ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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アート・ネヴィル

2008-10-28 17:49:42 | ソウル、ファンク
NEVILLE BROTHERS / BROTHER'S KEEPER

ネヴィル・ブラザーズ来日公演直前特集も最終回。最後は長兄、アート・ネヴィル。伝説のミーターズを率いた男として、讃えても讃えきれないファンク・マスターです。しかしどうしてもミーターズというと、ジガブーのドラム、ジョージのベース、レオのギターばかりが取り沙汰されがちです。ですが、ゴリゴリの三人の演奏を丸みの帯びたニューオーリンズ・ファンクに纏め上げてるのはアートのオルガンであり、後のミーターズの変遷を考えれば、さらにハードなプレイに暴走する若い3人に歯止めをかけ、抑制と隙間が生むクールなファンクを作り上げたのもアートその人が居てこそだと思うのです。

似たようなことはネヴィル・ブラザーズにも言えると思います。アート、アーロン、シリルというネヴィルズの誇る3人のシンガー。この中でアーロンとシリルの人気はもう自明のことと思います。ですがアートが一番好き!という意見は失礼ながら少数派なのではないでしょうか? ま、そう言う私もシリルとアーロンが好きでしたけどね…。

ですが、今回の来日に向けて、アートのホウケッツでのデビュー作「Mardi Gras Mambo」からネヴィルズ関連の音源を次から次へと聴き漁ったところ、思いのほかアートの歌心にグッとくることが多かったのです! そして個性派の弟達の歌唱をしてバンドが散漫な印象にならないのは、実はもっともネヴィルズらしい歌声はアートのものであり、彼の素朴にして円やかな歌声があってこそ、ネヴィルズの声は纏まりを得るのではないかと。やはり兄は偉大なのです。

37年12月生まれのアート・ネヴィル。もう70歳ですね。ホウケッツを率い「Mardi Gras Mambo」でデビューしたのが55年。この曲は地元で大ヒットしたそうです。その後ソロ名義で数々の録音を残しますが、その中に「All These Things」というアラン・トゥーサン作の美しいバラードが有ります。この曲は少し後にアーロン・ネヴィルも歌っているのですが、そのアーロンは自伝本「ネヴィルブラザーズ自伝」の中で、アートのように上手く歌えなかった、というような内容のことを語っています。兄をたてたのかもしれませんが、私もこの曲に関しては断然アートの歌の方が好きです。

そしてミーターズとしてのデビューが69年。ミーターズと言えばセカンドライン・ファンクですが、案外ファンク・ナンバーのなかに巧みに組み込まれたミドル/スロー・ナンバーも絶品で、それらがアルバム全体の流れに深みを与えているのです。「STRUTTIN'」収録の「Witchita Lineman」や「CABBAGE ALLEY」収録の「Birds」に「Lonesome And Unwanted People」、名作「REJUVENATION」収録の「Love Is For Me」など。もちろん歌っているのはアート・ネヴィルで、それぞれアートならではの哀愁深い味わいが格別。

アートの歌唱はアーロンやシリルに比べれば、派手な装飾の無いいたってシンプルな歌い方。しかしシンプルだからこそ伝わる情感って有りますよね。そんなアートの魅力はネヴィル・ブラザーズ結成後も2nd収録の「Sitting In Limbo」あたりに顕著ですね。

そんなアートがさらに深い含蓄とスピリチュアルなクールさを帯びた低音ヴォイスの魅力を開花させたのが90年の大傑作「BROTHER'S KEEPER」(上写真)。冒頭の「Brother Blood」での抑制の利いた低いアートの声を聴くだけで、何度でもこのアルバムに対する期待感が沸き上がりゾクゾクしてきます。そして圧巻は「Son's And Daughters」。説得力の塊のような静かな語りから、終盤に素朴な歌へと変わる展開も秀逸ながら、とにかくアートの声が持つ存在感が凄い! これは名唱です。

もちろんミーターズから続くファンク・ナンバーでのアートの歌も文句無しに素晴らしいです。アーロンのスピード感やシリルの粘りとはまた違う、アートならではのファンクネスがありますよね~。やっぱり何と言っても「Hey Pocky Way」ですかね。来日公演で演ってほしいな~。

70歳という年齢も有り、近年元気がないような印象もなきにしもあらずなアートですが、そんな心配を杞憂に終わらす現役バリバリなステージを見せて欲しいですね! やっぱり何はともあれ長兄アート・ネヴィルあってのネヴィル・ブラザーズですからね!





LEGACY - A HISTORY OF THE NEVILLES
ネヴィルズ結成以前のアートとアーロンの活動を収録した2枚組アンソロジー。アートのデビュー曲「Mardi Gras Mambo」や、アートとアーロンそれぞれの「All These Things」も収録。



THE METERS / CABBEG ALLEY
ミーターズの72年の作品。ファンキー・ナンバーに混じってアートの哀愁の名唱「Birds」と「Lonesome And Unwanted People」を収録。


2 コメント

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同感 (渡辺信之)
2017-08-25 08:12:06
アートが体調不良newsを見て、ググってたどり着きました。
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ありがとうございます! (moccho)
2017-08-26 17:55:04
渡辺信之さん、コメントありがとうございます。
アートの体調は心配ですね。御高齢ですし。
早く元気になって頂きたいです。
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