Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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植物観察)晩夏の西表島 1日目

2011-09-30 22:12:17 | 植物観察記録

遅い夏休みをとって晩夏の西表島へ行きました。晩夏といってもまだ暑く、今日は風も弱いので、森の中を歩くと滝のように汗が流れました。9月は雨が少なかったのか、河川の水量はいつもよりも少なく感じられました。見ることのできた花は意外と少なく、ヤブラン(Liriope muscari )、トキワヤブハギ(Desmodium leptopus )、マルヤマシュウカイドウ(Begonia lacinata Roxb. var. formosana Hayata )、ハシカンボク(Bredia hirsuta )、終わりかけのサクララン(Hoya carnosa )、咲き始めのアリモリソウ(Codonacanthus pauciflorus )といったところでした。


トキワヤブハギ(Desmodium leptopus


マルヤマシュウカイドウ(Begonia lacinata Roxb. var. formosana Hayata )


ハシカンボク(Bredia hirsuta


オオヘツカシダ(Bolbitis heteroclita

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論文)FT mRNAの花成における作用

2011-09-27 19:30:03 | 読んだ論文備忘録

Mobile FT mRNA contributes to the systemic florigen signalling in floral induction
Li et al.  SCIENTIFIC REPORTS  (2011) 1:73
DOI: 10.1038/srep00073

シロイヌナズナFLOWERING LOCUS T(FT)タンパク質はフロリゲンとして機能し、葉から茎頂へと輸送されて花成を誘導する。また、FT mRNAは植物体内を移動することが知られている。しかし、FT mRNAが茎頂まで輸送されて花成に関与するのかは明らかではない。中国 杭州師範大学のHong らは、GFP を発現している形質転換Nicotiana benthamiana にジャガイモウイルスX(PVX)を用いてウイルス誘導遺伝子サイレンシング(VIGS)を誘導させる実験系を用いて、FT mRNAの茎頂への輸送が起こりうるかを調査した。PVX/GFPコンストラクトによるVIGSは茎頂やその周囲の展開中の葉では起こらず、この部分では強くGFP蛍光を発する。しかしながら、FTGFP を融合したPVX/FT-GFPコンストラクト、およびFT の開始コドンを終始コドンに置換した翻訳されないmFTGFP を融合したPVX/mFT-GFPコンストラクトではGFP mRNAのサイレンシングがこれらの組織でも起こり、GFP蛍光が弱まった。また、FT RNAの輸送に関与している5’側の102ヌクレオチドとGFP を融合したPVX/GFP-FTn102コンストラクトによっても茎頂部でのGFP 発現のVIGSが起こった。このことは、シロイヌナズナFT mRNAはFTタンパク質とは独立して茎頂へ輸送され得ることを示唆している。PVXコートタンパク質(PVX CP)に対する抗体を用いてPVX/GFPを感染させたN. benthamiana の茎頂部切片を染色すると、PVX/GFPは師部を介して茎頂の基部まで達していたが茎頂分裂組織は染色されなかった。しかし、シロイヌナズナFT mRNAコード配列を挿入したPVX/FTを感染させた場合には茎頂のドーム部分の分裂組織層や葉原基が染色された。また、翻訳されないFT mRNAを挿入したPVX/mFTを感染させても茎頂部分が染色された。このことは、PVX/FT、PVX/mFTの茎頂部への輸送はFTタンパク質の有無に関係なく直接FT mRNAが関与しており、FT RNAには茎頂部分がウイルスを排除する機構を打破する機能があることを示唆している。FT RNAが花成に対して影響するかを、タバコ品種メリーランドマンモス(MM)にウイルスを感染させて調査した。MMは短日条件で抽だいして花芽形成し、その後に開花するが、PVX/mFTを感染させたMMは対照よりも1-2週間早く抽だいして開花した。長日条件では対照もPVX/mFT感染個体も抽だい・開花せず栄養成長を続けたが、PVX/FTを感染させて正常なFT mRNAを発現させると花成が起こった。このことは、翻訳されないシロイヌナズナFT mRNAだけでは花成誘導されない長日条件下ではMMを花成させることはできないが、翻訳されないFT mRNAは短日条件で内生タバコFTタンパク質の葉から茎頂分裂組織への輸送を促進する因子として作用していることを示唆している。以上の結果から、FT mRNAはフロリゲンの葉から茎頂分裂組織への輸送を促進して花成に貢献する役割があると考えられる。

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論文)DELLAタンパク質による様々な転写制御

2011-09-25 17:53:00 | 読んだ論文備忘録

DELLA-Induced Early Transcriptional Changes during Etiolated Development in Arabidopsis thaliana
Gallego-Bartolomé et al.  PLoS ONE (2011) 6(8):e23918.
doi:10.1371/journal.pone.0023918

ジベレリン(GA)が引き起こす生理作用の多くはGAシグナルの抑制因子であるDELLAタンパク質が関与している。しかしながらDELLAタンパク質にはDNA結合活性がないため、DELLAタンパク質は転写因子や転写制御因子と相互作用をして機能していることが知れている。スペイン 植物分子細胞生物学研究所(IBMCP)のAlabadí らは、機能獲得型GAIのgai-1を熱ショックタンパク質プロモーター制御下で発現するコンストラクト(HA::gai-1 )を導入した形質転換シロイヌナズナ黄化芽生えを用いて、GAIのターゲット遺伝子の探索を行なった。熱処理後の転写産物量をマイクロアレイによって網羅的に解析したところ、148遺伝子の発現がgai-1 活性誘導後に変化し、58遺伝子は発現量が低下、90遺伝子は発現誘導されていることを見出した。これらの黄化芽生えでのGAIターゲット遺伝子を既報のDELLA制御遺伝子と比較すると、148遺伝子のうち、19遺伝子(13%)は明所で育成したシロイヌナズナ芽生えにおけるRGAのターゲット遺伝子と、11遺伝子(7%)が花でのRGAターゲット遺伝子と一致していた。3条件すべてで重なっている遺伝子は5つあり、そのうち4つはGA経路に関与する遺伝子(GA20ox1GA20ox2GA3ox1GID1b )であった。このことは、DELLAタンパク質によるGA活性制御は様々な組織や成長過程において共通して見られるものであることを示唆している。しかしその他のターゲットについては共通するものが少なく、それぞれの条件でDELLAタンパク質と相互作用する因子は異なっていることが示唆される。黄化芽生えでのGAIターゲットのおよそ半数はbZIP型転写因子のHY5、bHLH型転写因子のPIFもしくはその両方によって制御されている遺伝子であり、これらの転写因子による転写活性はDELLAによる制御を受けていることが示唆される。GAIによって発現誘導される遺伝子のプロモーター領域のシスエレメントを解析したところ、Dof転写因子の結合部位(AAAG)やARR1転写因子の結合部位(NGATT)が多く見られ、これらの転写因子はGAシグナルと関連していることが知られている。また、DELLAのターゲットとされている遺伝子のプロモーター領域を解析したところ、PIFやHY5が結合する部位であることが知られているG-box(GACGTG)やGArGbox(GG(A/T)6GG)に類似した配列が多く見られた。さらに、E-boxに分類される配列(GATGTG)も見られた。この配列はブラシノステロイドシグナル伝達に関与するBZR1やBES1に認識され、概日リズムにおいて朝に発現する遺伝子のプロモーター領域に多く見られることが知られている。したがって、DELLAタンパク質はブラシノステロイドシグナルや概日リズムの制御とも関連していることが推測される。GAIによって発現制御を受ける遺伝子の遺伝子オントロジー(GO)を解析したところ、GAの恒常性や成長の制御に関連するものに加えて、光シグナル伝達、ストレス応答、転写ネットワーク、他の植物ホルモンの生合成やシグナル伝達に関連する遺伝子が見出された。DELLAタンパク質がGA経路を直接制御しているかを調査するために、gai-1にグルココルチコイド受容体(GR)を融合してGAI プロモーターで発現させた植物体をシクロヘキシミド処理をした後にDEX処理をしたところ、GA20ox1GA20ox4GA3ox1GID1aGID1b の発現が誘導され、RGL1GAI の発現が抑制された。よってこれらの遺伝子はタンパク質合成を経ずに直接GAIによって転写制御されていると考えられる。GAIは他の植物ホルモンとのクロストークにも関与しており、オーキシンシグナル伝達の負の制御因子をコードするAUXIN/INDOLE-3-ACETIC ACID19Aux/IAA19 )、オーキシン不活化酵素をコードするINDOLE-3-ACETIC ACID METHYLTRANSFERASE1IAMT1 )、オーキシン生合成酵素をコードするYUCCA3YUC3 )、エチレン生合成酵素をコードするACC SYNTHASE8ACS8 )は直接GAIによって転写制御されていることがわかった。また、GAIによる転写ネットワーク制御として、PRODUCTION OF ANTHOCYANIN PIGMENT1PAP1 )、HOMEOBOX-LEUCINE ZIPPER PROTEIN7HAT7 )、PACROBUTRAZOL RESISTANT1PRE1 )、PRE5 は直接GAIによって転写制御されていることがわかった。

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植物観察)箱根

2011-09-23 17:25:13 | 植物観察記録

箱根へ植物観察に行ってきました。一昨日本州を通過した台風15号により登山道には葉や枝が散乱し、朽ちかけた樹は株元から折れて倒れていました。その所為でしょうか、林床に差し込む光の量が少し多くなったように感じられました。登山道では、ヤマトリカブト(Aconitum japonicum )、イヌヤマハッカ(Plectanthus umbrosus )、テンニンソウ(Leucosceptrum japonicum )、タイアザミ(Cirsium nipponicum var. incomptum )、シラヤマギク(Aster scaber )の花が見られました。しかし駒ケ岳山頂の風衝地では殆ど花が見られませんでした。


タイアザミの花


ヤマトリカブト 登山道で多く見かけたが、駒ケ岳山頂の風衝地でみられるハコネトリカブトは今回は見られなかった


テンナンショウの仲間の実 通常は先端部の実から赤く色づき始めるが、なぜか基部の1個のみが先に色づいている

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論文)オーキシンとブラシノステロイドのクロストークと根の成長

2011-09-21 19:26:49 | 読んだ論文備忘録

Transcription of DWARF4 Plays a Crucial Role in Auxin-Regulated Root Elongation in Addition to Brassinosteroid Homeostasis in Arabidopsis thaliana
Yoshimitsu et al.  PLoS ONE (2011) 6:e23851.
doi:10.1371/journal.pone.0023851

シロイヌナズナDWARF4DWF4 )遺伝子はブラシノステロイド(BR)生合成の鍵酵素であるC-22ヒドロキシラーゼをコードしている。DWF4 の発現はBRによるフィードバック制御を受けており、BR処理をすることによってDWF4 の発現は低下する。鹿児島大学岡本らは、シロイヌナズナのDWF4 転写産物量とDWF4 プロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクト(DWF4::GUS )を導入したシロイヌナズナでのGUS の発現がブラシノライド(BL)処理によって減少し、BR生合成阻害剤のブラシナゾール(Brz)処理によって増加することを見出し、DWF4 の発現はBRによるフィードバック制御を受けていることを確認した。Brz処理によるGUS活性の上昇は茎頂、一次根の伸長領域において見られた。DWF4::GUS 導入個体を用いてBR以外の植物ホルモンのDWF4 発現に対する効果を見たところ、オーキシン(IAA)がGUS活性を増加させることを見出し、他のホルモンではメチルジャスモン酸(MeJA)がGUS活性を低下させることがわかった。IAA処理によるGUS活性の上昇は一次根や側根の伸長領域や側根原基において強く現れ、Brz処理とは異なりシュートではGUS活性の上昇は起こらなかった。IAA処理によるGUS活性の上昇はオーキシン受容体の直接の阻害剤であるPEO-IAAやBH-IAAの同時処理によって抑制された。IAAによる根でのGUS活性上昇はBL処理によって抑制されることからBRによるDWF4 発現抑制はオーキシンによる誘導よりも上位に位置していると考えられる。BrzとIAAの同時処理は相加的にGUS活性を上昇させた。しかし、この活性上昇はシュートにおいて観察されることから、IAAとBrzによるDWF4 発現上昇は異なる機構によってなされていると考えられる。IAAによるDWF4 発現誘導の生理的役割を調査するためにdwf4 変異体を用いた解析を行なったところ、dwf4 変異体ではIAAによる側根伸長促進がほとんど見られないことがわかった。これに符合して、野生型植物でのIAAによる側根伸長促進はBrz処理によって抑制された。BL処理は野生型植物でのIAAによる側根伸長促進のBrzによる阻害を解消させたが、dwf4 変異体ではIAAの側根伸長促進効果を回復させなかった。側根と異なり一次根の伸長はIAAによって抑制されるが、Brzはこの抑制を促進させ、BLはIAAとBrzによる一次根伸長抑制を打ち消した。BL処理はdwf4 変異体でのIAAによる一根伸長抑制も回復させた。野生型植物をBrz処理すると側根数が無処理区よりも減少し、この減少はBL処理によって回復した。また、dwf4 変異体では側根数が野生型よりも減少していた。しかしながら、BL、Brz処理やdwf4 変異の側根形成数の変化はIAA存在下では観察されなかった。したがって、BRとオーキシンは側根形成において協働して促進的に作用しており、BRの作用はオーキシンと比較すると副次的であると考えられる。IAA処理による内生BR量の変化を調査したがシュートでは変化は観察されず、根では内生BR量がシュートの1/10程度であったがIAA処理による変化は観察されなかった。以上の結果から、DWF4 は根においてBRによるフィードバック発現抑制とオーキシンによる発現促進の2つの制御を受けており、DWF4 を介して両ホルモンのクロストークがなされることで内生BR量の調節が行なわれていると考えられる。そしてこのクロストークは根の成長に関与しているものと思われる。

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学会)日本植物学会第75回大会(東京) 3日目

2011-09-19 19:44:23 | 学会参加

学会3日目は午前はポスターセッション、午後からは高校生ポスター賞の授賞式と公開講演会「東京都の島の植物と生物多様性 -伊豆諸島から小笠原まで-」があった。小笠原諸島と伊豆諸島は東京都に含まれるため、東京都は日本の都道府県の中で一番広い海域を持っている。これらの島々には、固有種や他の地域では非常に稀な準固有種が多数見られる。特に小笠原諸島はこれまでに大陸と地続きとなったことのない海洋島群であり、2011年6月に世界自然遺産として登録された。伊豆諸島は何度も火山噴火を繰り返したことで独特な生態系の遷移・生物相を形成している。本講演会では、5人の研究者により伊豆諸島・小笠原諸島の生物多様性について興味深い話題が提供された。


公開講演会の演題と演者
 
 小笠原諸島と伊豆諸島の植生と固有植物種
  加藤英寿(首都大学東京・牧野標本館)

 遺伝子からみた小笠原の野生植物の生態とその保全
  吉丸博志(森林総合研究所・森林遺伝研究領域)

 花と昆虫の関係からから小笠原の生態系の異変を見る
  安部哲人(森林総合研究所・九州支所) 

 伊豆諸島における噴火後の植生の再生
  -噴火とともに生き る野生植物たち-
  上條隆志(筑波大学・生命環境科学研究科)

 生殖様式が異なるシダ植物と噴火活動の関係
  村上哲明(首都大学東京・牧野標本館) 

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学会)日本植物学会第75回大会(東京) 2日目

2011-09-18 19:36:50 | 学会参加

学会2日目の午後から第8回日本植物学会賞と2011年度JPR論文賞の授賞式があり、続いて大賞を受賞された増田先生、学術賞を受賞された島崎先生の受賞講演があった。受賞者は以下の方々と団体である。


<大賞>                     
増田芳雄(大阪市立大学名誉教授)
「オーキシンと40年」

<学術賞>
島崎研一郎(九州大学 院 理学研究科)
「青色光による気孔開口の分子機構」

<奨励賞>
阿部光知(東京大 院 理学系研究科)
「高等植物茎頂部における分化誘導機構の分子遺伝学的研究」
 
角川洋子(東京大 院 理 附属植物園)
「シダ植物における種分化過程の解析」

曽我康一(大阪市立大 院 理学研究科)
「植物が重力に対抗できる体を構築するメカニズムの解析」
 
<若手奨励賞>
石田喬志(理化学研究所 植物科学研究センター)
「細胞の形態形成を担う分子メカニズムの解析」

大田修平(山形大 院 理工学研究科)
「海産微細藻類クロララクニオン植物の分類および生活環の研究」

小田祥久(東京大 院 理学系研究科)
「シロイヌナズナ培養細胞の新規道管分化誘導系を基盤とした微小管による細胞内空間制御機構の解析」

<特別賞>
技術:国立環境研究所 微生物系統保存施設
「国立環境研究所微生物系統保存施設における藻類リソースの系統保存および提供」

その他:教育目的遺伝子組換え実験支援者グループ
「遺伝子組換え植物に関する研究基盤構築と理解増進に関する貢献」

その他:サントリーホールディングス(株) 青いバラ開発チーム 
「遺伝子組換えによる青いバラ、カーネーションの開発と商業化」

2011年度JPR論文賞
Best Paper賞
Hiroyuki Muraoka, Nobuko Saigusa, Kenlo N. Nasahara, Hibiki Noda , Jun Yoshino, Taku M. Saitoh, Shin Nagai, Shohei Murayama and Hiroshi Koizumi (2010) 
Effects of seasonal and interannual variations in leaf photosynthesis and canopy leaf area index on gross primary production of a cool-temperate deciduous broadleaf forest in Takayama, Japan.
J Plant Res 123(4): 563-576.

Hidenori Tsuboi and Masamitsu Wada (2010)
Speed of signal transfer in the chloroplast accumulation response
J Plant Res 123 (3): 381-390.

Most-Cited Paper賞
Toru Tokuoka (2008)
Molecular phylogenetic analysis of Violaceae (Malpighiales) based on plastid and nuclear DNA sequences.
J Plant Res 121 (3): 253-260.

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学会)日本植物学会第75回大会(東京) 1日目

2011-09-17 19:22:53 | 学会参加

日本植物学会第75回大会(会長:今市涼子、準備委員長:邑田 仁)が9月17日~19日に東京大学駒場キャンパスで開催された。東京での開催は2001年の第65回大会以来である。1日目の午前はシンポジウムが10題、午後からは口頭発表があった。学会に関連して、東京大学駒場博物館で特別展「小石川植物園と植物学の世界」(7月16日~9月19日)が開催され、小石川植物園に関する資料の展示、2010年に開花したショクダイオオコンニャクのビデオ、現在植物園で行なわれている研究の紹介があった。


学会会場となった東京大学駒場キャンパス


学会要旨集の表紙。シンボルマークと写真は小笠原諸島固有種のムニンノボタン(Melastoma tetramerum Hayata)


東京大学博物館の特別展「小石川植物園と植物学の世界」ポスター

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論文)PIN3による胚軸の重力屈性反応機構

2011-09-15 19:11:59 | 読んだ論文備忘録

Polarization of PIN3-dependent auxin transport for hypocotyl gravitropic response in Arabidopsis thaliana
Rakusova´ et al.  The Plant Journal (2011) 67:817-826.
doi: 10.1111/j.1365-313X.2011.04636.x

植物は重力刺激に応答してシュートは負の屈性を示して光を受けやすい上向きに屈曲し、根は正の屈性を示して水や養分を得やすい下向きに成長する。屈曲は、シュート内皮細胞や根冠細胞にあるデンプン含有オルガネラのアミロプラストが平衡石として作用して重力方向を感知し、重力方向の上下でオーキシンの不均等分布が形成されることで細胞の成長に差が生じることで形成される。ベルギー フランダースバイオテクノロジー機構(VIB)Friml らは、シロイヌナズナ芽生えを用いて、胚軸の重力屈性の機構を解析した。オーキシン排出キャリアのPIN3タンパク質の機能喪失変異体pin3 の芽生えは胚軸の重力屈性応答が低下するが、PIN3のホモログであるPIN4、PIN7の変異体pin4pin7pin4 pin7 二重変異体の胚軸の重力屈性応答は正常であった。よって、胚軸の重力屈性応答の際のPINタンパク質を介したオーキシン輸送は主にPIN3が担っていると考えられる。そこでオーキシン分布を可視化するためにDR5rev プロモーターによりGFP を発現するコンストラクト(DR5rev::GFP )を導入した形質転換体を観察したところ、重力刺激を与えた胚軸ではDR5活性が不均等となって下側の蛍光強度が高くなり、pin3 変異体では重力刺激に応答したDR5活性の不均等性は弱くなっていた。よって、胚軸の重力屈性応答の際のオーキシン勾配の形成にはPIN3活性が必要であると考えられる。PIN3とGFPの融合タンパク質を発現させると、胚軸では内皮細胞の内側と外側の側面で強い蛍光が観察され、皮層細胞や表皮細胞でも弱い発現が見られた。胚軸を横にして重力刺激を与えると、内皮細胞のPIN3-GFPシグナルは下側の内皮細胞では徐々に外側側面で強くなり、上側の内皮細胞では外側側面のシグナルが弱くなっていった。このことは、重力によって内皮細胞外側側面のPIN3タンパク質の局在が不均等となったことを示唆している。このような重力刺激に応答した細胞内局在変化はPIN7-GFPでは起こらなかった。内皮細胞内側側面のPIN3タンパク質の状態については中央維管束環でのGFP蛍光が強いためにはっきりしたことはわからなかったので、内皮特異的に発現するSCARECROWSCR )プロモーターによりPIN3-YFPを発現するコンストラクト(SCR::PIN3-YFP )を導入してPIN3-YFPシグナルを見たところ、上側の内皮細胞の外側側面と下側の内皮細胞の内側側面の蛍光が徐々に消失するPIN3タンパク質の不均等局在が観察された。SCR::PIN3-YFP コンストラクトをpin3 変異体で発現させると重力屈性応答がある程度回復することから、内皮細胞で発現するPIN3の作用が胚軸の重力屈性応答に必要であることが示唆される。そしてPIN3は内皮細胞において重力方向である下側へ局在を変化させ、胚軸中心部の求基的なオーキシンの流れを変化させることで胚軸の下側でのオーキシン蓄積が起こり、重力に応答した屈曲成長が起こると考えられる。重力刺激に応答したPIN3の細胞内局在変化には、新規タンパク質合成やタンパク質分解は殆ど関与しておらず、根冠細胞でのPIN3の局在変化と同様に、刺激を受ける前にいた場所から下側へARF-GEF GNOM系を介してPIN3タンパク質が輸送されることによって引き起こされることがわかった。PINタンパク質の細胞内局在を制御しているセリン/スレオニンタンパク質キナーゼをコードするPINOIDPID )を恒常的に発現させた芽生えでは重力刺激に応答したPIN3の局在変化が見られず、胚軸の成長は正常だが重力屈性は失われた。一方、PIDとそのホモログであるWAG1、WAG2の機能喪失三重変異体wag1 wag2 pid の胚軸は重力刺激に応答したPIN3の局在変化が起こり、胚軸の重力感受性が高くなった。したがって、重力刺激に応答したPIN3の局在変化とその後の重力屈性反応はPIDによるPINタンパク質の極性輸送制御が関与していると考えられる。

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論文)植物の発芽・成長を促進する新規タンパク質

2011-09-13 22:16:32 | 読んだ論文備忘録

PELPK1 (At5g09530) contains a unique pentapeptide repeat and is a positive regulator of germination in Arabidopsis thaliana
Rashid & Deyholos  Plant Cell Rep (2011) 30:1735-1745.
DOI:10.1007/s00299-011-1081-3

シロイヌナズナAt5g09530遺伝子は、これまでにエクステンシン様タンパク質、ヒドロキシプロリン-リッチ糖タンパク質(HRGP)、プロリン-リッチエクステンシンドメインを含んだHRGPファミリータンパク質、ペリアキシン様タンパク質、プロリン-リッチタンパク質10(PRP10)といった細胞壁タンパク質に関連した様々なアノテーションがつけられてきた。カナダ アルバータ大学Deyholos らは、At5g09530遺伝子がコードする370アミノ酸からなるタンパク質を解析し、このタンパク質はPro/P(29%)、Lys/K(16%)、Glu/E(16%)、Leu/L(12%)、Ile/I(6%)、Val/V(5%)の6つのアミノ酸残基の割合が高く、P-E-L/I/V-P-K(L/I/Vはこれら3種の分枝アミノ酸のどれか)からなるモチーフのくり返しが多く見られることを見出し、PELPKモチーフと命名した。このコンセンサス配列はAt5g09530に36回出現し、1アミノ酸の置換したものを含めると、この5アミノ酸からなるモチーフは52あった。PELPKモチーフはN末端の疎水性領域の除いてタンパク質全体に見られ、この遺伝子をPELPK1 と命名した。PELPK1 遺伝子の近傍にあるAt5g09520遺伝子もPELPK1 と同様にPELPKモチーフを多く含んだ130アミノ酸からなるタンパク質をコードしており、この遺伝子をPELPK2 と命名した。PELPK1とPELPK2のアミノ酸配列は67%相同で、PELPK2にはPELPKコンセンサスモチーフが4つ、コンセンサスモチーフと1アミノ酸異なる5ペプチド配列が8つあった。PELPKモチーフを含むタンパク質をコードする遺伝子はシロイヌナズナにおいてこの2つのみであった。PELPK1に類似したタンパク質はダイズやトウモロコシといった他の被子植物類においても見出された。PELPK1 コード領域を用いたRNAiコンストラクトを発現させることによりPELPK1 転写産物が殆ど検出されず、PELPK2 転写産物も野生型の20-40%に低下した形質転換シロイヌナズナは、発芽培地に100 mM以上のショ糖を添加すると発芽や幼根の成長が野生型よりも遅くなった。培養土で発芽させたRNAi系統も発芽・成長が遅くなり、植物体が小さく、葉色が僅かに濃くなり、花成が遅くなった。また、PELPK1 を過剰発現させた個体は野生型よりも成長が早く、シュートが長くなり、花成も早くなった。以上の結果から、PELPK1はこれまでに考えられていた細胞壁タンパク質ではなく、植物の発芽・成長に何らかの形で関与しているタンパク質であると考えられる。

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