Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)ヒストンH2Aのリン酸化による花成制御

2017-11-21 05:16:37 | 読んだ論文備忘録

Phosphorylation of Histone H2A at Serine 95: A Plant-Specific Mark Involved in Flowering Time Regulation and H2A.Z Deposition
Su et al. The Plant Cell (2017) 29:2197-2213.

doi:10.1105/tpc.17.00266

カゼインキナーゼ I は、セリン/スレオニンタンパク質キナーゼの一種で、多くの真核生物で見られる多機能性タンパク質キナーゼである。クラミドモナスのカゼインキナーゼ I MUT9pは、ヒストンH3をリン酸化することが知られており、シロイヌナズナゲノムにはMUT9pと類似したMUT9P-LIKE-KINASEをコードする遺伝子が4つ(MLK1 -MLK4 )含まれている。これらのうち、MLK1とMLK2はH3をリン酸化することが報告されている。中国科学技術大学Ding らは、MLK4 の機能を解明するために、T-DNA挿入mlk4 変異体の表現型を観察した。その結果、mlk4 変異体は長日条件で花成遅延を起こすことが判った。また、MLK4 を過剰発現させた系統は、長日条件での花成が早くなった。mlk4 変異体では、長日条件での花成誘導に関与しているCONSTANSCO )やFLOWERING LOCUS TFT )の発現量が減少していた。長日条件下でのMLK4 転写産物量の概日変化を見ると、明期の終わりにピークが見られ、この発現パターンはCOFT の発現パターンと類似していた。co mlk4 二重変異体の花成時期は、日長に関係なくco 変異体と同等であり、co 変異体でMLK4 を過剰発現させた系統の花成もco 変異体と同等であった。したがって、MLK4CO は同じ経路で機能しており、MLK4 による花成時期の制御はCO に依存していると考えられる。MLK4のヒストンリン酸化活性について調査したところ、MLK4はヒストンH2Aのセリン95を特異的にリン酸化し、セリン95はストレプト植物のH2Aに特異的に見られるアミノ酸残基であることが判った。MLK4 は、主に子葉、胚軸、根の維管束で発現しており、花粉でも発現していた。MLK4と花成に関与するタンパク質との相互作用を調査したところ、概日リズム因子のCIRCADIAN CLOOK ASSOCIATED1(CCA1)と相互作用をすることが判った。cca1 機能喪失変異体は花成が野生型よりも早くなるが、mlk4 cca1 二重変異体はmlk4 変異体と同じように花成が遅延した。よって、MLK4CCA1 と同じ経路で機能していると考えられる。CCA1は、花成関連遺伝子であるGIGANTEAGI )のプロモーター領域に結合することが確認された。gi 変異体は花成遅延を起こすが、gi 変異体にmkl4 変異を導入してもMLK4 を過剰発現させても花成時期はgi 変異体と同等であった。また、mlk4 変異体ではGI の発現量が減少していた。これらの結果から、MLK4GI と同じ経路で作用していると考えられる。クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイの結果、MLK4はGI 遺伝子をターゲットとしていることが確認された。よって、MLK4はGI 遺伝子を直接のターゲットとすることでCO の発現を促進していると考えられる。MLK4は直接にGI 遺伝子プロモーターには結合せず、CCA1に依存してGI 遺伝子をターゲットとすることが判った。セリン95がリン酸化されたH2A(H2AS95ph)を特異的に認識する抗体を用いた解析から、GI 遺伝子はH2AS95phが多く含まれており、これはMLK4 に依存していることが判った。H2AS95ph修飾とGI 転写産物量との間に正の相関があるということは、ヒストンH4のアセチル化もしくはヒストンバリアントH2A.Zの蓄積といったクロマチンリモデリングに関与する複合体がMLK4と相互作用をすることが推測される。解析の結果、CCA1はクロマチンリモデリング複合体Swi2/Snf2-related ATPase(SWR1)およびヒストンアセチル化複合体NuA4の共通のコンポーネントであるYAF9aと相互作用をすることが判った。また、MLK4はYAF9aと相互作用を示し、mlk4 変異体の解析から、MLK4はGI 遺伝子でのH2A.Zの蓄積とH4のアセチル化に関与していることが確認された。また、yaf9a 変異体ではGI の発現量が低下し、H2A.Zの蓄積とH4のアセチル化も低下していた。以上の結果から、MLK4によるH2AS95ph修飾は、H2A.Zの蓄積とH4のアセチル化を高めることでGI 遺伝子の発現を促進し、花成を制御していると考えられる。

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論文)ヒストン脱アセチル化酵素による根の成長制御

2017-11-14 19:26:27 | 読んだ論文備忘録

Plant-Specific Histone Deacetylases HDT1/2 Regulate GIBBERELLIN 2-OXIDASE2 Expression to Control Arabidopsis Root Meristem Cell Number
Li et al. Plant Cell (2017) 29:2183-2196.

doi:10.1105/tpc.17.00366

根の構造や成長は根分裂組織の活性に依存している。根分裂組織の幹細胞が細胞分裂して生じた娘細胞は、数回分裂した後、細胞拡張する。最近になって、シロイヌナズナの根における細胞分裂から細胞拡張への移行とヒストンのアセチル化量の変化が連動していることが報告された。ヒストンのアセチル化量はヒストンアセチル化酵素と脱アセチル化酵素によって制御されており、移行領域では植物特異的ヒストン脱アセチル化酵素遺伝子HDT1-HDT4 が高い発現を示す。しかしながら、根の発達過程におけるHDTの機能については明らかとなっていない。オランダ ヴァーヘニンゲン大学Bisseling らは、シロイヌナズナの各HDT 遺伝子のT-DNA挿入変異体の根の成長を調査した。hdt1hdt3hdt4 の各変異体はナンセンス変異体であったが、根の表現型に変化は見られなかった。hdt2 変異体は転写産物量が20%程度に低下したノックダウン変異体であったが、根長が野生型よりも短くなった。hdt2 変異体と他のhdt 変異体とを交雑して二重変異体を作出して表現型を観察したところ、hdt2 hdt3hdt2 hdt4 の各二重変異体の表現型はhdt2 変異体と同等であったが、hdt1 hdt2 二重変異体は致死となった。HDT1/2 プロモーター制御下でGUSもしくはGFPを発現させたところ、両プロモーターとも根分裂組織で発現を示し、斑状の発現パターンを示した。このことから、両遺伝子の発現は細胞周期に依存していることが示唆される。根分裂組織特異的に発現するROOT CLAVATA HOMOLOG1RCH1 )プロモーターを用いてHDT1/2 をノックダウンした形質転換体(hdt1,2i )は、hdt2 変異体よりも主根が短くなった。これらの結果から、HDT1/2は根の成長を正に制御していることが示唆される。hdt1,2i の根の成長速度低下は、伸長領域に供給される細胞数が減少していることによって引き起こされていた。しかしながら、hdt1,2i の静止中心(QC)は正常であることから、hdt1,2i の根分裂組織細胞数の減少は幹細胞ニッチの機能が低下したことによるではないと考えられる。根分裂組織の細胞数は発芽後に増加し、野生型では6日後に細胞数が最大となるが、hdt1,2i では4日後に最大となった。このことから、HDT1/2は細胞分裂から細胞拡張への移行の制御に関与しており、hdt1,2i の根分裂組織細胞数の減少は移行が早期に起こるために引き起こされていると考えられる。野生型とhdt1,2i の根の分裂組織領域、伸長領域、分化領域のトランスクリプトームを比較し、発現量が異なる遺伝子(DEGs)をそれぞれ、90、114、42遺伝子見出した。そして、分裂組織領域では75遺伝子(DEGsの83%)、伸長領域では63遺伝子(DEGsの55%)、分化領域では25遺伝子(DEGsの60%)がhdt1,2i で発現量が高くなっていた。hdt1,2i で発現量が高い遺伝子は化学物質や刺激に応答する遺伝子が多く含まれており、発現量が低い遺伝子は根の発達制御に関与するものが多く含まれていた。HDT1/2はおそらく遺伝子発現を抑制していると思われるので、hdt1,2i の分裂組織領域で発現量が高い遺伝子が表現型に関与していると思われる。そのような遺伝子としてGA2ox2 に着目した。GA2ox2 は生物活性のあるジベレリン(GA)を不活性化するオキシダーゼをコードしており、GAはシロイヌナズナの根の細胞分裂から細胞拡張への移行を遅延させる効果がある。hdt1,2i の根端部は、DELLAタンパク質のREPRESSOR OF ga1-3 (RGA)量が野生型よりも多く、このことからGA量が低下していると考えられる。また、hdt1,2i ではGAにより正の制御を受けているPIN1とPIN2の量も減少していた。GA2ox2はGA4を基質とするがGA3は基質としない。芽生えにGA3を与えると野生型もhdt1,2i も根分裂組織の細胞数が増加するが、GA4を与えた場合はhdt1,2i での細胞数増加の程度は野生型よりも低下していた。したがって、hdt1,2i でのGA2ox2 発現量増加は、GA量の低下を引き起こしていることが示唆される。HDT1/2GA2ox2 の発現量の関係を調査したところ、HDT2 の発現量が低い際にはGA2ox2 の発現量が高くなっており、GA2ox2 の発現はHDT2によって負に制御されていることが示唆される。クロマチン免疫沈降-pQCR(ChIP-qPCR)から、HDT2はGA2ox2 遺伝子の第1エクソンやTATA-box領域、第2エクソンに結合し、hdt1,2i ではその領域のH3ac量が高いことが確認された。したがって、HDT1/2はGA20x2 遺伝子座の特定領域のヒストンH3を脱アセチル化することでGA2ox2 の発現を抑制していると考えられる。根特異的に発現するRCH1 プロモーター制御下でGA2ox2 を発現させた系統は野生型よりも根が短くなり、hdt1,2i と同じように、細胞分裂から細胞拡張への移行が早期に起こった。よって、hdt1,2i の根端でのGA量の低下が根分裂組織の大きさの制御に関与していると考えられる。また、hdt1,2iGA2ox2 をノックダウンすることで根分裂組織の異常が部分的に回復した。これらの結果から、HDT1/2はGA2ox2 の発現を抑制することでGA量の微調整を行ない、根分裂組織の細胞数を決定していると考えられる。GA2ox2 プロモーター制御下でGUSを発現するコンストラクトを野生型に導入すると、GUS活性は根分裂組織の分裂領域から伸長領域へ移行する領域の維管束組織や内鞘で発現しているが、hdt1,2i では根分裂組織から伸長領域の遠位まで発現領域が拡大し、維管束や内鞘だけでなく全ての細胞で高い発現を示した。そして発現量は基部に行くにつれて低下していった。以上の結果から、HDT1/2は根分裂組織や伸長領域でのGA2ox2 の発現量を抑制することで、根の細胞分裂から細胞拡張への移行を制御していると考えられる。

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論文)重力シグナルの伝達機構

2017-11-08 21:31:17 | 読んだ論文備忘録

The Arabidopsis LAZY1 Family Plays a Key Role in Gravity Signaling within Statocytes and in Branch Angle Control of Roots and Shoots
Taniguchi et al. Plant Cell (2017) 29:1984-1999.

doi:10.1105/tpc.16.00575

植物が重力屈性を示す際には、平衡細胞が重力シグナルを感知し、オーキシンの非対称分布が起こり器官が屈曲する。しかしながら、両者を結ぶ分子機構は明らかとなっていない。名古屋大学森田らは、シロイヌナズナのシュートの平衡細胞において重力シグナルを制御している遺伝子を同定するために、野生型と重力屈性を示さないshoot gravitropism1sgr1 )/scarecrowscr )変異体およびendodermal amyloplast less1eal1 )/sgr7/short-rootshr )変異体の花序茎のマイクロアレイ解析を行なった。そして、sgr1 /scr 変異体とeal1 /shr 変異体で発現量が低下しているLAZY1 ファミリー遺伝子に着目し、これらの遺伝子をLAZY1-LIKE1LZY1 )、LZY2LZY3 と命名して詳細な解析を行なった。これら3遺伝子は発現パターンが異なっていたが、一部重複して発現する部分も見られ、花序茎や胚軸の内皮では共通して発現していた。各遺伝子のT-DNA挿入変異体の表現型を見ると、lzy2 変異体、lzy3 変異体、lzy2 lzy3 二重変異体の花序茎の重力屈性応答に変化は見られなかったが、lzy1 変異体は重力屈性応答が低下し、側枝が水平方向に成長する傾向が見られた。lzy2 変異はlzy1 変異体の表現型を強調させたが、lzy3 変異はそのような効果を示さなかった。また、lzy1 lzy2 lzy3 三重変異体はlzy1 lzy2 二重変異体よりも強い重力屈性応答の低下を示し、一次シュートは完全に重力屈性を失って、地面を這うように成長した。黄化芽生えの胚軸では、単独変異体、二重変異体の重力屈性応答の変化は僅かであったが、三重変異体は有意に応答性が低下していた。これらの結果から、LZY 遺伝子はシュートの重量屈性に対して冗長的に異なるレベルで機能していることが示唆される。lzy1 lzy2 lzy3 三重変異体は光刺激に応答した非対称器官成長は示すことから、LZY 遺伝子は屈曲応答の際の器官伸長の前の過程に関与していることが示唆される。lzy1 lzy2 lzy3 三重変異体においてLZY 遺伝子をシュートと根の内皮特異的に発現するSGR1 /SCR プロモーター制御下で発現させたところ、重力屈性の回復が見られた。よって、LZY 遺伝子は分子機構に冗長性があることが示唆される。lzy1 lzy2 lzy3 三重変異体の花序茎の内皮は正常であり、胚軸の内皮ではデンプンの蓄積が見られ、重力刺激を与えることでアミロプラストの沈降が起こった。したがって、LZY 遺伝子はシュートの平衡細胞でのアミロプラストによる重力感知以降の過程に関与しているものと思われる。LZY 遺伝子プロモーター活性解析から、LZY2LZY3 は主根および側根のコルメラ細胞で発現していることが判明し、lzy2 lzy3 二重変異体は根の重力屈性が低下していた。lzy2 lzy3 二重変異体とlzy1 lzy2 lzy3 三重変異体の根の重力屈性に差異が見られないことから、LZY1 は根の重力屈性には関与していないと思われる。lzy1 lzy2 lzy3 三重変異体においてACTIN DEPOLYMERIZING FACTOR9ADF9 )プロモーター制御下でLZY 遺伝子を根の平衡細胞であるコルメラ細胞で発現させたところ、根の重力屈性の回復が見られた。よっていずれのLZY 遺伝子も根の重力屈性に関して同じ機能を有していると考えられる。lzy1 lzy2 lzy3 三重変異体の主根や側根の根冠の形態やデンプンの蓄積は野生型と同等であり、コルメラ細胞でのアミロプラストの沈降も正常であった。よって、LZY 遺伝子はシュートと同様に根の平衡細胞においてもアミロプラストによる重力感知以降の過程において作用していることが示唆される。また、lzy1 lzy2 lzy3 三重変異体の根では、重力刺激後のオーキシン応答マーカーDR5rev:GFP の非対称発現が見られないことから、LZY 遺伝子はオーキシン非対称分布の形成に関与していると考えられる。LZYファミリータンパク質には機能ドメインもしくはモチーフと思われる領域が見られないが、全てのLZYファミリータンパク質においてC末端14アミノ酸配列が保存されていた。そこでこのドメインを「conserved C terminus in LAZY1 family proteins(CCL)」と命名した。CCLドメインを欠いたLZY2タンパク質やLZY3タンパク質はlzy1 lzy2 lzy3 三重変異体の根の重力屈性を回復させなかった。よって、CCLドメインは根におけるLZY2 およびLZY3 の機能にとって重要であると考えられる。LZY2、LZY3は細胞膜に局在しているが、LZY1は核に局在していた。CCLドメインを欠いたLZY3も細胞膜に局在することから、CCLドメインはLZYタンパク質の局在性には関与していないと考えられる。CCLドメインとmCherryの融合タンパク質をlzy1 lzy2 lzy3 三重変異体で発現させると芽生えの根が上向きに成長した。CCLドメインを野生型植物で発現させてもlzy1 lzy2 lzy3 三重変異体よりも弱いが根の重力屈性の異常は見られた。この時、アミロプラストの沈降は正常であった。よって、CCLドメインを発現させたlzy1 lzy2 lzy3 三重変異体は重力の方向シグナルを認識しているが、シグナルの異常によって負の重力屈性を示していると考えられる。CCLドメインをコルメラ細胞で発現させたlzy1 lzy2 lzy3 三重変異体の根端でのDR5rev:GFP の発現パターンは、野生型と同等であったが、重力刺激の方向を変えることによるGFP蛍光の非対称分布が見られなかった。よって、CCLはコルメラ細胞において重力シグナル伝達を妨げ、根端でのオーキシン輸送の方向性の喪失を引き起こしているものと思われる。lzy2 変異体、lzy3 変異体、lzy2 lzy3 二重変異体では側枝の成長方向は野生型と同等であったが、lzy1 変異体の側枝はほぼ水平方向に成長し、lzy2 変異、lzy3 変異はlzy1 変異体の表現型を強調した。lzy3 変異体の側根は野生型よりも伸長する角度が開いていた。これらの結果から、LZY 遺伝子は側枝や側根の成長角度の制御に対しても重要であると考えられる。lzy2 lzy3 二重変異体やlzy1 lzy2 lzy3 三重変異体の側根はやや上向きに伸長した。lzy1 lzy2 lzy3 三重変異体芽生えを上下逆さまにしても側根は上へと成長することから、三重変異体の側根は重力は感知しているが成長方向が逆になっている。そこで、側根の発達過程を追ってDR5rev:GFP でオーキシン分布を調査したところ、野生型では根冠の下側にGFP蛍光が観察されるが、lzy1 lzy2 lzy3 三重変異体では上側に蛍光が見られた。コルメラ細胞でのオーキシン輸送にはPIN3が関与しており、PIN3の局在を見ると、野生型の側根では細胞の下側に多く局在しているが、lzy1 lzy2 lzy3 三重変異体では上側に多く局在していた。このPIN3の非対称分布は、DR5rev:GFP の発現パターンや側根の成長方向と一致しており、LZY 遺伝子は側根コルメラ細胞においてPIN3の局在に影響することで重力方向へのオーキシン輸送に関与していると考えられる。以上の結果から、LZY 遺伝子は、重力に応答したオーキシンの非対称分布の形成に関与していると考えられる。

名古屋大学のプレスリリース

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論文)EIN2によるエチレンシグナル伝達の分子機構

2017-11-02 13:23:22 | 読んだ論文備忘録

EIN2 mediates direct regulation of histone acetylation in the ethylene response
Zhang et al. PNAS (2017) 114:10274-10279.

doi:10.1073/pnas.1707937114

エチレンのシグナル伝達において、膜結合タンパク質EIN2は重要な役割を演じている。エチレン非存在下では、タンパク質キナーゼCTR1がEIN2のC-末端領域(EIN2-C)をリン酸化し、EIN2の活性は抑制されている。エチレン存在下では、EIN2-Cは脱リン酸化され、切断されて核もしくはプロセシングボディ(P-body)へ移行する。EIN2-Cは核において転写因子のEIN3やEIL1にシグナルを伝達し、このことによってエチレン応答遺伝子の発現が活性化される。テキサス大学オースティン校 細胞分子生物学研究所Qiao らは、以前に、EIN2がエチレン応答に際してヒストンH3K14やH3K23のアセチル化の制御に関与していることを見出し、今回、詳細な解析を行なった。アミノ酸置換によりEIN2-Cが常に核に局在しエチレン応答表現型を示す変異型EIN2 を発現する形質転換シロイヌナズナは、エチレン処理に応答してH3K14AcやH3K23Acが野生型よりも増加した。また、EIN2 過剰発現形質転換体のH3K14AcやH3K23Acはエチレン処理に関係なく野生型よりも多く、ein2-5 変異体ではエチレン処理をしていない条件でH3K14AcやH3K23Acが野生型よりも少なく、エチレン処理による増加も見られなかった。したがって、EIN2-CはH3K14およびH3K23のエチレンに応答したアセチル化に関与していると考えられる。CRISPR-dCas9遺伝子発現活性化システムを用いた解析から、EIN2-Cがターゲット遺伝子のH3K14Ac、H3K23Acを増加させ、ヒストンアセチル化と遺伝子発現の活性化に相関が見られることが確認された。EIN2-CはDNAやクロマチンとの結合に関与するドメインを含んでいないが、ヒストン結合タンパク質のEIN2 nuclear-associated prrotein1(ENAP1)と相互作用をする。そこで、ENAP1-ChIP/EIN2-reChIPシークエンシングを行ない、ENAP1とEIN2の両方と結合する1739遺伝子を同定した。これらのうち半分以上はエチレン存在下でのENAP1のターゲット遺伝子と重複しており、結合シグナルはエチレン存在下で強くなった。また、ENAP1とEIN2の両方が結合する遺伝子の70%以上はエチレン存在下でH3K23Acを含む遺伝子であった。ChIP-seqの結果、ENAP1はエチレン非存在下で7000遺伝子と結合したが、エチレン存在下では結合する遺伝子が5000遺伝子と減少した。また、結合部位の殆どが遺伝子のプロモーター領域であった。ENAP1-ChIP/EIN2-reChIP-qPCRをエチレン処理から経時的に調査すると、EIN2のターゲット遺伝子への結合は徐々に強くなっていき、ENAP1との結合は逆の傾向を示した。また、H3K23Acの量は増加していった。このことから、エチレン存在下でのENAP1結合の変化はEIN2-Cとの相互作用によるものであり、その結果、ターゲット遺伝子のH2K23Acの増加が起こると考えられる。エチレン処理によるENAP1結合の変化はein2-5 変異体では観察されなかった。また、野生型においてエチレンによって発現制御を受ける遺伝子の92%以上は、ENAP1 を過剰発現させたein2-5 変異体で発現量変化を示さなかった。したがって、エチレン応答におけるENAP1の機能はEIN2に依存している。シロイヌナズナの30000遺伝子を3日目黄化芽生えにおける発現量から5つのグループに分け、それらの遺伝子のENAP1 ChIP-seqシグナルを調査した結果、ENAP1は活発に転写される遺伝子領域に結合する傾向が見られた。また、遺伝子活性化の指標であるヒストンのアセチル化を見ると、H3K9Acを含む遺伝子の50%、H3K14Acを含む遺伝子の63%、H3K23Acを含む遺伝子の53%にENAP1が結合していた。エチレンシグナル伝達において鍵となる転写因子のEIN3のChIP-seqシグナルはENAP1がターゲットとしている領域で多く見られた。以上の結果から、エチレン存在下において、EIN2はENAP1および他の因子と相互作用をすることでターゲット遺伝子のヒストンアセチル化を高め、EIN3の結合を促進してエチレンに応答した転写を引き起こしていると考えられる。

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