読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

『韓国併合への道』

2015年08月22日 | 評論
呉善花(オ・ソンファ)『韓国併合への道』(中公新書086、2006年)

1863年第25代朝鮮国王哲宗が死去したあとに王子がいなかったことから始まった「大院君」による独裁による外交政策の混乱から、日本による韓国植民地化である韓国併合にいたるまでの韓国政治・外交・独立への運動などを詳細に記述した本である。

じつに詳細に記述してあるだけに、西洋列強による開国要求が始まった時期の韓国国内の指導者たちの右往左往ぶりが手に取るように分かる。西洋列強と修好通商条約を結んでも、その内容が分からないで結んでいたという指摘もあった。かつては中国と倭からの度重なる侵略の動きをその度に撃退してきた朝鮮王朝も、西洋列強による開国要求には、まったく対応ができなかった。

日本との決定的な違いなどこにあるのか。この本ではそこまでは触れられていないが、ちょっと考えてみると、日本は朝鮮王朝とちがって、幕藩体制になっていたことだろう。そこで中央から遠く離れた薩摩などが独自に殖産興業体制を作って国力を高めることができたことから、政治改革の軍力だけではなく、思想的リーダーも育てることができた点に大きな違いがあるように思う。

この本によると朝鮮王朝は完璧な中央集権体制で、地方の支配者たちが軍力をもつことも、天下国家を考えることもなかったし、しかも自分の一族中心主義がはびこっていた(ドラマ『チャングム』のチェ一族のえげつなさを思い出してもらえば分かりやすい)こともあって、天下国家のために一致共同して改革を行おうなどという思想がそだたなかったという。

一時は、先に明治維新によって国家の近代化の道に進んでいた日本の助けを借りて自主独立の道を切り開こうという運きがあったにもかかわらず、この運動の一番のリーダーであった金王均の抹殺によってその道も潰えてしまった。日本でも紆余曲折を経て最終的に韓国の属国化の道を選んだ。

この辺りの歴史はもっと冷静になって日韓双方で学ぶ必要があると思う。その意味でもこのような本は貴重だ。

現在出ているのは「完全版」と銘打っているので、増補改訂されているのだ思う。

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