Brassinosteroids Dominate Hormonal Regulation of Plant Thermomorphogenesis via BZR1
Ibañez et al. Current Biology (2018) 28:303-310.
doi:10.1016/j.cub.2017.11.077
植物は温度変化に応答して発生・成長を調節している。ドイツ マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルクのQuint らは、以前に、温度上昇に応答した胚軸伸長を起こさないシロイヌナズナokapi1 (opi1 )変異体がDE-ETIOLATED 1 (DET1 )の新規アリルであることを見出した。そして、DET1はCONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENIC 1/SUPPRESSOR OF PHYA-105 1(COP1/SPA)E3ユビキチンリガーゼ複合体を介して温度形態形成を調節しており、COP1/SPAがELONGATEDHYPOCOTYL 5(HY5)によるPHYTOCHROME-INTERACTING FACTOR 4 (PIF4 )の転写抑制を解除することで成長促進が引き起こされることを明らかにした。今回、新たに温度誘導胚軸伸長を起こさないopi3 変異体とopi7 変異体について解析を行なった。マッピングの結果、opi3 はブラシノステロイド(BR)生合成酵素をコードするDWARF7 (DWF7 )/STEROL 1 (STE1 )/BOULE 1 (BUL1 )のノンシノニマス変異であり、opi7 はBR生合成に関与するP-450をコードするROTUNDIFOLIA 3 (ROT3 /CYP90C )のアミノ酸置換変異であることがわかった。したがって、温度形態形成ではBR生合成が重要であることが示唆される。opi3 変異体、opi7 変異体ともに、活性型BRのepi-ブラシノライド(BL)を添加することで温度誘導胚軸伸長が回復した。PIF4の機能喪失変異体は温度誘導胚軸伸長が抑制されているが、BLを添加することで胚軸伸長が野生型と同等にまで回復した。更に、PIF4 過剰発現系統やPIF4の抑制因子であるHY5やEARLY FLOWERING 3(ELF3)の機能喪失変異体に対してBR生合成阻害剤のプロピコナゾール(PPZ)を添加することで、これらの系統の胚軸伸長促進効果が強く現れる表現型が抑制された。したがって、BRは温度形態形成経路の一部としてPIF4の下流で機能していると考えられる。PIF4は温度上昇に応答してオーキシンの生合成遺伝子や応答遺伝子の発現を誘導していることが知られている。BRの生合成やシグナル伝達の変異体をオーキシン(ピクトラム)処理しても温度誘導胚軸伸長の回復は見られなかった。一方、オーキシンの生合成やシグナル伝達の変異体をBL処理することで温度誘導胚軸伸長が回復した。したがって、温度形態形成シグナル伝達においてBRはオーキシンの下流で作用していると考えられる。ジベレリン(GA)も温度形態形成にとって重要であり、DELLAリプレッサーがPIF4の活性を阻害している。ドミナントネガティブgai-1D DELLA 変異体にBLを添加することで温度誘導胚軸伸長が回復し、PPZ処理はdella 五重変異体の恒常的温度応答を抑制した。これらの結果から、温度形態形成におけるオーキシンやGAの機能はBRに依存していると考えられる。BRシグナル伝達因子であるBRASSINAZOLE-RESISTANT 1(BZR1)を過剰発現させた系統は温度上昇に対する感受性が高く、BZR1は温度形態形成の正の制御因子として機能していると考えられる。温度上昇によりBZR1 転写産物量もBZR1タンパク質量も変化しないが、BZR1タンパク質の核の局在量が増加しており、この局在変化はPPZ添加によって抑制された。BR生合成遺伝子は温度上昇によって発現量が増加すること、PIF4はBR生合成遺伝子に結合することから、BRはBZR1を核に局在させて細胞伸長に関与する遺伝子の発現を誘導することで温度形態形成において中心的な役割を演じているものと思われる。BZR1 過剰発現系統は温度上昇時にPIF4 の発現が強く誘導されること、BZR1はPIF4 遺伝子のプロモーター領域に結合することから、BRはBZR1を介してPIF4 の発現を正に制御し、増幅ループを形成していることが示唆される。以上の結果から、PIF4による温度形態形成において、ブラシノステロイドはPIF4やオーキシンの下流に位置してBZR1を介して伸長成長を調節していることが示唆される。そして、BZR1はPIF4 の転写を誘導してPIF4→オーキシン→BRカスケードの増幅ループを形成してPIF4による温度形態形成を促進させていると考えられる。