Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
ホームページの更新情報

論文)避陰反応による葉柄伸長のメカニズム

2010-08-20 19:43:49 | 読んだ論文備忘録

Involvement of Auxin and Brassinosteroid in the Regulation of Petiole Elongation under the Shade
Kozuka et al.  Plant Physiology (2010) 153:1608-1618.
doi:10.1104/pp.110.156802

植物は、他の植物に覆われて自らが受容する光の質が変化すると、避陰反応(SAS)を示して成長パターンを変化させる。葉の場合、葉身の拡張を抑え、葉柄の伸長を促進させる。SASを起こす光の受容体はフィトクロムであり、周囲の植物の陰になって赤色光/遠赤色光比が低下したり、明期の終わりに遠赤色光の照射を受ける(EODFR)とSASを起こす。SASによる成長パターンの変化には、植物ホルモンが関与していることが知られている。京都大学の小塚らは、EODFR処理したシロイヌナズナ芽生えの葉身および葉柄のマイクロアレイ解析から、EODFR処理によって発現誘導される遺伝子のうち50遺伝子が葉身特異的、109遺伝子が葉柄特異的であることを突き止めた。また、EODFR処理によって発現誘導される遺伝子のうち、葉身では52遺伝子、葉柄では82遺伝子がIAAGH3SUAR 、といったオーキシン応答遺伝子であることがわかった。葉身・葉柄でEODFR処理によって発現誘導される遺伝子の中にはブラシノステロイド(BR)応答遺伝子も含まれており、オーキシンとBRの両方の制御を受けるとされている遺伝子も含まれていた。オーキシンとBRのSASにおける役割を調査するために、それぞれの植物ホルモンの変異体を用いた解析を行った。オーキシンの変異体としては、カロシン様タンパク質をコードし、オーキシン輸送に異常の見られるdoc1 /big 変異体を、BRの変異体としては、BR生合成を司るCYP90D1の変異体rot3 を用いた。doc1 変異体、rot3 変異体とも光条件に関係なく葉柄が短くなり、EODFR処理による葉柄伸長促進効果が低下した。doc1 rot3 二重変異体での葉柄伸長促進効果の低下の程度は単独変異体のそれと同じであることから、DOC1 /BIGROT3 /CYP90C1 はEODFRに呼応した葉柄伸長制御において同じ経路上で作用していると考えられる。doc1 変異体の葉身・葉柄では、光条件に関係なくEODFR処理によって発現量が増加するオーキシン応答遺伝子、オーキシン/BR応答遺伝子、BR応答遺伝子の発現が低下しており、rot3 変異体もdoc1 変異体と同じような遺伝子発現量変化を示した。したがって、DOC1 /BIGROT3 /CYP90C1 の両方がSASによるオーキシン、BR応答遺伝子の発現に必要であると考えられる。SASによる葉柄伸長において光受容をしている部位を遠赤色光のスポット照射で探索したところ、葉柄ではなく、葉身部分がSASを示す光受容部位であることがわかった。また、葉でのオーキシン輸送がSASによる葉柄伸長にとって重要であることがわかった。以上の結果から、葉身のフィトクロムによる光受容によって引き起こされる避陰反応において、オーキシンとブラシノステロイドは協働して葉柄伸長を促進していると考えられる。

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 論文)E3ユビキチンリガーゼ... | トップ | HP更新)バイケイソウ群落写... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読んだ論文備忘録」カテゴリの最新記事