Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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植物観察)箱根

2016-07-31 20:51:23 | 植物観察記録

箱根へバイケイソウ観察に行ってきました。標高の異なる3カ所の調査地とも、花期は終わり、さく果登熟の段階に入っていました。花序あたりの稔実さく果数は個体間で差が見られ、充実して膨らんださく果を多数つけている個体もあれば、稔実さく果が殆ど見られず登熟途中で成長が止まり花序全体が黒ずんでしまっているような個体もありました。

 

登熟中のバイケイソウのさく果

 

ヤマユリ

 

ウバユリ

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論文)DELLAタンパク質とFLOWERING LOCUS Cとの相互作用

2016-07-26 05:49:13 | 読んだ論文備忘録

DELLA proteins interact with FLC to repress flowering transition
Li et al. J Integr Plant Biol (2016) 58:642-655.

doi: 10.1111/jipb.12451

DELLAタンパク質はジベレリン作用における転写制御の主要な因子として作用しているが、それ以外にも様々な転写因子と相互作用をして遺伝子発現の制御に関与している。中国 北京大学Guo らはDELLAタンパク質と相互作用をする新規因子を探索するために、シロイヌナズナRGAをベイトに用いて酵母two-hybrid法により転写因子ライブラリーをスクリーニングした。その結果、タイプⅡ MADS-box転写因子で、SUPPRESSOR OF OVEREXPRESSION OF CONSTANS1SOC1 )やFLOWERING LOCUS TFT )といった幾つかの花成遺伝子のプロモーター領域に結合して転写を抑制することで花成に対して抑制的に作用することが知られているFLOWERING LOCUS C(FLC)タンパク質がRGAと結合することを見出した。FLCはシロイヌナズナのRGA以外のDELLAタンパク質とも相互作用をし、プルダウンアッセイ、BiFC法、共免疫沈降法からも両者の相互作用が確認され、相互作用は細胞核内で見られることがわかった。また、FCLのMADSドメインのC末端側領域とRGAのLHRⅠドメインが相互作用に関与していた。ChIP-qPCRの結果、FLCのSOC1 およびFT 遺伝子への結合はジベレリン処理によって低下することがわかった。また、SOC1 プロモーターもしくはSEPALLATA3SEP3 )プロモーターでルシフェラーゼ(LUC)を発現させるレポーター遺伝子を用いた試験から、LUCの発現量はFLC を発現させることで低下し、FLCRGA を同時に発現させると発現量はさらに低下することが確認された。したがって、DELLAタンパク質はFLCと相互作用をすることでFLCによるターゲット遺伝子の発現抑制能力を増強していることが示唆される。FLC 過剰発現個体もflc-3 変異体もジベレリン処理に応答して花成が促進されるが、FLC 過剰発現個体は野生型よりもジベレリン感受性が高く、flc-3 変異体は低くなっていた。よって、FLCによる花成時期制御において、部分的にジベレリンが関与していると考えられる。これまでに報告されたChIP-seqデータから、464のFLCの直接のターゲットのうち163(35.1%)はdella 変異体において発現が変化する遺伝子であることがわかった。FLCとDELLAの両方で制御を受けている遺伝子は花成時期制御遺伝子の他にも様々なものが見られた。以上の結果から、DELLAタンパク質はFLCと結合して複合体を形成することでFLCの転写抑制能力を強めていると考えられる。今回の発見により、花成誘導において春化/自律的促進経路とジベレリン促進経路がFLCとDELLAタンパク質でお互いに関連していることが明らかとなった。

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論文)低温湿層処理による発芽誘導

2016-07-18 11:36:48 | 読んだ論文備忘録

A role for jasmonates in the release of dormancy by cold stratification in wheat
Xu et al. Journal of Experimental Botany (2016) 67:3497-3508.

doi:10.1093/jxb/erw172

種子の休眠を打破する処理として用いられる低温湿層処理(低温下での水分補給)は、埋土種子が秋から冬にかけての季節を経験することを模していると考えられている。コムギの場合、暗所4℃で48時間の低温湿層処理をすると、休眠の強い栽培品種であっても発芽が誘導される。低温処理による休眠打破については多くの解析がなされているが、低温湿層処理過程の分子機構については不明な点が残されている。オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)のGubler らは、休眠しているコムギ種子を様々な時間(12~84時間)で低温湿層処理をした後に室温に戻し、7日後の発芽率を調査した。その結果、過去知見が示すように、48時間までは処理時間に応じて発芽率が高くなり、それよりも長く処理をしても発芽率の増加は僅かであることがわかった。種子休眠にはジャスモン酸(JA)やアブシジン酸(ABA)が関与していることが知られている。種子胚に含まれるJA量を調査したところ、乾燥種子で最も高く、水分補給をすると室温でも低温でも処理6時間後には減少し、その後、低い状態が96時間後まで維持された。様々な時間で低温湿層処理をした後に室温に戻してJA量を測定したところ、12時間以上処理をすると室温に戻した後のJA量が増加し、48時間以上の処理で増加量は最大となった。室温に戻した際のJA量の増加は、移行して4~8時間後に見られ、その後は急速に減少した。同様の変化は活性型JAの1つであるJA-Ileにおいても見られた。低温湿層処理から室温に戻して8時間以内にJA生合成酵素をコードするTaAOSTaAOC の発現量が増加した。よって、このことがJA量の増加に関与していると考えられる。JA生合成を抑制するアセチルサリチル酸(ASA)処理をすると、処理濃度に応じて低温湿層処理による発芽誘導効果が抑制された。また、ASAと同時にメチルジャスモン酸(MeJA)を添加することでASAによる発芽阻害効果が抑制された。したがって、JA生合成が低温湿層処理における発芽誘導に関与していることが示唆される。ASA処理は低温湿層処理によるJA量の増加とTaAOC の発現誘導を抑制した。次に、低温湿層処理に対するABAの効果を見た。コムギ種子胚は、水分補給をすると、室温でも低温でもABA量が増加し、室温では浸漬24時間後から増加して48時間後に最大となった。低温では48時間後から増加が始まり84時間後まで継続して増加した。低温湿層処理を24時間よりも長く行なうと、室温に戻した際にABA量が減少し、24時間よりも短いとABA量は増加した。低温湿層処理後のABA量の減少は、室温移行4時間後から始まり、8時間後には最低となった。このABA量の減少は、ABA生合成酵素をコードするTaNCED1TaNCED2 の発現量の減少と連動していた。また、低温湿層処理の際にASAを添加してJA量の増加を抑えると、ABA量やTaNCED1TaNCED2 の発現量が増加した。低温湿層処理によるJA量の増加はABAを添加しても見られることから、この処理過程においていJAはABAよりも上位に位置していると考えられる。コムギ種子の登熟から乾燥にかけての間の胚のJA、JA-Ile、ABA量は殆ど変化は見られないことから、JAは登熟後の種子休眠には関与しているないと考えられる。以上の結果から、低温湿層処理によるコムギの発芽誘導はジャスモン酸が関与していると考えられる。

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植物観察)箱根

2016-07-10 20:38:01 | 植物観察記録

箱根へバイケイソウの観察に行きました。調査している3つのエリアのうち、標高の低いエリアのバイケイソウはさく果が登熟過程にあり、葉は枯れてしまっていました。標高の高いエリアでは開花が進んでいる最中で、複数種の昆虫が訪花し、背中にたくさんの花粉を付けていました。訪花昆虫の同定が出来ていません。どなたが昆虫名がわかる方、教えて下さい。

 

標高の低いエリアのバイケイソウはさく果の登熟が進み、葉は枯れてしまっていた。

 

訪花昆虫その1 背中にたくさんの花粉をつけている

 

訪花昆虫その2

 

訪花昆虫その3

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植物観察)北海道バイケイソウ稔実調査 旭川

2016-07-04 16:42:26 | 植物観察記録

今日は旭川の林床のバイケイソウ群生地で稔実の確認をしました。この群生地では、今年、3個体が花成しました。群生地以外にもバイケイソウは生えているのですが、半径500m程のエリアを遊歩道に沿って歩いた限りでは、ここ以外に花成個体は見つけられませんでした。3個体のうち2個体は1m以内に生えているので、同じジェネットかもしれません。何れの個体とも稔実しているさく果の数は少なく(それぞれも個体の稔実さく果数:2、8、32)、さく果の大きさもまちまちでした。また、稔実しなかった両性花もあるようでした。やはり、花成個体が少ないと他家受粉の確率が下がり、稔実率が低くなるのかもしれません。これらの個体が子ラメットを幾つ形成するのか、来春に調査しようと考えています。

 

今年花成したバイケイソウ

 

稔実したさく果はまばらで、大きさも様々

 

花成しなかったバイケイソウは既に枯死していた

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植物観察)北海道バイケイソウ稔実調査 サロベツ

2016-07-03 20:31:30 | 植物観察記録

今日は豊富町 兜沼周辺のコバイケイソウとサロベツ湿原センターのバイケイソウ、コバイケイソウを見てきました。今回調査した兜沼周辺の林床のコバイケイソウ群生地は、今年100株程度が花成しました。いずれの株もさく果が沢山付いており高い稔実率を示していました。次にサロベツ湿原センターのコバイケイソウ、バイケイソウの稔実状態を見に行きました。花成個体数はコバイケイソウが圧倒的に多く、さくの稔実率も高くなっていました。しかし、バイケイソウは花成個体が数個体しかなく、花序を見ると、稔実したさく果がまばらについているような状態でした。充分な稔実のためにはもっと花成個体が必要なのかもしれません。花序にカタツムリがいたので、花やさく果が食害を受けたためにさく果が少ないのかもしれません。このあと、バイケイソウとコバイケイソウが数多く混生しているベニヤ原生花園まで足を伸ばしたのですが、原生花園内でヒグマの足跡と糞が見つかったために立入禁止になっていました。残念。

 

兜沼周辺の林床に生えるコバイケイソウ さく果がよく稔実している

 

サロベツ湿原センターのコバイケイソウ こちらも稔実率は高い

 

サロベツ湿原センターでは、まだ花の白い色が見られるコバイケイソウも生えていた。

 

サロベツ湿原センターのバイケイソウの花序 コバイケイソウに比べると個体数が少なく、稔実しているさく果も少ない

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植物観察)北海道バイケイソウ稔実調査 礼文島

2016-07-02 21:40:21 | 植物観察記録

今年、そこそこ花成した北海道のバイケイソウの稔実の程度がどのくらいなのかが知りたくて、再度北海道へ行きました。今日のターゲットは礼文島の草原性バイケイソウ。どの花序もが良く膨らんださく果をたくさんつけており、殆どの両性花が稔実したものと思われます。道内の他の場所の林床のバイケイソウと違って、礼文島の草原では花成した個体が多かったので、自家不和合のバイケイソウであっても充分に他家受粉は可能であったものと思われます。礼文島自体は初夏の花のシーズンで、レブンキンバイ、エゾカンゾウ、オオカメノキ、オオハナウド、オオカサモチ、ヤマブキショウマ、ヨツバシオガマ、ハマナス、タカネナデシコ、イブキトラノオ、レブンソウ、ヒオウギアヤメ、センダイハギ、レブンウスユキソウ、ギョウジャニンニク、チシマフウロ、ミソガワソウなどの花が見られました。

 

バイケイソウのさく果は良く充実していた

 

イブキトラノオ

 

レブンウスユキソウ

 

ヨツバシオガマ

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