ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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チャールズ・ネヴィル

2008-10-26 12:25:54 | ジャズ
CHARLES NEVILLE & DIVERSITY / CHARLES NEVILLE & DIVERSITY

アーロン、シリル、と続いたので、今回はチャールズ・ネヴィルです。

ネヴィルズ伝記本「ネヴィルブラザーズ自伝」で予想外に多弁なチャールズ・ネヴィル。とにかく語る語る。しかも話の大半が、窃盗、ドラッグ、女性関係、獄中生活、といった内容。4兄弟中最も一筋縄でいかない男です。

チャールズという人は兄弟の中で最も異色な男でもあります。他の3人の兄弟達は、大まかにいえばR&Bシンガーとしてニューオーリンズで活動を開始しました。ですがチャールズはチャーリー・パーカーなどのジャズに憧れ、サックスを持ち、ロードへ出てメンフィスやニューヨークで腕を磨きました。そしてその間、BBキングやジョニー・テイラーなどのバックも務めたそうです。

ネヴィル・ブラザーズの音楽がニューオーリンズに留まらない多様性を持ちながら、唯一無比のネヴィル・サウンドとして纏まっているのは、兄弟それぞれの志の高さはもちろんですが、チャールズの経験値が物を言ってる部分ってあると思うんですよ。実際、ネヴィルズの実質上の1st作とも位置づけられるワイルド・チョピトゥーラスの同名アルバムは、そのアレンジを当時ミーターズを纏めていたアート・ネヴィルと、ニューヨークから呼び戻されたチャールズが行ったそうですし。

ですがネヴィル・ブラザーズ初期の名作と言われる「FIYO ON THE BAYOU」では、おそらくプロデューサーの意向でチャールズはソロをとらせてもらえませんでした。あのアルバムでサックス・ソロを吹いているのは外部から来たデヴィッド・ファット・ヘッド・ニューマン(レイ・チャールズのバックでも知られる大物サックス奏者)です。この頃のネヴィルズはレコード会社から見れば3人のシンガーとバック・バンドといった扱いだったんですかね~。

ですがチャールズのサックスが奏でる独特の音階はネヴィルズにはなくてはならない物です。それは初期のライヴ盤「NEVILLE-LZATION」を聴いても分かります。1曲目「Fever」の冒頭、チャールズのサックスを聴いただけで『あ~、ネヴィルズだ~!』って感じますから。この曲のサックス・ソロも良いですし、6曲目「Caravan」はいかにもチャールズなエギゾチックなプレイが最高です。実は私、この超有名スタンダードを初めて聴いたのはこのアルバムでして、私にとって「Caravan」はチャールズの曲なのです。

そんなチャールズのサックスがスタジオ作においてネヴィルズの血肉となったのは、やはり「YELLOW MOON」からでしょうか。この頃のネヴィルズが持つ、スワンプの秘境感やヴードゥーな香りといった怪しげで神秘的なディープさはチャールズのサックスなくして成し得なかったと思います。前にこのブログでアーロン・ネヴィルについて書いた際、アーロンは3つのグラミーを受賞していると書きましたが、実は正確に言うと4つ受賞しています。残りの1つは兄弟4人、つまりネヴィル.ブラザーズで受賞しているのです。受賞部門は「ポップ・インストゥルメンタル部門」で、受賞曲は「YELLOW MOON」収録の「Healing Chant」です。

インスト曲ですから、もちろん主役はチャールズのサックスです。おそらく曲もチャールズが中心になって作られたのではないでしょうか。チャールズらしい怪しさ満開の名曲です。「FIYO ON THE BAYOU」での屈辱を考えれば、チャールズ的には“どうだ!”って感じだったでしょうね。

ですがチャールズは、やっぱり本質的にはジャズ・サックス・プレイヤーのようで、ジャズ作となるソロ・アルバムも過去に2枚制作しています。その一枚が、90年のソロ1st作「CHARLES NEVILLE & DIVERSITY」(上写真)。ここではチャールズがアルトを吹き、他にテナー・サックス、トランペット、さらにハープ、ヴァイオリン、チェロが加わりまからユニークです。やはりこの人、一筋縄では行きません。しかもギターは当時のネヴィルズのメンバーであるエリック・ストゥルザース、ドラムスにはかのジョン・ヴィダコヴィッチ!

いわゆるジャズですが、至る所でいかにもチャールズらしい音階が顔を出しニヤケてしまいます。曲目はチャーリー・パーカーやビリー・ホリデイ、ガーシュインなどを取り上げるなか、チャールズのオリジナル曲もありで楽しめます。そして全編チャールズが務めたアレンジもヴァラエティに富んでいて飽きさせません。ハープやヴァイオリンも心地よいですし、エリックのカッティングが冴え渡る「Baluda」がちょっぴりファンキーで格好良いです。

この頃のCHARLES NEVILLE & DIVERSITYの映像は、ビデオ・ソフト化されていた91年のニューオーリンズ・ジャズ祭の模様で少し見ることが出来ました。そこではトランペットとテナー・サックスが白人のお姉さんだったりして、なんかチャールズらしいなと思ったり。さらにコンガやスティール・パンまでフューチャーしていて、やはり一筋縄ではいきません。

さて、今回の来日公演ではどんなプレイを見せてくれることでしょうか? 私は初めて日比谷野音でネヴィル・ブラザーズを観た際の「Yellow Moon」での延々と続いたギターとチャールズのサッックスとの熱いバトルが未だに忘れられません。あれは凄かった! 何はともあれ、ネヴィル・ブラザーズにチャールズ有り!というところをガツンと見せて欲しいです。



グラミー受賞曲「Healing Chant」を収録の「YELLOW MOON」。このアルバムから、インディアンやヴードゥーといった何処か神秘的な雰囲気を内包するスピリチュアルなネヴィル・サウンドが確立され、チャールズの怪しい音階がそこにピタッと嵌った印象も有ります。



チャールズが参加したネイティヴ・インディアンのプロジェクト、ソング・キャッチャーズの94年作。演奏はもちろん、作曲やプロデュースにも携わっているようです。ソプラノ・サックスによるチャールズらしい音階はやはりスピリチュアルなサウンド作りに一役買っています。



VA / NEW ORLEANS LIVE! JAZZ(VHS-VIDEO)
92年に発売された、ニューオーリンズ・ライヴ・シリーズの1本。91年のニューオーリンズ・ジャズ・フェスの模様を中心に編纂されたシリーズで、こちらはそのジャズ編。CHARLES NEVILLE & DIVERSITYのライヴも収録。このシリーズはDVD化を望みます! って言うかNHKさん、また一日かけて放送して欲しいです。


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