Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)フラボノールによる根の光応答成長制御

2016-08-24 22:34:23 | 読んだ論文備忘録

Flavonols Mediate Root Phototropism and Growth through Regulation of Proliferation-to-Differentiation Transition
Silva-Navas et al. Plant Cell 2016 28: 1372-1387.

doi:10.1105/tpc.15.00857

植物の根は光から逃れるように成長する能力があり、これは光回避もしくは負の屈光性として知られている。これまでの知見から、この応答は青色光とフォトトロピン(PHOT)によって制御されていることが明らかとなっている。スペイン マドリード工科大学-国立農業・食品研究所(INIA) 植物バイオテクノロジー・ゲノミックスセンターdel Pozo らは、根を暗所で地上部を明所で育成する装置「D-root」を用いて、シロイヌナズナ芽生えの根の光に対する応答性を調査した。暗所で育成した根に側面から白色光を照射すると、25度の角度で光源とは逆向きに屈曲した。光源として赤色光を照射すると6度、青色光を照射すると20度屈曲した。よって、暗所で育成した根は青色光をに対する応答性が高いことが示唆される。cry1 cry2 二重変異体の根は野生型の根よりも光を回避する屈曲角度が小さいが、phot1 phot2 二重変異体は光を回避する屈曲を示さなかった。よって、この装置を用いた実験系においてもPHOT受容体が光回避に関与していることが示された。屈曲部分の光照射側の細胞は陰側の細胞よりも長く、細胞の数は両側で同じであった。したがって、根の光に対する短時間での応答は、光照射側と陰側の細胞伸長の差によって引き起こされていると考えられる。8日から12日間光照射された根は、暗所で育成した根よりも20~25%短くなった。したがって、根への長期間の光照射は成長抑制を引き起し、3~8時間の短時間の側面からの光照射は根に光回避を起こさせる。光照射下で育成した根は、暗所で育成した根よりも皮層細胞が少なく分裂組織が短くなっていた。したがって、光照射は根の分裂組織の大きさが小さくなることで成長低下を引き起すものと思われる。暗所で育成した根と比較して、明所で育成した根では約1000種の転写産物が変化(725が増加、358が減少)していた。発現量が増加していた遺伝子は、UV、光合成、光応答に関連した遺伝子で、その他にも酸化ストレス、ホルモンシグナル、二次代謝、ストレス応答に関連したものがあった。フラボノイド生合成経路に関連する転写産物の大部分は発現量が増加しており、特にケルセチン、ケンペロールとそれらの配糖体の生産に関与する酵素をコードしている遺伝子の発現量が増加していた。また、暗所育成の根と明所育成の根で代謝産物プロファイリングを行ない、両者の間で219の代謝産物量が異なることを見出した。一方、両者の地上部では127の代謝産物に差異が見られた。よって、根への光照射は地上部の代謝変化も誘導することが示唆される。光に応答してフラボノール関連代謝産物の多くに差異が生じており、光照射した根の移行領域は暗所育成の根よりもケルセチンとケンペロールの含量が高くなっていた。暗所で育成した根にケルセチン処理をすると成長が抑制されて明所育成の根と同等の長さになった。ケルセチンやケンペロールの前駆物質であるナリンゲニンカルコンの生産を触媒するカルコンシンターぜをコードしているTRANSPARENT TESTA4TT4 )の機能喪失変異体tt4 の明所育成の根は、野生型よりも長く、ケルセチン処理をすると根の長さは野生型と同等になった。暗所で育成した根に側面から光照射すると、照射した側でフラボノールの蓄積とTT4 の発現量増加が観察された。tt4 変異体では根の光回避角度が小さくなっており、フラボノールの欠失は負の屈光性を低下させることが示唆される。恒常的に根にフラボノールを蓄積するconstitutive photomorphogenesis 1-4cop1-4 )変異体やケルセチン処理をした野生型の根においても光回避角度が低下しており、これは光照射部分でフラボノール蓄積量の差異が起こらなかったことによるものと思われる。tt4 変異体では光照射側と陰側の細胞数や細胞の長さに有意差は見られなかった。暗所育成の根にケルセチン処理をすると、分裂組織の拡大と細胞数の増加を抑制した。さらに、明所で育成したtt4 変異体の根の分裂組織は、明所で育成した野生型の根のものよりも大きく、ケルセチン処理によって小さくなった。暗所で育成した根の分裂組織は、明所で育成した根の分裂組織よりも有糸分裂マーカーの発現量が多いが、ケルセチン処理をすることで発現量は明所で育成した根と同程度にまで低下した。光照射もしくはケルセチン処理した根の移行領域の細胞は暗所で育成した根よりも速く伸長したが、分化領域の細胞の大きさは暗所で育成した根も明所で育成した根も同じであった。したがって、ケルセチンとケンペロール(もしくはそれらの配糖体)の蓄積は、細胞増殖の抑制と細胞伸長の加速によって根の成長制御に貢献しており、明所で育成した根が暗所で育成した根よりも短くなるのは分裂組織での細胞増殖の低下によるものであると思われる。植物ホルモンのオーキシンは、細胞増殖を制御しているPLETHORA(PLT)の勾配を形成することで根分裂組織の大きさを制御している。また、細胞増殖を抑制するフラボノールは、オーキシン輸送を阻害することが知られている。明所で育成してフラボノール含量の高い根は、オーキシン排出トランスポーターであるPIN1のタンパク質量が暗所で育成してフラボノール含量が低い根よりも少なくなっており、PIN2、PIN3およびオーキシン取込トランスポーターのAUX1の量に変化は見られなかった。フラボノール処理をした暗所で育成した根においてもPIN1タンパク質の減少が観察された。また、明所で育成した根ではオーキシン応答マーカーDR5:GFP の発現量が減少していた。暗所で育成した根はPLT2の勾配が強くなっているが、ケルセチン処理をすると勾配は弱くなった。これらの結果から、フラボノールはオーキシン-PLTの勾配を制御することで分裂組織の大きさを制御していると考えられる。我々のトランスクリプトーム解析では、光照射に応答して活性酸素種(ROS)関連の転写産物量も変化を示しており、暗所で育成した根ではNADPHオキシダーゼ遺伝子の発現量が高くなっていた。超酸化物は細胞増殖を促進することが報告されており、フラボノールはROSのスカベンジャーとして機能するとされている。暗所で育成した根の分裂組織の超酸化物量は明所で育成した根よりも高くなっており、tt4 変異体の明所で育成した根も超酸化物量が野生型よりも高くなっていた。したがって、フラボノールの蓄積は超酸化物量を減少させることで細胞増殖を低下させているものと思われる。暗所で育成した根にオーキシン処理をすると、分裂組織のフラボノール含量が低下し、超酸化物量が増加した。そして、この増加はtt4 変異体で顕著であった。したがって、超酸化物の蓄積はフラボノールによって阻害されると考えられる。暗所で育成したtt4 変異体の根は野生型の根よりも長く、分裂組織も長いが、ケルセチン処理をすると成長量が低下し、分裂組織の長さの差異も見られなくなった。根の細胞分化誘導シグナルとして知られている過酸化水素を暗所で育成した根に処理すると、分化領域のケルセチンとケンペロールの含量が増加した。また、分化領域の過酸化水素量を増加させるUPB1 転写因子を過剰発現させてもケルセチンとケンペロールの含量が増加した。これらの結果から、UPB1‐過酸化水素経路は、分化過程にある細胞のフラボノール含量を増加させることが示唆される。UPB1 を過剰発現させた根の光回避角度は野生型よりも少ないこととから、UPB1によるフラボノール蓄積は負の光屈性を妨げるものと思われる。根の分化を誘導するサイトカイニンを暗所で育成した根に処理すると、分化領域においてケルセチンおよびケンペロールの蓄積が観察された。この蓄積は、サイトカイニン受容体の二重変異体であるcre1 ahk1 では観察されなかった。サイトカイニンによる根の細胞分化に関与しているSHORT HYPOCOTYL2SHY2 )機能獲得変異体shy2-2 の暗所で育成した根の分化伸長領域はケルセチンおよびケンペロール量が増加していたことから、サイトカイニンはSHY2 を介してフラボノール生合成を誘導し、このことがサイトカイニンシグナルによる根の成長抑制と分裂組織活性の制御を一部担っていると考えられる。cre1 ahk1 二重変異体の根は光回避応答が低下し、shy2-2 変異体では完全にブロックされていた。したがって、サイトカイニンシグナルは根の光屈性に強く作用していると考えられる。以上の結果から、フラボノールは光に応答した根の成長制御においてオーキシン‐サイトカイニンホルモンシグナルと活性酸素種シグナルを統合したシグナルとして機能していると考えられる。

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論文)アブシジン酸とサリチル酸による植物免疫応答制御

2016-08-16 06:02:55 | 読んだ論文備忘録

Abscisic acid promotes proteasome-mediated degradation of the transcription coactivator NPR1 in Arabidopsis thaliana
Ding et al. The Plant Journal (2016) 86:20-34.

DOI: 10.1111/tpj.13141


転写コアクティベーターのNPR1(non-expressor of pathogenesis-related genes 1)は、局所的獲得抵抗性(LAR)と全身獲得抵抗性(SAR)の主要な調節因子であり、サリチル酸(SA)依存性遺伝子の多くを制御している。米国 フロリダ大学Mou らは、以前にシロイヌナズナnpr1 変異体を変異原処理した集団からPseudomonas syringae pv. maculicola (Psm ) ES4326に感染した際にSAをnpr1 変異体よりも高蓄積する変異体isn2increased SA accumulation in npr1 )を単離した。マップベースクローニングの結果、isn2 変異はアブシジン酸(ABA)の生合成に関与する酵素をコードするABA3 遺伝子内の一塩基置換であることが判った。そのことからisn2aba3-21 と改名した。過去知見において、ABA欠損変異体ではSAシグナル経路のマーカー遺伝子であるPR1 が恒常的に発現していることが報告されている。aba3-21 変異体においてもPR1 遺伝子の発現上昇が観察され、aba3-21 npr1 二重変異体ではこの上昇は打ち消された。よって、ABA欠損変異体ではNPR1に依存してPR 遺伝子が発現上昇すると考えられる。aba3-21 を含めてABA欠損変異体はPsm ES4326に対する抵抗性が高く、この抵抗性強化はnpr1 変異が加わることで部分的に抑制された。したがって、ABA欠損変異は、Psm ES4326に対してNPR1に依存した抵抗性と依存しない抵抗性の両者を活性化させていると考えられる。aba3-21 変異とSA生合成変異のsid2-2 の二重変異体は野生型よりもPsm ES4326に感染しやすいが、sid2-2 単独変異体よりは感染しにくかった。このことからも、aba3-21 変異はSAに依存した抵抗性と依存しない抵抗性の両方を引き起こしていると考えられる。公的なマイクロアレイデータベースを見ると、NPR1 mRNA量はABA処理では変化していない。そこで、NPR1タンパク質量の変化を見たところ、ABA処理はNPR1タンパク質量を減少させることが判った。恒常的にABA含量が野生型よりも高いcds2-1D 変異体は、NPR1タンパク質量が野生型よりも少なくなっていた。また、aba3-21 等のABA欠損変異体ではNPR1タンパク質量が野生型よりも多くなっていた。これらの結果から、ABAはNPR1タンパク質の蓄積を負に制御していると考えられる。Myc-NPR1やNPR1-GFPといった融合タンパク質を発現させた植物体をABA処理すると、これらのNPR1タンパク質は減少するが、ABAと同時に26Sプロテアソーム阻害剤のMG115を処理するとNPR1タンパク質の減少が抑制された。この時のGFP蛍光から、NPR1-GFPタンパク質は核に局在することが確認された。したがって、ABAによって促進されるNPR1タンパク質の分解は26Sプロテアソーム経路を介してなされているものと思われる。NPR1タンパク質の核局在シグナル(NLS)を変異させたnpr1-nls-GFP融合タンパク質はNPR1-GFPタンパク質よりもABA処理による分解を受けにくくなっていた。また恒常的に核に局在するように変異したnpr1C156A-GFPタンパク質はNPR1-GFPタンパク質よりもABA処理による分解を受けやすくなった。これらの結果から、ABA処理によるNPR1タンパク質の分解は核において起こっていることが示唆される。ABA処理によるNPR1タンパク質の分解はcul3a cul3b 二重変異体では非常に低下しており、分解過程にはCUL3 E3 リガーゼが関与していることが示唆される。SA受容体のNPR3とNPR4はCUL3 E3 リガーゼのアダプターであり、NPR1とCUL3との相互作用に関与している。npr3 npr4 二重変異体ではABA処理によるNPR1タンパク質の減少が見られなかった。これらの結果から、ABAが誘導するNPR1タンパク質の分解はCUL3NPR3/NPR4 複合体が関与していると考えられる。植物体にABA処理をした後にSA処理をするとSAによるNPR1タンパク質の蓄積やPR1 遺伝子の発現誘導は阻害されたが、ABAとSAの同時処理もしくはSA処理後のABA処理ではABAによる阻害が見られなかった。同時添加するSAとABAの比率を変えると、それに応じてNPR1タンパク質の蓄積量とPR1 遺伝子の発現量が変化した。したがって、与えるSAシグナルとABAシグナルの順序と強度がNPR1タンパク質の蓄積とPR1 遺伝子の発現の制御にとって需要であると考えられる。NPR1タンパク質のSer11とSer15はSA処理によってリン酸化される。このSer残基をアスパラギン酸に置換して擬似リン酸化状態にしたnpr1S11/15D変異タンパク質は、無細胞系分解アッセイにおいてNPR1-GFPタンパク質よりも分解されやすいが、生体内でのABA処理後の分解ではNPR1-GFPタンパク質よりも安定していた。ABA処理によるPsm ES4326に対する罹病性の増加は、NPR1-GFPを恒常的に発現させた場合よりもnpr1S11/15D-GFPを発現させた場合の方が低かった。したがって、ABAは少なくとも一部は細胞内NPR1タンパク質の排除を介してPR 遺伝子の発現とPsm ES4326に対する抵抗性を抑制していることが示唆される。Psm ES4326を感染させると内生SA量は一過的に増加し、遊離SA量は感染12時間後、全SA量は24時間後に最大となった。ABA量は指数的に増加した。NPR1タンパク質量は感染後から徐々に増加し、24時間後に最大となり、36時間後には基底量に戻った。しかしこの時、SA量は最大量の55%程度はあることから、SAはPsm ES4326が感染した際の細胞内NPR1を決定する唯一の因子ではないと思われる。葉の半分にPsm ES4326を感染させ、感染させていない隣接組織でのSA、ABAの変化を見たところ、感染組織と類似した変化を示したが、遊離SAは感染24時間後、全SAは感染36時間後に最大となってその後減少し、ABAは感染48時間後から徐々に減少していった。NPR1タンパク質も類似した変化を示したが、感染組織よりも変化が遅く、感染36時間後に最大となり、その後ゆっくりと減少していった。aba3 変異体でのPsm ES4326感染後のSA量の変化は、感染組織、隣接組織ともに野生型よりも低くなっており、感染によるSA量の適切な増加には基底量のABAが必要であることが示唆される。Psm ES4326感染後のNPR1タンパク質量の変化は、aba3 変異体では感染組織、隣接組織とも野生型のような変化は見られなかった。このことから、NPR1タンパク質量の変化にはABAの蓄積が関与していることが示唆される。事実、感染後期のSA量はaba3 変異体と野生型でほぼ同程度だが、NPR1タンパク質量はaba3 変異体よりも野生型でより大きく減少していた。したがって、病原菌の誘導するABAの蓄積はSA濃度が低下した時のNPR1の除去に関与していると思われる。PR1 遺伝子の発現量変化を見ると、野生型の感染組織では感染12時間後、24時間後のNPR1タンパク質の蓄積に伴って発現量が増加していった。しかし、その後NPR1タンパク質が基底量にまで減少してもPR1 遺伝子の発現量の増加は継続した。これはおそらくNPR1とは独立したPR1 遺伝子の発現誘導によるものと思われる。一方、隣接組織でのPR1 遺伝子の発現はNPR1タンパク質量の変化と一致していた。aba3 変異体の感染組織でのPR1 遺伝子の発現は、NPR1タンパク質量の変化と対応していた。しかし、感染24時間後のNPR1タンパク質量は野生型と同等であるのに、PR1 遺伝子の発現量は野生型の57%であった。aba3 変異体の隣接組織は感染24時間後のSA量が野生型の63%はあるが、PR1 遺伝子の発現は強く阻害されていた。aba3 変異体ではPsm ES4326感染後のNPR1タンパク質量の大きな変化は見られないことも考慮すると、NPR1タンパク質量の変化がPR 遺伝子の発現量を制御しているものと思われる。Psm ES4326を感染させた際に隣接組織をABAで処理すると、NPR1タンパク質の蓄積とPR1 遺伝子の発現が阻害された。感染24時間後に隣接組織をSA処理するとNPR1タンパク質の減少が妨げられ、PR1 遺伝子の発現も高い状態が維持された。野生型植物やaba3 変異体をSA処理をし、その後にABA処理をしてNPR1タンパク質量やPR1 遺伝子の発現量の変化を見た結果から、ABAはSA量が低下した際にNPR1タンパク質の代謝回転を促進し、PR1 遺伝子の発現を抑制すると考えられる。aba3 変異体の隣接組織でPR 遺伝子の発現誘導が低下していることから、ABAシグナルはNPR1を介した転写に対して促進的に作用することが推測される。そこで、Psm ES4326感染もしくはSA処理後のNPR1ターゲット遺伝子(PR1WRKY18WRKY38WRKY62 )の発現を見たところ、これらの処理によるターゲット遺伝子の発現誘導はaba3 変異体やPYR/PYL ABA受容体の六重変異体112458では減少していることがわかった。また、aba3 変異体を低濃度のABAで処理すると、Psm ES4326感染後のNPR1ターゲット遺伝子の発現が促進された。したがって、ABAシグナルはNPR1ターゲット遺伝子の発現を完全に誘導するために必要であることが示唆される。以上の結果から、サリチル酸とアブシジン酸は細胞内NPR1タンパク質量の制御において拮抗的作用しており、病原菌の感染によって活性化した連続的なSAとABAのシグナルはNPR1タンパク質蓄積量とPR 遺伝子の発現の変化と密接に関連していると考えられる。

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植物観察)伊吹山

2016-08-12 18:02:11 | 植物観察記録

伊吹山に行ってきました。8月11日は今年より新しく制定された祝日「山の日」ということで、それにちなんでちゃんと登山すべきでしたが、今日は12日なので(?)伊吹山ドライブウェイで9号目までバスで行きました。今回利用したのは、名古屋からの直行ハイウェイバスで、夏期のみ運行しています。予約制ですが、片道1550円ですのでお得感はあります。9号目から頂上までは40分程度でで簡単に登れます。頂上はガスっていて琵琶湖を臨むことはできませんでした。花としてはそこそこいろいろなものが見られました。時期的にはシモツケソウがピークかやや過ぎ、サラシナショウマが咲き始めといった感じで、コオニユリ、ヤマホタルブクロ、カワラナデシコ、クガイソウ、アキノキリンソウ、ツリガネニンジン、ルリトラノオ、ワレモコウ、ウツボグサ、クルマバナ、クサフジ、キオンなどが見られました。簡単に登れてこれだけの花が見れるのであれば、(天候にもよりますが)まあまあ宜しいのではないでしょうか。

 

サラシナショウマ

 

ツリガネニンジン

 

ルリトラノオ

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論文)塩ストレスによるジャスモン酸シグナルの活性化と根の伸長阻害

2016-08-02 05:13:58 | 読んだ論文備忘録

Salt stress response triggers activation of the jasmonate signaling pathway leading to inhibition of cell elongation in Arabidopsis primary root
Valenzuela et al. Journal of Experimental Botany (2016) 67:4209-4220.

doi:10.1093/jxb/erw202

塩分は主要な非生物ストレスであり、イオンストレス、浸透圧ストレス、酸化ストレスをもたらすことで植物の成長に対して負に作用する。近年、塩ストレス応答とジャスモン酸(JA)シグナルが関連していることが報告されており、塩ストレスによってJAシグナルが活性化され根の伸長が阻害されるという仮説が成り立つが、詳細は明らかとなっていない。チリ タルカ大学のFigueroa らは、水耕栽培のシロイヌナズナに3時間の塩処理(150mM NaCl)をして、JAによって発現誘導されるJAZ 遺伝子の転写産物量変化を調査した。その結果、シロイヌナズナの9つのJAZ 遺伝子のうち、JAZ4JAZ6 以外は根において転写産物量の増加が確認された。一方、JA処理(50μM MeJA)をした際にはJAZ4 以外のJAZ 遺伝子の転写産物量が増加した。したがって、塩ストレスは根のJAシグナル経路の活性化を引き起こしていることが示唆される。塩ストレスによるJAZ 遺伝子の発現誘導は、処理1時間後には転写産物量の増加が観察され、6時間後に最大となり、その後減少した。塩ストレスは、JAシグナルの正の制御因子をコードするMYC2 の転写産物量も増加させたが、JA受容体をコードするCOI1 の発現量は変化が見られなかった。coi1-2 変異体では、塩ストレスおよびJA処理によるJAZ 遺伝子の発現誘導が対照よりも減少していた。このことから、塩ストレスによる根でのJAZ 遺伝子発現誘導にはCOI1が関与していることが示唆される。塩ストレスを介したJAシグナルの活性化が根のどの領域で起こっているかを見るために、JAZ1-GUS融合タンパク質をCaMV 35Sプロモーターで恒常的に発現させたシロイヌナズナを塩もしくはJA処理をして主根でのGUSシグナルの減少(JAZ1-GUSの分解)を見たところ、両処理とも分化領域(DZ)、伸長領域(EZ)、分裂領域(MZ)の3領域においてシグナルの減少が見られた。COI1、JAZ3、MYC2/3/4といったJAシグナル伝達に関与する因子の変異体ではJA処理をしても主根が伸長する。coi1-2 変異体、myc2/3/4 変異体は塩ストレスによって主根の成長が阻害されたが、野生型と比較すると阻害の程度は弱かった。根の各領域で伸長阻害の程度を見ると、myc2/3/4 変異体やjai3-1 変異体はEZの長さが野生型よりも長く、JA関連の変異体(aoscoi1jai3myc2/3/4 )ではEZの細胞の長さが野生型よりも長くなっていた。COI1 のヌル変異体であるcoi1-1 においても、塩処理によるEZ細胞の伸長阻害が見られることから、塩ストレスによるEZ細胞の伸長阻害にはJAシグナル依存した経路と依存していない経路が関与していると考えられる。NaClによる塩ストレスはイオンストレスと浸透圧ストレスの2つに分けることが出来る。そこで、NaCl処理、JA処理に加えて、イオンストレスとしてLiCl処理、浸透圧ストレスとしてマンニトール処理をしてEZの細胞伸長を見たところ、LiCl処理では伸長阻害が見られなかった。よって、イオンストレス自体はEZの伸長阻害は引き起こさないものと考えられる。マンニトール処理はEZの細胞の伸長阻害を起こし、この阻害はCOI1やJAZ3に依存していた。以上の結果から、塩ストレスはジャスモン酸シグナルを活性化することによって根の伸長領域の細胞伸長を阻害しており、このことが塩ストレスによる根の伸長阻害に部分的に関連していると考えられる。

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植物観察)箱根

2016-07-31 20:51:23 | 植物観察記録

箱根へバイケイソウ観察に行ってきました。標高の異なる3カ所の調査地とも、花期は終わり、さく果登熟の段階に入っていました。花序あたりの稔実さく果数は個体間で差が見られ、充実して膨らんださく果を多数つけている個体もあれば、稔実さく果が殆ど見られず登熟途中で成長が止まり花序全体が黒ずんでしまっているような個体もありました。

 

登熟中のバイケイソウのさく果

 

ヤマユリ

 

ウバユリ

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論文)DELLAタンパク質とFLOWERING LOCUS Cとの相互作用

2016-07-26 05:49:13 | 読んだ論文備忘録

DELLA proteins interact with FLC to repress flowering transition
Li et al. J Integr Plant Biol (2016) 58:642-655.

doi: 10.1111/jipb.12451

DELLAタンパク質はジベレリン作用における転写制御の主要な因子として作用しているが、それ以外にも様々な転写因子と相互作用をして遺伝子発現の制御に関与している。中国 北京大学Guo らはDELLAタンパク質と相互作用をする新規因子を探索するために、シロイヌナズナRGAをベイトに用いて酵母two-hybrid法により転写因子ライブラリーをスクリーニングした。その結果、タイプⅡ MADS-box転写因子で、SUPPRESSOR OF OVEREXPRESSION OF CONSTANS1SOC1 )やFLOWERING LOCUS TFT )といった幾つかの花成遺伝子のプロモーター領域に結合して転写を抑制することで花成に対して抑制的に作用することが知られているFLOWERING LOCUS C(FLC)タンパク質がRGAと結合することを見出した。FLCはシロイヌナズナのRGA以外のDELLAタンパク質とも相互作用をし、プルダウンアッセイ、BiFC法、共免疫沈降法からも両者の相互作用が確認され、相互作用は細胞核内で見られることがわかった。また、FCLのMADSドメインのC末端側領域とRGAのLHRⅠドメインが相互作用に関与していた。ChIP-qPCRの結果、FLCのSOC1 およびFT 遺伝子への結合はジベレリン処理によって低下することがわかった。また、SOC1 プロモーターもしくはSEPALLATA3SEP3 )プロモーターでルシフェラーゼ(LUC)を発現させるレポーター遺伝子を用いた試験から、LUCの発現量はFLC を発現させることで低下し、FLCRGA を同時に発現させると発現量はさらに低下することが確認された。したがって、DELLAタンパク質はFLCと相互作用をすることでFLCによるターゲット遺伝子の発現抑制能力を増強していることが示唆される。FLC 過剰発現個体もflc-3 変異体もジベレリン処理に応答して花成が促進されるが、FLC 過剰発現個体は野生型よりもジベレリン感受性が高く、flc-3 変異体は低くなっていた。よって、FLCによる花成時期制御において、部分的にジベレリンが関与していると考えられる。これまでに報告されたChIP-seqデータから、464のFLCの直接のターゲットのうち163(35.1%)はdella 変異体において発現が変化する遺伝子であることがわかった。FLCとDELLAの両方で制御を受けている遺伝子は花成時期制御遺伝子の他にも様々なものが見られた。以上の結果から、DELLAタンパク質はFLCと結合して複合体を形成することでFLCの転写抑制能力を強めていると考えられる。今回の発見により、花成誘導において春化/自律的促進経路とジベレリン促進経路がFLCとDELLAタンパク質でお互いに関連していることが明らかとなった。

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論文)低温湿層処理による発芽誘導

2016-07-18 11:36:48 | 読んだ論文備忘録

A role for jasmonates in the release of dormancy by cold stratification in wheat
Xu et al. Journal of Experimental Botany (2016) 67:3497-3508.

doi:10.1093/jxb/erw172

種子の休眠を打破する処理として用いられる低温湿層処理(低温下での水分補給)は、埋土種子が秋から冬にかけての季節を経験することを模していると考えられている。コムギの場合、暗所4℃で48時間の低温湿層処理をすると、休眠の強い栽培品種であっても発芽が誘導される。低温処理による休眠打破については多くの解析がなされているが、低温湿層処理過程の分子機構については不明な点が残されている。オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)のGubler らは、休眠しているコムギ種子を様々な時間(12~84時間)で低温湿層処理をした後に室温に戻し、7日後の発芽率を調査した。その結果、過去知見が示すように、48時間までは処理時間に応じて発芽率が高くなり、それよりも長く処理をしても発芽率の増加は僅かであることがわかった。種子休眠にはジャスモン酸(JA)やアブシジン酸(ABA)が関与していることが知られている。種子胚に含まれるJA量を調査したところ、乾燥種子で最も高く、水分補給をすると室温でも低温でも処理6時間後には減少し、その後、低い状態が96時間後まで維持された。様々な時間で低温湿層処理をした後に室温に戻してJA量を測定したところ、12時間以上処理をすると室温に戻した後のJA量が増加し、48時間以上の処理で増加量は最大となった。室温に戻した際のJA量の増加は、移行して4~8時間後に見られ、その後は急速に減少した。同様の変化は活性型JAの1つであるJA-Ileにおいても見られた。低温湿層処理から室温に戻して8時間以内にJA生合成酵素をコードするTaAOSTaAOC の発現量が増加した。よって、このことがJA量の増加に関与していると考えられる。JA生合成を抑制するアセチルサリチル酸(ASA)処理をすると、処理濃度に応じて低温湿層処理による発芽誘導効果が抑制された。また、ASAと同時にメチルジャスモン酸(MeJA)を添加することでASAによる発芽阻害効果が抑制された。したがって、JA生合成が低温湿層処理における発芽誘導に関与していることが示唆される。ASA処理は低温湿層処理によるJA量の増加とTaAOC の発現誘導を抑制した。次に、低温湿層処理に対するABAの効果を見た。コムギ種子胚は、水分補給をすると、室温でも低温でもABA量が増加し、室温では浸漬24時間後から増加して48時間後に最大となった。低温では48時間後から増加が始まり84時間後まで継続して増加した。低温湿層処理を24時間よりも長く行なうと、室温に戻した際にABA量が減少し、24時間よりも短いとABA量は増加した。低温湿層処理後のABA量の減少は、室温移行4時間後から始まり、8時間後には最低となった。このABA量の減少は、ABA生合成酵素をコードするTaNCED1TaNCED2 の発現量の減少と連動していた。また、低温湿層処理の際にASAを添加してJA量の増加を抑えると、ABA量やTaNCED1TaNCED2 の発現量が増加した。低温湿層処理によるJA量の増加はABAを添加しても見られることから、この処理過程においていJAはABAよりも上位に位置していると考えられる。コムギ種子の登熟から乾燥にかけての間の胚のJA、JA-Ile、ABA量は殆ど変化は見られないことから、JAは登熟後の種子休眠には関与しているないと考えられる。以上の結果から、低温湿層処理によるコムギの発芽誘導はジャスモン酸が関与していると考えられる。

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植物観察)箱根

2016-07-10 20:38:01 | 植物観察記録

箱根へバイケイソウの観察に行きました。調査している3つのエリアのうち、標高の低いエリアのバイケイソウはさく果が登熟過程にあり、葉は枯れてしまっていました。標高の高いエリアでは開花が進んでいる最中で、複数種の昆虫が訪花し、背中にたくさんの花粉を付けていました。訪花昆虫の同定が出来ていません。どなたが昆虫名がわかる方、教えて下さい。

 

標高の低いエリアのバイケイソウはさく果の登熟が進み、葉は枯れてしまっていた。

 

訪花昆虫その1 背中にたくさんの花粉をつけている

 

訪花昆虫その2

 

訪花昆虫その3

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植物観察)北海道バイケイソウ稔実調査 旭川

2016-07-04 16:42:26 | 植物観察記録

今日は旭川の林床のバイケイソウ群生地で稔実の確認をしました。この群生地では、今年、3個体が花成しました。群生地以外にもバイケイソウは生えているのですが、半径500m程のエリアを遊歩道に沿って歩いた限りでは、ここ以外に花成個体は見つけられませんでした。3個体のうち2個体は1m以内に生えているので、同じジェネットかもしれません。何れの個体とも稔実しているさく果の数は少なく(それぞれも個体の稔実さく果数:2、8、32)、さく果の大きさもまちまちでした。また、稔実しなかった両性花もあるようでした。やはり、花成個体が少ないと他家受粉の確率が下がり、稔実率が低くなるのかもしれません。これらの個体が子ラメットを幾つ形成するのか、来春に調査しようと考えています。

 

今年花成したバイケイソウ

 

稔実したさく果はまばらで、大きさも様々

 

花成しなかったバイケイソウは既に枯死していた

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植物観察)北海道バイケイソウ稔実調査 サロベツ

2016-07-03 20:31:30 | 植物観察記録

今日は豊富町 兜沼周辺のコバイケイソウとサロベツ湿原センターのバイケイソウ、コバイケイソウを見てきました。今回調査した兜沼周辺の林床のコバイケイソウ群生地は、今年100株程度が花成しました。いずれの株もさく果が沢山付いており高い稔実率を示していました。次にサロベツ湿原センターのコバイケイソウ、バイケイソウの稔実状態を見に行きました。花成個体数はコバイケイソウが圧倒的に多く、さくの稔実率も高くなっていました。しかし、バイケイソウは花成個体が数個体しかなく、花序を見ると、稔実したさく果がまばらについているような状態でした。充分な稔実のためにはもっと花成個体が必要なのかもしれません。花序にカタツムリがいたので、花やさく果が食害を受けたためにさく果が少ないのかもしれません。このあと、バイケイソウとコバイケイソウが数多く混生しているベニヤ原生花園まで足を伸ばしたのですが、原生花園内でヒグマの足跡と糞が見つかったために立入禁止になっていました。残念。

 

兜沼周辺の林床に生えるコバイケイソウ さく果がよく稔実している

 

サロベツ湿原センターのコバイケイソウ こちらも稔実率は高い

 

サロベツ湿原センターでは、まだ花の白い色が見られるコバイケイソウも生えていた。

 

サロベツ湿原センターのバイケイソウの花序 コバイケイソウに比べると個体数が少なく、稔実しているさく果も少ない

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