Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)FT転写産物の選択的スプライシングによる花成制御

2017-02-26 12:08:17 | 読んだ論文備忘録

Regulation of FT splicing by an endogenous cue in temperate grasses
Qin et al. Nature Communication (2017) 8:14320.

DOI: 10.1038/ncomms14320

イネ科ヤマカモジグサ属のミナトカモジグサ(Brachypodium distachyon )は、フロリゲン遺伝子FLOWERING LOCUS TFT )のオーソログを2つ(FT1FT2 )持っている。中国農業科学院作物科学研究所のWu らは、ミナトカモジグサでのFT 遺伝子の発現パターンをPCRで調査し、FT2 は選択的スプライシングによって2種類の転写産物が形成されることを見出した。そのスプライシング産物は第1エクソンの5'末端側が84塩基欠失しており、翻訳産物はN末端領域のフォスファチジルエタノールアミン結合タンパク質(PEBP)ドメインに28アミノ酸の欠失が生じていた。FT1 転写産物には変異スプライス産物は見られなかった。そこで、正常な転写産物をFT2α 、選択的スプライス転写産物をFT2β と命名し、解析を行なった。FT2β/FT2α 比は植物体の育成温度によって変化し、高温条件で低下した。FT2α を過剰発現させた個体は花成促進されるが、FT2β を過剰発現させた個体は出穂が遅延し、FTの下流で作用しているAPETALA1 のミナトカモジグサオーソログであるVRN1 の発現量が劇的に減少していた。FT2β 過剰発現個体でのFT2α 転写産物量は野生型と同等であった。したがって、FT2αとFT2βは花成誘導に対する効果が異なっていると考えられる。酵母two-hybridアッセイの結果、FTと相互作用をするFD様タンパク質FDL2は、FT2αとは相互作用をするがFT2βとの結合は確認されなかった。また、ベンサミアナタバコを用いたBiFCアッセイやCo-IPアッセイから、生体内においてもFT2βとFDL2は相互作用をしないことが確認された。FTと相互作用をする14-3-3タンパク質のGF14bとGF14cについても同様のアッセイを行なったところ、FT2αとは相互作用を示すが、FT2βとの相互作用は確認されなかった。したがって、FT2スプライス変異型は14-3-3タンパク質やFDと物理的に相互作用をする能力が失われているものと思われる。酵母three-hybridアッセイの結果、FT2βはFT2αとFDL2もしくはGF14bとの相互作用を抑制することがわかった。また、競合BiFCアッセイから、FT2βは生体内でのFT1、FT2αとFDL2、GF14bとの相互作用を抑制することが確認された。FT2βはFT1やFT2αとヘテロ二量体を形成するが、FT2βのホモ二量体は形成されなかった。これらの結果から、FT2βによる花成遅延は、FT2βがFT2αやFT1と結合することでFDや14-3-3タンパク質との複合体形成が妨げられることで生じているものと思われる。FT2β 転写産物量は、ミナトカモジグサの成長初期4週間目まではFT2α 転写産物量よりも多いが、その後はFT2α 量の方が多くなり、植物体が成長するにつれてFT2β/FT2α 比は減少していった。よって、選択的スプライシングによるFT の転写後制御は、ミナトカモジグサの花成時期の制御に関与し、若い植物体にFT2β量が多いことは早熟な花成を抑制する作用があると推測される。人工マイクロRNAによってFT2β をノックダウンした植物は、対照よりも出穂日が早くなり、VRN1 の発現量が増加していた。この早期花成の程度と人工miRNAの発現量との間には相関が見られることから、FT2βの減少による花成促進は、花成複合体形成がより多く形成されVRN1 発現量が増加することによるものであると思われる。FT2α をノックダウンする人工miRNAを発現させた個体は、花成が遅延し、VRN1 発現量も減少した。したがって、FT2βとFT2αはミナトカモジグサの花成において拮抗的に作用していると考えられる。シロイヌナズナ、イネ、トウモロコシではFT2 オーソログの選択的スプライシングは見られなかったが、ミナトカモジグサと同じイネ科イチゴツナギ亜科のタルホコムギ、コムギ、オオムギではミナトカモジグサと同じ領域が欠失したFT2 スプライス変異型が見られた。また、コムギやオオムギのFT2β は、8週間目の植物体では発現量がFT2α よりも低いが、2週間目の植物体ではFT2α の転写産物量が減少していた。したがって、発生過程でのFT2 選択的スプライシングの変化は温帯のイネ科植物で保存された花成制御機構であると考えられる。

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論文)サイトカイニンシグナル伝達に関与するEXTRA-LARGE Gタンパク質とU-boxタンパク質

2017-02-21 05:56:51 | 読んだ論文備忘録

EXTRA-LARGE G PROTEINs Interact with E3 Ligases PUB4 and PUB2 and Function in Cytokinin and Developmental Processes
Wang et al. Plant Physiology (2017) 173:1235-1246.

DOI: 10.1104/pp.16.00816

ヘテロ三量体GTP結合タンパク質は、Gα、Gβ、Gγの3つのサブユニットから構成されており、シグナル伝達分子として機能している。シロイヌナズナでは、EXTRA-LARGE G PROTEIN(XLG)と命名されたGα様タンパク質が3種類あり、Gβγと複合体を形成する。XGLは様々な成長過程に関与していることが報告されているが、その機構については明らかとなっていない。中国 香港浸会大学Xia らは、酵母two-hybrid(Y2H)スクリーニングによってXGL2と相互作用をするタンパク質を探索し、37のクローンを見出した。このうち12クローンはU-box型E3ユビキチンリーガせのPUB2をコードしており、5クローンはPUB4をコードしていた。また。PUB4をベイトに用いてY2Hスクリーニングを行なったところ、XLG1が16クローン、XLG2が7クローン得られた。そして、Y2Hアッセイから、3種のXLGはPUB2、PUB4と相互作用をすることが確認され、BiFCアッセイやco-IPアッセイからXGL1とPUB4は植物体内においても相互作用をすることが示された。PUB E3リガーゼはシロイヌナズナでは60以上からなるファミリーを形成しており、PUB2とPUB4は相同性が高い。PUB4の機能喪失変異体はロゼットが小さく、稔実率が低いことが報告されている。そこで、T-DNA挿入pub2 変異体の表現型を調査したが、形態的な変化は見られなかった。しかし、PUB2pub4 変異体で過剰発現させると稔性を回復する個体が見られ、pub2/4 二重変異体はpub4 変異体よりも矮化した。これらの結果から、PUB2とPUB4は機能が重複していると考えられる。XGL の変異体について解析を行ったところ、xgl 単独変異体や二重変異体では明確な表現型の変化は見られなかったが、xgl1/2/3 三重変異体は、pub4 変異体のように、草丈が低く稔性が低下した。また、変異体芽生えは野生型よりもやや大型で、根系が発達していた。pub4pub2/4xgl1/2/3 の各変異体の芽生えはサイトカイニン(BA)処理による成長阻害に対して感受性が低く、pub2 変異体やxgl 単独変異体ではBA感受性の変化は見られなかった。pub4pub2/4xgl1/2/3 の各変異体の芽生えは、サイトカイニンによる胚軸伸長阻害においても感受性が低く、BA処理をすることによって葉柄が伸長し、子葉が開いた。また、BAによる根の伸長抑制に対してもわずかに感受性が低下していた。pub4pub2/4xgl1/2/3 の各変異体は、雄ずいの数が4つか5つの花が多く見られた。xgl1/2/3 変異体もpub4 変異体の稔性の低下は、花粉の生育力が失われたことによるものではなく、タペート細胞の変性が不十分なために花粉が葯から放出されないことで引き起こされていた。これまでに示した結果から、pub4pu2/4xgl1/2/3 の各変異体はサイトカイニン応答が低下していると考えられる。サイトカイニン応答の正の制御因子であるタイプBレスポンスレギュレーターのARR10をpub4 変異体やxgl1/2/3 変異体で過剰発現させることで、これらの変異体の表現型が部分的に抑制された。以上の結果から、XGLとPUB2/4はサイトカイニンシグナル伝達に関与する因子として様々な発生過程や生理過程を制御していると考えられる。

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論文)温度変化による成長と免疫性のバランス制御

2017-02-17 18:11:23 | 読んだ論文備忘録

PIF4 Coordinates Thermosensory Growth and Immunity in Arabidopsis
Gangappa et al. Current Biology (2017) 27:243-249.

DOI: 10.1016/j.cub.2016.11.012

気温が上昇すると植物の成長は促進されるが、防御応答が弱くなり、罹病性が高くなることが知られている。英国 ジョン・イネスセンターKumar らは、温度変化に応答した成長制御に関与していることが知られているPHYTOCHROME INTERACTING FACTOR 4(PIF4)が高温時の免疫性の変化にも関与しているのではないかと考え、解析を行なった。シロイヌナズナ ヌクレオチド結合ロイシンリッチリピート(NB-LRR)タンパク質SUPPRESSOR OF npr1-1, CONSTITUTIVE 1(SNC1)の変異体snc1-1 は、恒常的に防御応答が活性化し、成長が抑制さていれるが、高温条件(27℃)では成長が回復し、Psudomonas syringe pv. tomato(Pto )DC3000に対する抵抗性が低下して野生型と同等となる。しかし、snc1-1 pif4-101 二重変異体ではどちらの表現型も高温による変化が起こらなかった。この結果から、PIF4による温度受容シグナル伝達は、温度上昇による防御応答の抑制にも関与していることが示唆される。pif4-101 変異体では、成長に関与しているPIF4のターゲット遺伝子ATHB2EXP8XTR7 の発現が減少していたが、防御応答に関与しているPR1PR5PBS3 の発現量は増加していた。RNA-seq解析の結果、pif4-101 変異体では防御応答関連遺伝子の発現量が高くなっていることがわかった。また、pif4-101 変異体やpifQpif1 pif3 pif4 pif5 )変異体はPto DC3000抵抗性が野生型よりも高くなっていた。PIF4の塩基性ドメインを欠いたPIF4Δbは、過剰発現させることによって優性阻害を引き起こし、成長が抑制され、成長関連遺伝子の発現量が減少し、防御遺伝子の発現量が増加してPto DC3000抵抗性が高くなった。また、PIF4 を過剰発現させた系統は、成長関連遺伝子の発現量が増加し、防御遺伝子の発現量が減少してPto DC3000罹病性が高くなった。これらの結果から、PIF4は免疫性の負の制御因子として作用していることが示唆される。フィトクロムBは、光刺激に応答してPIF転写因子の分解を制御をしており、機能喪失phyb 変異体ではPIFを介した成長が強まるが、Pto DC3000罹病性が高くなっていた。また、PHYB 過剰発現系統は、成長関連遺伝子の発現が減少して成長が抑制され、防御遺伝子の発現が増加し、Pto DC3000抵抗性が高くなっていた。シロイヌナズナの自然変異のNossen(No-0 )は、Columbia(Col )-0 よりも成長が旺盛で、成長の温度感受性が高い。No-0 は成長関連遺伝子の発現量が高く、防御関連遺伝子の発現量が低下しており、Pto DC3000罹病性が高くなっていた。よって、No-0 の温度による成長促進は免疫性性の低下を引き起こしている。No-0 の成長や防御に関する表現型はphyb 変異体の表現型と類似しており、No-0phyb 変異体とのF1雑種はphyb 変異体の表現型を相補しなかった。よって、No-0 ではPHYBの機能が低下していると考えられる。しかしながら、No-0 でのPHYB の発現量はCol-0 と同等であった。No-0PHYB 遺伝子座には幾つかの多型が見られ、それらはPHYBの機能と関連していることが知られていることから、No-0 はPHYBの機能に異常があると考えられる。Col-0No-0 を交雑して作出したF2個体の解析から、成長や防御に関する表現型はPHYBに支配されていることがわかった。また、No-0Col-0PHYB を発現させることで、成長、遺伝子発現、Pto DC3000抵抗性といった表現型がCol-0 と同等になった。PHYBはPIF4を負に制御しているので、No-0 ではPIF4 の発現量が増加していた。また、No-0 でPIF4Δbを発現させると、成長が抑制され、成長関連遺伝子の発現量が減少し、防御遺伝子の発現量が増加してPto DC3000抵抗性が高くなった。したがって、No-0 での成長と防御のバランスの変化は、PHYBの機能低下によるPIF4の増加によって引き起こされていると考えられる。シロイヌナズナの自然変異体のPHYBアミノ酸配列を比較したところ、Edinburgh(Edi )-0 、Kashmir(Kas )-1 、Shakdara(Sha ) にもNo-0 と同じアミノ酸置換が見られ、No-0 と同じ表現型を示した。17℃で育成したCol-0Pto DC3000抵抗性が高く、育成温度を22℃、27℃と上昇させるに連れて抵抗性が低下する。17℃および22℃で育成したPIF4 過剰発現個体の抵抗性は、それぞれ、22℃および27℃育成したCol-0 と同程度であった。よって、PIF4が温度上昇による罹病性誘導をもたらしていることが示唆される。phyb 変異体やNo-0 は低温時の抵抗性が低下していた。また、PIF4Δbを発現させた系統は、対照よりも27℃での抵抗性が高くなっていた。これらの結果から、PIF4による温度受容シグナル伝達系は防御応答の温度感受性の制御において重要であると考えられる。

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論文)カスパリー線形成に作用するペプチドホルモン

2017-02-11 16:56:39 | 読んだ論文備忘録

Root diffusion barrier control by a vasculature-derived peptide binding to the SGN3 receptor
Doblas et al. Science (2017) 355:280-284.

DOI: 10.1126/science.aaj1562

A peptide hormone required for Casparian strip diffusion barrier formation in Arabidopsis roots
Nakayama et al. Science (2017) 355:284-286.

DOI: 10.1126/science.aai9057

カスパリー線は、植物の根に防水機能を付与し、無秩序に水や無機物が流入するのを防いでいる。カスパリー線の形成にはカスパリー線膜ドメインタンパク質(CASP)という膜貫通タンパク質が関与している。そしてロイシンリッチリピート受容体キナーゼ(LRR-RK)のSCHENGEN3(SGN3)/GASSHO1(GSO1)はCASPの細胞膜上の適正な分布に関与していることが知られており、sgn3 変異体はカスパリー線が不連続となる。Science誌1月20日号に、カスパリー線形成に関与し、SGN3のリガンドとなるペプチドに関する論文が2報出た。

スイス ローザンヌ大学Geldner ら[Science (2017) 355:280-284.]は、シロイヌナズナsgn3 変異体と類似した表現型を示すsgn2 変異体がチロシルプロテインスルホトランスフェラーゼ(TPST)をコードするAt1g08030の変異であることを見出した。この酵素は、根の分裂組織の維持や成長に関与する様々なペプチドリガンド(RGF、PSK、PSY1)をチロシン硫酸化することが知られている。しかしながら、既知のペプチドではtpst/sgn2 変異体の表現型を相補できず、既知ペプチドの変異体にカスパリー線の異常は見られなかった。したがって、tpst/sgn2 変異体のカスパリー線の異常は、未知のTPSTの基質によって引き起こされていると考えられる。そこで、tpst/sgn2 変異体でTPSTを各種組織特異的プロモーター制御下で発現させて未知の硫酸化ペプチドが生産される組織を探索した。その結果、中心柱特異的に発現するSHR プロモーターでTPSTを発現させることでtpst/sgn2 変異体のカスパリー線異常が相補されることがわかった。よって、中心柱で生産されるペプチドが内皮でのカスパリー線形成を促進していると考えられる。中心柱で発現するペプチドに関してデータベース検索を行なったところ、At4gg34600が同定された。この遺伝子が生産するペプチド[CASPARIAN STRIP INTEGRITY FACTOR 2(CIF2)と命名]の硫酸化型を合成してsgn2 変異体に与えたところ、1 nM の添加によってカスパリー線の異常が回復した。また、野生型植物に100 nM 以上のペプチドを添加したところ、異所的なCASP形成やリグニンの過剰蓄積が起こった。硫酸化していないペプチドにも活性はあったが、硫酸化型の1/10~1/100程度であった。CIF2およびCIF2のホモログのCIF1をコードする遺伝子のプロモーターの発現特異性から、両遺伝子は維管束で発現していることが確認された。sgn2 変異体とsgn3 変異体の内皮の表現型は類似しており、二重変異体はsgn3 変異体の表現型を悪化させることはなかった。したがって、両者は同一経路において作用していることが示唆され、SGN3は受容体である可能性がある。sgn3 変異体をペプチド処理しても表現型に変化は見られなかった。また、ペプチド処理は細胞膜上からのSGN3タンパク質の消失を誘導し、これはリガンドが誘導するエンドサイトーシスが起こっているものと思われる。これらの結果から、ペプチドはSGN3のリガンドであると考えられる。SGN3とCIF2/3との物理的相互作用を調査したところ、CIF2はCIF1よりも親和性が強く、硫酸化されていないCIF2はSGN3に結合しなかった。受容体様細胞質キナーゼのSGN1は、SGN3の下流に位置するキナーゼと考えられており、sgn1 変異体もカスパリー線に異常が見られる。sgn1 変異体にCIF2処理をしても表現型は相補されず、リグニンやスベリンの過剰蓄積も見られなかった。よって、SGN1はCIFによって活性化されたSGN3シグナルを伝達するために必要であると考えられる。

名古屋大学松林ら[Science (2017) 355:284-286.]は、シロイヌナズナGSO1/SGN3の変異体がカスパリー線に異常を起こすことはGSO1/SGN3のリガンドとなるペプチドが存在することを示していると考え、新規ペプチドホルモンの探索を行なった。その結果、80アミノ酸程度のポリペプチドをコードする2つのパラログ遺伝子At2g16385とAt4g34600が同定された。このポリペプチドのオーソログは植物界に広く分布していた。At2g16385を過剰発現させたシロイヌナズナから分泌されるポリペプチドを解析したところ、21アミノ酸のチロシン硫酸化されたポリペプチドが検出された。光親和性標識したAt2g16385ペプチドを用いてシロイヌナズナ受容体キナーゼ発現ライブラリーをスクリーニングしたところ、サブファミリーXIに属する2つのLRR-RK、GSO1/SGN3とGSO2が見出された。この結合は未標識のペプチドによって拮抗阻害され、他の関連性のないペプチドホルモンによる影響を受けなかった。したがって、At2g16385とAt4g34600は、GSO1/SGN3とGSO2の特異的なリガンドであると考えられる。GUS発現によりAt2g16385プロモーター活性を見たところ、中心柱、特に主根の成熟した領域の師部で活性が見られ、シュートでは活性が検出されなかった。At4g34600プロモーターも主根や側根の伸長・分化領域の中心柱で活性が見られた、活性は側根形成が誘導される領域で消失した。根端部では、伸長を開始する位置の10細胞分後方からGUS活性が検出された。リガンドの二重変異体は、内皮のバリアー形成が欠失し、親水性色素のヨウ化プロピジウムが維管束に侵入した。この表現型はgso1/sgn3 gso2 受容体二重変異体で観察される表現型と類似していた。リガンド二重変異体の表現型は合成At2g16385ペプチド処理することによって回復したが、受容体二重変異体はペプチド処理をしても変化は見られなかった。したがって、At2g16385とAt4g34600のペプチドはカスパリー線の形成にとって重要であり、このことからこれらのペプチドをそれぞれCasparian strip integrity factor 1(CIF1)、CIF2と命名した。リガンド二重変異体ではCASPの蓄積が不連続となり、CASP1CASP2 の発現量も低下していた。リガンド二重変異体をCIF1ペプチド処理すると、不連続に分布していたCASPが融合し、CASP1CASP2 の発現量も増加した。24時間CIF1ペプチド処理をしたリガンド二重変異体をペプチドを含まない新しい培地に移すと、一部のCASPが不連続となり、CASP1CASP2 の発現量が減少した。このことから、CIFペプチドはカスパリー線の形成に加えてカスパリー線の維持に対しても必要であることが示唆される。カスパリー線は、師部と土壌との間でのイオンの流出入を防ぐバリアーとして作用することで植物を環境に適応させる役割があると考えられている。野生型植物は高濃度の鉄に対して耐性を示すが、リガンド二重変異体は高濃度鉄処理によって成長が抑制されて葉が変色した。野生型植物の胚軸から採取した師管液の鉄濃度は培地の鉄含量を高めても一定であるが、リガンド二重変異体では培地の鉄含量の増加に応じて師管液の鉄濃度も増加した。しかも、野生型植物では過剰鉄処理によってCIF1CIF2 の発現量が増加し、培地のpHが低い条件では発現量がさらに増加した。また、低カリウム条件で育成したリガンド二重変異体は成長遅延を起こし、師管液のカリウム量が野生型よりも低下していた。これは、変異体ではカリウムが濃度に依存して植物体外へ流出していることで引き起こされていると考えられる。以上の結果から、中心柱で発現しているペプチドホルモンCIF1とCIF2は、内皮で発現しているGSO1/SGN3とGSO2を活性化することでカスパリー線の形成と維持に作用していると考えられる。

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論文)BRANCHED1による腋芽成長制御

2017-02-05 17:52:01 | 読んだ論文備忘録

Abscisic acid signaling is controlled by a BRANCHED1/HD-ZIP I cascade in Arabidopsis axillary buds
Gonzalez-Grandio et al. PNAS (2017) 114:E245-E254.

doi: 10.1073/pnas.1613199114

シロイヌナズナのクラスⅡ TEOSINTE BRANCHED1, CYCLOIDEA, PCF(TCP)のBRANCHED1(BRC1)は、腋芽の成長を抑制しているが、その機構については明らかとなっていない。しかし、休眠芽ではアブシジン酸(ABA)関連遺伝子の発現が誘導されており、BRC1 は芽においてABAマーカー遺伝子の発現を促進することが知られている。スペイン 国立バイオテクノロジーセンターCubas らは、BRC1 とABAシグナルとの関連を調査し、ABA関連遺伝子のうち26遺伝子はBRC1 に発現が依存しており、このうち12遺伝子は転写因子をコードしていることがわかった。そこで、BRC1 に発現が依存している転写因子遺伝子のうち、HD-ZIPタンパク質をコードするHOMEOBOX PROTEIN 21HB21 )、HB40HB53 に着目して解析を行なった。これらの遺伝子の転写産物量は、BRC1 の発現量や腋芽成長の抑制の程度と正の相関があった。タンパク質結合マイクロアレイ(PBM)によってBRC1のDNA結合モチーフとしてGGgcCCmcが見出され、このモチーフはHB21HB40HB53 遺伝子のプロモーター領域、イントロンおよび幾つかのエクソンに含まれていることがわかった。そして、BRC1がこれらの領域に直接結合することがChIPアッセイによって確認された。HB21HB40HB53 遺伝子のプロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトを導入した形質転換体でGUS の発現パターンを調査したところ、いずれも若い腋芽で発現しており、BRC1 の発現部位と重複していた。HB21HB40HB53 遺伝子のT-DNA挿入変異体のロゼット葉からの分枝形成を野生型と比較したところ、通常の白色(W)光照射条件下では分枝数に差は見られなかったが、W光と遠赤色(FR)光をを照射して分枝形成を抑制した条件では二重変異体、三重変異体で抑制の程度が野生型よりも低下していた。また、三重変異体ではbrc1 変異体よりもW+FR光照射による分枝形成抑制の程度が低くなっていた。短日条件で育成した三重変異体の腋芽から成長した葉は、brc1 変異体と同様に、野生型のものよりも成長が良くなっていた。hb21 hb40 hb53 brc1 四重変異体の分枝の表現型は、W+FR光照射も短日条件も三重変異体やbrc1 変異体を超えることはなかった。したがって、HB21/40/53BRC1 は同一経路で機能していると考えられる。これらの結果から、HB21HB40HB53 は、腋芽の発達と分枝の成長をBRC1 と同じ経路で遅延させるように冗長的に作用しており、この機能は低R:FR光条件や短日条件で発揮されることが示唆される。BRC1 に発現が依存している他の遺伝子としてNCED3 (At3g14440)がある。NCED3 はABA生合成の鍵酵素をコードしており、分枝の成長にも関与している。nced3 変異体は、W+FR光に応答した分枝形成抑制の程度が野生型よりも低く、短日条件での腋芽の成長が促進され、三重変異体と類似した表現型を示す。野生型植物においてNCED3 の発現はW+FR光照射によって誘導されるが、三重変異体では、brc1 変異体と同様に、誘導の程度が減少していた。また、W光照射下の基底状態のNCED3 の発現量も三重変異体では野生型よりも低くなっていた。したがって、HB21、HB40、HB53(そしてBRC1)は腋芽でのNCED3 の発現に必要であると考えられる。エストラジオール発現誘導系によってBRC1HB21HB40HB53 をシロイヌナズナ芽生えで発現させたところ、NCED3 転写産物量が大きく増加し、ABA量も増加した。また、BRC1、HB21、HB40、HB53がNCED3 遺伝子プロモーター領域に直接結合することが確認された。したがって、BRC1HB21HB40HB53NCED3 の発現誘導とABAの蓄積に必要であり、BRC1 によるHB21HB40HB53 の転写活性化は腋芽での局所的なABAシグナル伝達や応答を押し上げていると考えられる。W+FR光照射した三重変異体での分枝形成は、ABAを添加することによって野生型同程度に抑制された。よって、三重変異体の低R:FR光条件での分枝形成は腋芽でABAが蓄積されないことが原因であると考えられる。ABAのシグナル伝達や応答に関与しているタンパク質をコードしている4つの遺伝子ABA RESPONSIVE ELEMENTS-BINDING FACTOR 3ABF3 )、ABI FIVE BINDING PROTEIN 3AFP3 )、G-BOX BINDING FACTOR 3GBF3 )、NAC-LIKE, ACTIVATED BY AP3/PINAP )は、W+FR光照射によって発現誘導されるが、三重変異体では誘導の程度が減少しており、これはbrc1 変異体での結果と類似していた。これらの4遺伝子の発現誘導はnced3 変異体では低下しており、野生型植物をABA処理することで発現量が増加した。よって、4遺伝子の発現誘導はNCED3 によって誘導されるABAの蓄積が関与している。エストラジオール発現誘導系による解析から、4遺伝子はBRC1 およびHB53 の発現誘導によって発現量が増加し、ABF3NAPHB21 およびHB40 の発現誘導によって発現量が増加した。以上の結果から、BRC1はHD-ZIP型転写因子の発現を直接制御し、腋芽においてNCED3 の発現やABAの生合成を局所的に高めて低R:FR光条件や短日条件での腋芽の成長を抑制していると考えらる。

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論文)避陰反応における青色光シグナルの関与

2017-01-29 11:41:29 | 読んだ論文備忘録

Shade Promotes Phototropism through Phytochrome B-Controlled Auxin Production
Goyal et al. Current Biology (2016) 26:3280-3287.

DOI: 10.1016/j.cub.2016.10.001

Integration of Phytochrome and Cryptochrome Signals Determines Plant Growth during Competition for Light
de Wit et al. Current Biology (2016) 26:3320-3326.

DOI: 10.1016/j.cub.2016.10.031

Dispatches
Photomorphogenesis: Plants Feel Blue in the Shade
Keara A. Franklin Current Biology (2016) 26:R1275-R1276.

DOI: 10.1016/j.cub.2016.10.039

植物は様々な環境シグナルを受けて周囲の植物の陰になることを避けようとしている。植物が他植物の影にならぬように伸長や屈曲をする際に、赤色/遠赤色光シグナルに加えて青色光シグナルも関与していることを示す論文がCurrent Biology 2016年12月19日号に2報出た。

スイス ローザンヌ大学Fankhauser ら[Current Biology (2016) 26:3280-3287.]は、シロイヌナズナの脱黄化した緑の芽生えに青色(B)光と赤色(R)もしくは遠赤色(FR)光を同じ方向から同時に照射し、B光に応答した屈光性がどう変化するかを見た。その結果、R光は屈光性を阻害し、FR光は胚軸の屈曲を強めることがわかった。自然環境では、植物はR/FR比を周囲の植物の認識に利用している。そこで、B光を芽生えの横から照射し、R/FR光を上から照射して屈光性を見たところ、この場合も高R/FR光は屈曲を阻害し、低R/FR光は屈曲を促進した。したがって、青色光による屈光性はR/FR比による調節を受けていると考えられる。フィトクロムやフォトトロピンの各種変異体で同様の試験を行ったところ、phot1 変異体とphot1 phot2 二重変異体は照射するR/FR光に関係なくB光に応答しなかったが、phot2 変異体のB光応答性は野生型と同等であった。したがって、緑色芽生えの胚軸屈曲はphot1が制御していることが示唆される。フィトクロムの変異体についても同様の試験を行なったところ、phyA 変異体の屈曲の変化は野生型と同等で、phyB 変異体とphyA phyB 二重変異体はR/FR光照射による屈曲の制御が見られなくなっていた。また、高R/FR光を照射したphyB 変異体と低R/FR光を照射した野生型のB光応答性は同程度の強度があった。これらの結果から、phyBはphot1に応答した屈光性を照射されるR/FR光に応じて調節していると考えられる。変異体の解析から、フォトトロピンのシグナル伝達に関与しているNPH3や、phyBの下流において避陰応答を促進しているPIF4/5/7は、緑色芽生えの屈光性に関与していることがわかった。PIFはYUC2YUC5YUC8YUC9 の発現を制御することでオーキシン生産を調節しており、屈光性においてもPIFはこれらのYUC 遺伝子の発現を制御することで緑色芽生えの胚軸屈曲を制御していた。これら一連の実験は実験室内で単色光源を用いて実施したものなので、phyB 変異体とpif4 pif5 pif7 三重変異体について、野外で丈の高い草で陰を作り屈光性を調査した。その結果、室内実験の結果と同様に、野生型とphyB 変異体は周囲の植物の陰を避けるように屈曲し、phyB 変異体は野生型よりも強い応答性を示したが、pif4 pif5 pif7 変異体は応答性が低下していた。よって、PIFとphyBが屈光性の制御にとって重要であることが自然環境においても確認された。また、青色光受容体クリプトクロムの変異体は、R/FR比に関係なく屈曲応答が高くなっていた。植物の陰では、R/FR比の変化に加えてB光も低下することから、自然環境では屈光性の調節にクリプトクロムも関与していると考えられる。陰による屈光性の調節は、R/FR比の程度に応じて段階的に変化した。以上の結果から、屈光性は光受容体のクロストークによって調節されていることが示唆される。

オランダ ユトレヒト大学Pierik ら[Current Biology (2016) 26:3320-3326.]は、自然条件での植物の陰ではR光とB光の両方が減少しているので、B光のみを減少させた際のシロイヌナズナ成熟個体の形態変化を観察した。その結果、低B光を24時間照射することで、白色光を照射した対照よりも葉柄が僅かに伸長することがわかった。興味深いことに、低B光と同時にR:FR比の低い光を照射すると、低R:FR光のみを照射した場合よりも伸長が促進されることがわかった。したがって、低B光は避陰反応におけるシグナルとして機能していることが示唆される。フィトクロムphyB 変異体は、低B光に対する応答を誇張させたが、低R:FR光による促進効果は見られなかった。クリプトクロムの変異体(cry1cry2cry1 cry2 )は、低B光と低R:FR光を組み合わせた際の応答性が見られなくなったが、低R:FR光には応答した。これらの結果から、光受容体のphyBおよびcry1とcry2は、それぞれR:FR光およびB光のシグナルの相互作用に関与していることが示唆される。フィトクロム相互作用因子のPIF4、PI5、PIF7は低R:FR光シグナルの主要な制御因子であり、PIF4とPIF5は低B光に応答することが知られている。各種光処理による葉柄伸長は、pif4 pif5 二重変異体やpif7 変異体では見られたが、pif4 pif5 pf7 三重変異体では見られなかった。したがって、低R:FR光+低B光に対する応答は、PIF4、PIF5、PIF7の複合作用によるものであると考えられる。PIFによって発現が正に制御されるATHB2IAA19 は低R:FR光+低B光によって低R:FR光単独照射よりも発現量が増加し、逆にPIFによって発現が抑制されるLONG HYPOCOTYL IN FAR-RED1HFR1 )は発現量が減少した。したがって、低B光は低R:FR光による遺伝子発現と伸長成長の両方に影響を及ぼしている。各種光処理の際の葉柄での遺伝子発現を比較したところ、低R:FR光処理をした際に制御を受ける遺伝子の数と制御の傾向は、低R:FR光+低B光処理をした際の遺伝子発現変化と最も多くの重複が見られた。また、低R:FR光+低B光処理をした際の遺伝子発現変化は、密植によって日陰となった植物での遺伝子発現変化と多くの重複が見られた。したがって、低R:FR光と低B光の組合せが光に対する植物相互の競争を誘導していることが示唆される。発現量が変化している遺伝子の約60%はPIFのターゲット遺伝子であることから、植物の陰では低R:FR光によるphyBの不活化と低B光によるcryの不活化が組み合わさることでPIFの絶対量と活性が増加し、PIFターゲット遺伝子の発現量変化が起こるのだと考えられる。低R:FR光+低B光処理および密植時に発現量が変化する遺伝子は、オーキシン関連とブラシノステロイド(BR)関連のものが多く含まれていた。阻害剤処理で両ホルモンの経路を阻害すると、一方のホルモンを阻害した場合よりも、低R:FR光+低B光による伸長応答の低下の程度が大きくなったが、伸長を完全には抑制しなかった。したがって、オーキシンとBR以外にもこの過程に関与する因子が存在するものと思われる。低R:FR光照射によってPIF5タンパク質量が増加し、低R:FR光+低B光照射でさらに増加したが、低B光照射ではPIF5タンパク質量の変化は見られなかった。HFR1タンパク質はPIF4やPIF5とヘテロ二量体を形成して活性を阻害する。低R:FR光照射はHFR1タンパク質量を増加させるが、低B光は減少させ、低R:FR光+低B光では変化は見られなかった。したがって、低B光はHFR1タンパク質量を減少させることでPIFの転写活性を高めていると思われる。低R:FR光+低B光でHFR1タンパク質量に変化は見られないが、HFR1 転写産物量は増加してた。HFR1はCOP1/suppressor of phytochrome(SPA)E3ユビキチンリガーゼ複合体のターゲットとなっており、COP1/SPA複合体は活性化したphyやcryによって阻害される。cop1-4 変異体は低R:FR光+低B光照射による葉柄伸長を起こさないことから、低B光による低R:FR光応答の促進はCOP1に依存しており、低R:FR光に低B光が加わることでCOP1ターゲットの分解が促進されると考えられる。以上の結果から、低B光は、PIFの作用を高めることで低R:FR光経路を強めていると考えられる。

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HP更新)「バイケイソウ考 その11」を追加しました

2017-01-21 16:38:10 | ホームページ更新情報

私のHP「Laboratory ARA MASA」のバイケイソウプロジェクトに「バイケイソウ考 その11 2016年のバイケイソウ」を追加しました。HPの更新はだいぶ疎かになっていますが、ブログで書き留めているように、観察は箱根と北海道でちゃんと続けています。バイケイソウ観察についての2016年の総括を、バイケイソウ考 その11としてまとめてみました。2017年のバイケイソウ観察は4月から開始します。まずは、昨年開花した株の子ラメット数の調査から始めます。2013年の一斉開花から4年が経過し、昨年は少しですが花成個体が見られました。今年はどのくらい花成個体が出現するでしょうか。楽しみです。

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論文)温度形態形成の概日変化

2017-01-09 08:19:19 | 読んだ論文備忘録

TOC1-PIF4 interaction mediates the circadian gating of thermoresponsive growth in Arabidopsis
Zhu et al. Nature Communications (2016) 7:13692.

DOI: 10.1038/ncomms13692

夕方に発現する概日時計タンパク質のTIMING OF CAB EXPRESSION1(TOC1)は、PIF4等の幾つかのフィトクロム相互作用因子と相互作用をすることが知られている。しかしながら、TOC1-PIF4相互作用の生理的機能は明らかとなっていない。米国 カーネギー研究所Wang らは、クロマチン免疫沈降シークエンシング(ChIP-Seq)アッセイから、TOC1がターゲットとする遺伝子の約半数はPIF4のターゲット遺伝子でもあることを明らかにした。さらに、ターゲット遺伝子におけるPIF4とTOC1の結合部位は近接していることがわかった。したがって、TOC1とPIF4はゲノム上の同じ領域に結合していることが示唆される。PIF4が結合するG-boxモチーフは、TOC1とPIF4の両方が結合するターゲット遺伝子のTOC1結合領域に多く見られるが、TOC1のみが結合するターゲット遺伝子では殆ど見られなかった。TOC1のホモログであるPSEUDORESPONSE REGULATOR5(PRR5)も、TOC1と同様に、PIF4と相互作用をし、PIF4とターゲット遺伝子が重複し、結合部位が近接していた。シロイヌナズナ葉肉細胞プロトプラストを用いいた一過的発現解析試験から、PIF4によって転写活性が促進されるIAA19 プロモーターは、TOC1の共発現によって活性促進が抑制されることがわかった。この時、PIF4 の発現量やPIF4のターゲット遺伝子への結合には変化は見られないことから、TOC1はPIF4と相互作用をすることで直接PIF4の転写活性化の能力を抑制していると考えられる。PIF4は高温下での胚軸伸長促進のような温度形態形成に関与していることが知られている。toc1-2 変異体は高温(29℃)条件下で野生型よりも胚軸が伸長し、この促進効果はpif4 変異が導入されることによって打ち消された。したがって、TOC1はPIF4の上流で高温による胚軸伸長を抑制していると考えられる。TOC1PRR5 の過剰発現個体は高温処理による胚軸伸長が見られなかった。さらに、TOC1やPRR5が蓄積するzeitlupeztl-105 )変異体は高温に対する感受性が低下していた。したがって、TOC1とPRR5は温度形態形成を抑制していると考えられる。YUC8IAA29 といったPIF4ターゲット遺伝子の高温による活性化は、TOC1PRR5 の過剰発現によって打ち消された。したがって、TOC1はPIF4の活性を抑制することで温度形態形成を抑制していると考えられる。TOC1PRR4 はそれぞれツァイトゲーバー時間(ZT)のZT12-14とZT10-12に発現のピークが見られる。ZT0-4に高温処理をした植物体はPIF4 RNA量は25%程度増加しているが、YUC8 RNA量は3倍以上増加していた。一方、ZT8-12およびZT12-16に高温処理した植物体ではPIF4 RNA量が5倍以上増加しているが、YUC8 の発現量に変化は見られなかった。そして、ZT16-20とZT20-24に高温処理をした場合にはPIF4YUC8 の発現量が共に増加していた。高温処理によってPIF4 の発現量が増加するZT8-16にYUC8 の発現量が増加していないのは、TOC1のような夕方に特異的な因子がPIF4によるターゲット遺伝子の発現活性化を抑制していることによるものと考えられる。夜遅くにTOC1量が減少すると、おそらく高温処理で増加したPIF4がYUC8 を活性化し、温度に応答した成長が高まると考えられる。toc1 変異体、toc1 prr5 二重変異体ではZT12、ZT16でのPIF4 の発現量が野生型よりも増加していることから、TOC1とPRR5は夜の始めのPIF4 の発現直接抑制していると考えられる。夕方のYUC8 の発現量はtoc1 変異体、toc1 prr5 二重変異体においても低いが、高温処理による発現量の増加については幾分かは見られた。したがって、TOC1とPRR5はPIF4による転写活性化活性と温度形態形成の概日リズムによる制御を行なっていると考えられる。29℃で育成した芽生えは20℃で育成した芽生えよりも45℃の熱ストレスに対する耐性を示すようになるが、そのような適応効果はpif4 変異体では低下しており、PIF4 過剰発現個体では20℃で育成した植物体も熱ストレス耐性が高くなっていた。また、TOC1 過剰発現個体は29℃育成による熱耐性獲得の程度が野生型よりも低く、toc1 prr5 二重変異体は高くなっていた。しがし、20℃で育成した個体の熱ストレス感受性はTOC1 過剰発現個体もtoc1 prr5 二重変異体も同程度であった。これらの結果から、高温耐性の獲得にはPIF4の活性化とTOC1量の減少が必要であり、TOC1量が低下している日中に受けた高温によるPIF4の活性化が、熱ストレスからの植物の生存を高めていると思われる。以上の結果から、TOC1とPIF4との相互作用は、温度変化に応答した成長の概日リズムによる調節を行なっており、温度や光量の日変化に合わせて植物の成長を適応させる作用があると考えられる。

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論文)微生物が放出する揮発性物質による植物の成長促進

2016-12-27 05:46:08 | 読んだ論文備忘録

Volatile compounds emitted by diverse phytopathogenic microorganisms promote plant growth and flowering through cytokinin action
Sanchez-Lopez et al. Plant, Cell and Environment (2016) 39:2592-2608.

doi: 10.1111/pce.12759

植物の葉圏、根圏および内部に生息する微生物は様々な物質を放出し、植物の成長や形態形成に影響をおよぼしている。スペイン 農業バイオテクノロジー研究所のPozueta-Romero らは、寒天培地で育成しているシロイヌナズナの傍らに様々な真菌や細菌をお互いが物理的に接触しないようにセットし、微生物から放出される揮発性物質(VC)によるシロイヌナズナ成長を調査した。その結果、試験した微生物が放出するVCはシロイヌナズナの生重量を2~5倍増加させることがわかった。また、殆どの微生物が放出するVCは花成誘導やデンプン蓄積を促進した。放出されるVCに対する応答の程度は微生物種によって異なっており、微生物から放出される様々なVCの混合物に植物の様々なシグナル伝達経路が応答していると考えられる。このような微生物由来VCによる成長促進は、トウモロコシやピーマンを用いた実験においても観察された。代表的な土壌菌で植物病原菌として知られているアルテルナリア(Alternaria alternata )が放出するVCに晒されたシロイヌナズナの葉は、対照よりも炭酸同化効率が向上しており、糖類やカルビン‐ベンソン回路の中間代謝産物の含量が増加していた。アルテルナリアのVC処理によって葉のアブシジン酸含量がやや減少し、イソペンテニルアデニンリボシド(iPR)やtrans-ゼアチン(tZ)といった色素体のメチルエリスリトールリン酸(MEP)経路で合成されるサイトカイニン類の含量が増加した。そこで、サイトカイニン酸化酵素を過剰発現させた形質転換体(35S:CKX1)やサイトカイニン感受性が低下した変異体akh2/3 をVC処理したところ、ロゼット葉の生重量の増加、花成誘導、デンプン蓄積の促進といった効果が見られなくなっていた。しかし、ahk2/4 変異体やahk3/4 変異体は野生型と同じようにVCに応答した。したがって、アルテルナリアのVCによる種々の効果はサイトカイニンによって制御されており、この応答は主にAHK2、AHK3を介してなされていると考えられる。植物体を16時間明期/8時間暗期で育成し、アルテルナリアのVCに明期もしくは暗期にのみ晒して応答性を見たところ、明期に処理した場合にのみ成長促進、デンプン蓄積、花成誘導が見られ、暗期に処理した場合には効果は見られなかった。したがって、アルテルナリアのVCによる植物の変化は光に依存していると考えられる。シロイヌナズナをアルテルナリアのVCで処理することで、530遺伝子の発現量が増加し、496遺伝子の発現量が減少した。発現量の変化した遺伝子は、光捕獲、デンプン合成および分解、花成、細胞壁合成、アントシアニンおよびカロテノイドの代謝、酸化ストレス防御等、様々な過程のものが含まれていた。VCに応答する遺伝子の多くは、光、オーキシン、エチレン、ジャスモン酸、ジベレリン、硝酸、糖類による制御を受けるものであった。細菌と真菌では放出する揮発性物質が異なることから、アルテルナリアのVCで処理した葉と、植物の成長に促進的に作用する根圏細菌の枯草菌(Bacillus subtilis )GB03のVCで処理した葉で遺伝子発現を比較した。その結果、枯草菌のVCによって発現量が低下した254遺伝子のうち101遺伝子はアルテルナリアのVCによっても発現量が低下し、枯草菌のVCによって発現量が増加した378遺伝子のうち99遺伝子はアルテルナリアのVCによっても発現量が増加した。また、枯草菌とアルテルナリアのどちらのVCで処理しても発現量が変化した遺伝子の25%はサイトカイニン応答遺伝子であった。以上の結果から、微生物が放出する揮発性物質は、それが植物病原菌由来のものであっても、植物の成長にとって有益な効果をもたらし、この過程にはサイトカイニンが関与していると考えられる。

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論文)シスに作用する非コードアンチセンス転写産物による種子休眠の制御

2016-12-23 09:21:51 | 読んだ論文備忘録

Control of seed dormancy in Arabidopsis by a cis-acting noncoding antisense transcript
Fedek et al. PNAS (2016) 113:E7846-E7855.

doi: 10.1073/pnas.1608827113

シロイヌナズナのQTL解析から種子休眠を制御しているDelay of Germination 1DOG1 )遺伝子が同定された。種子休眠におけるDOG1タンパク質の機能は不明だが、DOG1 の発現量と種子休眠の強度には相関がある。DOG1 の発現は種子特異的であり、休眠が確立する種子成熟の間に発現量が最大となる。DOG1 転写産物は、3つのエクソンからなる長いmRNA lgDOG1 と2つのエクソンの短いmRNA shDOG1 のポリアデニル化部位が異なる2種類のmRNAが存在している。shDOG1 は翻訳され種子休眠に関与していることが確認されているが、lgDOG1 は生体内では翻訳されす、dog1 変異体の弱い種子休眠を相補しない。ポーランド科学院生化学生物物理学研究所Swiezewski らは、アブラナ科植物のDOG1 遺伝子の塩基配列を比較し、第3エクソンと第2イントロンに保存性の高い領域があることを見出した。しかしながら、第3エクソンがコードするポリペプチド配列には保存性は見られなかった。したがって、DOG1 の第2イントロンから第3エクソンにかけての領域はDNAレベルで進化的に保存されおり、何らかの機能があるものと推測される。DOG1 遺伝子を詳細に解析したところ、アンチセンス鎖に幾つかのポリアデニル化部位が存在し、5’RACEから、DOG1 遺伝子第2イントロン内から転写が始まりキャップ構造を持ったアンチセンス転写産物asDOG1 を発見した。asDOG1 の転写開始点は、shDOG1 のポリアデニル化部位と一致しており、前述した第2イントロンから第3エクソンにかけての保存領域にあった。asDOG1 の3’末端はDOG1 センスmRNAの転写開始点まできており、シスに作用する機構によってDOG1 遺伝子の発現を制御する可能性が推測される。asDOG1 の半減期は約46分で、タンパク質をコードしている半減期の短い転写産物と同程度であり、ncRNAとしては比較的長い。DOG1 のアンチセンスとセンスの発現プロファイルは相反しており、asDOD1 は種子での発現よりも芽生えでの発現が高くなっていた。DOG1 遺伝子のセンスプロモーター領域およびアンチセンス側のプロモーター領域と推測される第2エクソンから第3エクソンまでの領域にレポーターとしてLUC 遺伝子を融合したコンストラクトを導入した形質転換体でLUCシグナルを観察したところ、両プロモーターともそれぞれの転写産物の発現プロファイルと同じパターンでLUCシグナルが検出された。したがって、DOG1 遺伝子下流領域ではアンチセンス鎖の転写が行われ、独立したプロモーターを有していることが示唆される。DOG1 遺伝子センスプロモーター領域にT-DNAが挿入された機能喪失変異体dog1-3 は、センス転写産物量が減少しているが、asDOG1 転写産物量は野生型と同等であった。よって、センスプロモーター活性はアンチセンスプロモーターによる転写には影響しないと考えられる。これらの結果から、DOG1 アンチセンス転写産物は独立したプロモーターによって転写されており、このプロモーター領域において塩基配列が保存されていることは、このプロモーターが進化的に保存されていることを示唆している。dog1-5 変異体は機能獲得変異体で、shDOD1 転写産物量とDOG1タンパク質量が野生型よりも多くなっている。dog1-5 変異体はDOG1 遺伝子の第3エクソンにT-DNAが挿入されており、新鮮種子中のasDOG1 転写産物量が野生型よりも少なくなっていた。したがって、dog1-5 変異体での強い種子休眠の表現型、shDOG1 転写産物量の増加は、DOG1 アンチセンスの機能喪失の二次的な効果であると推測される。種子成熟過程におけるDOG1 遺伝子の発現を経時的に追ったところ、shDOG1 転写産物もasDOG1 転写産物も種子が成熟するにつれて徐々に増加し、shDOG1 は種子が成熟しただ段階で転写産物量が最大となりその後急速に減少したが、asDOG1 は長角果の成熟後期まで増加が継続した。shDOG1 転写産物量は種子を浸漬させることで減少するが、asDOG1 も同様の変化を示した。dog1-5 変異体の種子成熟過程ではasDOG1 転写産物量の増加が殆ど見られず、成熟後期の転写産物量は野生型の1/5程度になっていた。一方、shDOG1 転写産物量は野生型の5倍に増加していた。LUC 遺伝子を完全長のDOG1 ゲノム遺伝子で発現させるコンストラクト(pDOG1-LUC::DOG1 )とDOG1 アンチセンスプロモーター領域を欠いたゲノム遺伝子で発現させるコンストラクト(psDOG1::DOG1 )でLUC の発現量を比較したところ、psDOG1::DOG1 の方がpDOG1-LUC::DOG1 よりもはるかに高い発現を示した。したがって、T-DNAの挿入やプロモーター領域の欠失によってasDOG1 の発現が抑制されるとDOG1 センス転写産物が増加する。よって、asDOG1DOG1 発現の負の制御因子として作用し、種子休眠を抑制していると考えられる。dog1-5 変異体と野生型とのヘテロ接合F1種子はdog1-5 変異体よりも僅かに種子休眠が弱くなった。したがって、野生種親由来のアンチセンス転写産物が存在していても変異体由来の種子休眠は強く作用していることが示唆される。dog1-3 変異体とdog1-5 変異体とのF1種子は、shDOG1 の発現量がdog1-5 変異体の半分以下にはなっておらず、センスDOG1 遺伝子が1コピー欠失した際に推測される転写産物量とほぼ一致していた。また、asDOG1 をトランスに発現させた系統でセンスDOG1 の転写産物量に変化は見られなかった。したがって、別の対立遺伝子からトランスとして発現したasDOG1 はセンスDOG1 転写産物量を低減させる能力はなく、asDOG1 はシスに作用し、転写そのものがセンスDOG1 の転写制御にとって重要であると考えられる。

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