Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)ヒストン脱アセチル化酵素結合因子による種子発芽の制御

2016-11-30 21:48:44 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis seed germination speed is controlled by SNL histone deacetylase-binding factor-mediated regulation of AUX1
Wang et al. Nature Communications (2016) 7:13412.

DOI: 10.1038/ncomms13412

SWI-INDEPENDENT3(SIN3)-LIKE1(SNL1)とSNL2はヒストン脱アセチル化酵素結合因子で、SNL-HDA19ヒストン脱アセチル化複合体を形成している。この複合体はアブシジン酸(ABA)やエチレンのシグナル伝達に関与する遺伝子のヒストンH3K9/18を脱アセチル化することで種子休眠を制御していることが知られている。中国科学院 植物研究所Liu らは、snl1 およびsnl2 単独変異体、snl1 snl2 二重変異体は、野生型よりも発芽の際の幼根の突出が早いことを見出した。この効果は種子を休眠打破処理しても見られることから、SNL1とSNL2は種子休眠とは独立して種子発芽を制御していることが示唆される。RNA-seq解析から、snl1 snl2 二重変異体種子ではオーキシン関連遺伝子の転写産物量が有意に増加していることがわかった。そこで、種子を浸漬する際にオーキシン合成阻害剤アミノエトキシビニルグリシン(AVG)やオーキシン輸送阻害剤の2,3,5-トリヨード安息香酸や1-ナフトキシ酢酸(1-NOA)を添加したところ、snl1 snl2 二重変異体も野生型も種子の発芽速度が低下した。このことから、snl 変異体はオーキシン応答が高まったことにより発芽速度が加速したと推測される。snl1 変異体、snl1 snl2 二重変異体の乾燥種子や浸漬8時間後の種子は、オーキシンの生合成、輸送、シグナル伝達に関与する遺伝子の発現量が野生型よりも高くなっていたが、浸漬24時間後には幾つかの遺伝子の発現量は野生型と同等になっていた。snl1 変異体、snl1 snl2 二重変異体でのオーキシンレポーターDR5::GUS の発現は、発芽時の胚では野生型よりも高くなっていたが、成長した芽生えでは差は見られなかった。また、snl1 変異体、snl1 snl2 二重変異体のIAA量は野生型よりも高くなっていた。これらの結果から、SNL1SNL2 は種子発芽時のオーキシン量を負に制御しており、このことが発芽速度に影響しているものと思われる。種子発芽の際に低濃度のオーキシンを与えると発芽速度が促進されたが、高濃度で処理すると発芽速度は低下した。また、低濃度のオーキシン処理をすることで幼根において4Cや8Cといった多倍体の核が増加した。したがって、オーキシンは細胞分裂やエンドサイクルを刺激して発芽速度を促進しているものと思われる。snl1 snl2 二重変異体で転写産物量が増加しているオーキシン関連遺伝子(PIN2PIN3CYP79B2CYP79B3YUC3 )の機能喪失変異体は発芽速度に明確な変化は見られなかったが、オーキシントランスポーターAUX1の変異体aux1-21aux1-22 の新鮮な種子は野生型よりも僅かに発芽が遅延した。この表現型は休眠打破処理をした種子では見られなくなることから、AUX1は種子の休眠を弱く調節していることが示唆される。種子で高い転写活性を示す12Sプロモーター制御下でAUX1 を発現させた形質転換体(12Spro::AUX1 )の休眠打破処理をした種子は幼根の突出が野生型よりも促進され、snl1 snl2 二重変異体にaux1-21 変異を導入すると発芽速度が野生型と同程度に戻った。これらの結果から、AUX1はSNL1、SNL2の下流での発芽速度の制御において重要な役割を演じていると思われる。AUX1 過剰発現系統の種子は内生オーキシン量が高く、幼根でのDR5::GUS の発現も高くなっていた。よって、AUX1は、オーキシンを輸送して幼根部分のオーキシン蓄積を調節することで幼根の成長と種子発芽に関与しているものと思われる。種子の発芽が進むにつれて幼根にAUX1タンパク質が蓄積していくが、snl1 snl2 二重変異体での蓄積量は野生型よりも多くなっていた。このことから、AUX1はsnl1 snl2 二重変異体の発芽速度を促進していることが示唆される。snl1 snl2 二重変異体は、AUX1 遺伝子のC末端コード領域、PIN2 遺伝子、CYP79B2 遺伝子のプロモーター領域のアセチル化の程度が野生型よりも高く、これらの遺伝子領域とSNL1は相互作用をすることが確認された。これらの結果から、snl1 snl2 二重変異体でのAUX1 遺伝子や他のオーキシン関連遺伝子の発現量の増加は、SNL1、SNL2の機能喪失によるヒストンH3K9K18のアセチル化の増加と強く関連していることが示唆される。12Spro::AUX1 形質転換体やsnl1 snl2 二重変異体は幼根の細胞数が野生型よりも多く、4Cや8Cの核が多くなっていた。また、サイクリンD1;1(CYCD1;1 )やCYCD4;1 の転写産物量が野生型よりも多くなっていた。12Spro::AUX1 形質転換体にCYCD4;1 の機能喪失変異を導入すると発芽速度が野生型と同程度になることから、CYCD1;1CYCD4;1 は幼根の成長に対してAUX1やSNL1/SNL2の下流において重要な役割を演じていることが示唆される。以上の結果から、SNL-HDA19ヒストン脱アセチル化複合体は、オーキシン関連遺伝子のヒストンを脱アセチル化して発現抑制することで種子発芽を抑制しており、AUX1はSNL1/SNL2の下流において種子発芽を制御する重要な因子であることが示唆される。

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論文)サイトカイニンによる根の伸長制御

2016-11-24 05:04:43 | 読んだ論文備忘録

Cytokinin acts through the auxin influx carrier AUX1 to regulate cell elongation in the root
Street et al. Development (2016) 143:3982-3993.

doi: 10.1242/dev.132035

サイトカイニンは主根の成長を細胞の分裂と伸長の両方を阻害することで制御しており、このサイトカイニンシグナルの伝達にはタイプB レスポンスレギュレーターのARR1、ARR10、ARR12が関与している。これらの因子は機能重複しており、単独の機能喪失変異体では表現型は殆ど変化しないが、aar1 arr12 二重変異体はサイトカイニン処理をしても主根の伸長阻害が起こらない。米国 ダートマス大学Schaller らは、サイトカイニンによる根の成長制御に関与する他の因子を同定するために、変異原(EMS)処理したarr1 変異体、arr12 変異体の集団からサイトカイニン(6-BA)処理をしても根の伸長阻害が起こらない変異体を単離し、それらをenhancer of response regulatorerr )と命名した。そしてこのうちのerr3 変異体について詳細な解析を行なった。err3-1 単独変異体は部分的なサイトカイニン非感受性を示すが、arr12 変異、arr1 arr12 二重変異が加わることで非感受性が強くなった。err3-1 変異体は重力屈性が低下しており、このことからオーキシン流入キャリアをコードするAUX1 に変異があるのではないかと考えて調査したところ、err3-1 変異体のAUX1 遺伝子のコード領域にはPro371Leuミスセンス変異が存在することを見出した。また、err3-2 変異体ではAUX1 遺伝子にGly374Ser変異が見られた。err3-1 変異、err3-2 変異は共にAUX1の第9-第10膜貫通ドメインの間の細胞外ループのアミノ酸置換変異であり、この領域はシロイヌナズナ アミノ酸/オーキシンパーミアーゼスーパーファミリーにおいて高度に保存されている。AUX1 の機能喪失変異体aux1-21err3-1 変異体と同様にサイトカイニンに対して非感受性であった。よって、err3-1err3-2AUX1 の対立遺伝子であり、それぞれをaux1-121aux1-122 と命名した。AUX1は4つのAUX/LAXオーキシン流入キャリアファミリーのうちの1つであり、他の3つのキャリアの機能喪失変異体lax1lax2lax3 のサイトカイニン応答性は野生型と同等であった。また、aux1-21 lax1 lax2 lax3 四重変異体のサイトカイニン応答性はaux1 単独変異体と同等であった。これらの結果から、AUX1はサイトカイニンによる根の成長を正に制御しており、他のファミリーとはこの点に関して機能重複していないことが示唆される。サイトカイニンは根端分裂組織での細胞分裂と伸長帯での細胞伸長に影響を及ぼすことで根の成長を制御しており、arr1 arr12 二重変異体は細胞分裂と細胞伸長の両方がサイトカイニン非感受性を示す。aux1-121 単独変異体はサイトカイニンの有無に関係なく根端分裂組織の大きさが野生型と同等であり、arr1 arr12 変異を導入しても分裂組織の大きさに相加的な効果は見られなかった。したがって、根端分裂組織の細胞分裂は、AUX1ではなくタイプB ARRが制御していることが示唆される。aux1-121 変異体、aux1-121 arr12 変異体、aux1-121 arr1 arr12 変異体は、全て伸長帯の細胞伸長においてサイトカイニン非感受性であり、このことから、AUX1はサイトカイニンによる細胞伸長の制御において重要な役割があると考えられる。AUX1 はエチレンによる根の伸長阻害に関与しており、サイトカイニンはエチレン生合成を促進している。エチレン非感受性変異体ein2-5 はサイトカイニンによる伸長阻害を抑制したが、aux1 変異体が完全に伸長阻害を抑制することと比較するとein2-5 変異体の抑制の程度は弱かった。したがって、サイトカイニンはエチレンに依存した機構と依存しない機構によって根の細胞伸長を阻害しており、2つの機構においてAUX1は重要な因子として機能していることが示唆される。aux1 変異体ではタイプB ARRのうちのARR10 の発現量が低下しており、オーキシン(NAA)処理によってこの減少は回復した。ARR10 の発現はサイトカイニン処理によって減少し、この減少はaux1 変異体においても観察された。したがって、オーキシンがARR10 の発現を正に制御し、逆にサイトカイニンがARR10 の発現を抑制する調節機能が存在すると考えられる。DR5:GFP オーキシンレポーターを導入した野生型植物をサイトカイニン処理すると根冠近傍の表皮細胞でDR5:GFP 活性が増加するが、arr1 arr12 変異体とaux1 変異体ではそのような増加は観察されなかった。したがって、根の表皮細胞でのサイトカイニンによるオーキシン活性の誘導はタイプB ARRとAUX1の両方に依存していると考えられる。ChIP-qPCRアッセイからARR12はAUX1 遺伝子の第8イントロンに結合することが確認された。よって、サイトカイニンはタイプB ARRの直接の作用を介してAUX1 の発現を抑制し、オーキシン活性の制御に関与していると考えられる。以上の結果から、サイトカイニンによる根の伸長阻害にはオーキシン排出キャリアのAUX1が関与していると考えられる。

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論文)WRKY転写因子による花成制御

2016-11-16 20:39:36 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis WRKY Transcription Factors WRKY12 and WRKY13 Oppositely Regulate Flowering under Short-Day Conditions
Li et al. Molecular Plant (2016) 9:1492-1503.
DOI: 10.1016/j.molp.2016.08.003

中国科学院 シーサンパンナ熱帯植物園Yu らは、WRKY転写因子の成長過程での役割を解析するために、シロイヌナズナのWRKY 遺伝子T-DNA挿入変異体の表現型を解析し、wrky12 変異体とwrky13 変異体は花成時期が変化していることを見出した。両変異体は長日条件下での花成時期は野生型と同等だが、短日条件下では、wrky12 変異体は花成が遅延し、wrky13 変異体は花成が促進した。また、WRKY12 を過剰発現させた系統は花成が早まり、WRKY13 を過剰発現させた系統は花成が遅延した。これらの結果から、WRKY12とWRKY13は短日条件下での花成時期の制御において正反対の機能を有していることが示唆される。WRKY12WRKY13 の発現を植物体の成長を追って追跡すると、WRKY12 の発現は徐々に増加していくのに対して、WRKY13 の発現は減少していった。両者は主に葉の維管束走行で発現しており、花成前後の分裂組織においても発現が見られた。花成を制御しているMADS box遺伝子FRUTIFULL (FUL )とSUPPRESSOR OF OVEREXPRESSION OF CONSTANSSOC1 )の両変異体での発現量を見たところ、花成の表現型と一致して、wrky12 変異体ではFULSOC1 の発現量が低く、wrky13 変異体では高くなっていた。また、WRKY12 過剰発現個体ではFULSOC1 の発現量が高く、WRKY13 過剰発現個体では発現が抑制されていた。花成制御に関与しているLEAFYLFY )遺伝子の発現はwrky 変異体と野生型で差異は見られなかった。よって、WRKYはMADS box遺伝子を介して花成を制御していると考えられる。WRKY転写因子はW-boxエレメントに特異的に結合することが知られている。クロマチン免疫沈降(ChIP)解析から、WRKY12とWRKY13はFUL 遺伝子プロモーター領域のW-boxに結合することが確認された。興味深いことに、W-boxはWRKY12 遺伝子、WRKY13 遺伝子のプロモーター領域にも存在しており、WRKY12は自身の遺伝子およびWRKY13 遺伝子のプロモーター領域に結合し、WRKY13はWRKY12 遺伝子のプロモーター領域に結合した。したがって、WRKY12 遺伝子とWRKY13 遺伝子の間にはフィードバック制御ループが存在すると考えられる。WRKY12、WRKY13はSOC1 遺伝子とLFY 遺伝子のプロモーターには結合しなかった。FUL を過剰発現させたwrky12 変異体および野生型植物は短日条件下での花成が促進され、wrky12 変異体の花成遅延表現型が回復した。また、WRKY13 過剰発現個体でFUL を過剰発現させることで、FUL 過剰発現個体と同程度に花成が促進された。これらの結果から、FUL はWRKY12、WRKY13の直接のターゲットであることが示唆される。WRKY12、WRKY13と相互作用をする因子を酵母two-hybrid系で探索したところ、DELLAタンパク質のGIBBERELLIN INSENSITIVE(GAI)およびRGA-LIKE1(RGL1)をコードするクローンが単離された。BiFCアッセイやCoIPアッセイからWRKY12、WRKY13とGAI、RGL1は生体内の核で複合体を形成することが確認され、他のDELLAタンパク質RGA、RGL2、RGL3とは複合体形成しないことが判った。WRKY12、WRKY13とDELLAタンパク質との相互作用がFUL の発現に与える影響を見るために、FUL プロモーター制御下でGUS を発現するレポーターを用いた一過的発現解析を行なった。その結果、WRKY12はGUS の発現を誘導し、WRKY13は抑制するが、GAI を同時に発現させることでそれらの効果が弱まることが判った。よって、GAIとWRKYとの相互作用はWRKYの転写因子としての活性を妨げていると考えられる。ジベレリン(GA)は花成を促進する効果があるが、wrky12 変異体をGA処理しても花成促進の程度は野生型よりも低く、wrky13 変異体では野生型よりも促進効果が強く現れた。また、野生型植物をGA処理するとWRKY12 の発現が誘導され、WRKY13 の発現は抑制された。これらの結果から、WRKY12、WRKY13は短日条件下でのGAによる花成誘導に部分的に関与していると考えられる。

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論文)活性酸素種による重力屈性と水分屈性の制御

2016-11-11 22:02:52 | 読んだ論文備忘録

Reactive Oxygen Species Tune Root Tropic Responses
Krieger et al. Plant Phsiology (2016) 172:1209-1220.

doi:10.1104/pp.16.00660

植物の根の成長パターンは、基本的には重力に支配されているが、他にも様々な化学的、物理的刺激を受容し、それに応答している。イスラエル テルアビブ大学Fromm らは、以前に、根が水ポテンシャルの高い方へ屈曲する水分屈性ではオーキシン分布の変化は起こらず、オーキシン極性輸送阻害剤やオーキシンシグナル伝達の拮抗物質を処理することによって屈曲が促進されることを見出した。この結果は、重力屈性と水分屈性は競合もしくは干渉関係にあることを示している。今回、屈曲応答における活性酸素種(ROS)の役割に着目して解析を行なった。寒天上で育成したシロイヌナズナ芽生えを90度回転させて重力刺激し、ジヒドロローダミン-123(DHR)を添加してROSの分布変化を追跡した。刺激を与える前では、コルメラ、側根の根冠、伸長帯(EZ)の表皮、維管束走向が染色され、根端メリステムも弱く染色された。刺激を与えて1-2時間後にROSの非対称分布が生じ、屈曲が生じる先端部伸長帯(DEZ)の凹(下)側の表皮が濃く染まった。そしてこのROSの非対称分布は刺激を与えて4時間後には消失した。水分勾配をつけた条件で芽生えを育成すると、根は重力刺激を与えた際に屈曲した部分よりも根端から離れた領域で屈曲した。そこで、この水分屈性を起こす領域を中央部伸長帯(CEZ)と命名した。水分刺激による屈曲ではCEZでもDEZでもROSの非対称分布は生じなかった。アスコルビン酸等の抗酸化剤処理によって重力屈性は阻害されるが、水分屈性は促進された。細胞質型アスコルビン酸ペルオキシダーゼの変異体apx1-2 の芽生えは野生型よりも水分屈性が低下していた。これらの結果から、細胞質の過酸化水素を除去する能力が低下すると水分屈性が阻害されることが示唆される。ROSの生成に関与するNADPHオキシダーゼの阻害剤であるジフェニレンヨードニウム(DPI)は水分屈性を促進し、重力屈性を抑制した。また、DPI添加時の水分屈性の屈曲は通常よりも根端に近い領域で起こった。シロイヌナズナでは植物NADPHオキシダーゼのRBOHが10種類存在し、発現の組織特異性から3つのクラスに分類されている。原根毛や伸長帯の表皮で発現しているRBOH Cの変異体rbohC の芽生えは、根の過酸化水素量が減少し、水分屈性が促進された。また、植物組織全体で発現し、主に茎や葉での発現が強く、ROSの全身性シグナル伝達に関与しているRBOH Dの変異体rbohD の芽生えは、根の過酸化水素料に変化が見られず、水分屈性と根の成長は野生型と同等であった。水分屈性と重力屈性の関係を双方の刺激を組合せて与えることで調査したところ、2時間水分刺激を与えた後に1時間重力刺激を与えるとEZ屈曲部でのROSの非対称分布を生じたが、3時間水分刺激を与えた後ではROSの非対称分布は弱まり、4時間与えた後ではROSの非対称分布は形成されず重力刺激に応答した屈曲も起こらなくなった。したがって、水分刺激による屈曲が促進されるにつれて重力刺激によるROSの非対称分布の誘導が十分にできなくなり、水ポテンシャルの高い方向への成長が優先されると考えられる。この時のオーキシンの分布をDⅡ-VENUSを発現する芽生えで調査したところ、水分刺激を長く与えることで重力刺激に応答した根端部のオーキシンの非対称分布の形成も妨げられることがわかった。よって、水分刺激はオーキシン非対称分布を妨げることで重力屈性のROSシグナルを低下させていることが示唆される。以上の結果から、活性酸素種は根の重力屈性を促進し水分屈性を負に制御しており、根が水分刺激に応答して成長する際には重力屈性を誘導するオーキシンや活性酸素種のシグナルを抑えて重力刺激に応答した成長を克服していると考えられる。

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論文)デンプン粒合成に関与する酵素

2016-11-05 07:54:04 | 読んだ論文備忘録

Degradation of Glucan Primers in the Absence of Starch Synthase 4 Disrupts Starch Granule Initiation in Arabidopsis
Seung et al. Journal of Biological Chemistry (2016) 291:20718-20728.

doi: 10.1074/jbc.M116.730648

シロイヌナズナの葉緑体は5~7個のデンプン粒を含んでいる。しかしながら、デンプン粒合成がどのようにして開始され、デンプン粒の数を決めている要因が何であるかは明らかとなっていない。デンプン合成酵素4(SS4)が機能喪失したシロイヌナズナ変異体の葉緑体はデンプン粒が1~2個に減少することから、SS4はデンプン粒合成の開始に関与していると考えられている。他のSSの変異体ではデンプン粒数に変化は見られず、ss1 ss2 ss3 三重変異体でもデンプン粒数に変化は見られない。しかし、ss3 ss4 二重変異体は完全にデンプン粒が消失することから、SS3もデンプン粒合成の開始に幾分かは関与しているものと思われる。スイス チューリッヒ工科大学Zeeman らは、デンプン粒合成の開始におけるデンプン分解酵素の関与を調査し、ss4 変異体やss3 ss4 変異体ではα-アミラーゼのAMY3タンパク質が大きく減少していることを見出した。ss4 変異体、ss3 ss4 変異体ともAMY3 遺伝子の転写物量や転写産物量の日変化は野生型と同等であることから、これらの変異体でのAMY3タンパク質の減少は転写後に生じているものと思われる。ss4 変異体は若い葉よりも古い葉でデンプンを多く蓄積しているが、両者のAMY3タンパク質量に差は見られなかった。これらの結果から、SS4の機能喪失はAMY3タンパク質の量を変化させることで、AMY3活性を低下させていることが示唆される。ss4 変異体は成長が野生型よりも遅く、葉色が淡い。ss3 ss4 二重変異体は成長が著しく悪く、葉色はss4 変異体よりも淡い。一方、amy3 変異体の表現型は野生型と同等である。amy3 ss4 二重変異体は、ss4 変異体のように葉色が淡くならず、ロゼット葉はss4 変異体よりも大きく、野生型やamy3 変異体よりもやや小さくなった。amy3 ss3 ss4 三重変異体は野生型よりも成長が悪化したが、ss3 ss4 変異体よりは大きく、葉色も濃かった。よって、AMY3の変異はss4 変異体やss3 ss4 変異体の成長や形態に関する表現型を部分的に抑制しているといえる。植物体のデンプン量をヨード染色によって調査すると、野生型とamy3 変異体で染色パターンに違いは見られなかった。ss4 変異体は若い葉よりも古い葉が濃く染色された。amy3 ss4 二重変異体は野生型と同じように染色されたが、amy3 ss3 ss4 三重変異体は染色が薄く、ss3 ss4 二重変異体は全く染色されなかった。デンプン量の日変化を見たところ、日中の終わりのss4 変異体のデンプン量は野生型の70%程度であったが、夜間の終わりの時点でのデンプン量は野生型よりも多くなっていた。amy3 ss4 二重変異体は、何れの時間帯においても、ss4 変異体や野生型よりもデンプン含量が高くなっていた。したがって、AMY3の機能喪失はss4 変異体のデンプン含量を高めており、AMY3は変異体での澱粉蓄積を抑制していることが示唆される。デンプン合成の基質であるADP-グルコースの蓄積量を見ると、ss3 ss4 二重変異体の蓄積量が最も高く、野生型やamy3 変異体の蓄積量は極僅かであった。amy3 ss4 二重変異体の蓄積量はss4 変異体よりも低くなっていた。amy3 ss3 ss4 三重変異体はss3 ss4 二重変異体よりも成長が改善されるが、両者のADP-グルコース蓄積量は同程度であった。全体的にはADP-グルコース含量と成長量の間には強い負の相関が見られた。葉緑体内のデンプン粒を詳細に観察すると、野生型では扁平なデンプン粒が複数観察され、その数は若い葉と古い葉で違いは見られないが、ss4 変異体では円形のデンプン粒がゼロもしくは1つ、希に2個見られ、デンプン粒の無い葉緑体は若い葉において多く観察された。amy3 ss4 二重変異体では、小さな円形のデンプン粒が多数見られ、ss4 変異体で観察されたような大きな円形のデンプン粒も幾つか観察された。ss3 ss4 二重変異体の葉緑体はデンプン粒を含んでいないが、amy3 ss3 ss4 三重変異体は小さな円形のデンプン粒を多数含んでおり、幾つかの大きなデンプン粒も観察された。amy3 変異体、amy3 ss3 二重変異体のデンプン粒は野生型との大きな違いは見られなかった。以上の結果から、AMY3はデンプン粒合成の開始を妨げ、SS3とSS4はデンプン粒合成の開始を誘導していると考えられる。

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論文)強光による花成促進機構

2016-10-30 10:56:11 | 読んだ論文備忘録

Chloroplast retrograde signal regulates flowering
Feng et al. PNAS (2016) 113:10708-10713.

doi: 10.1073/pnas.1521599113

光は花成を制御する重要な環境要因の1つであり、光強度も重要な因子となっている。シロイヌナズナをはじめ多くの高等植物は強光に応答して栄養成長が進み、生殖成長への移行が早まるが、その機構は明らかとなっていない。中国科学院植物研究所のZhang らは、シロイヌナズナの57の野生系統を異なる光強度で育成した場合の花成時期を調査し、殆どの系統が強光条件で花成時期が早まるのに対して、Landsberg erecta (Ler )、Da(1)-12、ShakdaraといったFLC 遺伝子が機能していない系統では強光による花成促進が起こらないことを見出した。このことから、強光が誘導する花成はFLC 活性が関与していることが推測される。そこで、flc-3 機能喪失変異体の花成を調査したところ、この変異体は強光処理による花成時期の変化を示さなかった。また、flc-3 変異体でFLC 遺伝子を自身のプロモーター制御下で発現させると強光に対する応答性を示した。FLC 発現量の高いFRI-Colは、低温春化処理をしてFLC の転写を抑制した場合のみ強光応答性を示し、Col-0を強光処理をすることでFLC の転写産物量が減少した。これらのことから、強光はFLC の転写抑制を介して花成を促進していることが示唆される。葉緑体包膜に結合しているPHD型転写因子のPTM(PHD type transcription factor with transmembrane domains)は、強光シグナルを伝達して光合成やストレス応答遺伝子の発現を制御している。ptm 変異体は強光処理による花成促進が殆ど見られず、FLC 発現量の変化も僅かであった。ptm flc-3 二重変異体の花成時期はflc-3 変異体と同程度であり、強光に応答した花成時期変化は起こらなかった。これらの結果から、PTM から発せられるプラスチドのシグナルがFLC の発現を抑制して強光による花成促進をもたらしていると考えられる。主要な光合成産物の1つである糖は、強光条件で蓄積して花成制御に関与しているが、強光処理によるショ糖の蓄積やショ糖添加に対する花成応答において野生型とflc-3 変異体の間で差が見られないことから、FLC を介した強光による花成制御には糖生産の増加は関与していないと考えられる。PTMタンパク質は強光を受けるとタンパク質分子が切断され、58-kDa N末端領域(N-PTM)が核に蓄積する。N-PTMは、FLC 遺伝子プロモーター領域の転写開始点に近い39 bpの領域に結合することが各種アッセイから確認され、この結合はFLC クレイドの他の遺伝子のプロモーターでは見られないFLC 遺伝子に特異的なものであった。デュアルルシフェラーゼアッセイの結果から、N-PTMはFLC 遺伝子の特定領域に結合することで遺伝子発現を抑制することが判った。PHD-タイプの転写因子はヒストン修飾によって遺伝子発現を制御しているとされている。FLC 染色体では活性ヒストン示すH3acやH3K4me3が強光処理によって減少した。一方、抑制ヒストンを示すH3K27me3は殆ど変化しなかった。さらに、強光処理によるH3acやH3K4me3量の減少はptm 変異体では殆ど減少しなかった。強光処理によるH3ac、H3K4me3、H3K27me3の全体的な変化は、野生型もptm 変異体も明確には見られないことから、PTMは強光応答に際して一部の遺伝子のみをターゲットとしていると考えられる。これらの結果から、強光はPTMの作用によってFLC 染色体のH3acやH3K4me3の量を制御することでFCL 遺伝子をサイレンシングしていることが示唆される。PHD型転写因子はクロマチン再構成タンパク質と結合してヒストン修飾を行なうとされている。各種アッセイから、PTMは、FLC の抑制を介して花成を促進することが知られているFVEと相互作用をすることが判った。fve-3 変異体は、ptm 変異体と同様に、強光処理による花成促進が見られなかった。ptm fve-3 二重変異体はptm 単独変異体よりも花成が遅延するが、花成時期はfve-3 単独変異体と同程度であり、相加的な効果は見られなかった。PTM を恒常的に発現させると花成が促進されるが、fve-3 変異体でPTM を発現させても花成促進は起こらなかった。これらの結果から、PTMFVE に依存して花成を制御しているものと思われる。共免疫沈降アッセイの結果、FVEはN-PTMと相互作用をし、複合体の量は光照射量が増えるにつれて増加することが判った。光照射量の増加に伴ってFVEのFLC 遺伝子プロモーター領域への結合量は増加したが、この増加はptm 変異体では見られなかった。したがって、強光下でのFLC 染色体へのFVEの蓄積にはPTMが関与していると考えられる。以上の結果から、強光による花成促進は、葉緑体から逆行シグナルとして放出されたN-PTMとFVEとの複合体がFLC 染色体を修飾してFLC の発現を抑制することでなされると考えられる。

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論文)サイトカイニントランスポーターによる形態形成制御

2016-10-23 10:52:14 | 読んだ論文備忘録

Plant development regulated by cytokinin sinks
Zürcher et al. Science (2016) 353:1027-1030.

DOI: 10.1126/science.aaf7254

サイトカイニンは植物の形態形成を制御する植物ホルモンで、それぞれの器官においてサイトカイニン応答が時空間的に異なることで形態形成が制御されているが、その詳細については明らかとなっていない。スイス チューリッヒ大学Müller らは、シロイヌナズナ心臓型胚のサイトカイニン応答性を調査した。合成サイトカイニンレポーターTCSn::GFP は心臓型胚において前形成層で発現しているが、胚をベンジルアデニン(BA)処理をしても将来子葉となる組織では、サイトカイニン受容体ARABIBOPSIS HISTIDINE KINASE 4AHK4 )が発現しているにも関わらず、レポーターの発現が見られなかった。そこで、受容体よりも下流のシグナルが機能しているかを調べるために、サイトカイニンとは独立して恒常的に活性を示すCYTOKININ INDEPENDENT 1CKI1 )を発現させたところ、胚全体でレポーターが発現した。したがって、子葉組織の細胞は、サイトカイニンシグナル伝達系は機能しているが、サイトカイニンを添加してもシグナル伝達が起こらないと考えられる。この原因はサイトカイニントランスポーターがもたらすサイトカイニンの細胞分布の差異によるのではないかと考え、シロイヌナズナPURINE PERMIASE(PUP)ファミリーのPUP14に注目して解析を行なった。その結果、心臓型胚においてPUP14は子葉組織のようにサイトカイニンに応答していない細胞に局在していることが判った。誘導性のプロモーターでPUP14 をターゲットとした人工マイクロRNA(amiRPUP14)を発現させたところ、サイトカイニンレポーターが異所的に拡散して発現し、サイトカイニン応答を示さない子葉組織においてもレポーターの発現が見られた。このことから、PUP14はサイトカイニン応答を制限する機能を有していると考えられる。また、amiRPUP14 を発現誘導させた胚では子葉組織や発生初期の根に形態異常が生じており、これは異所的なサイトカイニン応答によるものであると考えられる。PUP14 を過剰発現させた胚は内生サイトカイニンに対する応答性が低下し、胚の形態も異常になった。PUP14 は芽生え主根の分裂組織領域、側根原基、胚珠、種子で発現していた。amiRPUP14 を発現誘導させた芽生えの根では、サイトカイニンレポーターの異所的な発現が見られ、サイトカイニンターゲット遺伝子であるタイプA ARABIDOPSIS RESPONSE REGULATOR 5ARR5 )、ARR6ARR7 の発現が誘導されていた。amiRPUP14 を恒常的に発現誘導すると芽生えのシュートと根の成長が遅延し、側根形成が抑制された。サイトカイニンは茎頂分裂組織(SAM)の恒常性を制御しており、サイトカイニン量が増加すると分裂組織が活性化される。SAMでのPUP14 の発現は、サイトカイニンレポーターの発現と負の相関関係にあった。成熟個体でamiRPUP14 を発現誘導するとSAMにおいてサイトカイニンシグナルが異所的に発生し、花原基の増加、分枝の増加、葉序の異常が生じた。したがって、PUP14は植物の発達過程において形態形成を正常にするためにサイトカイニン応答を制限していると考えられる。PUP14 を一過的に発現させたプロトプラストやミクロソームでは、標識したトランスゼアチン(tZ)の取込みが促進されていた。この取込みは、一般的な天然サイトカイニンのイソペンテニルアデニン(iP)、合成サイトカイニンのBA、またアデニンによっても阻害された。しかしながら、主要なサイトカイニン輸送型であるtZリボシドやサイトカイニン以外の物質(オーキシン、アラントイン)では阻害されなかった。これらの結果から、細胞膜に局在するPUP14は、生物活性のあるサイトカイニンを細胞質に取込み、アポプラストからサイトカイニンを枯渇させることでサイトカイニン応答の抑制を引き起こしていると考えられる。そしてこのことから、細胞外のサイトカイニンが細胞膜に局在する受容体と結合してシグナル伝達が開始され、細胞質は活性型サイトカイニンのシンクとなっているという仮説が考えられる。この仮説を検証するために、サイトカイニン分解酵素CKX2を分泌するプロトプラストのサイトカイニンレポーターの発現を見たところ、tZによるサイトカイニン応答は減少したが、CKX2によって分解されないBAの応答には変化が見られなかった。また、細胞質局在するCKX2を発現させた場合にはサイトカイニン応答に変化は見られなかった。このことから、アポプラストのサイトカイニンがシグナル伝達を引き起こし、細胞質のサイトカイニンはシグナル活性がないことが示唆される。以上の結果から、PUP14はサイトカイニンをアポプラストから細胞質に取込んで細胞膜に局在するサイトカイニン受容体の受容ドメインから離すことでサイトカイニンシグナルの低下を引き起こしていると考えられる。したがって、PUP14活性は細胞のサイトカイニン感受性と負の相関があり、PUP14の時空間的な活性が組織特異的にサイトカイニンシグナルを制御していると考えられる。

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論文)食植者の食害に対するオーキシンの役割

2016-10-19 22:50:28 | 読んだ論文備忘録

Auxin Is Rapidly Induced by Herbivore Attack and Regulates a Subset of Systemic, Jasmonate-Dependent Defenses
Machado et al. Plant Physiology (2016) 172:521-532.

doi:10.1104/pp.16.00940

食植者による食害に対する植物の防御応答は植物ホルモンネットワークによって制御されている。特にジャスモン酸(JA)は主要な制御因子であり、他にもサリチル酸、アブシジン酸、エチレンといったストレス応答ホルモンも重要な役割を演じている。しかしながら、この過程におけるオーキシンの役割は十分理解されていない。スイス ベルン大学Erb らは、野生タバコ(Nicotiana attenuata )がタバコスズメガ(Manduca sexta )幼虫による食害を受けた3時間後に内生インドール-3‐酢酸(IAA)量が増加していることを見出した。このIAA量の増加は、傷つけた葉にタバコスズメガの口内分泌物を添加(W+OS)もしくは傷に食植者に対するエリシターとして機能する脂肪酸-アミノ酸結合体N-linolenoyl-Gluを添加(W+FAC)することによっても起こった。食植者によって誘導されるIAAの蓄積は、食害を受けてから30-60秒後には誘導され、IAA量は2-3倍増加した。W+OS処理によりIAA量は局所的に速やかに増加し、その後一過的に徐々に処理をしてない全身の地上部組織へ広がったが、根では有意な変化は見られなかった。食害によるIAA量の増加は若いロゼットでも開花期の個体でも見られ、植物体の齡に関係なく起こった。IAA生合成遺伝子であるYUCCA-like 遺伝子のうちの幾つかは食害によって発現量が増加した。食害に応答したIAA量の増加は5分後には最大となり、JA量の増加に先行していた。食害に応答したIAA量の増加は、JAの生合成、受容、シグナル伝達が低下した形質転換体でも見られることから、この過程にジャスモン酸シグナルは関与していないと考えられる。タバコスズメガの食害を受けたタバコの茎はアントシアニンが蓄積して赤く変色する。この現象はW+OS処理をしても再現されたが、傷害だけではアントシアニンは蓄積されなかった。IAAもしくはMeJAのみを添加してもアントシアニンの蓄積は起こらないが、両者を同時に与えると蓄積した。また、IAAの生合成や輸送の阻害剤を添加したり、JA生合成が低下した形質転換体ではW+OS処理によるアントシアニン蓄積が見られなかった。防御二次代謝産物の蓄積におけるIAAの効果を見るために、食害やそれを模した処理、MeJA処理をする前に予め葉柄部分にIAAを添加しておくと、処理に応答したカフェオイルプトレシンやジカフェオイルスペルミジンの蓄積が劇的に増加した。一方、ニコチンや7‐ヒドロキシゲラニルリナロールジテルペングルコシドはIAA前処理による蓄積量変化は見られなかった。したがって、IAAは単純にJAシグナル伝達を強めているのではなく、植物の防御ネットワークの特異的な調節を行なっているものと思われる。以上の結果から、IAAは、食害を受けた植物において、全身的でジャスモン酸に依存した二次代謝を制御する急速かつ特異的なシグナルとして機能していると考えられる。

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論文)細胞内オーキシン輸送の制御

2016-10-12 20:57:05 | 読んだ論文備忘録

Interactions of Oryza sativa OsCONTINUOUS VASCULAR RING-LIKE 1 (OsCOLE1) and OsCOLE1-INTERACTING PROTEIN reveal a novel intracellular auxin transport mechanism
Liu et al. New Phytologist (2016) 212:96-107.

DOI: 10.1111/nph.14021

中国農業科学院Wang らは、イネRNAiライブラリーから草丈の低い矮化変異体を単離した。この変異体はLOC_Os05g45280 がサイレンシングされており、BLAST検索の結果、この遺伝子はシロイヌナズナAtCOV1 (At2g20120)のホモログであることが示されたので、OsCOV-LIKE 1OsCOLE1 )と命名した。この遺伝子の発現抑制個体OsCOLE1-RNAi および過剰発現個体OsCOLE1-OE の実生にオーキシン(NAA)処理をしたところ、対照と過剰発現個体では葉鞘と根の接合部にカルスが形成されたが、発現抑制個体では形成されなかった。また、登熟期の植物体を比較すると、発現抑制個体は対照よりも第2、第3節間が短いために草丈が低く、過剰発現個体は第1、第2節間が対照よりも長く、草丈が高くなっていた。成熟期の第2節間の細胞の長さを比較すると、発現抑制個体は対照よりも短く、過剰発現個体は対照よりも長くなっていた。よって、OsCOLE1は細胞の大きさに関与することでイネの幹長を制御していると考えられる。登熟期の幹基部のオーキシン量を見ると、発現抑制個体は対照よりも減少しており、過剰発現個体では増加していた。よって、OsCOLE1 は幹基部のオーキシン含量の制御に関与しており、基部のオーキシン含量が細胞の大きさを制御していることが示唆される。OsCOLE1 をタバコで過剰発現させたところ、茎頂の成長が強く抑制され、茎頂近傍で側枝が発達した。よって、OsCOLE1 はオーキシン関連経路に関与して植物の成長を制御していると考えられる。解析ツール(TMHMM、PROTTER)によると、OsCOLE1タンパク質は2つの膜貫通ヘリックスを含んでおり、N末端とC末端は細胞質側にあると推測された。そこで、OsCOLE1にmCherryを付加した融合タンパク質を発現させて細胞内局在を確認したところ、OsCOLE1はトノプラストに局在していることがわかった。OsCOLE1 は様々な組織で発現しており、特に成熟した細胞での発現が強くなっていた。COV1の機能は不明だが、他のタンパク質と相互作用をするのではないかと考え、酵母two-hybridスクリーニングを行ったところ、LOC_Os07g34110がOsCOLE1のN末端側と相互作用をすることが判った。LOC_Os07g34110 はEamA-likeトランスポーターファミリーに属する2つのドメインを含んだ膜内在性タンパク質をコードしていると考えられることから、本遺伝子をOsCOLE1-INTERACTING PROTEINOsCLIP )と命名した。バイオインフォマティックス解析から、OsCLIPは膜局在タンパク質で10個の膜貫通ドメインを含み、シロイヌナズナAtWAT1と類似性があった。AtWAT1はトノプラストに局在するオーキシントランスポーターで、二次細胞壁形成や病原菌に対する抵抗性に関与していることが報告されている。OsCLIPとOsCOLE1は、お互いのN末端側を介して相互作用をしており、トノプラストに局在することが確認された。OsCLIP およびOsCOLE1 を発現させた酵母を用いた試験から、OsCLIPは外部環境から酵母細胞内への標識されたインドール-3-酢酸(IAA)の取込みを促進することが確認された。よって、OsCLIPはトノプラストに局在するオーキシントランスポーターであると考えられる。また、OsCLIPOsCOLE1 を同時に発現させると、単独で発現させた場合よりもIAAの取込みが増加した。したがって、OsCOLE1はOsCLIPによるIAA輸送を促進していると考えられる。標識されたIAAの取込みは、標識していないIAA、インドール-3-酪酸(IBA)、NAAを添加することによって減少したが、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)の添加では阻害されなかった。以上の結果から、トノプラストに局在するOsCOLE1はOsCLIPと相互作用をしてOsCLIPによるIAA輸送を促進していると考えられる。

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植物観察)箱根

2016-09-25 21:33:06 | 植物観察記録

久しぶりに箱根へ行ってきました。しばらく雨が続いていましたが、今日は久しぶりに晴れました。山歩きは盛夏の頃に比べると気温がやや下がり幾分楽になりました。ただ、湿度が高い所為なのか、汗はいつも通りに激しくかいてしまいました。花も徐々に秋めいてきました。特に、林床のトリカブトを見るとそんな気持ちにさせてくれます。長雨の後であったからでしょうか、山道でアズマヒキガエルをよく見かけました。

今日見た主な花
イヌヤカハッカ、モミジガサ、トリカブト、ツルニンジン、ホトトギス、ツリフネソウ、シロヨメナ

 

トリカブト

 

ツルニンジン

 

アズマヒキガエル

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