ルーツな日記

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ノラ・ジョーンズ探検隊 その3

2012-10-21 14:50:05 | SSW
VA / LIVE FROM BONNAROO

ノラ・ジョーンズ探検隊、第3弾。今回は第1回ボナルー・フェスティヴァルの模様を収録した「LIVE FROM BONNAROO」です。

私がジャム・バンドというムーヴメントの存在を知ったのは、99年にフィッシュがフジロックに来たのがきっかけだったと思います。そしてそのムーヴメントの全貌を見せつけられたのがこの2枚組CD「LIVE FROM BONNAROO」でした。もちろん“全貌”であるはずはないのですが、当時はここにジャム・バンドの全てが納められてるような興奮を覚えたものなのです。

2002年に米テネシー州で初めて開催されたジャム・バンドの祭典、ボナルー・ミュージック・フェスティバル。出演アーティストは、トレイ・アナスタシオ、ストリング・チーズ・インシデント、ワイドスプレッド・パニック、フィル・レッシュ&フレンズ、ガヴァメント・ミュール、ベン・ハーパー、モー、ソウライヴ、などなど。おそらくこれだけのジャム・バンドが一同に会した野外フェスというのは、全米でも初だったのではないでしょうか? 今でこそ、ジャム・バンドに限らない幅広いラインナップを揃え巨大化したボナルーですが、この第1回はまさにジャム・バンドのための祭典でしたし、ボナルーに出たバンドこそジャム・バンド!みたいな印象もありましたよね。

で、その頃の日本はと言うと、フジロックがちょこちょこジャム・バンドと呼ばれるアーティストを呼んでくれてはいたものの、音楽雑誌などにはほとんど取り上げられず、まだまだ浸透してはいない印象でした。もちろん現在程に情報が溢れていませんでしたし、ネットで検索するということも今日のように日常化されていない時代でしたからね。私もジャム・バンドに興味を持ちながらも、海の向こうの未だ見ぬ世界な感じで、なにやら掴みどころがない印象でした。そこにこのCDがリリースされた訳です。まずアメリカには凄いフェスがあるもんだ!と驚きつつ、そこにクレジットされたアーティスト名を見てこれがジャム・バンドか!と。しかもノラ・ジョーンズまで。え?ノラ・ジョーンズってジャム・バンドなの?みたいな。

いやいや、流石にノラ・ジョーンズがジャム・バンドだとは思いませんでしたが、これは意外でしたよね~。ですがなんでノラ・ジョーンズが? と不思議に思いつつも、いや、意外とありかも?みたいな。デビュー当時からなんとなくノラ・ジョーンズにはそういう魅力があったんですよね。ジャズというジャンルに括られながらも、どこか自由な気質が感じられたと言うか。もちろんジャム・バンドと呼ばれるアーティストにはジャズ寄りの方々も沢山いましたけどね。

ですがそんなジャム・バンド界のつわもの達のなかで、ノラはどこまでもノラ。ここに収録されたのは1st作「COME AWAY WITH ME」から「Nightingale」。浮遊するようなスモーキー・ヴォイスが堪らなく美しい。この頃のノラの声には間違いなく魔力が宿ってますよ! ボナルーの中では異質ですが、その異質さが何となくノラらしく、またボナルーらしいと思えてくるから不思議です。それにしてもこの時のボナルーがノラ・ジョーンズを出演させたというのは、流石の審美眼としか言い様がないですよね~。

ノラが「COME AWAY WITH ME」でデビューしたのが02年の2月、ボナルー出演が同年の6月です。 もちろんグラミー賞を受賞する前の話です。ひょっとしたらオファー自体はデビュー前かもしれません。どちらにしろデビュー直後のジャズ・シンガーがジャム・バンドの祭典に出演したのです。

ボナルーは何故ノラに注目したのでしょうか? これを想像するのもなかなか楽しい。ここで気になるのはやはりローパドープ~ジョン・メデスキー人脈なのです。この第1回ボナルー・フェスにはこの人脈で語れるアーティストが結構参加しているのです。DJロジック、ダーティ・ダズン・ブラスバンド、キャンベル・ブラザーズ、ロバート・ランドルフ、ノース・ミシシッピ・オールスターズあたり。

DJロジックはローパドープの看板アーティストですし、DDBBは前回のノラジョーンズ探検隊で書いた通り。ノース・ミシシッピ・オールスターズはロバート・ランドルフ、ジョン・メデスキーと共にザ・ワードを組みローパドープからアルバムを出しています。そのロバート・ランドルフもそうですが、キャンベル・ブラザーズは当時ジョン・メデスキーが入れ込んでいたセイクリッド・スティールを代表するグループ。ジャム・バンドの祭典にセイクリッド・スティールというゴスペル・フィールドのバンドが参加しているのも面白いですよね。ゴスペルと言えばさらに意外なのがファイヴ・ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマも出演しています。でも彼らもこの翌年ジョン・メデスキーの全面バックアップの元にアルバムを制作するなどジャム・バンド・シーンとの関わりも深いんですよね。

この頃のジャム・バンド・シーンを、ローパドープ~ジョン・メデスキー人脈が王道とはちょっと違う香辛料のような存在で面白くしていたのは間違いない事実。で、ノラ・ジョーンズも案外この人脈の一端を担っていたんじゃないか? ま、想像なんですけどね。でもそんな風に考えるとちょっと楽しくありませんか? ローパドープはニューヨークを拠点にしたレーベル、メデスキー・マーティン&ウッドもニューヨークから台頭したグループ、彼らはジャンルに拘らずジャズから一歩踏み出した先鋭的な感覚で音楽をクリエイトしてきました。そしてノラもニューヨーク。さらにノラとメデスキー・マーティン&ウッドは同じブルーノート所属のレーベルメイトでした。

でもね、この02年の第1回ボナルーフェスには、肝心のメデスキー・マーティン&ウッドが出演してないんですよね…。




LIVE FROM BONNAROO MUSIC FESTIVAl 2002
DVDも出ています。ノラ・ジョーンズの収録曲は残念ながらCDと同じ「Nightingale」。ドキュメンタリーとして場内の雰囲気も楽しめるのでお薦めですが、音楽を楽しみたいならCDの方が良いかも。でも映像が見れる分、やっぱこっちの方がお得ですかね?



~関連過去ブログ~ お時間有ったらぜひ!

 12.10.16 ノラ・ジョーンズ探検隊 その2(THE DIRTY DOZEN BRASS BAND / MEDICATED MAGIC)
 12.10.15 ノラ・ジョーンズ探検隊 その1(RAY CHARLES / GENIOUS LOVES COMPANY)


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