-17 22:03:39 | 学会参加

大会2日目の午後は、学会賞の授賞式と受賞講演が行われた。本年の受賞者以下の通り。

大賞
 佐藤 公行 (岡山大学名誉教授)
 光合成研究と半世紀余の関わり

学術賞
 塚谷 裕一 (東京大学大学院理学系研究科)
 植物形態形成の基本メカニズムとエボデボ、多様性に関する研究

奨励賞
 大谷美沙都 (奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科)
 植物細胞の増殖・分化を制御する多層的遺伝情報発現制御に関する研究

 末次 憲之 (京都大学生命科学研究科)
 光による葉緑体定位運動の分子メカニズムの研究

 高山 浩司 (ふじのくに地球環境史ミュージアム)
 種分化様式の違いに着目した海洋島固有種の遺伝的多様性の時空間的変遷

 武宮 淳史 (山口大学大学院創成科学研究科)
 気孔開口におけるフォトトロピンシグナル伝達機構の研究

若手奨励賞
 北沢 美帆 (大阪大学全学教育推進機構)
 花器官数の安定性をうみだす発生過程の理論研究

 田中 奈月 (名古屋大学大学院生命農学研究科)
 膜輸送体システムと根毛から解く植物の無機イオンおよび水の吸収と蓄積の機構解明

JPR論文賞
Best Paper賞

 Michiko Sasabe, Nanako Ishibashi, Tsuyoshi Haruta, Aki Minami, Daisuke Kurihara, Tetsuya Higashiyama,
 Ryuichi Nishihama, Masaki Ito, Yasunori Machida (2015) The carboxyl-terminal tail of the stalk of
 Arabidopsis NACK1/HINKEL kinesin is required for its localization to the cell plate formation site.
 J Plant Res 128:327-336

 Akitaka Tono, Takaya Iwasaki, Akihiro Seo, Noriaki Murakami (2015) Environmental factors contribute to
 the formation and maintenance of the contact zone observed in deciduous broad-leaved tree
 species in Japan.
 J Plant Res 128: 535-551

Most-Cited Paper 賞
 Zoschke R, Qu Y, Zubo YO, Borner T, Schmitz-Linneweber C (2013) Mutation of the pentatricopeptide
 repeat-SMR protein SVR7 impairs accumulation and translation of chloroplast ATP synthase subunits
 in Arabidopsis thaliana.
 J Plant Res 126:403-414

今日も台風16号の影響はあまりなく、雨男で有名な塚谷先生が学術賞を受賞したにもかかわらす、風が少し強いことと
、時折スコールのような強い雨が降る程度であった。

 

本大会シンボルマークは、沖縄で「アカバナー(赤花)」として親しまれているハイビスカス

 

コンベンションセンターに隣接する宜野湾トロピカルビーチは、強風の影響でハブクラゲ避けのネットが張れず遊泳禁
止になっていた

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学会)日本植物学会第80回大会(宜野湾) 1日目

2016-09-16 17:47:41 | 学会参加

日本植物学会第80回大会が9月16-18日に沖縄コンベンションセンター(宜野湾市)で開催された。本大会が沖縄で開催されるのは今回が初めてで、今回は第80回という節目の大会でもある。大会前には台風16号の影響が懸念されたが、今日はまずますの天気で、当初の予定通り開催された。今年の大会は一般発表は全てポスター発表とし、ポスター発表のディスカッションは1日目の午後に行われた。大会初日午前、2日目午前、3日目の午前と午後にシンポジウムが開催される。大会主催者の発表では、ポスター発表が394題、シンポジウム講演は19の企画で108題、受賞講演8演題の発表が行われる。また、19日には学会が主催する公開講演会「黒船から始まった沖縄の植物学」が沖縄県立博物館・美術館(那覇市)講堂で開催されることになっている。

 

沖縄コンベンションセンターは、沖縄県宜野湾市真志喜四丁目にある沖縄県立の会議展覧センターで、隣接してビーチやマリーナ、海浜公園、屋外劇場、体育館、野球場、リゾートホテルなどの施設がある。

 

ポスター会場の様子

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論文)タンパク質N末端アセチル化と胚発生

2016-09-14 21:56:46 | 読んだ論文備忘録

Protein N-terminal acetylation is required for embryogenesis in Arabidopsis
Feng et al. Journal of Experimental Botany (2016) 67:4779-4789.

doi:10.1093/jxb/erw257

タンパク質のN末端アミノ酸のアセチル化は真核生物において見られるタンパク質修飾の1つで、酵母のタンパク質の約50%、ヒトやシロイヌナズナのタンパク質の80-90%がアセチル化されている。N末端のアセチル化は、N末端アセチルトランスフェラーゼ(NAT)によって触媒され、6種類のNAT(NatA~NatF)がある。N末端のアセチル化は、タンパク質間の相互作用や安定性の制御に関与している。中国 首都師範大学Ma らは、植物におけるN末端アセチル化の役割を解析するために、シロイヌナズナNatAの触媒サブユニットNaa10のT-DNA挿入変異体の解析を試みたが、naa10 ヘテロ接合体の後代からホモ接合体が得られず、後代種子の約1/4はしいなで、野生型とヘテロ接合体の比が1:2となった。このことから、この変異はホモ化すると致死になると考えらる。naa10 変異体で見られる胚の欠損は、Naa10 を恒常的に発現させるコンストラクトを導入することによって回復した。したがって、Naa10は胚発生に必要であることが示唆される。野生型とnaa10 ヘテロ変異体の胚の発達過程を比較すると、一細胞期から原表皮期までは両者に差異は見られないが、野生型の長角果では100%の胚が心臓型となる時期に、naa10 ヘテロ変異体では約20%の胚が初期もしくは後期の球状型胚であった。そして20%の胚は後期球状型から先に発達しなかった。また、naa10 ヘテロ変異体では原根層の非対称分裂に異常があり、静止中心(QC)の前駆細胞が形成されなかった。naa10 ヘテロ変異体でDR5:GFP オーキシンレポーターを発現させところ、野生型のような蛍光(オーキシン)の非対称分布が見られず、球状型胚全体が一様に蛍光を発した。したがって、naa10 ヘテロ変異体ではオーキシン分布もしくは応答の極大が形成されていないと考えられる。胚の発達過程におけるオーキシンの非対称分布はオーキシン輸送によって形成されるが、naa10 ヘテロ変異体ではオーキシン排出キャリアのPIN1の局在に非対称性が見られなかった。よって、Naa10はPIN1の極性をもった細胞内局在にとって必要であると思われる。NatAの補助サブユニットNaa15においてもT-DNA挿入変異体が2種類(naa15-2naa15-3 )得られているが、いずれもヘテロ接合体からホモ変異体は得られず、しいなが見られた。また、Naa15を恒常的に発現させることでnaa15 ホモ接合体が得られた。したがって、Naa15は、Naa10と同様に、シロイヌナズナの胚発生に必要であることが示唆される。naa10 と同様に、naa15 ヘテロ変異体における異常は球状胚期初期から見られ、この段階で胚の発達が止まった。さらに、原根層での細胞分裂が異常になりQC前駆細胞が形成されなかった。これらの結果から、Naa10とNaa15の両方が胚発生に必要であることが示唆される。naa10 およびnaa15 ヘテロ変異体でしいなや異常胚が形成される割合は25%以下であったが、これらの遺伝子が胚発生過程のみで機能するのであれば割合は25%丁度となるはずである。そこで、ヘテロ変異体と野生型を相互に交雑して雄性および雌性生殖母細胞の伝播効率を調べたところ、雌性生殖母細胞では効率に変化は見られなかったが、雄性生殖母細胞では効率が減少していた。生殖母細胞における伝播効率の減少は自家受粉においても観察された。よって、Naa10、Naa15は雄性生殖母細胞の発達にも関与していることが示唆される。共免疫沈降アッセイから、Naa10とNaa15は同一のタンパク質複合体内に存在することが確認された。以上の結果から、タンパク質のN末端アセチル化は植物の胚発生にとって重要であると考えられる。

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論文)過酸化水素による腋芽成長の制御

2016-09-09 21:49:52 | 読んだ論文備忘録

Apoplastic H2O2 plays a critical role in axillary bud outgrowth by altering auxin and cytokinin homeostasis in tomato plants
Chen et al. New Phytologist (2016) 211:1266-1278.

DOI: 10.1111/nph.14015

植物の分枝形成は、オーキシン、サイトカイニン、ストリゴラクトンといった内部シグナルや、温度、養分、植栽密度といった環境シグナルによって制御されている。中国 浙江大学Yu らは、トマトを実験材料に用いて、アポプラストにおいて過酸化水素(H2O2)を生成するNADPHオキシダーゼをコードするRESPIRATORY BURST OXIDASE HOMOLOG 1RBOH1 )およびWHITEFLY INDUCED 1WFI1 )をVIGSによって単独もしくは共にサイレシングさせると伸長する分枝の数が増加することを見出した。したがって、RBOH1WFI1 は分枝の成長に関与していると考えられる。分枝の成長にはオーキシンとサイトカイニンの比が強く関与しているので、RBOH1WFI1 のサイレンシングによるIAA含量、オーキシン生合成関連遺伝子(FZY )、サイトカイニン生合成関連遺伝子(IPT2 )、オーキシン極性輸送(PIN1PIN7 )/シグナル伝達関連遺伝子(IAA3IAA15 )の転写産物量の変化を調査した。その結果、RBOH1WFI1 の単独もしくは共サイレンシングは、茎頂部分のIAA蓄積量とFZY 転写産物量を減少させた。また、茎の節の部分においては、IPT2 転写産物量を増加させ、PIN1PIN7IAA3IAA15 の転写産物量を減少させた。そして、節のIAA蓄積量が減少し、各種サイトカイニン(CK)蓄積量が増加してIAA:CK比が減少した。したがって、RBOH の発現抑制による分枝の成長量増加は、CK生合成の増加とIAA生合成/シグナル伝達遺伝子の発現抑制が関連していると考えられる。トマトの葉にH2O2を与えると、分枝の成長が抑制され、茎頂においてFZY の転写とIAAの蓄積が誘導され、節においてはPIN1PIN7IAA3 の転写誘導とIPT2 の転写抑制が観察された。また、VIGSによってRBOH をサイレンシングさせた個体にH2O2を与えると、分枝の成長が阻害された。更に、H2O2処理によって腋芽の成長を抑制するTCP転写因子をコードするBRANCHED1BRC1 )の転写産物量が増加し、この増加はRBOH1WFI1 をサイレンシングさせた個体で顕著だった。これらの結果から、アポプラストのH2O2は腋芽の成長制御に関与していることが示唆される。FZY をサイレンシングした個体は、RBOH1 をサイレンシングした個体と同様に、腋芽の成長が促進された。しかし、この個体をH2O2処理しても腋芽の成長阻害は殆ど見られなかった。一方、オーキシン(NAA)処理は全ての個体で腋芽の成長が完全に阻害された。FZY をサイレンシングした個体においてもPIN1IAA3 転写産物量の減少とIPT2 転写産物量の増加が見られたが、H2O2処理による転写産物量変化やIAA蓄積量の増加は起こらなかった。したがって、H2O2処理による遺伝子発現や腋芽成長の変化はオーキシン生合成が関与していることが示唆される。茎頂部を切除(摘心)した個体は伸長する分枝の数が増加するが、切り口からNAAを与えると腋芽の成長抑制される。しかし、摘心個体の葉にH2O2処理をしても腋芽の成長は抑制されなかった。また、摘心によってPIN1IAA3 の転写は抑制され、IPT2 の転写が促進されるが、NAA添加によってPIN1IAA3 の転写が誘導され、IPT2 の転写が抑制された、しかし、H2O2処理では遺伝子発現の変化は見られなかった。よって、H2O2はオーキシンシグナルを介して腋芽の成長とCK生合成に関与していると思われる。H2O2処理による腋芽の成長抑制は、茎にCK(6-BA)処理をすることで相殺された。したがって、CKはRBOH による腋芽の成長制御において重要な役割を演じていることが示唆される。以上の結果から、RBOHによって生成されたアポプラストのH2O2は、茎頂でのIAA生合成を促進し、このことかサイトカイニン生合成を阻害して腋芽の成長を抑制していると考えられる。

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論文)ERF11転写因子によるジベレリンの生合成とシグナル伝達の活性化

2016-09-05 06:02:42 | 読んだ論文備忘録

The ERF11 Transcription Factor Promotes Internode Elongation by Activating Gibberellin Biosynthesis and Signaling
Zhou et al. Plant Physiology (2016) 171:2760-2770.

doi:10.1104/pp.16.?00154

茎の伸長を促進するジベレリン(GA)のシグナル伝達は、シグナル伝達の抑制因子であるDELLAタンパク質が分解されることによって活性化される。しかしながら、DELLAの下流のシグナル伝達因子については明らかとなっていない。米国 デューク大学Sun らは、シロイヌナズナGA欠損半矮性変異体ga1-6 を用いてアクティベーションタギングスクリーニングを行ない、草丈がga1-6 変異体よりも高くなる#279-2変異体を単離した。この変異体のアクティベーションタグは第1染色体のAt1g28360とAt1g28370の間に挿入されており、それぞれERFファミリーのAtERF12とAtERF11をコードしている。そして#279-2変異体ではAtERF11 の発現量が対照のga1-6 変異体よりも18.3倍高くなっていた。ga1-6 変異体でAtERF11 を恒常的に発現させた形質転換体は#279-2変異体と草丈が同等になったことから、ERF11 の過剰発現が#279-2変異体の表現型の原因であると判断し、この変異体をerf11-1D ga1-6 と命名した。erf11-1D ga1-6 の長角果数はga1-6 変異体と同等だが、節間がga1-6 変異体よりも長く、最終的な草丈が高くなる。これは節間の細胞が長くなったことによるものであった。erf11-1D ga1-6 はロゼット葉がga1-6 変異体よりも大きくなり、花成がわずかに早くなり、稔性も高くなった。AtERF11はERF/AP2転写因子のERFサブファミリーVⅢ-B-1aに属している。このサブファミリーには8つのERF(ERF3、4、7-12)が属しており、いずれも1つのERF/AP2ドメインと転写抑制EARモチーフを含んでいる。AtERF11はACC合成酵素遺伝子ACS2ACS5 のプロモーター領域に結合してエチレン生合成を阻害することが報告されている。AtERF11 と同じサブファミリーのAtERF4 およびAtERF8 の過剰発現もga1-6 変異体の草丈を伸長させた。erf11-1D 単独変異体は野生型よりも節間が長く草丈が高くなった。erf11 機能喪失変異体は野生型よりも草丈がやや低く、節間が短くなり、erf11 erf4 二重変異体は更に草丈が低くなり、ロゼット葉が野生型よりもわずかに小さくなった。これらの結果から、ERF11及びそのホモログは茎の伸長及び葉の拡張を冗長的に促進していると考えられる。erf11-1D ga1-6 ではGA20ox1GA20ox2GA3ox1 といった幾つかのGA生合成遺伝子の発現量がga1-6 変異体よりも高くなっており、GA異化遺伝子のGA2ox6 の発現は低くなっていた。そして、erf11-1D ga1-6 のロゼット葉はGA量がga1-6 変異体よりも約2倍高くなっていた。GA量の増加に呼応して、erf11-1D ga1-6 の節間ではDELLAタンパク質のRGAの量がga1-6 変異体よりも少なくなっていた。また、erf11-1D ga1-6 の節間ではACS2 の発現量がga1-6 変異体の1/5になっており、エチレン生産量も減少していた。したがって、ERF11 の過剰発現により草丈が高くなるのはGA量の増加とエチレン量の減少によるものであると考えられる。erf11 単独変異体は、胚軸伸長におけるGAに対する応答性がわずかに低下し、erf11 erf4 二重変異体は更に応答性が低下していた。そして、ERF11 の過剰発現はGA応答性を高めた。よって、ERF11はGA生産とGAシグナル伝達の両方に対して正の制御因子として機能していることが示唆される。GAの誘導する分解を受けないドミナント活性型RGAのrga-Δ17 が導入された系統は強く矮化した表現型を示すが、erf11-1D rga-Δ17 の草丈はrga-Δ17 よりも高くなり、節間長も長くなった。よって、erf11-1Drga-Δ17 の矮性表現型を部分的に回復させる。erf11-1D rga-Δ17rga-Δ17 もrga-Δ17タンパク質量は同程度であることから、erf11-1D rga-Δ17 の節間伸長はrga-Δ17タンパク質の蓄積量の減少によるものではない。酵母two-hybridアッセイやco-IPアッセイの結果、RGA及びGAIはVⅢ-B-1aサブファミリーのERFと相互作用をすることが確認された。また、erf11-1D rga-Δ17 の節間ではDELLAターゲット遺伝子(bHLH137bHLH154Exp-PT1 )の発現量が減少していた。したがって、ERF11とDELLAは相互作用をすることでお互いの機能を妨げていると考えられる。タバコを用いた一過的発現解析から、ERF11はbHLH137 プロモーターの発現を抑制するが、ERF11とRGAの共発現はこのプロモーターの発現に対して拮抗的に作用することが確認された。bHLH137 遺伝子のプロモーター領域にはERFに対するシスエレメントのGCC boxに類似したエレメントが2つあることから、ERF11はRGAが誘導するbHLH137 の発現を直接抑制していると考えられる。以上の結果から、ERF11はGA生合成遺伝子の発現を誘導することでGA量を増加させることと、DELLAタンパク質と相互作用をすることでGAシグナルの抑制に対して拮抗的作用することでGA応答性を高めていると考えられる。

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植物観察)箱根

2016-09-03 19:56:15 | 植物観察記録

久々に箱根へ行ってきました。バイケイソウは蒴果が熟し、裂開して周囲に種子を散布していました。そのような今年花成した個体を見ると、熟した蒴果をたくさんつけている個体もあれば、全くつけていない個体もありました。蒴果のない個体は両性花が殆どなかったのかもしれません。それとも、花成個体数が少なかったために他家受粉出来なかったのでしょうか。花は、徐々に秋の花へと移行しており、モミジガサ、ノブキ、ヤブタバコ、ヤマホトトギス、コフウロ、ツルボなどの花が見られました。

 

バイケイソウの蒴果は上向きのまま裂開して周囲に種子を散布する

 

モミジガサ

 

ツルボ

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論文)AHL転写因子による胚軸伸長抑制機構

2016-08-31 22:20:46 | 読んだ論文備忘録

SUPPRESSOR OF PHYTOCHROME B4-#3 Represses Genes Associated with Auxin Signaling to Modulate Hypocotyl Growth
Favero et al. Plant Physiology (2016) 171:2701-2716.

doi:10.1104/pp.16.00405

AT-HOOK MOTIF CONTAINING NUCLEAR LOCALIZED(AHL)ファミリー転写因子はシロイヌナズナに29種類あり、様々な成長過程を制御している。AHL29 は、当初、アクティベーションタギングスクリーニングによりSUPPRESSOR OF PHYTOCHROME B4-#3 DOMINANTSOB3-D )として同定され、この遺伝子の過剰発現はphyB-4 変異体の明所で胚軸が長くなる表現型を抑制した。したがって、SOB3は胚軸伸長を抑制する転写因子として機能しているが、SOB3の下流に位置するターゲットは明らかとなっていない。米国 ワシントン州立大学Neff らは、RNA-seqの手法を用いて、野生型、SOB3-D 系統、sob3-6 変異体の各芽生えにおける遺伝子発現を解析した。胚軸伸長変化に対応して発現量が変化している遺伝子のうちオーキシン応答のアノテーションが付いた一群に着目したところ、その中にはSMALL AUXIN UP-REGULATEDSAUR )遺伝子ファミリーの多くが含まれていた。シロイヌナズナには79のSAUR 遺伝子があり、その中でもSAUR19 サブファミリーに属する6つの遺伝子(SAUR19SAUR24 )の発現は、SOB3-D で減少し、sob3-6 変異体で上昇しており、胚軸伸長の表現型と正の相関を示していた。これらのSAUR 遺伝子はオーキシンによって発現誘導される遺伝子であることから、オーキシン生合成経路のフラビンモノオキシゲナーゼをコードする11のYUCCAYUC )遺伝子の発現とSOB3 変異体との関係を見たところ、YUC8 のRNA-seqデータのみが胚軸の表現型に対応していた。したがって、SOB3 は芽生えにおいてSAUR19 ファミリーとYUC8 の発現を抑制していると考えられる。シロイヌナズナ芽生えにオーキシン処理をすると胚軸伸長が抑制されるが、SOB3 変異体のオーキシン応答性を見ると、SOB3-D は野生型と同等であったが、sob3-6 変異体は高濃度オーキシンに対する感受性が野生型よりも高くなっていた。芽生えをオーキシン極性輸送の阻害剤であるN-1-ナフチルフタラミン酸(NPA)で処理すると、低濃度処理では胚軸伸長が促進され、高濃度処理では伸長が阻害される。SOB3-D はNPAに対する感受性が胚軸伸長の促進、阻害の両方とも野生型よりも低く、sob3-6 変異体は感受性が高くなっていた。よって、SOB3 変異体はオーキシンシグナルと胚軸表現型との間に密接な関連があると考えられる。SOB3-DSAUR19 を過剰発現させた形質転換体の芽生えを、胚軸の長さが長いものと短いのものに分けて、SOB3 の転写産物量を比較したが、差は見られなかった。しかしながら、SAUR19 の発現量は、胚軸が長い個体の方が短い個体よりも3~6倍高くなっていた。よって、SAUR19 の発現量を高めることで胚軸伸長が部分的に回復したと考えられる。ChIP-qPCR解析の結果、SOB3はSAUR19 遺伝子のプロモーターに直接結合することが確認された。SAUR19 サブファミリーの6遺伝子は、シロイヌナズナ第5染色体の21 kbの領域内に局在している。そして、SAUR20/21SAUR22/23 の2つの遺伝子ペアは互いの転写開始部位の頭同士が2 kb以下の間隔で向かい合っており、間の領域はデュアルプロモーターとして両方のSAUR 遺伝子の発現を制御していると考えられる。ChIP-qPCR解析の結果、SOB3はSAUR20SAUR21との間のデュアルプロモーターの少なくとも2つのサイトに結合することがわかった。また、SOB3はYUC8 のプロモーターにも結合した。したがって、SOB3はYUC8SAUR19 ファミリー遺伝子に直接結合して発現を制御していることが示唆される。以上の結果から、SOB3は芽生えの胚軸伸長をオーキシンシグナルに関与する遺伝子の転写を直接抑制することで制御していると考えられる。

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