ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

LAFORET SOUND MUSEUM 2009 part 2

2009-06-09 16:17:23 | フェス、イベント
MORIARTY / GEE WHIZ BUT THIS IS A LONESOME TOWN

前回からのつづきです。

5月30日、31日、原宿ラフォーレにて2日間に渡って開催された「LAFORET SOUND MUSEUM 2009」。両日共にトリで登場したのがモリアーティ。アコースティック楽器を中心にオールド・フレイヴァー溢れる演奏で魅了してくれましたが、前2組が割と自然体スタイルだったのに対し、このモリアーティはメンバーそれぞれの佇まいからして既に役者っぽい。実際に彼らのパフォーマンスはライヴを観ている以上に何か演劇を見ているような気分にさせられました。

最終日、このイベントの最後を飾るステージ。前日はアンコールで披露された「Tagono-Ura」から静かにスタート。大きなソファーやランプ、そしてクジャクと熊の剥製が飾られた舞台。アルチュールのアコギ爪弾きとローズマリーの寂しげな歌声。そして田子ノ浦。モリアーティの異空間に否が応でも引き込まれます。3曲目の「Bacom」ではシャルルのロック的なギター・リフと、ズィムの躍動感あふれるベース・ソロがモリアーティ・ランドへのトリップを一気に加速させます。ストーリー・テラーたる紅一点のローズマリーは、そのモリアーティ・ランドへ迷い込んだ少女自身のようでもあり、迷い子を追い立てる魔女のようでもある。彼女の可憐さの中に毒をも含んだ歌声は、一見あっさりとしていながら、じっとりと耳に絡み付いてきます。

その紅一点シンガーのローズマリーを中心に、アルチュール(g)、シャルル(g)、ズィム(b)、トマ(harp)、さらにサポートのドラマーを加えた編成。メンバーの動きは悩ましくも激しく、時にユーモラスに、時に怪しく、舞台狭しと多彩な表情を見せてくれます。そこには古き良き時代のアメリカを思わせる愛すべきチープさと同時に、ヨーロッパ的な退廃の美学があり、桃源郷を探し求める放浪のファミリー楽団のようでにも見えました。

続く「Motel」ではアルチュールが激しくマラカスを振ります。前日はこの曲で“ほうき”を持って“ちり取り”をガンガン叩いてましたっけ。このバンドはそれぞれがマルチプレーヤー振りも発揮するので、楽器の持ち替えを観ているだけで結構楽しかったり。気がつくとズィムがアコギを弾きアルチュールがウッド・ベース奏者に変わっている場面もあったり。そしてシャルルはドブロでブルージーなスライドを披露したかと思えばつづく「Hanoi Blue」ではエレキ・ギターでトレモロを効かしたブルージー且つエモーショナルなギター・ソロを披露してくれたり。

しかしブルースと言えばトマが黙っちゃいません。とにかくこのバンドのブルース番長はハーピストのトマなのです。何か哲学者的な悩ましい表情で佇むトマが、一口ハープをブロウすれば、そこには一瞬にしてブルース・フィーリングが滲み出すのです。この日の午後、彼らとのランデヴーに参加した私は、トマとはブルース・ハーピストの話で盛り上がりました。彼はジェイムス・コットンを間近で観たことや、そのとき既にコットンは喉を病んでいて歌えなかったことなどを、英語が通じない私に身振り手振りを交えて熱心に語ってくれました。そんな彼のブルース・ハープは、時に枯れた味わいを醸し出し、時に炎のごとく熱く燃え上がるのです!

続いてメンバー5人が前方1本のマイクを囲むように集り披露されたのが、トム・ウェイツのカヴァー「Chocolate Jesus」。この選曲も、モリアーティらしいですよね。そして「Jimmy」。この曲ではフィンガー・スナップを客席にも促すのですが、客席の何所からか「指パッチン!」と声がかったもんですから、メンバーも楽しげに「yubipachi, yubipachi」と連呼して笑いを取っていました。なんか変な日本語覚えちゃいましたね~。そもそもモリアーティのメンバーは日本語が大好きなようで、ステージ上でも曲目を日本語で紹介したり、来日中にも色々な日本語を覚えていたようです。特にシャルルは貪欲でした。ランデヴーでも日本語を聞いてはメモを取っていましたし、私が教えたある日本語を早速ステージで使ってくれたり。ちょっと嬉しかったですね。

デペッシュ・モードのカヴァー「Enjoy The Silence」ではシャルルが奇声を上げながら精神分裂的に鉄筋を叩きます。その横ではローズマリーが熊の剥製を抱きかかえている。なんだかシュールです。この熊の名はジロ。前日のライヴで名前を観客に求めた結果、客席から「ジロー!!」と声が上がり即決したのです。本来なら6人目のメンバーであるジルベール(鹿の剥製)がこの地位に居たはずなのですが、彼は通関が大変とのことで、残念ながら今回はお留守番だとか。そこで白羽の矢がたったのがこの熊なのです。いったい何所から探して来たのか…? それにしてもこのカヴァーも見事!

ズィムによる寂しげなアコギの調べがリードする「Private Lily」。最も演劇的というかシュールな喜歌劇でも観ているようだった「Animals Can't Laugh」。そして本編クライマックスは華やかにアップ・テンポで攻める「Whiteman's Ballad」。アルバムではカントリー・フレイヴァーが濃厚ですが、フィドルが無い上にロック的なドラムスが加わっているため、原曲の高揚感がここではサイケデリック・ロック的に響きます。そしてシャルルによるギターの弓弾きやトマが吹く口琴が一層サイケデリック感を引き立てます。リズムが落ち、ローズマリーが最後のリリックを歌い上げると、(CDではここで終わりなのですが)ライヴではここからトマのビッグ・ブロウが待っています!

唇をブルブルと振るわせながらまるで竜巻のごとく吹き上げるブルース・ハープ。メンバー全員がここはもうトマに任せたとばかりに身を引くなか、トマは全身全霊を込めるがごとくファンキーこの上なくブロウにブロウを重ねていく。この格好良さには鳥肌が立ちました! そして頃合いを見計らって絶妙のタイミングで合流するバンド陣がもたらすカタルシス。最高でした!この日一番の盛り上がりを見せる中、 ここで一旦ステージは終了。そしてアンコールは2曲でしたっけ? ここまでメモを取っていたんですけど、アンコールについては、その前の「Whiteman's Ballad」のあまりの格好良さにメモを取り忘れています。少なくとも最後は「Oshkosh Bend」でしたね。これもCDで聴くより大分ロック的なノリになって、最後にふさわしい盛り上がりでした。

前日に比べて、よりリラックス&アグレッシヴなステージだったように思いました。曲順や演目も変わっていましたし、2連ちゃんでも充分と言うより、2連ちゃんだからこそより深くモリアーティランドに浸ることが出きた感じです。キャラ的にはメンバーそれぞれが各々の色彩で際立っていましたが、サウンド的にはどうしてもローズマリーやシャルル、トマによる上物に耳が行ってしまう部分はあります。ですがズィムのグルーヴィー且つどこかロマンティックなダブル・ベースによる低音ライン、そしてアルチュールのフォーキー且つ詩的なアコースティック・ギターの調べが、モリアーティの個性と底辺を支えているとも感じました。さらにライヴならではのノリを職人的に注入したドラマーさんにも拍手です。そして古き良きアメリカとヨーロッパのキャバレー的な雰囲気はもちろん、流石はフランスで活動しているだけのことはある、スタイリッシュなセンスとウィットに溢れたステージでした。






アルバム「GEE WHIZ BUT THIS IS A LONESOME TOWN」のライナーノーツ。終演後のサイン会でメンバーにそれぞれにサインを頂きました。



何故かアルチュールだけは違うページに書いてくれました。




~関連過去ブログ~ お茶のお供にどうぞ!

 09.06.08 LAFORET SOUND MUSEUM 2009 part 1
 09.06.07 モリアーティとランデヴー


コメントを投稿