MYB30 and ETHYLENE INSENSITIVE3 antagonistically modulate root hair growth in Arabidopsis
Xiao et al. Plant Journal (2021) 106:480-492.
doi: 10.1111/tpj.15180
シロイヌナズナR2R3タイプMYB転写因子のMYB30は様々な生理・成長過程に関与していることが報告されている。中国 四川大学のZhou らは、myb30 変異体は根毛の成長が促進され、野生型植物よりも根毛が長いことを見出した。また、MYB30 過剰発現系統(MYB30-OX)は根毛成長が抑制されていた。これらの結果から、MYB30は根毛成長の負の制御因子であると考えられる。MYB30と相互作用をする因子を探索したところ、エチレンシグナル伝達に関与している転写因子ETHYLENE INSENSITIVE3(EIN3)が見出された。そして、MYB30-EIN3相互作用はエチレン前駆体のACC処理によって高まることが判った。野生型植物、myb30 変異体、MYB30-OXの芽生えをACC処理したところ、いずれの植物においても処理濃度に応じて根毛伸長が促進された。また、エチレン作用阻害剤の硝酸銀処理をしたところ、いずれの植物も同程度に根毛伸長が強く抑制された。これらの結果から、MYB30は少なくとも部分的にはエチレンシグナルを介して根毛成長を調節していることが示唆される。MYB30とEIN3の変異体の解析から、myb30 ein3 二重変異体の根毛はmyb30 変異体の根毛よりも短く、ein3 変異体の根毛よりも長いことが判った。同様に、myb30 ein3 eil1 三重変異体の根毛はein3 eil1 変異体の根毛よりも長いが、myb30 変異体の根毛よりも短くなっていた。よって、MYB30とEIN3/EIL1はシロイヌナズナの根毛成長を拮抗的に制御している。RSL クラスⅡ遺伝子のRSL2 ~RSL5 は根毛の発達に関与しており、このうちRSL4 はEIN3/EIL1 の下流に位置していることが知られている。解析の結果、RSL4 遺伝子プロモーター領域にはMYB30結合サイトがあり、MYB30はRSL4 プロモーター領域と直接相互作用をしてRSL4 の発現を抑制していることが判った。myb30 ein3 eil1 三重変異体のRSL4 転写産物量はein3 eil1 二重変異体よりも多く、myb30 変異体よりも少なくなっていた。よって、MYB30とEIN3は拮抗的にRSL4 の発現を調節していると考えられる。また、ACC処理はMYB30によるRSL4 発現の抑制をEIN3/EIL1に依存して負に制御した。EIN3/EIL1は直接MYB30と相互作用をすることでMYB30によるRSL4 の転写抑制を低減しているものと思われる。MYB30とEIN3/EIL1による拮抗的な制御は、根毛成長に関与する各種遺伝子においても観察された。以上の結果から、MYB30とEIN3/EIL1は根毛成長に関与する遺伝子群の発現を拮抗的に制御しており、エチレンはEIN3とMYB30の複合体形成を促進することで根毛成長を促進していると考えられる。