Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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植物観察)北海道バイケイソウ花成個体調査 サロベツ

2017-06-18 19:25:30 | 植物観察記録

今日はサロベツ方面で調査を行ないました。去年から新たに観察を始めた兜沼周辺の林床のコバイケイソウ群生地で花成個体数を調査しました。昨年は88個体の花成個体がありましたが、今年は76個体でした。花成した株は昨年とは異なると思いますが、数としては昨年とほぼ同数で花成個体数の大きな変化は認められませんでした。コバイケイソウもバイケイソウと同様に花成個体数に年変化があるのかはもう少し長期間中佐する必要がありますが、兜沼の調査地では今年の花成個体数は昨年と同程度ということになりました。サロベツ原野の草原生のコバイケイソウでは花成個体数がやや多いように感じられました。これまでの観察でコバイケイソウの花が全く見られなかった年というのはなかったと思いますので、コバイケイソウの花成は大きな年変動を起こさないのかもしれません。

 

兜沼周辺の林床コバイケイソウの花成個体数は昨年と同程度

 

コバイケイソウの両性花は緑の雌蕊が目立つので雄花との区別がつきやすい

 

サロベツ原野のコバイケイソウ

 

サロベツ湿原センターの木道では2株のバイケイソウが開花していた

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植物観察)北海道バイケイソウ花成個体調査 礼文島

2017-06-17 23:10:32 | 植物観察記録

北海道へバイケイソウ花成個体数調査に行きました。最初は礼文島から。ここでは昨年から遊歩道上の特定エリア内に生えている草原生バイケイソウの花成個体数を数えるようになりました。昨年が50個体であったのに対して、今年は188個体が花成していました。昨年と比べ約4倍花成個体数が増加しており、箱根において観察した花成個体数の増加と呼応しています。やはり今年はバイケイソウの花の当たり年、一斉開花年と言えるのでしょうか。他の2箇所の調査地(旭川、野幌)の結果が楽しみです。

 

今年は礼文島のバイケイソウ花成個体数はやや多いように思われる

 

礼文島のバイケイソウの葉にも虫食いが見られる

 

おそらくこの巻貝がバイケイソウの葉を食べている。オカモノアラガイか?

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論文)同じ揮発性物質が送粉者と捕食者を誘引する

2017-06-15 05:37:30 | 読んだ論文備忘録

Tissue-Specific Emission of (E)-α-Bergamotene Helps Resolve the Dilemma When Pollinators Are Also Herbivores
Zhou et al. Current Biology (2017) 27:1336-1341.

DOI: 10.1016/j.cub.2017.03.017

(E)-α-ベルガモテンは、食害を受けた植物の葉が局所的もしくは全身で放出するセスキテルペンで、捕食者であるヒメオオメカメムシ属(Geocoris spp.)を誘引することで間接的な防御に関与しているが、花からも放出されている。ドイツ マックス・プランク化学生態学研究所Xu らは、(E)-α-ベルガモテンの食害による誘導と花からの放出について野生タバコN. attenuata を用いて解析した。N. attenuata の花は主に夜間に(E)-α-ベルガモテンを放出している。放出は花冠が開く午後6時頃から急速に増加し、午後8時から午前1時にかけて放出量が最大となり、その後は朝にかけて減少していった。この放出パターンは、花が放出する主要な誘引物質であるベンジルアセトンの放出パターンと類似しており、送粉者であるタバコスズメガ(M. sexta )の活動と一致している。葉では、恒常的に(E)-α-ベルガモテンを放出しており、朝の放出量が最大で、午前2時までに徐々に減少していくが、放出量は非常に少ない。葉に傷を付けて傷口にタバコスズメガ幼虫の口内分泌物を付けることで食害を模倣すると、(E)-α-ベルガモテンの放出は処理によって誘導をかけた日の午後12時から8時の間と翌日の午前6時から10時の間の2回のピークが見られた。この食害処理による(E)-α-ベルガモテンの放出時間帯は、フィールドでのヒメオオメカメムシの活動や発生量と一致していた。N. attenuata の自然系統23種について花および食害誘導した葉からの(E)-α-ベルガモテン放出量を見ると、系統間での差はあるが、両器官の放出量に相関が見られた。したがって、系統間での(E)-α-ベルガモテン放出量の差異は花と食害誘導葉とも同じ遺伝学的な制御によるものであることが示唆される。(E)-α-ベルガモテン放出量の少ないアリゾナ産の自殖系統と放出量の多いユタ産の自殖系統を交雑して作成したアドバンストインタークロス組換え近交系(AI-RIL)集団を用いてQTLマッピングを行ない、(E)-α-ベルガモテンの食害誘導放出を制御する2つのQTL遺伝子座(QTL1、QTL2)が見出された。QTL1とQTL2は優性で相加的に作用した。主要なQTL遺伝子座のQTL2についてトマトゲノムのシンテニー領域の解析を行ない、テルペンシンターゼ(TPS)クラスター内のTPS38 が見出された。NaTPS38N. attenuata の葉の食害によって強く誘導された。また、NaTPS38 は花の花冠筒部で強く発現していたが花冠では発現していなかった。大腸菌でNaTPS38 を発現させた試験から、NaTPS38 は(E)-α-ベルガモテン生合成に関与していることが示唆された。ウイルス誘導遺伝子サイレンシング(VIGS)でNaTPS38 をサイレンシングしたN. attenuata は、花や葉、メチルジャスモン酸処理した葉での(E)-α-ベルガモテン放出量が減少していた。花や食害誘導葉でのNaTPS38 転写産物量は、N. attenuata 自然系統23種の間で(E)-α-ベルガモテン放出量と相関が見られた。これらの結果から、N. attenuata における食害誘導葉や花での(E)-α-ベルガモテンの放出はNaTPS38 を介してなされていると考えられる。NaTPS38の生成物はセスキテルペンだが、NaTPS38 はモノテルペンシンターゼクラスター(TPS-bクレイド)に属している。系統樹解析から、TPS38 はナス科植物特異的であることがわかった。モノテルペンシンターゼは多くの場合プラスチドに局在するが、セスキテルペン類は主に細胞質で合成される。NaTPS38タンパク質は細胞質に局在しており、祖先型から葉緑体トランジットペプチドを喪失したことが示唆される。また、細胞内局在以外にも、NaTPS38 は進化の過程においてN. attenuata 集団で正の自然選択がなされてきたと思われる。花での(E)-α-ベルガモテン放出の生態学的な機能を調査するために、タバコスズメガの触角電図を計測したところ、花のヘッドスペースに相当する(E)-α-ベルガモテンの濃度で弱い反応が見られることが判った。また、この濃度の(E)-α-ベルガモテンでガの口吻においてニューロン反応が見られた。(E)-α-ベルガモテンはスズメガが口吻を伸ばして周囲を探索するプロービング行動を延長させる効果があり、(E)-α-ベルガモテンを放出しないN. attenuataVIGS-NaTPS38 )の花よりも放出する花の方がプロービング時間が長かった。観察されたプロービング行動の変化が植物の適応度に対して直接の影響があるかを調査するために、半自然環境の巨大テントの中にタバコスズメガを放ち、花冠筒部に(E)-α-ベルガモテンを添加した除雄花と対照の除雄花の稔実を比較したところ、(E)-α-ベルガモテンの添加は蒴形成数と花当りの種子数を増加させることがわかった。したがって、花の(E)-α-ベルガモテンはタバコスズメガを介したN. attenuata の他家受粉を高めていることが示唆される。以上の結果をまとめると、N. attenuata の花はNaTPS38 を発現して(E)-α-ベルガモテンを夜間に放出し、タバコスズメガによる授粉を促進するが、一部の送粉者は同じ植物の葉に卵を産み、葉が孵化した幼虫に食べられてしまう。しかし、タバコスズメガ幼虫によって食害を受けた葉は日中に同じ遺伝子を発現させて同じ物質を放出して幼虫の捕食者を誘引し、結果的に食害を抑える。したがって、NaTPS38 とその生成物である(E)-α-ベルガモテンの組織特異的かつ時間特異的な発現は防御と送粉者誘引の両方に寄与し、自らに適合した送粉者が貪欲な植食者でもあるというN. attenuata が直面しているジレンマの解決に貢献している。さらに、植食者と送粉者との相互作用は、植物の進化に相乗的もしくは相加的に作用しうることが示唆される。

マックス・プランク化学生態学研究所のプレスリリース

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植物観察)箱根

2017-06-11 22:21:43 | 植物観察記録

箱根へバイケイソウの観察に行ってきました。関東は先週梅雨入りし、バイケイソウの生える林床は大分薄暗くなってきました。花成しなかった個体は葉が黄変し始め、偽茎も倒れ始めました。バイケイソウハバチの食痕も見られるようになりました。ですが、昨年の同じ時期と比べると、元気なバイケイソウが多いようです。3ヶ所の調査地での花成個体数は、昨年よりも4~5倍多くなっていました。この三国山エリアでの花成個体数調査は昨年から始めたので、この数が一斉開花に相当するものなのかは判りませんが、かつて箱根神山エリアで観察していた時の経験からすれば、群生地あたりの花成個体の頻度は一斉開花と言えるくらいの多さとなっています。来週は北海道エリアで調査を行ないますので、そこでの花成個体数がどのくらいなのか、2013年並に多いのかが興味がもたれるところです。

 

バイケイソウの葉が黄変し始めたが、昨年の同じ時期と比べると元気な個体が多いようだ

 

花成個体は昨年よりも4~5倍多い

 

バイケイソウハバチの食痕が目立つようになってきた。

 

葉を裏返すとハバチの幼虫がいた

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論文)ジャスモン酸の細胞内分布を制御するトランスポーター

2017-06-05 05:57:47 | 読んだ論文備忘録

Transporter-Mediated Nuclear Entry of Jasmonoyl-Isoleucine Is Essential for Jasmonate Signaling
Li et al. Molecular Plant (2017) 10:695-708.

DOI:10.1016/j.molp.2017.01.010

ジャスモン酸(JA)は細胞質においてイソロイシン(Ile)と結合して生物活性のあるJA-Ileとなり、核内でユビキチンリガーゼ複合体を形成しているCOI1に結合することでJAZタンパク質のユビキチン化、分解をもたらしている。しかしながら、JA-Ileを核内へ輸送する特異的トランスポーターの存在については明らかとなっていない。中国農業大学のLiu らは、JA処理をすることでシロイヌナズナの雄ずいにおいて発現が誘導されるABCトランスポーター遺伝子を酵母で発現させ、JAが酵母の成長を阻害する作用を基にトランスポーターのスクリーニングを行なった。その結果、AtJAT1/AtABCG16を発現する酵母はJA耐性を示し、細胞内JA保持量が少ないことを見出した。したがって、AtJAT1/AtABCG16は酵母細胞膜上でJAの排出を行なっていることが示唆される。シロイヌナズナをメチルジャスモン酸(MeJA)処理することでAtJAT1/AtABCG16 転写産物量は急速に増加し、2時間後には最大となった。atjat1 T-DNA挿入変異体は草丈が伸び、葉が長くなり、花や種子が大型化した。これは細胞の大きさが拡大したことによるものであった。atjat1 変異体ではJAによって発現が誘導されるOPR3JAZ5JAZ7 やJAシグナル伝達に関与する転写因子遺伝子のMYB21MYB24 の発現量が野生型よりも低くなっていた。 したがって、AtJAT1/AtABCG16はCOI1を経由したJAシグナル伝達経路の活性化に関与していると考えられる。GFP-AtJAT1融合タンパク質や免疫金による観察から、AtJAT1は細胞膜と核膜の両方に局在していることが示された。単離核を用いた実験から、AtJAT1/AtABCG16はJA-Ileの核内への取込みを高い親和性で行なうことが判った。この取込みはABCトランスポーター阻害剤によって阻害され、ATPに依存していた。また、AtJAT1/AtABCG16によるJA-Ileの取込みはコロナチン(COR)によって阻害されたが、JA、MeJA、リノレン酸、サリチル酸、アブシジン酸、グルコシノレートでは阻害されなかった。したがって、AtJAT1/AtABCG16は核膜を介したJA-Ileの取込みに関与していることが示唆される。標識したJAを野生型の細胞に与えると標識物は細胞質と核の両方で検出されるが、細胞質でのJA-Ile形成を触媒するJAR1が機能喪失したjar1 変異体の細胞では核の標識物量が減少して細胞質で多く見られるようになった。したがって、核内の標識物はJA-Ileであると考えられる。野生型植物の根において、JAZ1-GFP融合タンパク質はJA処理によって速やかに核内から消失するが、atjat1 変異体では消失しなかった。したがって、AtJAT1/AtABCG16はCOI1によるJAZタンパク質の分解に関与していることが示唆される。標識したJAを用いたい実験から、atjat1 変異体懸濁培養細胞はJA蓄積量が多く、AtJAT1 を過剰発現させた細胞では少ないことがわかった。したがって、細胞膜上のAtJAT1/AtABCG16は細胞外へのJAの排出に関与していることが示唆される。また、細胞膜上のAtJAT1/AtABCG16はJAのみを輸送基質としていた。これらの結果から、AtJAT1/AtABCG16は核膜上ではJA-Ileの核内への取り込みを、細胞膜上ではJAの細胞外への排出を行なっていると考えられる。

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論文)シュート切除による根の緑化

2017-05-31 13:17:38 | 読んだ論文備忘録

Shoot Removal Induces Chloroplast Development in Roots via Cytokinin Signaling
Kobayashi et al. Plant Physiology (2017) 173:2340-2355.

doi:10.1104/pp.16.01368


東京大学小林らは、以前に、シロイヌナズナの根はシュートから輸送されるオーキシンによって葉緑体の分化が抑制されており、シュートを切り取ることで葉緑体を発達させることを見出した。この根での葉緑体の発達にはサイトカイニンが関与しており、根をサイトカイニン処理すると光合成関連遺伝子の発現量が増加する。しかしながら、サイトカイニンによる根の緑化について詳細な分子機構は明らかとなっていない。そこで、シュート除去に応答した根でのサイトカイニンシグナルの活性化について解析を行なった。サイトカイニンシグナル伝達の正の制御因子であるタイプB ARABIDOPSIS RESPONSE REGULATOR(ARR)の機能喪失変異体の解析から、シュート除去後の根でのクロロフィル(Chl)蓄積にタイプB ARRが関与していることが示された。傷害ストレス応答において、タイプB ARRを介したサイトカイニンシグナル伝達は、転写因子WOUND INDUCED DEDIFFERENTIATION1(WIND1)によって活性化されることが知られている。WIND1にSUPERMANのサプレッションドメイン(SRDX)を付加したキメラタンパク質をWIND1 プロモーター制御下で発現させた系統は、シュート除去した根のChl蓄積量が野生型よりも低くなった。よって、WIND1は根の緑化に関与していることが示唆される。シュート除去した根では、光合成関連の核コード遺伝子(LHCA4LHCB6CHLHRBCS )やプラスチドコード遺伝子(psaApsbArbcL )の発現量が増加していた。また、葉緑体分化に関与している核コード転写因子のクラスB GATA転写因子(GNCGNL)、GLK転写因子(GLK1GLK2)の遺伝子のうち、GNL はシュート除去によって発現量が大きく増加し、GNC は適度に増加したが、GLK1GLK2 は有意な増加を示さなかった。プラスチドでの転写に関与しているrpoB やシグマ因子(SIG)遺伝子の発現量もシュート除去によって増加した。光合成組織では葉緑体分化と共にパーオキシゾームやミトコンドリアも機能転換する。シュート除去した根では光呼吸関連遺伝子の発現量が増加し、特にミトコンドリアのグリコール酸オキシダーゼをコードする遺伝子の発現量が大きく増加した。根で特異的に発現する遺伝子は、シュート除去に応答した発現パターンの変化を示さなかった。タイプB ARRのarr1 arr12 二重変異体では、幾つかの光合成関連遺伝子の発現量が増加し、Chl蓄積量も僅かに高くなるが、シュート除去したarr1 arr12 二重変異体での光合成関連遺伝子の発現量は野生型よりも低く、プラスチドでの転写に関与する遺伝子の発現量は増加せず、ミトコンドリアやパーオキシゾームの機能に関与する遺伝子の発現量は変化しなかった。したがって、ARR1とARR12はシュート除去した根で葉緑体分化する際の転写誘導に関与していると考えられる。シュート除去した根の葉緑体では、光化学系の能力を示す各種指標がより葉に近いものへと向上しており、この光合成効率の変化にはARR1とARR12を介したサイトカイニンシグナルが関与していた。無傷のgnc gnl 二重変異体の根のChl含量は野生型と同等だが、シュート除去後のChl増加量が野生型よりも低かった。よって、GNCとGNLはシュート除去に応答した根でのChl蓄積に関与している。glk1 glk2 二重変異体の無傷の根のChl含量は野生型よりも低く、シュートを除去した根のChl含量も野生型よりも低いが、シュート除去によるChl増加の程度は両者で同等であった。よって、GLK転写因子はChl蓄積において無傷の根でもシュート除去した根でも恒常的に機能していることが示唆される。GNCGNL を過剰発現させた植物の無傷の根はChl蓄積量が大きく増加していた。シュートを切除したgnc gnl 二重変異体の根でも光合成関連遺伝子の発現量は増加したが、野生型と比べると増加量は少なかった。一方、GNL 過剰発現個体では、無傷の根における光合成関連遺伝子の発現量が野生型よりも高くなっていた。根のChl蓄積には光シグナルに関与する転写因子LONG HYPOCOTYL5(HY5)が必須であり、hy5 変異体の根はシュートを切除してもChlを蓄積しなかった。また、hy5 変異体でGNC もしくはGNL を過剰発現させても根のChl含量は増加しなかった。したがって、HY5はクラスB GATA転写因子による根の緑化に必要であることが示唆される。シュート切除したglk1 glk2 二重変異体の根の光化学系Ⅱ実効量子収率(YⅡ)は野生型と同等であることから、GLKは根の光合成系構築には関与していないと考えられる。gnc gnl 二重変異体もシュート切除後にYⅡが増加したが、増加の程度は野生型よりもやや低かった。GNCGNL を過剰発現させた系統はYⅡが増加したが、GLK1 を過剰発現させた系統ではYⅡに変化は見られなかった。したがって、クラスB GATA転写因子は根の光合成の制御に関与していると考えられる。オーキシンシグナル阻害剤のp-クロロフェノキシイソ酪酸(PCIB)処理は、無傷の根のChl含量を増加させた。この増加は、ahk2 ahk3 二重変異体やarr1 arr12 二重変異体でも見られた。したがって、オーキシンはタイプB ARRを介したサイトカイニンシグナルとは独立して根の緑化を制御している。シュート切除した根へのオーキシン処理は、psbAGOX1 の発現を抑制し、LHCB6CHLHrbcL の発現を減少させた。また、GNL の発現量増加を阻害した。よって、オーキシンはシュート切除した根での遺伝子発現に強く影響していることが示唆される。オーキシンはシュート切除した根の光合成活性に対しても抑制的に作用した。以上の結果から、シュートを切除した根では、ARR1とARR12を介したサイトカイニンシグナルによって下流に位置する傷害シグナルが機能して葉緑体の発達に関与する遺伝子が活性化され、根の緑化や光合成能力の活性化が誘導されると考えられる。

 

東京大学のプレスリリース

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植物観察)箱根

2017-05-28 21:55:59 | 植物観察記録

箱根へバイケイソウの観察に行ってきました。今年花成した個体は花序が伸び始めました。花成しなかった個体との草丈の差がまだそれほど大きくないので、正確な花成個体数を数えられてはいませんが、調査している3ヶ所のの群生地のうち1ヶ所は花成個体数が昨年の3倍程度あり、残り2ヶ所は昨年と同程度でした。昨年もほぼ同じ時期(2016年5月29日)に観察しており、その時の写真を見ると、花成しなかった個体は偽茎が倒れ始め、葉に褐変部位が見られるようになり、バイケイソウハバチの食痕が確認されるようになっていましたが、今年はまだ全ての個体がピンと立っていて青々しており、バイケイソウハバチの食痕も確認されませんでした。今年は植物も虫も遅れ気味(昨年が早かった)なのでしょうか。

 

まだ全体的に青々しており、枯れ始めた個体は見られない

 

花成した個体は花序が伸長し始めた

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論文)サリチル酸による根の成長制御

2017-05-22 22:00:08 | 読んだ論文備忘録

ABNORMAL INFLORESCENCE MERISTEM1 Functions in Salicylic Acid Biosynthesis to Maintain Proper Reactive Oxygen Species Levels for Root Meristem Activity in Rice
Xu et al. Plant Cell (2017) 29:560-574.

doi:10.1105/tpc.16.00665


中国農業科学院 農業資源・農業区画研究所のYi らは、イネの根分裂組織の活性に影響する遺伝子を同定するために、γ線照射によって人為的突然変異を生じた30000のイネ集団の中から根の短い変異体を単離し、abnormal inflorescence meristem1aim1 )と命名(シロイヌナズナでの同一遺伝子の変異体名に由来)して解析を行なった。aim1 変異体幼苗の根および不定根は野生型よりも短いが、側根の長さは正常であった。この表現型は根の成長が遅いことが原因となっており、根端の構造は正常であるが、分裂組織が野生型よりも小さくなっていた。チミンアナログEdUの取込みやG2-M期マーカーCYCB1;1 の発現量から、aim1 変異体は根の分裂活性が低下していることが確認された。aim1 変異は劣性の変異で、Os02g17390の開始コドンから202 bpの位置に26 bpの欠失があり、68番目のアミノ酸残基以降のコドンが変化し未成熟終止コドンが形成されていた。Os02g17390は3‐ヒドロキシアシル‐CoAデヒドロゲナーゼをコードしており、AIM1タンパク質はパーオキシゾームに局在していた。また、発現の組織特異性を見ると、根端部では根冠、表皮や中心柱で発現し、静止中心では発現していなかった。根の成熟領域では、根毛、外皮、中心柱、内皮、皮層において発現しており、地上部では葉において恒常的に強く発現していた。aim1 変異体のジャスモン酸(JA)量は野生型の15%程度であったが、変異体にJAを添加しても表現型は回復しなかった。aim1 変異体の根はサリチル酸(SA)量が減少しており、イネにおけるSA生合成経路の中間代謝産物である桂皮酸(CA)量が増加し、安息香酸(BA)量が減少していた。よって、AIM1はSA生合成経路においてCAのβ酸化によるBAの生成を触媒していると考えられる。aim1 変異体にSAを添加することで根の表現型が回復したが、野生型に添加した場合には添加量に応じて根の伸長が阻害された。したがって、AIM1はイネの根分裂組織活性を維持するために必要なSAの生合成に関与していると考えられる。aim1 変異体と野生型との間で根端部の遺伝子発現プロファイルを比較すると、SA処理をしていない条件で3555遺伝子に発現量の差が見られ、2821遺伝子の発現量がaim1 変異体で増加し、734遺伝子の発現量が減少していた。これらの遺伝子の90%(発現量が増加した2533遺伝子と減少した709遺伝子)は、aim1 変異体をSA処理することによって野生型と同等の発現量に回復した。AIM1に発現が依存している709遺伝子の遺伝子オントロジー(GO)をみると、グリコシル基転移、キシログルカン:キシログルコシルトランスフェラーゼ活性に関与するタンパク質をコードする遺伝子が多く含まれていた。これらの遺伝子は細胞壁形成に関与しており、細胞分裂にとって重要であると思われる。幾つかのCYCLIN 遺伝子の発現もAIM1に依存しており、SA処理をしていないaim1 変異体で発現量が減少し、SA処理をすることで発現量が野生型と同等になった。このことから、SAは根の分裂組織活性を正に制御していることが示唆される。SAは植物の防御応答に関与する植物ホルモンであり、aim1 変異体では幾つかのPATHOGENESIS-RELATEDPR )遺伝子の発現量が増加し、この増加はSA処理によって抑制された。AIM1が発現を抑制している(aim1 変異体で発現量が高く、SA処理によって野生型と同等になる)2533遺伝子のGOをみると、酸化還元酵素、グルタチオントランスフェラーゼ活性、抗酸化に関与する遺伝子が多く含まれていた。したがって、aim1 変異体でのSA生合成の欠失は、酸化還元や活性酸素種(ROS)除去に関与する遺伝子の発現に影響していることが示唆される。例えば、aim1 変異体の根ではROSのスカベンジャーとして機能するMETALLOTHIONEINをコードする遺伝子やCATALASEをコードする遺伝子の発現量が野生型よりも高くなっており、SA処理をすることで発現量が減少した。ALTERNATIVE OXIDASE(AOX)はミトコンドリアのROSを抑制する酵素で、イネAOX 遺伝子プロモーター制御下でGUSレポーターを発現するコンストラクト(ProAOX1a:GUS )を導入したaim1 変異体の根端は、野生型よりもGUS発現が強く、この発現はSA処理によって抑制された。したがって、aim1 変異体のSA蓄積量の減少は酸化還元やROS除去に関与する遺伝子の発現量を増加させており、SAはこれらの遺伝子を負に制御して根端部のROS蓄積に影響していると考えられる。aim1 変異体の根端部はROS量が野生型よりも少なくなっていた。しかしながら、ROS生成に関与しているNADPH oxidase 遺伝子の発現量に変化は見られなかった。よって、AIM1は酸化還元やROS除去に関与する遺伝子の発現を調節することで根端のROS量を維持していると考えられる。aim1 変異体にSAを添加することでROS蓄積が回復した。したがって、AIM1はSA生合成を調節することで酸化還元やROS除去に関与する遺伝子の発現を抑制し、ROS蓄積を促進していることが示唆される。野生型植物を抗酸化剤のアスコルビン酸やグルタチオンで処理すると、根端でのROSの蓄積と根の成長が抑制された。また、この根の成長抑制は根分裂組織活性の低下によるものであった。したがって、根のROS量の減少は根分裂組織活性を阻害することが示唆される。また、aim1 変異体を過酸化水素処理することで根の伸長が促進された。これらの結果から、根のAIM1は、酸化還元やROS除去に関与する遺伝子の発現を抑制するSAの生合成に必要であり、このことによってROS蓄積量が増加して根分裂組織活性が促進されると考えられる。WEKY62WRKY76 はSA処理によって発現が誘導され、PR遺伝子の発現を抑制している。aim1 変異体の根でのWRKY62WRKY76 の発現量の発現量は野生型よりも低いが、SA処理によって発現量が増加し、発現量は野生型とaim1 変異体で同等となった。よって、aim1 変異体でのSA生合成の減少は、WRKY62WRKY76 の発現量低下を引き起こしている。RNAiでWRKY62WRKY76 をノックダウンした系統は、ROSの蓄積量が減少し、主根が短くなり、細胞周期関連遺伝子の発現量が減少していた。しかし、aim1 変異体と異なり、この系統のSA含量は減少しておらず、野生型よりも僅かに高くなっていた。したがって、aim1 変異体での根の成長低下は、SA蓄積量の減少によってWRKY62WRKY76 の発現量が低下したことが関連していると思われる。以上の結果から、イネの根におけるサリチル酸生合成は、酸化還元や活性酸素種除去に関与する遺伝子の発現を抑制することで活性酸素種の量を維持し、根の分裂組織の活性を制御していると考えられる。そして、サリチル酸による酸化還元や活性酸素種除去関連遺伝子の発現抑制には、転写抑制因子のWEKY62とWRKY76が関連していると思われる。

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論文)DNAのメチル化と交叉適応

2017-05-16 05:39:57 | 読んだ論文備忘録

Cold acclimation alters DNA methylation patterns and confers tolerance to heat and increases growth rate in Brassica rapa
Liu et al. Journal of Experimental Botany (2017) 68:1213-1224.

doi:10.1093/jxb/erw496

DNAのメチル化といったエピジェネティックな修飾は、植物の非生物ストレスに対する適応に関係している。あるストレスに暴露された植物は、他のストレスに対して抵抗性を示し、この現象は交叉適応と呼ばれている。しかしながら、その機構は明らかとなっていない。中国 南京農業大学のHou らは、2週間4℃処理をして低温適応(CA)させたチンゲンサイ(Brassica rapa subsp. chinensis)と通常の温度条件で育成した対照(CK)についてメチル化DNA免疫沈降シークエンシング(MeDIP-seq)を行ない、CKで19001、CAで19589のメチル化領域を見出した。メチル化領域はCK、CA共にコード領域(CDS)の2k上流で多く見られ、次いで転写終結点から2k下流に多く、イントロンには少なかった。CAとCKの間でメチル化が異なる領域が1562箇所あり、その6割は2k上流とCDSで見られた。また、CKと比較してCAにおいてメチル化されている遺伝子の方が脱メチル化されている遺伝子よりも多かった。CAにおいてメチル化が増加している遺伝子のオントロジー(GO)を見ると、アブシジン酸グルコシルトランスフェラーゼ活性のものが含まれており、メチル化が減少した遺伝子はGTPase活性とリンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性のカテゴリーものが多く見られた。また、KEGG pathwayデータベースでは、CAにおいてメチル化が増加した遺伝子はタンパク質輸送と相同組換えの経路に関与するものが見られ、メチル化が減少した遺伝子はファゴソーム、クエン酸回路、光合成による炭素固定、二次代謝産物生合成、ピルビン酸代謝の5つの経路に関連するものが含まれていた。リンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性と炭素固定に関与する遺伝子は、CAにおいて2k上流領域でメチル化が減少していた。CKとCAで2k上流のメチル化が異なる39遺伝子について遺伝子発現量を調査したところ、9遺伝子について発現量の変化が見られ、4遺伝子(BramMDH1BraKAT2BraSHM4Bra4CL2 )は発現量が増加していた。DNAのメチル化は、DNAメチルトランスフェラーゼMET1によって触媒されている。CAで発現量が増加した4遺伝子を自身のプロモーターで発現制御するミニ遺伝子をシロイヌナズナの野生型もしくはmet1 変異体に導入して発現量を比較したところ、met1 変異体での発現量は野生型での発現量よりも高くなっていた。そしてミニ遺伝子プロモーターのメチル化レベルはmet1 変異体よりも野生型の方が高くなっていた。したがって、プロモーター領域のメチル化は4遺伝子の発現量変化に貢献していると考えられる。野外試験の結果、CAはCKと比較して夏期の成長率が高く、耐暑性を示した。CAの葉は、CKの葉よりも電解質の漏れ(EL)が少なく、マロンアルデヒド(MDA)含量が低くなっていた。よって、CAはCKよりも耐暑性が高いことが示唆される。このCAの耐暑性の強化は熱ショック因子(Hsf)や熱ショックタンパク質(Hsp)の発現量の増加によるものではなかった。おそらくCAは光合成や炭素固定能力が高いことで成長率が高くなっているものと思われる。CAの葉はCKの葉よりも有機酸濃度が高い。有機酸は非生物ストレスとの関連が高いことから、CAでの高有機酸濃度は耐暑性に関与していると考えられる。DNAメチル化阻害剤のAza処理をするとBramMDH1BraKAT2BraSHM4Bra4CL2 のDNAメチル化量が減少し、転写が促進された。Aza処理はチンゲンサイのバイオマスを増加させたが、熱ショック後の生存率に対照との差異は見られなかった。また、Aza処理は有機酸濃度に影響しなかった。これらの結果から、DNAの脱メチル化単独では耐暑性の強化には不十分であると考えられる。CAで発現量が増加する4遺伝子のうち、BramMDH1 は有機酸、葉の呼吸、植物の成長、アルミニウム耐性に関与していることが報告されている。BramMDH1 が耐暑性に関与しているかを調査するために、BramMDH1 を35Sプロモーター制御下で恒常的に発現するシロイヌナズナを作出して解析を行なったところ、この形質転換体は耐暑性が高まり、バイオマスが増加し、熱ストレス下においてELやMDA含量の減少、有機酸と光合成の増加、暗呼吸の減少が見られた。よって、BramMDH1 は耐暑性や成長において重要であることが示唆される。低温適応したチンゲンサイはBramMDH1 発現量が増加して耐暑性が高まるが、Aza処理したチンゲンサイはBramMDH1 発現量が増加しても耐暑性も有機酸量も増加しなかった。CAではDNAのメチル化と脱メチル化の両方が見られることから、DNAのメチル化によって有機酸の増加に負に作用する遺伝子の発現が抑制され、このことがCAでの耐暑性強化に必要であると推測される。以上の結果から、DNAのメチル化状態の変化が交叉適応をもたらしていると考えられる。

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植物観察)箱根

2017-05-14 22:03:29 | 植物観察記録

箱根へバイケイソウの観察に行ってきました。この時期になると、花成する個体では13、14枚目の葉に包まれた花序が偽茎の中から出てくるようになります。そのような花成個体の数は昨年と比較すると同程度かやや多いように見受けられました。ですが、この程度の数では今年は一斉開花年とは言えません。他の地域ではどうなのでしょうか。

バイケイソウは草丈が70cm程度になり、花成個体は何となく分かるようになってきました

 

花成個体では13、14枚目の葉に包まれた花序が伸長を始めました

 

この3株は同じ親が花成した後に出来た子ラメットだと思われますが、花成しているのはそのうちの奥の2株です。遺伝的なバックグラウンドと生育環境が同じであっても花成する個体としない個体があるということは、環境シグナル以外にも、これまでに蓄積した資源量等の要因が花成に影響しているということなのでしょうか。でも、両者の個体バイオマスが大きく異なるようには見受けられない。

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