A Molecular switch for FLOWERING LOCUS C activation determines flowering time in Arabidopsis
Shen et al. Plant Cell (2022) 34:818-833.
doi:10.1093/plcell/koab286
RNAポリメラーゼⅡ(PolⅡ)C-末端ドメイン(CTD)フォスファターゼは、PolⅡ最大サブユニットのC-末端ドメインのSer残基を脱リン酸化する。シロイヌナズナC-TERMINAL DOMAIN PHOSPHATASE-LIKE 3(CPL3)は、PolⅡ CTDフォスファターゼファミリーに属し、植物免疫応答の制御に関与していることが報告されている。シンガポール テマセク生命科学研究所のShen らは、T-DNA挿入cpl3 変異体は日長に関係なく早期花成することを見出した。cpl3 変異体での花成制御遺伝子の発現を見ると、FLOWERING LOCUS T (FT )やSUPPRESSOR OF OVEREXPRESSION OF CONSTANS 1 (SOC1 )の発現量が増加し、FLOWERING LOCUS C (FLC )の発現量が劇的に減少していた。一方で、SHORT VEGETATIVE PHASE (SVP )やMADS AFFECTING FLOWERING 1 (MAF1 )~MAF5 の発現量に変化は見られなかった。FLC の発現は、FRIGIDA(FRI)、FLC EXPRESSOR(FLX)、FLX-LIKE 4(FLX4)、FRI-ESSENTIAL 1(FES1)などからなるFRI-Cアクチベーター複合体によって活性化されるが、cpl3 変異はFRIによるFLC の発現活性化と花成遅延を抑制した。よって、CPL3はFLC の発現にとって不可欠であると考えられる。CPL3はFRI-C複合体のコンポーネントであるFLXと相互作用をすることが確認され、flx 変異体とcpl3 変異体は花成時期とFLC 発現量が類似していた。FLXはFRI-C複合体内でFLX4およびFES1と相互作用をしており、酵母three-hybrid(Y3H)アッセイから、CPL3はFLX存在下でFLX4と相互作用をすることが確認された。そして、flx4 変異体もcpl3 変異体と同じような花成とFLC 発現量を示した。また、CPL3 、FLX 、FLX4 のシロイヌナズナ植物体での発現プロファイルは類似していた。CPL3が複合体を形成するFLXとFLX4のうち、FLX4は生体内でリン酸化され、リン酸化型FLX4量はcpl3 変異体、flx 変異体で増加していた。よって、CPL3はFLX4を脱リン酸化し、FLXはCPL3とFLX4の相互作用に関与していることが示唆される。FLX4の226番目のSer残基(S226)をAla残基に置換して疑似脱リン酸化したFLX4S226Aをcpl3 変異体で発現させると花成の早期化が部分的に抑制された。また、S226をAsp残基に置換して疑似リン酸化したFLX4S226Dは、野生型FLX4やFLX4S226Aと比較してFLC 遺伝子座への結合量が減少していた。以上の結果から、CPL3はFLXを介してFLX4と相互作用してFLX4を脱リン酸化し、脱リン酸化されたFLX4がFLC 遺伝子座に結合してFLC の発現を活性化し、開花時期を調節していると考えられる。