Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)miR156/SPLによる側根発達の制御

2015-09-28 22:43:04 | 読んだ論文備忘録

The role of miR156/SPLs modules in Arabidopsis lateral root development
Yu et al.  The Plant Journal (2015) 83:673-685.

DOI:10.1111/tpj.12919

miR156は多くの植物で見られる進化的に保存されたmiRNAであり、シロイヌナズナゲノムにはMIR156AMIR156H の8つの遺伝子が存在している。米国 ロックフェラー大学Chua らは、シロイヌナズナMIR156 遺伝子プロモーターでGUSを発現させてMIR156 遺伝子発現の組織特異性を比較したり、定量PCRでMIR156 の発現を評価した結果、一部のMIR156 遺伝子が根で発現していることを見出した。miR156のターゲットとなっているSOUAMOSA PROMOTER BINDING PROTEIN-LIKESPL )遺伝子の根での発現を見たところ、シロイヌナズナの3つのグループのSPL 遺伝子とも根での発現が見られ、特にSLP10 の発現が高いことがわかった。そこで、5コピーのMIR156A を発現させるコンストラクト(P35S:5MIR156A )およびmiR156活性を相殺するために5コピーのMIM156 を発現させるコンストラクト(P35S:5MIM156 )を導入した形質転換体の形態を観察したところ、P35S:5MIM156 系統の芽生えは側根が形成されず主根が短い表現型を示し、P35S:5MIR156A 系統は側根数が増加し主根が長くなることがわかった。よって、miR156は側生器官の成長を正に制御しているものと思われる。さらに、miR156非感受性型のSPL(rSPL )を発現させた形質転換体は、3つのグループのSPL(SPL3、SPL9、SPL10)とも側根の発達が抑制され、rSPL10 を発現させた個体では側根が殆ど形成されなかった。また、spl 変異体(spl3spl10spl9 spl15 )は側根数が増加した。miR156はターゲットのSPL9やSPL10により安定性が維持されることで正の制御を受けていることが知られている。P35S:5MIR156P35S:5MIM156PSPL10:rSPL10 を導入した芽生えの根端部でのPMIR156D-GUS活性を見たところ、P35S:5MIR156 系統ではGUS活性が低下し、P35S:5MIM156 系統、PSPL10:rSPL10 系統ではGUS活性が高くなっていた。PSPL9:rSPL9 系統、PSPL10:rSPL10 系統ではMIR156D の発現量が増加していたが、PSPL3:rSPL3 系統ではMIR156D の発現量は野生型と同等であった。P35S:5MIR156 系統の芽生えでは側根原基数が減少しており、P35S:rSPL3 系統、PSPL9:rSPL9 系統、PSPL10:rSPL10 系統では増加していた。しかしながら、出現した側根数はP35S:5MIR156 系統は野生型よりも多く、rSPL 系統は少なかった。また、出現した側根と側根原基を合わせた合計数、側根分裂組織の大きさは遺伝子型による差は見られなかった。よって、miR156/SPLsは側根原基の発達に対して影響していると考えられる。主根の伸長阻害や側根の伸長促進に関与しているオーキシンは、MIR156BMIR156D の発現を誘導し、さらにSPL9SPL10 の発現も誘導した。オーキシン処理によって、野生型、P35S:5MIR156 系統、rSPL 系統の側根数は増加したが、rSPL 系統の側根数は野生型植物よりも少なく、オーキシンだけではrSPL 系統の側根伸長を回復させるには不十分であると考えられる。オーキシン輸送阻害剤のNPAを処理すると側根数は減少するが、P35S:5MIR156 系統の側根数は野生型よりも多く、rSPL 系統では殆ど側根が形成されなかった。miR156とそのターゲット遺伝子であるSPL に関していは、これまでは地上部の器官の発達における重要性が示されてきたが、今回の結果から側根伸長等の根系の発達にも関与していることが明らかとなった。

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論文)ジベレリンとアブシジン酸の拮抗作用の制御機構

2015-09-18 21:25:20 | 読んだ論文備忘録

The SnRK2-APC/CTE regulatory module mediates the antagonistic action of gibberellic acid and abscisic acid pathways
Lin et al.  Nature Communication (2015) 6:7981.

DOI: 10.1038/ncomms8981

イネAPC/C E3ユビキチンリガーゼ複合体のアクティベーターをコードするTiller EnhancerTE )は分けつ数を制御する主要な調節因子のMONOCULM 1(MOC1)の分解を促進することで分けつを抑制している。そのため、te 変異体は分けつ数が増加するが、その他にも、草丈が低くなる、止葉や穂がねじれるといった多面的な表現型を示す。中国農業科学院 作物科学研究所Wan らは、te 変異体種子は発芽や実生の成長が野生型よりも遅く、TE 過剰発現系統の種子はアブシジン酸(ABA)存在下でも発芽や実生の成長が野生型よりも促進されることを見出した。したがって、TEはABA応答に関与していることが示唆される。te 変異体は乾燥ストレスに耐性があり、ABA応答遺伝子のLEA3RAB16A の発現量が僅かに高くなっていた。また、TE 過剰発現系統では、内生ABA量は野生型と同等であったが、LEA3LIP9RAB16A の転写産物量が減少していた。これらのことから、TEはABAシグナル伝達の抑制因子として機能していることが示唆される。逆に、te 変異体種子は種子発芽や実生の成長過程でのジベレリン(GA)応答性が低下しており、GAによるα-アミラーゼ活性の誘導も野生型と比較すると低くなっていた。TE 過剰発現系統ではα-アミラーゼ遺伝子RAmy1A の発現がGAによって強く誘導されており、TE はGAシグナル伝達に対して促進的に作用していると考えられる。したがって、TEはABAとGAの拮抗的な作用に関与していることが示唆される。TEはターゲットタンパク質のD-boxもしくはKEN-box認識して結合することが知られている。イネやシロイヌナズナのABA受容体PYR/PYL/RCARはD-boxを含んでおり、野生型植物由来の粗抽出液において8種類のPYL/PYRの分解が観察されたが、te 変異体粗抽出液では分解が野生型よりも遅く安定性が増していた。また、TEはOsPYL/RCAR10と物理的に相互作用を示すことが確認された。OsPYL/RCAR10はte 変異体粗抽出液よりも野生型粗抽出液においてより効率よくポリユビキチン化され、te 変異体は野生型よりもOsPYL/RCAR10量が多く、TE 過剰発現系統では少なくなっていた。OsPYL/RCAR10 の発現をRNAiで抑制したte 変異体は種子発芽と実生の成長に関して回復が見られたが、分けつ数に関しては変化が見られなかった。これらのことから、APC/CTEはOsPYL/RCARをプロテアソーム系による分解の標的とすることでABAシグナル伝達を抑制していると考えられる。TEはABAシグナル伝達に関与しているSnRK2キナーゼと相互作用をし、N末端側のS77がSnRK2によってリン酸化される部位であることが推測された。TEのS77をDに置換したリン酸化模倣変異体TE(S77D)はOsPYL/RCAR10と結合しないことから、S77のリン酸化はOsPYL/RCAR10との相互作用を妨げていることが示唆される。SnRK2 過剰発現系統は発芽や実生の成長が遅延しOsPYL/RCAR10の蓄積量が増加した。また、SnRK2 過剰発現系統では内生ABA量が野生型よりも僅かに高くなった。これらの結果から、SnRK2はTEのリン酸化を介してOsPYL/RCAR受容体を安定化させることで、またABA生合成を高めることでABAシグナル伝達を正に制御していると考えられる。野生型植物において、GA処理はOsPYL/RCAR10の分解を促進したが、te 変異体では分解促進は見られなかった。一方、ABA処理は野生型植物においてOsPYL/RCAR10を安定化させた。GA処理によるOsPYL/RCAR10の分解は、ABAの添加によって、その濃度に応じて阻害された。また、ABA処理によるOsPYL/RCAR10の蓄積は、GA添加量が増加するにつれて徐々に減少していった。したがって、ABAとGAはOsPYL/RCAR10の安定化/分解に関して拮抗的に作用し、GAによるOsPYL/RCAR10の分解にはAPC/CTEが関与していることが示唆される。ABAはTEとOsPYL/RCAR10との相互作用を阻害し、GAは促進することが確認された。GA処理はSnRK2の蓄積量を減少させ、ABA処理は増加させた。SnRK2量はGA非感受性変異体gid1 やGA生合成変異体d18 では野生型よりも多くなっていた。GA生合成阻害剤パクロブトラゾール処理もSnRK2の蓄積を促進した。ABA処理はSnRK2の安定化に加えてSnRK2をコードする転写産物の蓄積も促進した。以上の結果から、GAはSnRK2活性を低下させることでTEとOsPYL/RCAR10の相互作用を促進してOsPYL/RCAR10の分解を誘導し、ABAはSnRK2活性を転写レベルおよび転写後レベルで高めることでTEとOsPYL/RCAR10の相互作用を阻害していると考えられる。以上の結果から、SnRK2とACP/CTEはジベレリンとアブシジン酸の拮抗的作用の制御の中核として機能していると考えられる。

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論文)ジベレリンによる木本植物の側芽成長促進

2015-09-14 22:46:46 | 読んだ論文備忘録

Gibberellin Promotes Shoot Branching in the Perennial Woody Plant Jatropha curcas
Ni et al.  Plant Cell Physiol. (2015) 56:1655-1666.

doi:10.1093/pcp/pcv089

中国科学院 シーサンパンナ熱帯植物園Xu らは、ナンヨウアブラギリ(Jatropha curcas トウダイグサ科)の二年生苗にジベレリン(GA)もしくはサイトカイニン(BA)を処理することで側枝の成長が促進されることを見出した。しかも、BAはGAよりも効果が強かった。また、両ホルモンは成熟した幹の休眠している腋芽も活性化させた。GA生合成遺伝子JaGA20ox1 を過剰発現させた形質転換体の側芽も成長が促進されることから、GAは側芽の成長に対して促進的に作用すると考えられる。GAとBAを同時に与えると、側芽の成長に対して相乗的に作用した。GA生合成阻害剤のパクロブトラゾール(PAC)とBAを同時に与えると、BAによる側芽成長促進が抑制された。サイトカイニンによる分枝形成促進効果はモデル植物のエンドウにおいても確認されているが、GAによる分枝形成促進やサイトカイニンによる分枝形成促進のPACによる抑制はエンドウでは起こらなかった。サイトカイニンのtrans-ゼアチンは根で生産されることから、ナンヨウアブラギリ芽生えの根を切除してサイトカイニンの供給を抑制するとGAによる側芽成長促進が弱まり、BAを同時に与えるとGAによる促進効果が見られた。したがって、GAによる側芽成長促進にはサイトカイニンが必要である。GAは新たに発達した側芽の葉腋部分からの二次芽の形成を誘導したが、サイトカイニンではそのような誘導は見られなかった。シロイヌナズナでの研究から、BRANCHED1BRC1 )およびBRC2 が芽の成長を抑制していることが知られている。ナンヨウアブラギリをGAやサイトカイニンで処理するとBRC1BRC2 のホモログ遺伝子JcBRC1JcBRC2 の発現量が減少した。これらの遺伝子の発現量は摘心をすることによっても減少した。よって、GA、サイトカイニン、摘心による側芽成長促進はJcBRC1JcBRC2 の発現抑制によるものと思われる。GAやサイトカイニンによる芽の成長促進は、合成ストリゴラクトン(SL)のGR24を処理することによって抑制された。したがって、ナンヨウアブラギリでは側芽の成長においてSLがGAやサイトカイニンに対して拮抗的に作用していることが示唆される。SLシグナル伝達に関与しているMORE AXILLARY GROWTH 2MAX2 )のナンヨウアブラギリホモログであるJcMAX2 の発現はサイトカイニン処理やGA処理、および摘心によって減少した。よって、これらの処理による芽の成長にはJcMAX2 の発現量低下が関与していると考えられる。このようなGAによる側芽成長促進が他の木本植物においても見られるかを調査したところ、パパイアや複数の科の潅木植物においても同様の効果が見られた。以上の結果から、多年生木本植物の中には側芽の成長に対してジベレリンが関与している種が存在することが示唆される。

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学会)日本植物学会第79回大会(新潟) 第2日

2015-09-07 21:23:47 | 学会参加

大会2日目の午後からは学会賞の授賞式と学術賞を受賞した池内 昌彦先生と大賞を受賞した杉浦 昌弘先生の受賞講演が開催された。ただし、杉浦先生はお声の調子が悪いため、研究内容については名古屋大学で先生と共に葉緑体ゲノムの塩基配列決定の仕事をされた理研の篠崎 一雄先生が、思い出話として当時杉浦先生の下で学生をされていた埼玉大学の高木 優先生が講演された。各賞の授賞者は以下の通り。

大賞
杉浦 昌弘(名古屋大学名誉教授・名古屋市立大学名誉教授)
葉緑体ゲノムの構造と発現の分子機構

学術賞
池内 昌彦(東京大学 院 総合文化研究科)
シアノバクテリアの新規光受容体の発見と光合成関連機能の調節

奨励賞
遠藤 求(京都大学大学院生命科学研究科)
植物における環境応答の組織特異性

海老原 淳(国立科学博物館植物研究部)
日本の地の利を活かしたシダ植物の多様性研究?特に配偶体と網状進化に着目して?

小田 祥久(国立遺伝学研究所 新分野創造センター)
二次細胞壁パターンを創り出す空間シグナルの研究

若手奨励賞
池内 桃子(理化学研究所・環境資源科学研究センター)
植物細胞の分化可塑性およびその抑制機構

柿嶋 聡(静岡大学創造科学技術大学院)
種間交雑現象による植物の多様化に関する進化生態学的研究

特別賞
・技術
理研・産総研植物転写因子コンソーシアム
代表者 光田展隆(国立研究開発法人産業技術総合研究所)
シロイヌナズナにおける転写因子リソースの開発

・教育
若菜 勇 (釧路市教育委員会生涯学習部阿寒生涯学習課)
淡水緑藻マリモを活用した科学教育プログラムの構築・実践と保全活動への展開

2015年度 JPR論文賞
Best Paper賞
Masakazu Tomiyama, Shin-ichiro Inoue, Tomo Tsuzuki, Midori Soda, Sayuri Morimoto, Yukiko Okigaki, Takaya Ohishi, Nobuyoshi Mochizuki, Koji Takahashi, Toshinori Kinoshita (2014) Mg-chelatase I subunit 1 and Mg-protoporphyrin IX methyltransferase affect the stomatal aperture in Arabidopsis thaliana
J. Plant Res. 127:553-563.

Suzana Pampurova, Katrien Verschooten, Nelson Avonce, Patrick Van Dijck (2014) Functional screening of a cDNA library from the desiccation-tolerant plant Selaginella lepidophylla in yeast mutants identifies trehalose biosynthesis genes of plant and microbial origin.
J. Plant Res. 127:803-813.

Most-Cited Paper 賞
Masayuki Muramatsu, Yukako, Hihara (2012) Acclimation to high-light conditions in cyanobacteria: from gene expression to physiological responses.
J. Plant Res. 125:11-39.

 

今大会ロゴは新潟県を代表する花の1つのユキツバキがシンボルマークとなっている。ユキツバキは新潟県を中心とした日本海側多雪地帯の低い山に分布する。枝がしなやかなのが特徴。

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学会)日本植物学会第79回大会(新潟) 第1日

2015-09-06 21:15:00 | 学会参加

日本植物学会第79回大会が、9月6日から8日までの日程で、朱鷺メッセ:新潟コンベンションセンターで開催された。今回の大会は、シンポジウムが13件、ランチョンセミナーが2件、口頭発表やポスター発表に加えて、大会2日目には受賞講演が予定されている。大会初日は高校生研究ポスター発表があった。新潟での植物学会開催は、1985年に新潟大学で開催された第50回大会以来30年ぶりである。

 

 

会場となった朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター

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学会)日本植物学会第79回大会 公開講演会(新潟)

2015-09-05 19:41:31 | 学会参加

 日本植物学会第79回大会 公開講演会が9月5日(土)に新潟日報メディアシップ 日報ホールで開催された。第79回大会自体は翌日の9月6日から3日間の日程で朱鷺メッセで開催されるが、公開講演会は大会に先立って開催された。これまで公開講演会は大会の最終日の午後に開催されていたが、今回は大会とは切り離した形の開催となった。今回の講演会は「佐渡島の自然環境と植物」というテーマで5人の演者による講演があった。

 佐渡島は日本第二の離島で、日本海から隆起して形成された島で、これまでに一度も本州と陸続きになったことがない。そのため、佐渡島にはニホンジカやツキノワグマといった大型の草食動物が生息しておらず、本州に比べると林床植生が豊富である。佐渡島に固有の植物は存在しないが、草本植物の大型化や花の白色化といった本州のもとは形態の異なる種が多く、海洋島で見られるアイランド・シンドロームのような特徴を示している。佐渡島には1000m級の山脈があり、冷温帯や亜高山帯の植物が分布しているが、海岸沿いは対馬暖流の影響を受けているために暖温帯の照葉樹林が分布している。

講演会の演者と演題は以下のとおり。

佐渡島の植物相の多様性 — 風雪が作ったスギの芸術 —
崎尾 均(新潟大学)

多雪地域におけるコケ植物の分布と生態
白崎 仁(新潟薬大)

ユキツバキとヤブツバキが共に生きる島 — 島嶼生物学から見た佐渡島 —
阿部 晴恵(新潟大学)

雪が育むブナの森の植物たち
小林 誠(十日町市立里山科学館)

牛の林間放牧と草地の生態 — ドンデン高原の今と昔 —
宮島 伸子(箱根植木株式会社)」

 

講演会要旨集の表紙になっているトビシマカンゾウ

 

公演会場のある「新潟日報メディアシップ」は、新潟市万代地区にある20階建ての超高層ビル。20階の展望フロア「そらの広場」からは新潟市街が一望できる。

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論文)天然オーキシンとしてのフェニル酢酸

2015-09-02 21:37:58 | 読んだ論文備忘録

Distinct Characteristics of Indole-3-Acetic Acid and Phenylacetic Acid, Two Common Auxins in Plants
Sugawara et al.  Plant Cell Physiol (2015) 56:1641-1654.

doi:10.1093/pcp/pcv088

フェニル酢酸(PAA)は天然オーキシンとして40年以上前に見出され、インドール-3-酢酸(IAA)よりも活性が弱いことは知られているが、植物の成長、発達過程における役割については不明な点が残されている。理化学研究所 環境資源科学研究センターの笠原らは、シロイヌナズナ、カラスムギ、オオムギ、ヒメツリガネゴケ、ゼニゴケの内生IAA量、PAA量を調査し、PAAは植物界に広く分布すること、内生PAA量はIAA量よりも多いことを見出した。シロイヌナズナの各組織での内生PAA量と内生IAA量を比較すると、乾燥種子ではPAA量がIAA量よりも1.7倍多く、花序では14.8倍、茎生葉では13.2倍、茎では4倍、ロゼット葉では7.6倍、根では8.3倍多くなっていたが、長角果ではIAA量の方が2.4倍多くなっていた。PAAのオーキシン活性をシロイヌナズナを用いて調べたところ、側根形成の促進作用が見られたが、その活性はIAAの1/10~1/20程度であった。根でのオーキシンレポーター遺伝子DR5::GUS のPAAによる発現誘導もIAAの1/20程度であった。PAAのシグナルは、IAAと同様に、TIR1/AFBsを介して伝達されていた。ヒメツリガネゴケをPAA処理すると、典型的なオーキシン応答である茎葉体の伸長が見られた。よって、PAAのオーキシンとしての生物機能は陸上植物の進化において維持されていることが示唆される。PAAは、TIR1/AFBsとAux/IAAの相互作用に関与することが確認されたが、IAAと比較すると両者の組合せで効果の程度に差が見られた。よって、IAAとPAAはおそらく機能には重複するが、コファクターとの親和性が異なると思われる。シロイヌナズナ芽生えをPAA処理するとGH3Aux/IAA といったオーキシン応答遺伝子の発現が誘導された。IAA処理によって発現量が変化した136遺伝子とPAA処理によって発現量が変化した53遺伝子は、発現量の変化がIAAとPAAで同じ傾向をを示した。これらの結果から、IAAとPAAはオーキシンとしての機能が重複していることが示唆される。トウモロコシ子葉鞘では先端部から基部にかけてPAAの濃度勾配が見られることから、PAAはIAAと同様に子葉鞘の先端部で生産されていると考えられる。子葉鞘にIAAの求基的輸送を阻害する1‐N‐ナフチルフタラミン酸(NPA)を処理したり、重力刺激を与えてもPAA濃度勾配に変化が見られないことから、PAAは能動的に方向性を持って輸送されてはいないと考えられる。yuc3 yuc5 yuc7 yuc8 yuc9 五重変異体yucQ の芽生えは根の成長が抑制されているが、IAAやPAAを添加することで野生型と同等に成長する。yucQ 変異体をPAA処理しても内生IAA量に変化は見られず、IAA処理をしても内生PAA量は変化しなかった。yucQ 変異体をIAA処理することで主根の重力刺激に対する応答性は回復するが、PAA処理では応答性の回復は起こらなかった。合成オーキシンのNAAと2,4-DはyucQ 変異体の主根の伸長を回復させ、NAAは重力刺激応答も回復させたが、2,4-Dは回復させなかった。よって、2,4-DとPAAは輸送特性が類似していると考えられる。シロイヌナズナにおいて、YUC 遺伝子を過剰発現させるとPAA-AspやPAA-Gluの量が増加することから、PAAはYUCファミリーによって生合成されていると考えられ、YUCがフェニルピルビン酸(PPA)からPAAへの反応を触媒することが確認された。yuc1 yuc2 yuc6 三重変異体の花序はIAA量が野生型の半分程度に減少していたが、PAA量は野生型と同等であった。yucQ 変異体の根のIAA量も野生型の半分程度であったが、PAA量の減少は見られなかった。よって、yuc1 yuc2 yuc6 変異体やyucQ 変異体では他のYUC酵素がPAA量を制御しているとと考えられる。トリプトファンアミノトランスフェラーゼをコードするTAA1 が欠失したwei8-1 変異体の種子は、野生型と比較して、IAAが80%減少し、PAAが20%減少していた。よって、TAAファミリーはフェニルアラニンをPPAに転換する過程を触媒することでPAA生合成に関与していると思われる。GH3.9 を過剰発現させることで、IAA-Gluに加えてPAA-Glu量も増加することから、GH3 ファミリーはPAAの代謝に関与していることが示唆される。

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