Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)ヒストン脱アセチル化酵素結合因子による種子発芽の制御

2016-11-30 21:48:44 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis seed germination speed is controlled by SNL histone deacetylase-binding factor-mediated regulation of AUX1
Wang et al. Nature Communications (2016) 7:13412.

DOI: 10.1038/ncomms13412

SWI-INDEPENDENT3(SIN3)-LIKE1(SNL1)とSNL2はヒストン脱アセチル化酵素結合因子で、SNL-HDA19ヒストン脱アセチル化複合体を形成している。この複合体はアブシジン酸(ABA)やエチレンのシグナル伝達に関与する遺伝子のヒストンH3K9/18を脱アセチル化することで種子休眠を制御していることが知られている。中国科学院 植物研究所Liu らは、snl1 およびsnl2 単独変異体、snl1 snl2 二重変異体は、野生型よりも発芽の際の幼根の突出が早いことを見出した。この効果は種子を休眠打破処理しても見られることから、SNL1とSNL2は種子休眠とは独立して種子発芽を制御していることが示唆される。RNA-seq解析から、snl1 snl2 二重変異体種子ではオーキシン関連遺伝子の転写産物量が有意に増加していることがわかった。そこで、種子を浸漬する際にオーキシン合成阻害剤アミノエトキシビニルグリシン(AVG)やオーキシン輸送阻害剤の2,3,5-トリヨード安息香酸や1-ナフトキシ酢酸(1-NOA)を添加したところ、snl1 snl2 二重変異体も野生型も種子の発芽速度が低下した。このことから、snl 変異体はオーキシン応答が高まったことにより発芽速度が加速したと推測される。snl1 変異体、snl1 snl2 二重変異体の乾燥種子や浸漬8時間後の種子は、オーキシンの生合成、輸送、シグナル伝達に関与する遺伝子の発現量が野生型よりも高くなっていたが、浸漬24時間後には幾つかの遺伝子の発現量は野生型と同等になっていた。snl1 変異体、snl1 snl2 二重変異体でのオーキシンレポーターDR5::GUS の発現は、発芽時の胚では野生型よりも高くなっていたが、成長した芽生えでは差は見られなかった。また、snl1 変異体、snl1 snl2 二重変異体のIAA量は野生型よりも高くなっていた。これらの結果から、SNL1SNL2 は種子発芽時のオーキシン量を負に制御しており、このことが発芽速度に影響しているものと思われる。種子発芽の際に低濃度のオーキシンを与えると発芽速度が促進されたが、高濃度で処理すると発芽速度は低下した。また、低濃度のオーキシン処理をすることで幼根において4Cや8Cといった多倍体の核が増加した。したがって、オーキシンは細胞分裂やエンドサイクルを刺激して発芽速度を促進しているものと思われる。snl1 snl2 二重変異体で転写産物量が増加しているオーキシン関連遺伝子(PIN2PIN3CYP79B2CYP79B3YUC3 )の機能喪失変異体は発芽速度に明確な変化は見られなかったが、オーキシントランスポーターAUX1の変異体aux1-21aux1-22 の新鮮な種子は野生型よりも僅かに発芽が遅延した。この表現型は休眠打破処理をした種子では見られなくなることから、AUX1は種子の休眠を弱く調節していることが示唆される。種子で高い転写活性を示す12Sプロモーター制御下でAUX1 を発現させた形質転換体(12Spro::AUX1 )の休眠打破処理をした種子は幼根の突出が野生型よりも促進され、snl1 snl2 二重変異体にaux1-21 変異を導入すると発芽速度が野生型と同程度に戻った。これらの結果から、AUX1はSNL1、SNL2の下流での発芽速度の制御において重要な役割を演じていると思われる。AUX1 過剰発現系統の種子は内生オーキシン量が高く、幼根でのDR5::GUS の発現も高くなっていた。よって、AUX1は、オーキシンを輸送して幼根部分のオーキシン蓄積を調節することで幼根の成長と種子発芽に関与しているものと思われる。種子の発芽が進むにつれて幼根にAUX1タンパク質が蓄積していくが、snl1 snl2 二重変異体での蓄積量は野生型よりも多くなっていた。このことから、AUX1はsnl1 snl2 二重変異体の発芽速度を促進していることが示唆される。snl1 snl2 二重変異体は、AUX1 遺伝子のC末端コード領域、PIN2 遺伝子、CYP79B2 遺伝子のプロモーター領域のアセチル化の程度が野生型よりも高く、これらの遺伝子領域とSNL1は相互作用をすることが確認された。これらの結果から、snl1 snl2 二重変異体でのAUX1 遺伝子や他のオーキシン関連遺伝子の発現量の増加は、SNL1、SNL2の機能喪失によるヒストンH3K9K18のアセチル化の増加と強く関連していることが示唆される。12Spro::AUX1 形質転換体やsnl1 snl2 二重変異体は幼根の細胞数が野生型よりも多く、4Cや8Cの核が多くなっていた。また、サイクリンD1;1(CYCD1;1 )やCYCD4;1 の転写産物量が野生型よりも多くなっていた。12Spro::AUX1 形質転換体にCYCD4;1 の機能喪失変異を導入すると発芽速度が野生型と同程度になることから、CYCD1;1CYCD4;1 は幼根の成長に対してAUX1やSNL1/SNL2の下流において重要な役割を演じていることが示唆される。以上の結果から、SNL-HDA19ヒストン脱アセチル化複合体は、オーキシン関連遺伝子のヒストンを脱アセチル化して発現抑制することで種子発芽を抑制しており、AUX1はSNL1/SNL2の下流において種子発芽を制御する重要な因子であることが示唆される。

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論文)サイトカイニンによる根の伸長制御

2016-11-24 05:04:43 | 読んだ論文備忘録

Cytokinin acts through the auxin influx carrier AUX1 to regulate cell elongation in the root
Street et al. Development (2016) 143:3982-3993.

doi: 10.1242/dev.132035

サイトカイニンは主根の成長を細胞の分裂と伸長の両方を阻害することで制御しており、このサイトカイニンシグナルの伝達にはタイプB レスポンスレギュレーターのARR1、ARR10、ARR12が関与している。これらの因子は機能重複しており、単独の機能喪失変異体では表現型は殆ど変化しないが、aar1 arr12 二重変異体はサイトカイニン処理をしても主根の伸長阻害が起こらない。米国 ダートマス大学Schaller らは、サイトカイニンによる根の成長制御に関与する他の因子を同定するために、変異原(EMS)処理したarr1 変異体、arr12 変異体の集団からサイトカイニン(6-BA)処理をしても根の伸長阻害が起こらない変異体を単離し、それらをenhancer of response regulatorerr )と命名した。そしてこのうちのerr3 変異体について詳細な解析を行なった。err3-1 単独変異体は部分的なサイトカイニン非感受性を示すが、arr12 変異、arr1 arr12 二重変異が加わることで非感受性が強くなった。err3-1 変異体は重力屈性が低下しており、このことからオーキシン流入キャリアをコードするAUX1 に変異があるのではないかと考えて調査したところ、err3-1 変異体のAUX1 遺伝子のコード領域にはPro371Leuミスセンス変異が存在することを見出した。また、err3-2 変異体ではAUX1 遺伝子にGly374Ser変異が見られた。err3-1 変異、err3-2 変異は共にAUX1の第9-第10膜貫通ドメインの間の細胞外ループのアミノ酸置換変異であり、この領域はシロイヌナズナ アミノ酸/オーキシンパーミアーゼスーパーファミリーにおいて高度に保存されている。AUX1 の機能喪失変異体aux1-21err3-1 変異体と同様にサイトカイニンに対して非感受性であった。よって、err3-1err3-2AUX1 の対立遺伝子であり、それぞれをaux1-121aux1-122 と命名した。AUX1は4つのAUX/LAXオーキシン流入キャリアファミリーのうちの1つであり、他の3つのキャリアの機能喪失変異体lax1lax2lax3 のサイトカイニン応答性は野生型と同等であった。また、aux1-21 lax1 lax2 lax3 四重変異体のサイトカイニン応答性はaux1 単独変異体と同等であった。これらの結果から、AUX1はサイトカイニンによる根の成長を正に制御しており、他のファミリーとはこの点に関して機能重複していないことが示唆される。サイトカイニンは根端分裂組織での細胞分裂と伸長帯での細胞伸長に影響を及ぼすことで根の成長を制御しており、arr1 arr12 二重変異体は細胞分裂と細胞伸長の両方がサイトカイニン非感受性を示す。aux1-121 単独変異体はサイトカイニンの有無に関係なく根端分裂組織の大きさが野生型と同等であり、arr1 arr12 変異を導入しても分裂組織の大きさに相加的な効果は見られなかった。したがって、根端分裂組織の細胞分裂は、AUX1ではなくタイプB ARRが制御していることが示唆される。aux1-121 変異体、aux1-121 arr12 変異体、aux1-121 arr1 arr12 変異体は、全て伸長帯の細胞伸長においてサイトカイニン非感受性であり、このことから、AUX1はサイトカイニンによる細胞伸長の制御において重要な役割があると考えられる。AUX1 はエチレンによる根の伸長阻害に関与しており、サイトカイニンはエチレン生合成を促進している。エチレン非感受性変異体ein2-5 はサイトカイニンによる伸長阻害を抑制したが、aux1 変異体が完全に伸長阻害を抑制することと比較するとein2-5 変異体の抑制の程度は弱かった。したがって、サイトカイニンはエチレンに依存した機構と依存しない機構によって根の細胞伸長を阻害しており、2つの機構においてAUX1は重要な因子として機能していることが示唆される。aux1 変異体ではタイプB ARRのうちのARR10 の発現量が低下しており、オーキシン(NAA)処理によってこの減少は回復した。ARR10 の発現はサイトカイニン処理によって減少し、この減少はaux1 変異体においても観察された。したがって、オーキシンがARR10 の発現を正に制御し、逆にサイトカイニンがARR10 の発現を抑制する調節機能が存在すると考えられる。DR5:GFP オーキシンレポーターを導入した野生型植物をサイトカイニン処理すると根冠近傍の表皮細胞でDR5:GFP 活性が増加するが、arr1 arr12 変異体とaux1 変異体ではそのような増加は観察されなかった。したがって、根の表皮細胞でのサイトカイニンによるオーキシン活性の誘導はタイプB ARRとAUX1の両方に依存していると考えられる。ChIP-qPCRアッセイからARR12はAUX1 遺伝子の第8イントロンに結合することが確認された。よって、サイトカイニンはタイプB ARRの直接の作用を介してAUX1 の発現を抑制し、オーキシン活性の制御に関与していると考えられる。以上の結果から、サイトカイニンによる根の伸長阻害にはオーキシン排出キャリアのAUX1が関与していると考えられる。

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論文)WRKY転写因子による花成制御

2016-11-16 20:39:36 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis WRKY Transcription Factors WRKY12 and WRKY13 Oppositely Regulate Flowering under Short-Day Conditions
Li et al. Molecular Plant (2016) 9:1492-1503.
DOI: 10.1016/j.molp.2016.08.003

中国科学院 シーサンパンナ熱帯植物園Yu らは、WRKY転写因子の成長過程での役割を解析するために、シロイヌナズナのWRKY 遺伝子T-DNA挿入変異体の表現型を解析し、wrky12 変異体とwrky13 変異体は花成時期が変化していることを見出した。両変異体は長日条件下での花成時期は野生型と同等だが、短日条件下では、wrky12 変異体は花成が遅延し、wrky13 変異体は花成が促進した。また、WRKY12 を過剰発現させた系統は花成が早まり、WRKY13 を過剰発現させた系統は花成が遅延した。これらの結果から、WRKY12とWRKY13は短日条件下での花成時期の制御において正反対の機能を有していることが示唆される。WRKY12WRKY13 の発現を植物体の成長を追って追跡すると、WRKY12 の発現は徐々に増加していくのに対して、WRKY13 の発現は減少していった。両者は主に葉の維管束走行で発現しており、花成前後の分裂組織においても発現が見られた。花成を制御しているMADS box遺伝子FRUTIFULL (FUL )とSUPPRESSOR OF OVEREXPRESSION OF CONSTANSSOC1 )の両変異体での発現量を見たところ、花成の表現型と一致して、wrky12 変異体ではFULSOC1 の発現量が低く、wrky13 変異体では高くなっていた。また、WRKY12 過剰発現個体ではFULSOC1 の発現量が高く、WRKY13 過剰発現個体では発現が抑制されていた。花成制御に関与しているLEAFYLFY )遺伝子の発現はwrky 変異体と野生型で差異は見られなかった。よって、WRKYはMADS box遺伝子を介して花成を制御していると考えられる。WRKY転写因子はW-boxエレメントに特異的に結合することが知られている。クロマチン免疫沈降(ChIP)解析から、WRKY12とWRKY13はFUL 遺伝子プロモーター領域のW-boxに結合することが確認された。興味深いことに、W-boxはWRKY12 遺伝子、WRKY13 遺伝子のプロモーター領域にも存在しており、WRKY12は自身の遺伝子およびWRKY13 遺伝子のプロモーター領域に結合し、WRKY13はWRKY12 遺伝子のプロモーター領域に結合した。したがって、WRKY12 遺伝子とWRKY13 遺伝子の間にはフィードバック制御ループが存在すると考えられる。WRKY12、WRKY13はSOC1 遺伝子とLFY 遺伝子のプロモーターには結合しなかった。FUL を過剰発現させたwrky12 変異体および野生型植物は短日条件下での花成が促進され、wrky12 変異体の花成遅延表現型が回復した。また、WRKY13 過剰発現個体でFUL を過剰発現させることで、FUL 過剰発現個体と同程度に花成が促進された。これらの結果から、FUL はWRKY12、WRKY13の直接のターゲットであることが示唆される。WRKY12、WRKY13と相互作用をする因子を酵母two-hybrid系で探索したところ、DELLAタンパク質のGIBBERELLIN INSENSITIVE(GAI)およびRGA-LIKE1(RGL1)をコードするクローンが単離された。BiFCアッセイやCoIPアッセイからWRKY12、WRKY13とGAI、RGL1は生体内の核で複合体を形成することが確認され、他のDELLAタンパク質RGA、RGL2、RGL3とは複合体形成しないことが判った。WRKY12、WRKY13とDELLAタンパク質との相互作用がFUL の発現に与える影響を見るために、FUL プロモーター制御下でGUS を発現するレポーターを用いた一過的発現解析を行なった。その結果、WRKY12はGUS の発現を誘導し、WRKY13は抑制するが、GAI を同時に発現させることでそれらの効果が弱まることが判った。よって、GAIとWRKYとの相互作用はWRKYの転写因子としての活性を妨げていると考えられる。ジベレリン(GA)は花成を促進する効果があるが、wrky12 変異体をGA処理しても花成促進の程度は野生型よりも低く、wrky13 変異体では野生型よりも促進効果が強く現れた。また、野生型植物をGA処理するとWRKY12 の発現が誘導され、WRKY13 の発現は抑制された。これらの結果から、WRKY12、WRKY13は短日条件下でのGAによる花成誘導に部分的に関与していると考えられる。

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論文)活性酸素種による重力屈性と水分屈性の制御

2016-11-11 22:02:52 | 読んだ論文備忘録

Reactive Oxygen Species Tune Root Tropic Responses
Krieger et al. Plant Phsiology (2016) 172:1209-1220.

doi:10.1104/pp.16.00660

植物の根の成長パターンは、基本的には重力に支配されているが、他にも様々な化学的、物理的刺激を受容し、それに応答している。イスラエル テルアビブ大学Fromm らは、以前に、根が水ポテンシャルの高い方へ屈曲する水分屈性ではオーキシン分布の変化は起こらず、オーキシン極性輸送阻害剤やオーキシンシグナル伝達の拮抗物質を処理することによって屈曲が促進されることを見出した。この結果は、重力屈性と水分屈性は競合もしくは干渉関係にあることを示している。今回、屈曲応答における活性酸素種(ROS)の役割に着目して解析を行なった。寒天上で育成したシロイヌナズナ芽生えを90度回転させて重力刺激し、ジヒドロローダミン-123(DHR)を添加してROSの分布変化を追跡した。刺激を与える前では、コルメラ、側根の根冠、伸長帯(EZ)の表皮、維管束走向が染色され、根端メリステムも弱く染色された。刺激を与えて1-2時間後にROSの非対称分布が生じ、屈曲が生じる先端部伸長帯(DEZ)の凹(下)側の表皮が濃く染まった。そしてこのROSの非対称分布は刺激を与えて4時間後には消失した。水分勾配をつけた条件で芽生えを育成すると、根は重力刺激を与えた際に屈曲した部分よりも根端から離れた領域で屈曲した。そこで、この水分屈性を起こす領域を中央部伸長帯(CEZ)と命名した。水分刺激による屈曲ではCEZでもDEZでもROSの非対称分布は生じなかった。アスコルビン酸等の抗酸化剤処理によって重力屈性は阻害されるが、水分屈性は促進された。細胞質型アスコルビン酸ペルオキシダーゼの変異体apx1-2 の芽生えは野生型よりも水分屈性が低下していた。これらの結果から、細胞質の過酸化水素を除去する能力が低下すると水分屈性が阻害されることが示唆される。ROSの生成に関与するNADPHオキシダーゼの阻害剤であるジフェニレンヨードニウム(DPI)は水分屈性を促進し、重力屈性を抑制した。また、DPI添加時の水分屈性の屈曲は通常よりも根端に近い領域で起こった。シロイヌナズナでは植物NADPHオキシダーゼのRBOHが10種類存在し、発現の組織特異性から3つのクラスに分類されている。原根毛や伸長帯の表皮で発現しているRBOH Cの変異体rbohC の芽生えは、根の過酸化水素量が減少し、水分屈性が促進された。また、植物組織全体で発現し、主に茎や葉での発現が強く、ROSの全身性シグナル伝達に関与しているRBOH Dの変異体rbohD の芽生えは、根の過酸化水素料に変化が見られず、水分屈性と根の成長は野生型と同等であった。水分屈性と重力屈性の関係を双方の刺激を組合せて与えることで調査したところ、2時間水分刺激を与えた後に1時間重力刺激を与えるとEZ屈曲部でのROSの非対称分布を生じたが、3時間水分刺激を与えた後ではROSの非対称分布は弱まり、4時間与えた後ではROSの非対称分布は形成されず重力刺激に応答した屈曲も起こらなくなった。したがって、水分刺激による屈曲が促進されるにつれて重力刺激によるROSの非対称分布の誘導が十分にできなくなり、水ポテンシャルの高い方向への成長が優先されると考えられる。この時のオーキシンの分布をDⅡ-VENUSを発現する芽生えで調査したところ、水分刺激を長く与えることで重力刺激に応答した根端部のオーキシンの非対称分布の形成も妨げられることがわかった。よって、水分刺激はオーキシン非対称分布を妨げることで重力屈性のROSシグナルを低下させていることが示唆される。以上の結果から、活性酸素種は根の重力屈性を促進し水分屈性を負に制御しており、根が水分刺激に応答して成長する際には重力屈性を誘導するオーキシンや活性酸素種のシグナルを抑えて重力刺激に応答した成長を克服していると考えられる。

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論文)デンプン粒合成に関与する酵素

2016-11-05 07:54:04 | 読んだ論文備忘録

Degradation of Glucan Primers in the Absence of Starch Synthase 4 Disrupts Starch Granule Initiation in Arabidopsis
Seung et al. Journal of Biological Chemistry (2016) 291:20718-20728.

doi: 10.1074/jbc.M116.730648

シロイヌナズナの葉緑体は5~7個のデンプン粒を含んでいる。しかしながら、デンプン粒合成がどのようにして開始され、デンプン粒の数を決めている要因が何であるかは明らかとなっていない。デンプン合成酵素4(SS4)が機能喪失したシロイヌナズナ変異体の葉緑体はデンプン粒が1~2個に減少することから、SS4はデンプン粒合成の開始に関与していると考えられている。他のSSの変異体ではデンプン粒数に変化は見られず、ss1 ss2 ss3 三重変異体でもデンプン粒数に変化は見られない。しかし、ss3 ss4 二重変異体は完全にデンプン粒が消失することから、SS3もデンプン粒合成の開始に幾分かは関与しているものと思われる。スイス チューリッヒ工科大学Zeeman らは、デンプン粒合成の開始におけるデンプン分解酵素の関与を調査し、ss4 変異体やss3 ss4 変異体ではα-アミラーゼのAMY3タンパク質が大きく減少していることを見出した。ss4 変異体、ss3 ss4 変異体ともAMY3 遺伝子の転写物量や転写産物量の日変化は野生型と同等であることから、これらの変異体でのAMY3タンパク質の減少は転写後に生じているものと思われる。ss4 変異体は若い葉よりも古い葉でデンプンを多く蓄積しているが、両者のAMY3タンパク質量に差は見られなかった。これらの結果から、SS4の機能喪失はAMY3タンパク質の量を変化させることで、AMY3活性を低下させていることが示唆される。ss4 変異体は成長が野生型よりも遅く、葉色が淡い。ss3 ss4 二重変異体は成長が著しく悪く、葉色はss4 変異体よりも淡い。一方、amy3 変異体の表現型は野生型と同等である。amy3 ss4 二重変異体は、ss4 変異体のように葉色が淡くならず、ロゼット葉はss4 変異体よりも大きく、野生型やamy3 変異体よりもやや小さくなった。amy3 ss3 ss4 三重変異体は野生型よりも成長が悪化したが、ss3 ss4 変異体よりは大きく、葉色も濃かった。よって、AMY3の変異はss4 変異体やss3 ss4 変異体の成長や形態に関する表現型を部分的に抑制しているといえる。植物体のデンプン量をヨード染色によって調査すると、野生型とamy3 変異体で染色パターンに違いは見られなかった。ss4 変異体は若い葉よりも古い葉が濃く染色された。amy3 ss4 二重変異体は野生型と同じように染色されたが、amy3 ss3 ss4 三重変異体は染色が薄く、ss3 ss4 二重変異体は全く染色されなかった。デンプン量の日変化を見たところ、日中の終わりのss4 変異体のデンプン量は野生型の70%程度であったが、夜間の終わりの時点でのデンプン量は野生型よりも多くなっていた。amy3 ss4 二重変異体は、何れの時間帯においても、ss4 変異体や野生型よりもデンプン含量が高くなっていた。したがって、AMY3の機能喪失はss4 変異体のデンプン含量を高めており、AMY3は変異体での澱粉蓄積を抑制していることが示唆される。デンプン合成の基質であるADP-グルコースの蓄積量を見ると、ss3 ss4 二重変異体の蓄積量が最も高く、野生型やamy3 変異体の蓄積量は極僅かであった。amy3 ss4 二重変異体の蓄積量はss4 変異体よりも低くなっていた。amy3 ss3 ss4 三重変異体はss3 ss4 二重変異体よりも成長が改善されるが、両者のADP-グルコース蓄積量は同程度であった。全体的にはADP-グルコース含量と成長量の間には強い負の相関が見られた。葉緑体内のデンプン粒を詳細に観察すると、野生型では扁平なデンプン粒が複数観察され、その数は若い葉と古い葉で違いは見られないが、ss4 変異体では円形のデンプン粒がゼロもしくは1つ、希に2個見られ、デンプン粒の無い葉緑体は若い葉において多く観察された。amy3 ss4 二重変異体では、小さな円形のデンプン粒が多数見られ、ss4 変異体で観察されたような大きな円形のデンプン粒も幾つか観察された。ss3 ss4 二重変異体の葉緑体はデンプン粒を含んでいないが、amy3 ss3 ss4 三重変異体は小さな円形のデンプン粒を多数含んでおり、幾つかの大きなデンプン粒も観察された。amy3 変異体、amy3 ss3 二重変異体のデンプン粒は野生型との大きな違いは見られなかった。以上の結果から、AMY3はデンプン粒合成の開始を妨げ、SS3とSS4はデンプン粒合成の開始を誘導していると考えられる。

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