The grain yield modulator miR156 regulates seed dormancy through the gibberellin pathway in rice
Miao et al. Nature Communications (2019) 10:3822.
doi:10.1038/s41467-019-11830-5
マイクロRNA miR156は、草型や粒径を調節して作物の収量を制御している。しかしながら、miR156が様々な制御機能を引き起こしている分子機構は明らかとなっていない。イネゲノムには11のMIR156 遺伝子があり、12のmiR156前駆体が転写される。中国科学院 上海植物ストレス生物学研究センターのZhu らは、CRISPR/Cas9でイネMIR156 をノックアウトし、表現型を観察した。MIR156d-MIR156i の6つのMIR156 遺伝子をノックアウトしたグループⅠmir156 変異体は、野生型と比較して草丈が高く、幹が太く、分けつ数が少なくなった。よって、グループⅠMIR156 遺伝子はイネの地上部の構造を調節していると考えられる。MIR156a-MIR156c 、MIR156k 、MIR156l の5遺伝子をノックアウトしたグループⅡmir156 変異体は、地上部の構造に変化は見られなかった。また、mir156abcdfghikl 10重変異体は、幼苗の生育遅延が見られた。グループⅠmir156 変異体は籾サイズが大きくなり、mir156gf 変異がこの形質に関与していた。一方、グループⅡmir156 変異体は籾の形態に変化は見られなかった。mir156 10重変異体は不定根数が非常に少なく、グループⅠmir156 変異体、グループⅡmir156 変異体も不定根数が減少した。グループⅡmir156 変異体は、野生型よりも種子発芽が遅延し、穂発芽が抑制された。よって、グループⅡ MIR156 は種子休眠の制御に関与していると考えられる。このmir156 変異体の種子休眠の強化は、アブシジン酸(ABA)の蓄積やABAシグナル伝達の変化によるものではなかった。そして、mir156 変異体はジベレリン(GA)の生合成や受容体をコードする遺伝子の発現量が減少、GA不活性化に関与する遺伝子の発現量が増加、活性型GA量が減少しており、種子発芽におけるGA感受性が低下していた。また、mir156 変異体幼苗ではGAシグナル伝達の負の制御因子をコードするSLENDER RICE 1 (SLR1 )やSPINDLY (SPY )の発現量が増加していた。よって、mir156 変異体の種子休眠の強化や幼苗の生育遅延は、GA生合成とシグナル伝達の抑制とGA不活性化の促進によるものであると考えられる。イネmir156はSQUAMOSA-PROMOTER BINDING PROTEIN-LIKE (SPL )転写因子遺伝子をターゲットとしており、その中でもmir156 変異体においてIdeal Plant Architecture 1 (IPA1 )/SPL14 の発現量が他のターゲット遺伝子と比較して非常に高くなっている。IPA1 を過剰発現させた形質転換体は種子休眠が強く草丈が低くなった。したがって、mir156 変異による種子休眠や成長の変化はIPA1 を介してなされていると考えられる。さらに、IPA1はGAの生合成、シグナル伝達、不活性化に関与する遺伝子の発現を直接制御していることが確認された。以上の結果から、mir156 変異はジベレリン経路を抑制することで種子休眠を強め、幼苗の成長を阻害しており、これらはmir156のターゲット遺伝子の1つであるSPL転写因子遺伝子IPA1 によるジベレリン経路に関与する複数の遺伝子の直接の制御によると考えられる。