Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)ショ糖トランスポーターSUC2の活性制御

2020-03-30 20:55:49 | 読んだ論文備忘録

Carbon export from leaves is controlled via ubiquitination and phosphorylation of sucrose transporter SUC2
Xu et al.  PNAS (2020) 117:6223-6230.

doi:10.1073/pnas.1912754117

シロイヌナズナを強光に曝すと光合成が高まり、葉や篩部のショ糖含量が増加する。この時、ショ糖を篩部維管束組織へ輸送するトランスポーターSUCROSE TRANSPORTER 2SUC2 )の発現量に変化は見られないが、SUC2タンパク質量は増加する。中国 西北農林科技大学Liesche らは、この現象を詳細に解析し、強光条件ではSUC2 転写産物の翻訳効率に変化は見られないが、SUC2タンパク質のプロテアソーム系による代謝回転が低下し、SUC2タンパク質がリン酸化されることを見出した。そこで、SUC2と相互作用をし、代謝回転に関連しそうなタンパク質を探索したところ、UBIQUITIN-CONJUGATING ENZYME 34(UBC34)がSUC2と強い相互作用を示すことがわかった。ubc34 変異体は、野生型よりもSUC2タンパク質量が多く、葉の可溶性糖類や篩部滲出液のショ糖量が増加していた。また、ubc34 変異体は、成長が旺盛で、光合成速度、ロゼット葉の直径、生重量と乾物重、種子重量、デンプン含量が野生型よりも増加していた。ubc34 変異体での強光に応答した篩部滲出液ショ糖含量の増加とSUC2タンパク質量の増加は、野生型よりも少なくなっていた。したがって、UBC34 は光に依存したSUC2量の増加と篩部へのローディングとって重要であると考えられる。通常光条件下で育成したubc34 変異体のSUC2タンパク質の代謝回転速度は野生型よりも非常に遅くなっており、ユビキチン化されたSUC2タンパク質量が半分に減少していた。ubc34 変異体のSUC2タンパク質量は強光条件下で殆ど変化しないが、ショ糖滲出量は有意に増加する。強光条件でSUC2タンパク質のリン酸化が促進されることから、リン酸化によってSUC2のショ糖輸送活性が制御されているのではないかと考え、SUC2と相互作用をするキナーゼのT-DNA挿入変異体を解析したところ、WALL-ASSOCIATED KINASE LIKE 8(WAKL8)の変異体wakl8 の篩部ショ糖含量は野生型よりも少ないことがわかった。また、WAKL8はSUC2をリン酸化してショ糖輸送活性を高めることがわかった。以上の結果から、UBC34によるSUC2のユビキチン化とWAKL8によるSUC2のリン酸化が強光条件でのショ糖の篩部ローディングを調節していると考えられる。

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論文)MYC転写因子の量を調節するE3ユビキチンリガーゼ

2020-03-28 10:32:33 | 読んだ論文備忘録

CUL3BPM E3 ubiquitin ligases regulate MYC2, MYC3, and MYC4 stability and JA responses
Chico et al.  PNAS (2020) 117:6205-6215.

doi:10.1073/pnas.1912199117

BPM (BTB/POZ-MATH) タンパク質は、Cullin3 E3ユビキチンリガーゼのアダプターで、シロイヌナズナには6種類(AtBMP1~6)存在する。CUL3BMP E3リガーゼは、植物の成長、稔実、気孔運動、脂肪酸代謝、アブシジン酸シグナル伝達といった様々な生理過程の制御に関与していることが知られている。しかしながら、CUL3BPM E3リガーゼのターゲットについての情報は少ない。スペイン国立バイオテクノロジーセンターSolano らは、BPM3をベイトとして酵母two-hybrid(Y2H)スクリーニングを行ない、MYC2がBPM3と相互作用をすることを見出した。そして、Y2Hアッセイの結果、MYC2、MYC3はBPM1、BPM2、BPM3、BPM4と強く相互作用をし、BPM5、BPM6とも弱い相互作用をすること、MYC4はBPM2と強く相互作用をすることが判った。また、MYCsは生体内においてBPMsと直接相互作用をすることが確認された。人工miRNAでBPMをノックダウンした系統(amiR-bpm )は、野生型よりもMYC2タンパク質を蓄積しており、MYC2の代謝回転が非常に遅くなっていた。また、amiR-bpm 系統ではMYC3のポリユビキチン化量が減少していた。bpm235 三重変異体、amiR-bpm 系統、cul3 変異体の芽生えは、MYC2 過剰発現系統と同様に、対照よりも一次根が短く、ジャスモン酸(JA)に対する応答性が高くなっていた。トランスクリプトーム解析の結果、amiR-bpm 系統、bpm235 三重変異体ではJA関連遺伝子の発現量が高まっていることがわかった。さらに、myc2myc3myc4 三重変異体のトランスクリプトーム解析を行なったところ、JAに応答してmyc2myc3myc4 三重変異体で発現量が減少している遺伝子の多くはbpm235 三重変異体やamiR-bpm 系統では発現量が増加していることが判った。また、bpm235 三重変異体やamiR-bpm 系統で発現量が増加する遺伝子のプロモーター領域にはMYC 転写因子の認識モチーフ(G-box)が見られた。JAはBPM 遺伝子の転写を制御してはいないが、BPMタンパク質を安定化していた。以上の結果から、CUL3BPM E3 ユビキチンリガーゼはJAに応答してMYC転写因子をターゲットとして分解することで負のフィードバックループを形成し、MYC転写因子の量と活性を調節していると考えられる。

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論文)Hippoシグナル伝達による成長とジャスモン酸蓄積の制御

2020-03-25 20:11:01 | 読んだ論文備忘録

AtMOB1 Genes Regulate Jasmonate Accumulation and Plant Development
Guo et al.  Plant Physiology (2020) 182:1481-1493.

doi:10.1104/pp.19.01434

Hippoシグナル伝達は進化的に保存されたキナーゼカスケードで、細胞増殖、アポトーシス、組織の恒常性を制御している。MOB1はこのカスケードにおける調節タンパク質の1つであり、シロイヌナズナには4種類(AtMOB1A、AtMOB1B、AtMOB1C、AtMOB1D)存在する。中国科学院 植物学研究所のCheng らは、以前に、AtMOB1A がオーキシンを介した成長にとって重要であることを見出している。今回は、AtMOB1の各種単独~四重変異体を作出し、植物体の形態を観察した。変異体は野生型と比較すると小型化するが、遺伝子によって作用力が異なり、AtMOB1AAtMOB1BAtMOB1CAtMOB1D よりも植物の成長制御においてより重要であること、AtMOB1AAtMOB1B よりも作用力が強いことが判った。そこで、同一サブグループに属するAtMOB1AAtMOB1B に注目して解析を進めた。AtMOB1AAtMOB1B は類似した発現パターンを示し、子葉、本葉、トライコーム、根毛、一次/二次根、花器官で発現していた。また、両タンパク質とも核、細胞質、細胞膜に局在していた。これらの結果から、AtMOB1AAtMOB1B は植物の発達を冗長的に制御していると考えられる。mob1a/1b 変異体芽生えの根は非常に短く、伸長領域、分裂領域の細胞数が減少し、根冠のコルメラが縮小していた。AtMOB1AとAtMOB1Bは生体内で相互作用をしていた。mob1a/1b 変異体と野生型のRNA-seq解析の結果、発現量の異なる遺伝子のGOは、ジャスモン酸(JA)の生合成、代謝、シグナル伝達が多く含まれていた。発現量の異なる89のJA関連遺伝子のうち83遺伝子はmob1a/1b 変異体で発現量が増加しており、mob1a/1b 変異体のJA含量は野生型よりも多くなっていた。これらの結果から、AtMOB1A、AtMOB1BはJAの生合成、代謝、シグナル伝達、蓄積を負に制御していることが示唆される。mob1a/1b 変異体は添加したMeJAに対する感受性が高くなっていた。myc2-2 mob1a/1b 三重変異体はmob1a/1b 変異体よりも根が長くなり、mob1a/1b 変異体のJA過敏性が抑制された。根幹細胞のパターン形成に関与しているPLETHORAPLT1PLT2 はMYC2によって発現が抑制され、このことによって根分裂組織活性や一次根成長が制限されている。mob1a/1b 変異体ではPLT1PLT2 の発現量が減少しており、このことが根の成長に影響しているものと思われる。Hippo/STE20のシロイヌナズナのホモログSIK1はMOB1相互作用をして細胞増殖や細胞拡張を制御していることが報告されている。また、sik1 変異体植物は野生型よりも小型化し、JA含量が減少している。sik1 mob1a/b 三重変異体はmob1a/b 二重変異体よりも小型化し、JA応答遺伝子の発現量が減少していた。よって、MOB1SIK1 は細胞増殖の制御において類似した機能を示すが、JA量やJA関連遺伝子の発現については逆の制御をしていると思われる。以上の結果から、AtMOB1AAtMOB1B はジャスモン酸の蓄積とシロイヌナズナの成長にとって重要であることが示唆される。

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論文)表皮PIF4による温度形態形成制御

2020-03-22 22:10:39 | 読んだ論文備忘録

The epidermis coordinates thermoresponsive growth through the phyB-PIF4-auxin pathway
Kim et al.  Nature Communication (2020) 11:1053.
doi:10.1038/s41467-020-14905-w

bHLH型転写因子のphytochrome interacting factor 4(PIF4)は、環境や植物ホルモンに応答した様々な成長・発達過程を制御している。PIF4 は地上部の全ての組織で発現しているが、特に維管束組織での発現が高い。韓国 高麗大学校Oh らは、シロイヌナズナpif1 pif3 pif4 pif5 四重変異体(pifq )において、維管束特異的プロモーターSUC2 、表皮特的プロモーターML1 の制御下でPIF4 を発現させたところ、ML1 プロモーター制御下でPIF4 を発現させた系統(ML1p::PIF4;pifq )の胚軸は野生型やpifq 変異体よりも長くなることを見出した。一方、SUC2 プロモーター制御下でPIF4 を発現させた系統(SUC2p::PIF4;pifq )の胚軸の長さはpifq 変異体と同等であった。胚軸や葉柄の伸長には表皮の概日時計活性が関与しており、表皮特異的にCCA1 を過剰発現させた植物はPIF4 の発現量が恒常的に高いことが報告されている。表皮特異的にCCA1 を過剰発現させた系統(CER6p::CCA1 )は胚軸伸長が促進されるが、この系統において人工マイクロRNAによってPIF4 の発現を減少させると胚軸伸長が抑制された。これらのことから、表皮PIF4は胚軸伸長を促進していると考えられる。RNA-seq解析、qRT-PCR解析の結果、表皮PIF4はオーキシン応答遺伝子や成長関連遺伝子を活性化していることが確認された。次に、温度上昇に応答した胚軸伸長について調査したところ、ML1p::PIF4;pifq は胚軸身長が促進されたが、SUC2p::PIF4;pifq の応答性は低かった。表皮特異的にPIF4 人工マイクロRNAを発現させた系統(ML1p::PIF4mi )は、温度上昇による胚軸伸長が見られなかった。また、強い転写リプレッサー活性を有するEARリプレッションドメインを付加したN-末端欠失PIF4(PIF4ΔN-SRDX)を組織特異的に発現させたところ、表皮で発現させた場合に温度上昇による胚軸伸長が抑制されたが、維管束で発現させた場合には温度上昇に対する応答性に変化は見られなかった。これらの結果から、温度上昇に応答した胚軸伸長は、維管束PIF4ではなく表皮PIF4活性が制御していると考えられる。安定型IAA3/SHY2(shy2-2)変異タンパク質を表皮特異的に発現させて表皮のオーキシン応答性を遮断すると温度上昇による胚軸伸長が抑制された。したがって、この過程にはオーキシン応答が関与していることが示唆される。PIF4活性を抑制するphyBを表皮特異的に過剰発現させると、温度上昇による胚軸伸長が抑制された。ML1p::PIF4;pifqSUC2p::PIF4;pifq 共に暗所での胚軸伸長が見られなかった。よって、PIFを介した胚軸伸長機構は明所と暗所では異なることが示唆される。温度上昇は表皮PIF4の安定化をもたらしてはいないが、ターゲット遺伝子への結合能力を高めた。また、温度上昇は表皮PIF4 の発現を誘導した。以上の結果から、温度上昇が誘導する胚軸伸長は、表皮PIF4によるオーキシン経路の活性によって引き起こされていることが示唆される。

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論文)種子発芽を制御する新規タンパク質

2020-03-18 07:39:33 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis thaliana SEED DORMANCY 4-LIKE regulates dormancy and germination by mediating the gibberellin pathway
Cao et al.  Journal of Experimantal Botany (2020) 71:919-933.
doi:10.1093/jxb/erz471

種子の休眠を制御している遺伝子は複数存在し、それらは環境による影響を強く受けている。中国科学院 植物学研究所のLiu らは、種子休眠を制御する新規遺伝子を同定することを目的に、シロイヌナズナのSTRINGデータベースを用いて、種子休眠を制御する機能未知タンパク質DELAY OF GERMINATION 1(DOG1)と共発現するタンパク質を探索した。その結果、At1g27461にコードされたタンパク質を見出した。この遺伝子はArabidopsis thaliana SEED DORMANCY 4-LIKEAtSdr4L )と命名されており、AtSdr4LDOG1 は種子の成熟、浸漬過程で同じ発現プロファイルを示した。T-DNA挿入Atsdr4l 変異体は、通常の生育条件で成長や形態に野生型との差異は見られないが、種子休眠が強くなっていた。AtSdr4L は354アミノ酸からなる機能未知のタンパク質をコードしており、種子特異的に発現し、AtSdr4Lタンパク質は核に局在していた。DOG1 はシロイヌナズナ種子休眠の重要な調節因子で、DOG1 発現量と休眠の程度には正の相関がある。Atsdr4l 変異体乾燥種子のDOG1 転写産物量は野生型よりも多く、種子休眠が見られないdog1 変異体乾燥種子のAtSdr4L 転写産物量は野生型と同等であった。dog1 Atsdr4l 二重変異体はAtsdr4l 変異体と同様に種子休眠が強くなっていた。これらの結果から、AtSdr4LDOG1 の下流で機能していることが示唆される。植物ホルモンのアブシジン酸(ABA)は種子休眠の誘導・維持に関与しているが、Atsdr4l 変異体種子のABA量、発芽時のABA感受性は野生型と同等であった。ABA生合成阻害剤フルリドン処理をするとAtsdr4l 変異体と野生型発芽率の差が縮まるが、変異体の種子休眠を完全に打ち消すことはなかった。したがって、Atsdr4l 変異体の種子休眠表現型は部分的にABAに依存していることが示唆される。Atsdr4l 変異体種子をジベレリン(GA)処理をしても発芽促進は見られなかったが、低温浸漬処理をすると発芽率が野生型と同等になった。Atsdr4l 変異体浸漬種子のGA生合成遺伝子、GA応答遺伝子の発現量は野生型よりも低く、GA異化遺伝子の発現量は野生型よりも高くなっていた。また、Atsdr4l 変異体種子はGA生合成阻害剤パクロブトラゾール(PAC)に対する感受性が高くなっていた。このことから、AtSdr4Lは種子発芽時にGA応答とGA生合成の正の制御因子として機能しているものと思われる。変異体の解析から、AtSdr4LはDELLAタンパク質のRGL2よりも上流で作用していると考えられる。以上の結果から、AtSdr4LはDOG1の下流においてGA経路を制御することで種子の休眠と発芽を阻害していると考えられる。

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論文)UV-Bによる胚軸伸長阻害

2020-03-13 14:45:34 | 読んだ論文備忘録

Degradation of the transcription factors PIF4 and PIF5 under UV-B promotes UVR8-mediated inhibition of hypocotyl growth in Arabidopsis
Tavridou et al.  The Plant Journal (2020) 101:507-517.

doi: 10.1111/tpj.14556

Research Highlight
Degrading to inhibit: a role for Phytochrome Initiation Factors in determining hypocotyl growth under UV-B
Alisdair R. Fernie  The Plant Journal (2020) 101:505-506.

doi: 10.1111/tpj.14644

光受容体UV RESISTANCE LOCUS 8(UVR8)はUV-Bを受容するとCONSTITUTIVELY PHOTOMORPHOGENIC 1(COP1)と相互作用をしてELONGATED HYPOCOTYL 5(HY5)タンパク質の安定化とHY5 の転写を誘導、増加したHY5がUV-B応答遺伝子の発現を促進し、胚軸伸長を阻害する。一方で、UV-Bは、避陰反応や温度上昇に応答して胚軸伸長を促進するPHYTOCHROME INTERACTING FACTOR 4(PIF4)やPIF5を負に制御していることが知られている。スイス ジュネーヴ大学Ulm らは、UVR8シグナル伝達による胚軸伸長阻害とPIF4、PIF5との関係を明らかにすることを目的に、シロイヌナズナの各種変異体にUV-B照射をして胚軸伸長を調査した。その結果、uvr8 変異体では胚軸伸長阻害や胚軸伸長関連遺伝子(XTR7YUC8IAA19IAA29 )の発現抑制が見られなかったが、hy5 hyh 二重変異体はUV-Bに応答して胚軸伸長が阻害され、胚軸伸長関連遺伝子の発現抑制されることがわかった。したがって、UV-Bによる胚軸伸長阻害はHY5/HYHとは独立したシグナル伝達経路によって制御されていると考えられる。UV-B照射はPIF4PIF5 mRNA量に影響しないが、PIF4、PIF5タンパク質量は減少し、この減少はuvr8 変異体では見られなかった。また、UV-B照射はPIF4、PIF5のターゲット遺伝子プロモーター領域への結合量を減少させた。これらの結果ら、活性化したUVR8はPIF4、PIF5を転写後に減少させることでターゲット遺伝子の発現量を低下させていると考えられる。pif4 pif5 二重変異体は野生型よりも胚軸が短くなるが、UV-B照射による胚軸伸長阻害は僅かであった。したがって、UVR8によるPIF4、PIF5タンパク質量の減少がUV-B照射による胚軸身長阻害を引き起こしていると考えられる。以上の結果から以下の機構が考えられる。UV-Bを受容することにより細胞質に局在していたUVR8ホモダイマーが乖離して核へ移行、COP1と相互作用をする。このことによって未知の機構によりPIF4、PIF5は26Sプロテアオーム系を介して分解され、胚軸伸長関連遺伝子の発現量が低下、胚軸伸長が阻害される。

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論文)JAZスプライスバリアントによるジャスモン酸シグナルの微調整

2020-03-09 15:29:00 | 読んだ論文備忘録

Mediator Subunit MED25 Couples Alternative Splicing of JAZ Genes with Fine-Tuning of Jasmonate Signaling
Wu et al.  The Plant Cell (2020) 32:429-448.

doi:10.1105/tpc.19.00583

シロイヌナズナのJAZ 遺伝子のうち、JAZ2JAZ3JAZ4JAZ5JAZ6JAZ9JAZ10JAZ12 はJasイントロンがあり、選択的スプライシング(AS)によってJasモチーフが分断されたJAZスプライスバリアントを形成する。これらのスプライスバリアントはジャスモン酸(JA)シグナル伝達の減感作に関与しているが、JAZ 遺伝子のASを制御する機構については明らかとなっていない。中国科学院 遺伝与発育生物学研究所のLi らは、シロイヌナズナ芽生えをメチルジャスモン酸(MeJA)処理した際に誘導されるJAZ 遺伝子を調査し、完全にスプライスされたJAZ 転写産物とASによって形成された短いJAZスプライスバリアント(ΔPYJAZ )転写産物は共にMeJA処理15分後から増加が確認され、1時時間後に最大量となる同じ挙動を示すことを見出した。次に、完全にスプライスされたJAZ6 もしくはスプライスバリアントΔPYJAZ6 を過剰発現させ、MeJA処理後のJA応答遺伝子の発現を見たところ、JAZ6 を過剰発現させた系統のJA応答性に変化は見られなかったが、ΔPYJAZ6 を過剰発現させた系統ではJA応答遺伝子の発現量が減少しており、JAによる根の伸長阻害が緩和されていた。ΔPYJAZ6はコロナチン存在下でCOI1と相互作用をせず、MeJA処理による分解に対してJAZ6よりも安定性があった。一方、ΔPYJAZ6はMYC2と相互作用をし、メディエーター複合体サブユニットMED25とMYC2の相互作用を阻害した。したがって、ΔPYJAZ6によるJAシグナル伝達の減感作効果はMED25-MYC2相互作用を妨げることによって引き起こされていると考えられる。MED25はスプライシング因子のPRE-mRNA-PROCESSING PROTEIN 39a(PRP39a)と直接相互作用をし、PRP40aとも関連することが確認された。PRP40a とそのホモログはMeJA処理によってわずかに発現誘導され、この制御にはMYC2とMED25が関与していた。MeJA処理はPRP39aとPRP40aのJAZ6 遺伝子座へのリクルートを促進し、JAZ6 pre-mRNAとの相互作用を高めた。このようなスプライシング因子のJAZ 遺伝子座へのリクルートメントは、Jasイントロンの無いJAZ1 遺伝子座では見られず、JasイントロンのあるJAZ5JAZ10 では見られた。T-DNA挿入prp39a 変異体、prp40a 変異体では、JAZ5JAZ6JAZ9JAZ10 のMeJAによる発現誘導量が減少していたが、これらのスプライスバリアント発現量は増加していた。prp39a prp40a 二重変異体と単独変異体とのJAZ 転写産物量の比較から、PRP39aとPRP40aはJasイントロンのスプライシングに対して相加的には作用しないことが示唆される。スプライシング因子の変異体の解析から、PRP39a、PRP40aおよびこれらの機能的ホモログはJAZ 遺伝子の正確なスプライシングを促進しており、スプライスバリアントによるJA応答に対する過剰な減感作を抑制する役割があると考えられる。med25 変異体の解析から、MeJAが誘導するJAZ 遺伝子、pre-mRNAとPRP39a、PRP40aとの相互作用にMED25が必要であることが確認された。以上の結果から、MED25-PRP39a/PRP40aモジュールはJasイントロン完全なスプライシングを促進することでJA応答の過剰な減感作を抑制していると考えられる。

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論文)エチレンによるイネの根の成長制御

2020-03-05 18:34:17 | 読んだ論文備忘録

Histidine kinase MHZ1/OsHK1 interacts with ethylene receptors to regulate root growth in rice
Zhao et al. Nature Communications (2020) 11:518.

doi:10.1038/s41467-020-14313-0

中国科学院 遺伝与発育生物学研究所Zhang らは、以前に単離した根特異的にエチレン非感受性を示すイネ変異体 mao huzi1mhz1、中国語で「猫のヒゲ」)が、LOC_Os06g44410遺伝子の機能喪失変異体であることを突き止めた。この遺伝子はヒスチジンキナーゼOsHK1をコードしており、他植物のMHZ1/OsHK1ホモログはエチレン応答の制御に関与していることが報告されている。MHZ1 を過剰発現させたイネ(MHZ1-OE )は恒常的エチレン応答型の表現型を示し、野生型よりも根が短い。MHZ1-OE 系統をエチレン作用阻害剤の1-メチルシクロプロペン(1-MCP)で処理すると短根表現型が抑制されることから、MHZ1の機能にはエチレン受容体シグナル伝達系が関与していると考えられる。エチレン応答遺伝子のOsRRA5OsERF002OsRAP2.8 のエチレン処理による発現誘導は、mhz1 変異体で抑制され、MHZ1-OE 系統ではエチレン処理に関係なく発現が強くなっていた。OsRRA5OsRAP2.8 の発現はMHZ1-OE 系統の地上部では強くなっておらず、いくつかのエチレン応答遺伝子の発現はmhz1 変異体、MHZ1-OE 系統で野生型と同等であった。したがって、MHZ1によるエチレン応答性の制御は器官や遺伝子によって異なる。MHZ1 転写産物は根特異的に検出され、その発現はエチレンによって誘導され、OsEIN2やOsEIL1による制御を受けていた。MHZ1は自己リン酸化し、ヒスチジンホスホトランスファータンパク質(HPt)のOsAHP1/2へホスホリル基を伝達し、さらにそこからB-タイプ応答レギュレーター(RR)のOsRR21へとリン酸リレーしていくことが確認された。Osahp1 Osahp2 二重変異体の根の成長はエチレン非感受性となった。また、OsRR21 過剰発現系統は根が短くなり、エチレン応答遺伝子の発現量が高くなっていた。これらの結果から、MHZ1-AHP1/2-OsRR21のリン酸リレーはイネの根におけるエチレン応答に関与していると考えられる。イネエチレン受容体OsERS2の機能喪失変異体Osers2 は、mhz1 変異の作用を打ち消し、エチレン非感受性を示す機能獲得変異体Osers2dMHZ1 を過剰発現させても表現型の変化は見られなかった。MHZ1とOsERS2は相互作用をし、OsERS2はMHZ1の小胞体膜局在を促進して、MHZ1の自己リン酸化とリン酸リレーを阻害することがわかった。さらに、OsERS1やOsETR2といった他のエチレン受容体もMHZ1と相互作用をして自己リン酸化を阻害することが確認された。エチレンシグナル伝達に関与している小胞体膜タンパク質のOsEIN2の機能喪失変異体や過剰発現系統を用いた解析から、イネの根の成長制御においてMHZ1を介した経路は、OsEIN2シグナル伝達経路と共に機能しているが、両経路は独立していることが示唆された。以上の結果から、MHZ1はイネの根におけるエチレン応答の正の調節因子として機能していると考えられる。

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