Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)ブラシノステロイドによる温度形態形成の制御

2018-02-21 05:39:12 | 読んだ論文備忘録

Brassinosteroids Dominate Hormonal Regulation of Plant Thermomorphogenesis via BZR1
Ibañez et al. Current Biology (2018) 28:303-310.

doi:10.1016/j.cub.2017.11.077

植物は温度変化に応答して発生・成長を調節している。ドイツ マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルクQuint らは、以前に、温度上昇に応答した胚軸伸長を起こさないシロイヌナズナokapi1opi1 )変異体がDE-ETIOLATED 1DET1 )の新規アリルであることを見出した。そして、DET1はCONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENIC 1/SUPPRESSOR OF PHYA-105 1(COP1/SPA)E3ユビキチンリガーゼ複合体を介して温度形態形成を調節しており、COP1/SPAがELONGATEDHYPOCOTYL 5(HY5)によるPHYTOCHROME-INTERACTING FACTOR 4PIF4 )の転写抑制を解除することで成長促進が引き起こされることを明らかにした。今回、新たに温度誘導胚軸伸長を起こさないopi3 変異体とopi7 変異体について解析を行なった。マッピングの結果、opi3 はブラシノステロイド(BR)生合成酵素をコードするDWARF7DWF7 )/STEROL 1STE1 )/BOULE 1BUL1 )のノンシノニマス変異であり、opi7 はBR生合成に関与するP-450をコードするROTUNDIFOLIA 3ROT3 /CYP90C )のアミノ酸置換変異であることがわかった。したがって、温度形態形成ではBR生合成が重要であることが示唆される。opi3 変異体、opi7 変異体ともに、活性型BRのepi-ブラシノライド(BL)を添加することで温度誘導胚軸伸長が回復した。PIF4の機能喪失変異体は温度誘導胚軸伸長が抑制されているが、BLを添加することで胚軸伸長が野生型と同等にまで回復した。更に、PIF4 過剰発現系統やPIF4の抑制因子であるHY5やEARLY FLOWERING 3(ELF3)の機能喪失変異体に対してBR生合成阻害剤のプロピコナゾール(PPZ)を添加することで、これらの系統の胚軸伸長促進効果が強く現れる表現型が抑制された。したがって、BRは温度形態形成経路の一部としてPIF4の下流で機能していると考えられる。PIF4は温度上昇に応答してオーキシンの生合成遺伝子や応答遺伝子の発現を誘導していることが知られている。BRの生合成やシグナル伝達の変異体をオーキシン(ピクトラム)処理しても温度誘導胚軸伸長の回復は見られなかった。一方、オーキシンの生合成やシグナル伝達の変異体をBL処理することで温度誘導胚軸伸長が回復した。したがって、温度形態形成シグナル伝達においてBRはオーキシンの下流で作用していると考えられる。ジベレリン(GA)も温度形態形成にとって重要であり、DELLAリプレッサーがPIF4の活性を阻害している。ドミナントネガティブgai-1D DELLA 変異体にBLを添加することで温度誘導胚軸伸長が回復し、PPZ処理はdella 五重変異体の恒常的温度応答を抑制した。これらの結果から、温度形態形成におけるオーキシンやGAの機能はBRに依存していると考えられる。BRシグナル伝達因子であるBRASSINAZOLE-RESISTANT 1(BZR1)を過剰発現させた系統は温度上昇に対する感受性が高く、BZR1は温度形態形成の正の制御因子として機能していると考えられる。温度上昇によりBZR1 転写産物量もBZR1タンパク質量も変化しないが、BZR1タンパク質の核の局在量が増加しており、この局在変化はPPZ添加によって抑制された。BR生合成遺伝子は温度上昇によって発現量が増加すること、PIF4はBR生合成遺伝子に結合することから、BRはBZR1を核に局在させて細胞伸長に関与する遺伝子の発現を誘導することで温度形態形成において中心的な役割を演じているものと思われる。BZR1 過剰発現系統は温度上昇時にPIF4 の発現が強く誘導されること、BZR1はPIF4 遺伝子のプロモーター領域に結合することから、BRはBZR1を介してPIF4 の発現を正に制御し、増幅ループを形成していることが示唆される。以上の結果から、PIF4による温度形態形成において、ブラシノステロイドはPIF4やオーキシンの下流に位置してBZR1を介して伸長成長を調節していることが示唆される。そして、BZR1はPIF4 の転写を誘導してPIF4→オーキシン→BRカスケードの増幅ループを形成してPIF4による温度形態形成を促進させていると考えられる。

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論文)アブシジン酸受容体のリン酸化によるシグナル伝達の制御

2018-02-11 17:19:53 | 読んだ論文備忘録

Reciprocal Regulation of the TOR Kinase and ABA Receptor Balances Plant Growth and Stress Response
Wang et al. Molecular Cell (2018) 69:100-112.

DOI:10.1016/j.molcel.2017.12.002

PYR1/PYL/RCARファミリーはアブシジン酸受容体として機能している。中国 上海植物ストレス生物学研究センターZhu らは、シロイヌナズナ芽生えのPYL4はSer114がリン酸化されており、ABA処理した芽生えではリン酸化されていないことを見出した。また、PYL1もABA処理によってSer119のリン酸化か消失した。PYL1 Ser119やPYL4 Ser114はABA結合ポケットに位置しており、シロイヌナズナの14の全てのPYLで保存されているアミノ酸残基である。このPYLファミリーにおいて保存されているSer残基の役割を解明するために、Ser残基を他のアミノ酸に置換してレポーター遺伝子(RD29B::LUC )の一過的発現を見たところ、AlaやCys残基への置換ではABA処理によってレポーターが発現したが、擬似リン酸化させたAps残基への置換やLueやGluといった大きな側鎖のアミノ酸残基への置換ではレポーターの発現誘導が見られなかった。よって、保存されているSer残基のリン酸化はABA結合ポケットを変化させ、PYLの機能を負に制御していることが示唆される。ABA-PYL受容体複合体はPP2Cファミリータンパク質フォスファターゼ(ABI1、ABI2など)を阻害し、これによってSnRK2タンパク質キナーゼが活性化してターゲットタンパク質をリン酸化する。PYL1の保存されたSer残基のリン酸化はABAに依存したPP2Cの阻害を妨げた。また、PYLの保存されたSer残基の擬似リン酸化変異は、ABAに依存したPYR1、PYL1、PYL2、PYL3、PYL4とABI1との相互作用、ABAに依存しないPYL7、PYL9、PYL11、PYL12とABI1との相互作用を妨げた。PYLの保存されたSer残基のリン酸化はABAの結合を阻害し、ABAの受容とシグナル伝達に対して負に作用した。pry1pyl1pyl2pyl4 四重変異体でPYL1 もしくはSer残基をAlaに置換したPYL1 を発現させた形質転換体は、変異体のABA非感受性を相補したが、Ser残基をAspに置換したPYL1 を発現させた形質転換体はABA非感受性のままだった。したがって、擬似リン酸化変異したPYLはABA受容体として機能していない。PYLのSer残基をリン酸化するタンパク質キナーゼの探索を行ない、Target of Rapamycin(TOR)キナーゼが調査した全てのPYLをリン酸化することを見出した。また、TORキナーゼとATPの添加によってPYL1によるABAに依存したPP2Cのフォスファターゼ活性の阻害が抑制された。よって、TORキナーゼによるPYLのリン酸化はPYLによるPP2Cの阻害を抑制することが示唆される。TORキナーゼ活性が低下したraptor1-2 変異体ではPYL4のSer残基のリン酸化が見られないこと、生体内においてPYL1とTORが相互作用をしていることが確認され、これらの結果か、PYL ABA受容体は生体内でのTORキナーゼの基質であり、Ser残基がリン酸化のターゲットであることが示唆される。TOR RNAi系統やraptor1-2 変異体は野生型よりもABAに対する感受性が高く、ABA処理後のSnRK2活性が高くなっていた。同様に、TORキナーゼ阻害剤のラパマイシンやPP242を添加することでABAによるSnRK2活性誘導が強くなった。また、TORキナーゼを阻害することでストレス応答遺伝子の発現が誘導され、ストレス耐性が高まった。ABA処理は、TORによるPYL1やPYL4のリン酸化を低下させ、TORの基質の1つである40Sリボソームタンパク質S6キナーゼ1(S6K1)のThr449のリン酸化も低下させた。しかしながら、ABA処理によるS6K1 Thr残基のリン酸化の低下はsnrk2.2/3/6 三重変異体やpyr1pyl12458 六重変異体では見られなかった。これらの結果から、ABAによるTOR活性の阻害はABAシグナル伝達に依存していると考えられる。TOR複合体の調節因子であるRaptorBは様々なタンパク質キナーゼによってリン酸化され、このことによってTORの活性が制御される。酵母two-hybridアッセイの結果、RaptorBはSnRK2と相互作用をし、SnRK2.6がRaptorBをリン酸化することが確認された。よって、RaptorBはSnRK2の直接の基質となっている。ABA処理はSnRK2によるRaptorBのリン酸化を誘導し、RaptorBとTORとの相互作用を低下させた。これらの結果から、ABAによるSnRK2タンパク質キナーゼの活性化はRaptorBをリン酸化し、TOR複合体からRaptorBを解離させてTORキナーゼ活性を阻害すると考えられる。以上の結果から、TORキナーゼはABA受容体PYLの保存されたSer残基をリン酸化することでPYLのABA結合とPP2Cとの相互作用を阻害してストレス応答を抑制しており、ストレスやABAによって活性化されたSnRK2はRaptorBをリン酸化してTOR活性を阻害しストレス応答が起こると考えられる。したがって、ABAシグナルとTOR複合体はリン酸化による制御ループを形成して成長とストレス応答のバランスを調節していると考えられる。

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論文)イネマイクロRNA OsmiR396dによるジベレリンシグナルとブラシノステロイドシグナルの制御

2018-02-05 22:48:07 | 読んだ論文備忘録

OsmiR396d Affects Gibberellin and Brassinosteroid Signaling to Regulate Plant Architecture in Rice
Tang et al. Plant Physiology (2018) 176:946-959.

doi:10.1104/pp.17.00964

イネマイクロRNA OsmiR396は植物特異的転写因子のGROWTH REGULATION FACTORsOsGRFs )をターゲットとしており、GRF-miRNA396は様々な発生過程の制御に関与している。中国科学院 植物研究所のXu らは、OsMIR396d を過剰発現させた形質転換体(miROE)を作出し、miROE幼苗の第3葉は対照よりも葉身の屈曲角度が2倍大きいことを見出した。また、miROEの草丈は対照よりも2~3割低くなった。miROEで見られる葉身屈曲や半矮性の表現型はブラシノステロイド(BR)シグナルが強くなった際に見られる表現型と類似している。そこで、BR(24-eBL)添加による葉身屈曲をmiROEと対照で比較したところ、miROEはBRに対する感受性が高いことが判った。また、miROEの実生はBR処理による根の伸長抑制に対しても感受性が高くなっていた。これらの結果から、OsmiR396dはイネのBRシグナル伝達を正に制御しているものと思われる。qRT-PCRの結果、miROEではBRシグナルによって正に制御される遺伝子のBRASSINOSTEROID-INSENSITIVE 1OsBRI1 )やDWARF AND LOW-TILLERING 1OsDLT1 )の発現量が高く、負に制御される遺伝子のLEAF AND TILLER ANGLE INCREASED CONTROLLEROsLIC )の発現量は低くなっていた。よって、OsmiR396dはBRシグナル伝達経路の複数の段階を制御しているものと思われる。BR処理によってOsMIR396d の発現量は増加し、幾つかのOsGRF 遺伝子の転写産物量は減少した。OsMIR396d の発現量は、BRシグナルが強化されたOsLIC アンチセンス系統やBRASSINAZOLE-RESISTANT 1OsBZR1 )過剰発現系統で増加しており、BRシグナルが低下したOsBZR1 RNAi系統で減少していた。これらの結果から、OsMIR396d の転写はBRの添加でも内生のBRでも誘導されることが示唆される。premiR396d 転写開始点の上流にはBZR1結合部位に見られるCGTGT/CGエレメントが3つあり、各種アッセイから、OsMIR396d はOsBZR1の直接のターゲットで、OsBZR1はOsMIR396d の発現を正に制御していることが判った。OsMIR396d 過剰発現系統は、節間が短く、特に第5節間が短くなっていた。この形質はジベレリン(GA)欠損変異体と類似している。そこで、幼苗をGA処理して第2葉鞘の伸長を見たところ、miROEは対照よりもGA応答性が低下していることが判った。また、miROEではGAシグナル伝達に関与しているGIBBERELLIN INSENSITIVE DWARF 2OsGID2 )、GA生合成経路遺伝子のOsCPS1OsKO2OsGA20ox1OsGA20ox3 の転写産物量が対照よりも減少していた。OsMIR396d の発現は、GA生合成阻害剤パクロブトラゾール(PAC)処理によって抑制され、高濃度GA処理によって増加した。これらの結果から、OsmiR396dはGAシグナル伝達に関与し、GA生合成を制御していることが示唆される。miR396のターゲットの1つであるOsGRF6 の変異体osgrf6 は、草丈が低くなり、OsmiR396d 耐性型OsGRF6 を発現させた形質転換体は草丈が僅かに高くなったが、osgrf6 変異体の葉身の屈曲は野生型と同等であった。よって、OsmiR396dはOsGRF6 をターゲットとして草丈を制御しているが、OsGRF6 は葉身屈曲には関与していないことが示唆される。osgrf6 変異体はBR処理による葉身屈曲や根の伸長阻害においてBR感受性が野生型と同等であり、OsGRF6 はBRによるこれらの過程の制御には直接関与していないと考えられる。osgrf6 変異体と野生型の籾をPACを添加した培養液で発芽させると第2葉鞘の長さに差異は見られなくなり、ここにGAを添加するとosgrf6 変異体の葉鞘は野生型よりも短くなった。また、osgrf6 変異体ではGA生合成酵素遺伝子の発現量が低下しており、内生GA量も野生型よりも低くなっていた。よって、OsGRF6 はGAのシグナル伝達と生合成の両方の制御に関与していると考えられる。以上の結果から、マイクロRNA OsmiR396dはジベレリンとブラシノステロイドのシグナル伝達に影響することでイネの形態形成を制御していると考えられる。

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HP更新)「バイケイソウ考 その12」を追加しました

2018-02-02 15:45:59 | ホームページ更新情報

私のHP「Laboratory ARA MASA」の「バイケイソウプロジェクト」に「バイケイソウ考 その12 2017年の北海道と箱根でのバイケイソウ花成状況について」を追加しました。最近はHPの更新が年に1回程度になってしまっていますが、バイケイソウの観察はちゃんと続けていますので、ご意見等ありましたらご連絡ください。

なお、どういう訳か、私のHPは「Google Chrome」で閲覧すると文章の配置がおかしくなって綺麗に見えません(多分私のHPの作り方の問題だと思います)。閲覧の際には他のブラウザをご利用ください。

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論文)WRKY75による花成時期制御

2018-01-31 22:44:06 | 読んだ論文備忘録

Transcription Factor WRKY75 Interacts with DELLA Proteins to Affect Flowering
Zhang et al. Plant Physiology (2018) 176:790-803.

doi:10.1104/pp.17.00657

シロイヌナズナWRKY転写因子は、ストレス応答や発生過程において重要な役割を演じている。最近の研究から、WRKYタンパク質が花成制御にも関与していることが報告されており、WRKY71はFLOWERING LOCUS TFT )やLEAFYLFY )の発現を直接活性化し、WRKY12とWRKY13は短日条件での花成時期制御において正反対に作用している。中国科学院 西双版納熱帯植物園Yu らは、花成時期を指標にして、WRKY T-DNA挿入変異体集団およびRNAi系統のスクリーニングを行なった。その結果、wrky75 変異体は対照と比較して花成が遅延することを見出した。また、恒常的にWRKY75 を発現させた系統は花成時期が早くなった。これらの結果から、WRKY75 は花成時期を制御していると考えられる。WRKY75 過剰発現系統ではFT の発現量が増加しており、wrky75 変異体では減少していた。WRKY75 プロモーター制御下でGUSを発現させてWRKY75 の発現組織を調査したところ、FT の発現部位と同じ維管束細胞での発現が観察された。よって、WRKY75FT の発現を活性化することで花成を促進しているものと思われる。FT 遺伝子プロモーター領域にはWRKYタンパク質が結合するW-boxエレメントと推定される配列がいくつか見られた。そして、WRKY75がFT 遺伝子プロモーター領域に結合し、FT の発現を正に制御していることが確認された。FT 過剰発現系統は花成時期が早くなるが、wrky75 変異を導入しても花成時期の変化は見られなかった。一方、WRKY75 過剰発現系統にft 変異を導入すると花成時期が遅延してft 変異体と同等になった。これらの結果から、WRKY75はFT の上流で作用し、FT に依存して花成時期を正に制御していることが示唆される。各種アッセイから、WRKY75はDELLAタンパク質と物理的に相互作用をすることが確認された。また、ベンサミアナタバコを用いた一過的発現解析から、DELLAタンパク質のGAIとRGL1がWRKY75の転写活性を抑制することが確認された。WRKY75RGL1 を過剰発現させた系統を用いたクロマチン免疫沈降(ChIP)-qPCR解析から、ジベレリン(GA)処理はWRKY75のFT 遺伝子プロモーターへの結合を高めることがわかった。よって、RGL1はWRKY75のターゲット遺伝子への結合能力を低下させていると思われる。WRKY75 過剰発現系統でRGL1 を過剰発現させる、もしくは機能獲得gai-1 変異を導入すると、花成促進効果が部分的に抑制された。GA処理はWRKY75 の発現を誘導する効果が有り、wrky75 変異体は野生型と比較してGA処理による花成に遅れが見られた。したがって、WRKY75 はGAによる花成時期制御に部分的に関与していることが示唆される。以上の結果から、WRKY75 はGAを介した花成時期制御において正の制御因子として機能していると推測される。

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論文)エチレンによる根毛成長制御

2018-01-27 15:29:34 | 読んだ論文備忘録

Ethylene promotes root hair growth through coordinated EIN3/EIL1 and RHD6/RSL1 activity in Arabidopsis
Feng et al. PNAS (2017) 114(52):13834-13839.

doi: 10.1073/pnas.1711723115

エチレンは根毛の成長を促進する作用がある。シロイヌナズナにおいてエチレンシグナル伝達に関与しているETHYLENE INSENSITIVE 3(EIN3)およびそのホモログのEIN3-LIKE 1(EIL1)が機能喪失したein3 eil1 二重変異体の芽生えの根は、根毛が短く、エチレン前駆体の1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)を添加しても根毛伸長促進が見られない。中国 南方科技大学Guo らは、根毛形成に関与しているbHLH転写因子ROOT HAIR DEFECTIVE 6(RHD6)とそのホモログのRHD6-LIKE 1(RSL1)の機能喪失変異体rhd6 rsl1 の根は根毛が見られないが、ACC処理をすることで根毛が形成されることを見出した。また、ein3 eil1 二重変異体でRHD6 を過剰発現させることで根毛が伸長した。このことから、RHD6はEIN3/EIL1の下流もしくはEIN3/EIL1と並行して機能していると思われる。RHD6/RSL1はRSL クラスⅡ遺伝子のRSL25 の発現を正に制御している。rsl4 rsl2 二重変異体は根毛が形成されず、高濃度でACC処理をしても根毛形成が起こらないことから、RSL4/RSL2 はエチレンによる根毛成長誘導に関与していると考えられる。RSL クラスⅡ遺伝子のうち、RSL4RSL5 はエチレン処理によって転写産物量が増加し、RSL4 の増加はein3 eil1 二重変異体では完全に見られなくなった。RSL4 遺伝子のプロモーター領域にはEIN3結合部位(EBS、5'-ATGTAT-3')が含まれており、この領域にEIN3が結合することが確認された。また、RSL4 の過剰発現はein3 eil1 二重変異体の根毛成長を回復させた。これらの結果から、RSL4 はEIN3の直接のターゲットであり、エチレンはEIN3/EIL1によるRSL4 の転写活性化を介して根毛伸長を促進していると考えられる。RHD6はRSL4 の直接活性化することが報告されているが、RHD6がRSL4 遺伝子プロモーター領域に結合する証拠は得られていない。各種試験から、EIN3とRHD6が相互作用をすることが確認された。また、ein3 eil1 rhd6 rsl1 四重変異体はRSL4 の発現が殆ど見られず、エチレン処理に対して応答しなかった。シロイヌナズナの根由来プロトプラストを用いたデュアルレポーターアッセイから、EIN3とRHD6を両方発現させたほうが単独で発現させた場合よりもRSL4 の転写を活性化させることがわかった。これらの結果から、EIN3とRHD6は互いに関連してRSL4 の転写を同時活性化していると考えられる。rhd6 rsl1 二重変異体、rsl4 rsl2 二重変異体ともに通常の条件では根毛形成の誘導が見られないが、ACC処理をすることで見られるようになり、rhd6 rsl1 二重変異体では誘導された根毛が部分的に伸長したが、rsl4 rsl2 二重変異体では根毛の伸長は見られなかった。ein3 eil1 rhd6 rsl1 四重変異体、ein3 eil1 rsl4 rsl2 四重変異体ではACC処理をしても根毛の誘導も伸長も起こらなかった。RNA-seq解析の結果、ein3 eil1 rhd6 rsl1 四重変異体と野生型の根では956遺伝子に発現量の差異が見られ、それらの大部分はein3 eil1 二重変異体、rhd6 rsl1 二重変異体と野生型との間よりも差異が大きくなっていった。エチレンによって発現が誘導される187遺伝子のうち、43遺伝子は根毛細胞で発現する遺伝子であり、エチレン処理したrhd6 rsl1 二重変異体でのこれらの遺伝子の発現量は無処理の野生型よりも低かった。このことから、根毛誘導が十分に活性化されるためにはEIN3/EIL1とRHD6/RSL1の両者の活性が必要であることが示唆される。根毛発現43遺伝子のうち、25遺伝子はRSL4によって発現が制御されていた。根毛形成は、オーキシンやサイトカイニンといった植物ホルモン、リンや窒素といった栄養素の欠乏によって誘導される。rhd6 rsl1 二重変異体は栄養素欠乏条件で根毛形成を示さず、ein3 eil1 二重変異体はいずれの条件に対して応答したが、根毛は野生型よりも短くなっていた。よって、これらの刺激に応答した根毛形成にはEIN3/EIL1とRHD6/RSL1の共同作用が重要であると考えられる。以上の結果から、根毛の誘導・伸長においてEIN3/EIL1とRHD6/RSL1は並行かつ相乗的に作用してRSL4 等の根毛誘導遺伝子の転写を誘導しており、エチレン存在下ではEIN3/EIL1の蓄積量が増加するために根毛誘導遺伝子の発現がさらに活性化すると考えられる。

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論文)概日時計因子による塩ストレス制御

2018-01-23 09:30:57 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis EARLY FLOWERING3 increases salt tolerance by suppressing salt stress response pathways
Sakuraba et al. The Plant Journal (2017) 92:1106-1120.

doi: 10.1111/tpj.13747

シロイヌナズナEARLY FLOWERING3(ELF3)は花成の抑制に関与する概日時計因子として見出されたが、最近になってELF3が葉の老化抑制に関与していることが判った。このことから、韓国 ソウル大学校のPaek らは、ELF3は非生物ストレス応答に関与しているのではないかと考え、解析を行なった。その結果、塩ストレスに対してELF3 過剰発現個体(ELF3-OX )は強い耐性を示し、elf3 変異体は塩ストレスによって壊死した。また、水耕栽培で塩ストレスを与えたところ、elf3 変異体は主根の成長が阻害されたが、ELF3-OX の主根はさほど影響を受けなかった。塩ストレスに対する感受性の変化は、ELF3と相互作用をするELF4、LUX ARRHYTHMO(LUX)といった概日時計因子やフィトクロムBの変異体では見られなかった。これらの結果から、ELF3は、概日時計因子とは独立して、葉や根の塩ストレス耐性を高めていると考えられる。ELF3は塩/乾燥ストレス耐性を高めるDREB2ARD29BCOR15A の発現を増加させ、ストレス耐性を低下させるORE1/ANAC092ANAC016NAP/ANAC029 の発現を減少させることがわかった。また、クロロフィル異化酵素遺伝子群(CCEs )、老化時に発現量が増加する遺伝子群(SAGs )、老化時に発現量が減少する遺伝子群(SDGs )の発現量を調査したところ、ELF3-OX ではCCEsSAGs の発現量が減少し、SDGs の発現量が増加していた。これらの結果から、ELF3はストレス関連の転写調節ネットワークを広く調節することでストレス耐性を高めていると考えられる。シロイヌナズナGIGANTEA(GI)は日長花成誘導因子であるが、塩ストレス応答にも関与していることが知られており、gi 変異体は塩耐性を示し、GI-OX は塩ストレス感受性が高い。また、塩ストレス処理によってGIタンパク質量は急速に減少する。GIとELF3との関係を見たところ、ELF3-OX では塩ストレス処理によるGIタンパク質の減少が野生型よりも早く、elf3 変異体はGIタンパク質量が野生型よりも多くなっていた。しかしながら、塩ストレス処理によるGI mRNA量の減少については野生型との差は見られなかった。よって、ELF3は塩ストレス条件下でGIタンパク質の分解を促進していると考えられる。GIは、塩ストレス耐性の調節因子であるSOS2と相互作用をし、SOS2の塩ストレス耐性活性を低下させる。酵母two-hybridアッセイではELF3とSOS2との相互作用は観察されなかったが、in vivo プルダウンアッセイでは相互作用が観察され、この相互作用はgi 変異体では見られなかった。よって、ELF3は、おそらくGIを介して、間接的にSOS2による塩ストレス耐性に関与していると考えられる。ELF3はPHYTOCHROME INTERACTING FACTOR4PIF4 )やPIF5 の転写の制御をしているとされている。PIF4、PIF5と塩ストレスとの関係を調査したところ、pif4 変異体の葉は塩ストレスに耐性を示し、PIF4 を薬剤誘導で発現させた芽生えは塩ストレスに対する感受性が高いことがわかった。また、塩ストレス処理によりELF3-OX ではPIF4 の発現が減少し、elf3 変異体では増加した。したがって、ELF3によるPIF4 mRNA量の制御は、塩ストレス応答において重要であると考えられる。各種アッセイから、ELF3はPIF4 遺伝子プロモーターに直接相互作用をしてPIF4 の転写を抑制していることが確認された。PIF4は、ANAC 遺伝子で非生物ストレス応答において重要な役割を担っているJUNGBRUNNEN1JUB1 )/ANAC042 の転写を直接制御していることが知られている。塩ストレス処理後のJUB1 の発現は、pif4 変異体、ELF3-OX で増加し、PIF4-OXelf3 変異体では減少していた。よって、塩ストレス下でのJUB1 の発現はPIF4とELF3によって調節されていると考えられる。PIF4は、葉の老化の際に、老化促進に関与するNAC転写因子をコードするORE1/ANAC092 の転写を直接活性化している。ORE1は老化関連遺伝子SAG29 の発現を直接活性化しており、SAG29 は塩ストレス誘導因子としても作用している。ore1 変異体とsag29 変異体は、塩ストレス耐性が高くなっていた。また、塩ストレス処理によるORE1SAG29 の発現量の増加は、pif4 変異体、ELF3-OX で減少し、PIF4-OXelf3 変異体で増加していた。ORE1 遺伝子とSAG29 遺伝子のプロモーター領域にはPIF4が結合するG-boxモチーフが含まれており、PIF4がこのモチーフに結合してORE1SAG29 各プロモーターの転写活性を高めることが確認された。以上の結果から、概日時計因子ELF3は、PIF4 の転写調節とGIの転写後調節をすることで、塩ストレス応答を制御していると考えられる。

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論文)光による気孔発生制御の分子機構

2018-01-17 23:01:21 | 読んだ論文備忘録

Light Inhibits COP1-Mediated Degradation of ICE Transcription Factors to Induce Stomatal Development in Arabidopsis
Lee et al. Plant Cell (2017) 29:2817-2830.

doi:10.1105/tpc.17.00371

シロイヌナズナbHLH型転写因子のInducer of CBF Expression(ICE)1/SCREAM(SCRM)とSCRM2は、気孔の発生過程全体を統御する因子として機能している。気孔の発生は、光、温度、湿度といった環境要因による影響を受けていることから、韓国 ソウル大学校Park らは、光シグナルとICEによる気孔発生制御との関係を解析した。その結果、光はICE 遺伝子の転写には関与しないが、葉の背軸側表皮細胞でのICE1タンパク質の蓄積を促進することがわかった。光による気孔発生の誘導に対して抑制的に作用する光形態形成抑制因子のE3ユビキチンリガーゼCONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENIC1(COP1)は細胞内でICE1と相互作用をして、ICE1をユビキチン化することが確認された。ICEタンパク質は、植物体を暗所で育成すると減少するが、プロテアソーム阻害剤のMG132処理をすることで減少が抑制された。また、cop1 変異体ではICEタンパク質の分解が抑制された。よって、COP1はICEタンパク質のユビキチン/プロテアソーム系を介した分解に関与していると考えられる。光はCOP1によるICEタンパク質の分解を阻害した。ICE1 を過剰発現させた芽生えは、弱光条件下で気孔数が野生型よりも増加した。ice1 scrm2 二重変異体の芽生え子葉では背軸側表皮細胞での気孔発生が見られず、この二重変異はcop1 変異体の暗所での恒常的気孔発生を抑制した。MAPKKキナーゼのYODA(YDA)はCOP1の下流で作用して気孔発生を抑制しており、yda 変異体は暗所において気孔が発生する。しかし、yda 変異体は明所で気孔数が増加し、ICE1タンパク質の蓄積の光応答性も見られた。よって、YDAは気孔発生においてICEによるシグナルとは独立して機能していることが示唆される。以上の結果から、暗所においてはCOP1がICEタンパク質をユビキチン/プロテアソーム系で分解することで、気孔の発生が阻害され、明所ではCOP1によるICEタンパク質の分解が抑制されるので気孔発生が誘導されると考えられる。

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論文)アブシジン酸による種子発芽制御に関与する因子

2018-01-13 07:59:25 | 読んだ論文備忘録

Abscisic Acid Modulates Seed Germination via ABA INSENSITIVE5-Mediated PHOSPHATE1
Huang et al. Plant Physiology (2017) 175:1661-1668.

DOI:10.1104/pp.17.00164

シロイヌナズナPHOSPHATE1(PHO1)は、根からシュートへのリン酸(Pi)の輸送に関与している。PHO1 遺伝子は主に根の維管束系で発現しているが、公的マイクロアレイデータによると、PHO1 転写産物は種子に多く、浸漬によって増加することが示されている。このことから、中国農業大学のChen らは、PHO1はアブシジン酸(ABA)による種子発芽制御に関与しているのではないかと考え、解析を行なった。PHO1 転写産物量は、種子発芽初期に増加するが、ABAを添加することで減少した。pho1 変異体は、野生型種子と比べて、種子のリン含量が少なく、発芽率が低く、植物体の地上部が小さくなった。pho1 変異体の葉にPiをスプレーすることで植物体の成長が健全になり、この植物体の種子はリン含量や発芽率が野生型と同等になった。しかし、この種子はABAに対する感受性が高くなっており、ABA添加培地での発芽遅延、子葉の緑化率の低下が起こった。また、PHO1 を過剰発現させた系統はABAに対して非感受性となり、ABA存在下での発芽率が野生型よりも高くなった。これらの結果から、PHO1はABAを介した種子発芽や芽生えの初期成長に関与していることが示唆される。PHO1 遺伝子プロモーター領域には、ABAシグナル伝達の制御因子の1つであるbZIP型転写因子ABI5が結合するACGTモチーフが2つ含まれていた。ABI5 過剰発現系統ではPHO1 転写産物量が減少しており、abi5 変異体ではPHO1 発現量が増加していた。また、ABI5はPHO1 遺伝子プロモーターのACGTモチーフを含む領域に結合することが確認された。よって、ABI5はPHO1 遺伝子プロモーターに結合することでPHO1 の発現を負に制御していることが示唆される。abi5 変異体種子はABA存在下でも発芽するABA非感受性の表現型を示すが、abi5 pho1 二重変異体種子は、pho1 単独変異体種子と同様に、ABA感受性が高くなっていた。したがって、PHO1 はABAを介した種子発芽や芽生えの初期成長においてABI5 よりも上位に位置していると考えられる。以上の結果から、PHO1はアブシジン酸による発現制御を受けて種子発芽や芽生えの初期成長に関与してると考えられる。

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論文)細胞質に局在するCOP1による胚軸伸長制御

2018-01-11 05:47:31 | 読んだ論文備忘録

COP1 mediates dark-specific degradation of microtubule-associated protein WDL3 in regulating Arabidopsis hypocotyl elongation
Lian et al. PNAS (2017) 114:12321-12326.

doi:10.1073/pnas.1708087114


中国農業大学のMao らは、以前に、シロイヌナズナ微小管関連タンパク質WAVE-DAMPENED 2(WVD2)/WVD2-LIKE(WDL)ファミリーのWDL3が胚軸の細胞の伸長制御に関与していることを明らかにした。WDL3タンパク質は明所においては豊富に存在するが、暗所では26Sプロテアソーム系によって分解される。しかしながら、この分解機構については明らかとなっていない。黄化芽生えの胚軸伸長では、E3ユビキチンリガーゼのCONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENIC 1(COP1)が重要であることから、COP1が暗所でのWDL3の分解に関与しているのではないかと考え、解析を行なった。COP1とWDL3との相互作用を調査したところ、両者は暗所条件においてのみ相互作用をすることが判った。in vitro の実験から、COP1はWDL3のN末端領域と相互作用をし、ポリユビキチン化することが示された。COP1は暗所条件では核において機能するとされているが、最近の研究では核外にも一部局在することが示されている。WDL3は微小管関連タンパク質であり細胞質に局在するので、COP1とWDL3の相互作用が細胞内の何処で起こっているのかを調査したところ、両者は細胞質表層微小管において相互作用をしていることが確認された。暗所で育成した弱いcop1 変異体(cop1-6 )芽生えは、明所で育成した芽生えのように胚軸が短くなる。cop1-6 変異体ではWDL3タンパク質は安定しており、暗所においても細胞表層微小管に結合した状態にあった。よって、暗所においてWDL3タンパク質量はCOP1により負に制御されている。WDL3 を過剰発現させた黄化cop1-6 変異体芽生えは胚軸伸長が抑制され、RNAiによってWDL3 の発現を減少させたcop1-6 変異体は胚軸が長くなった。胚軸表皮細胞の伸長は表層微小管の構成と関連しており、WDL3 RNAi cop1-6 黄化芽生え胚軸では表層微小管の平行配列は胚軸の伸長方向に対して横方向に配置していた。一方、cop1-6 変異体の胚軸細胞では、多くの細胞で表層微小管はランダム、斜め、もしくは縦方向に配置していた。cop1-6 変異体黄化芽生えの胚軸細胞は、WDL3 を過剰発現させることで短くなり、WDL3 を発現抑制することで長くなった。よって、WDL3はCOP1による胚軸伸長制御の下流で機能している因子であり、胚軸細胞の伸長阻害に関与していることが示唆される。以上の結果から、細胞質のCOP1は、黄化芽生え胚軸において微小管関連タンパク質をターゲットとして26Sプロテアソーム系で分解することで胚軸伸長を制御していると考えられる。

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