ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

映画、旅、その他について語らせていただきます。
タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。

題名と内容がそぐわないじゃないか

2017-03-31 00:00:00 | 映画

最近見た映画で、題名と内容がちょっとそぐわなすぎるといわざるを得ない映画をご紹介します。

最初は「92歳のパリジェンヌ」です。

読者の方々は、この題名でどのような映画を想像しますかね。パリ在住の老人が、さまざまな困難がありながらも独力で人生がんばる、みたいな映画を想像しませんかね。

実際はこの映画はぜんぜんそんな映画ではありません(苦笑)。つまりリオネル・ジョスパン元フランス首相の母親をモデルにした話で、彼の母親は長きにわたって助産婦(助産師)をしていましたが、老齢となり生きていくうえで不自由なことが増えたので、家族に向かって自殺すると宣言するという映画です。

映画の題名は、たしかに主人公(厳密には、この映画の主人公は、サンドリーヌ・ボネールの演じる彼女の娘でしょうが)のことを表現していますが、映画の内容にそぐうものとは全く思えません。

私は予告編を見ていましたから、映画の内容はわかっていましたが、あんまり確認しないで見たら、だいぶ困惑するんじゃないのという気はします。ちょっとこれは、題名を考えてくれなければ困ります。上の題名は、コメディ、あるいは明白なハッピーエンド系の映画の題名でしょう。

もう1本が「未来を花束にして」です。これは第一次世界大戦直前の時代における英国での女性参政権問題を扱った映画ですが・・・。

これも、とてもこんな甘い題名で済む映画ではありません(苦笑)。この映画に出てくる参政権運動家たちは、ショーウィンドーを石で割り気勢を上げ、さらに警官隊によって容赦なく殴られます。男ならもっとひどくやられるのでしょうが、女だからといって暴力を振るわないでくれるようなものではありません。

主人公は洗濯工場で働いていますが、労働条件も悪い。運動に参加しますが、夫から家を追い出され、子どもは夫が養子に出す始末。また自分をクビにした雇用主に復讐したりします。

主人公は逮捕されたり警察からスパイになれといわれたりします。それで仲間たちとポストを爆破したり電話線を切断します。さらには、ロイド・ジョージの空いている別荘を爆破します。

それ完全なテロじゃんと思うし、実際そうなんですが、逮捕された主人公は監獄でハンストをして、むりやり栄養を取らされます。それで仲間と英国王にダービーの会場で直訴しようということとなり、直訴できなかった仲間は馬に身を投げて、自分の意思を知らしめようとします。

メリル・ストリープ(この映画にも出演しています)はこの映画について

>すべての娘たちはこの歴史を知るべきであり、すべての息子たちはこの歴史を心に刻むべきである

とのコメントをしたとのことですが、彼女の言う

>この歴史

というのは、上のような行動のことです。ちょっとやそっとの行動ではないわけです。そういう行動を描いた映画が

>未来を花束にして

というのでは、これも全く題名とそぐわないですよね。「未来」と言っても、彼女ら活動家たちは、まさに自分たちの未来を犠牲にしてでも未来へ向かおうとしたわけで、まさに捨て身、肉を切らせて骨を断つということを文字通りにしたわけです。革命(あるいはそれに類するもの)というものはそういうことでしょうが、いずれにせよ彼女らの行動は、とても花束なんていえたものではありません。仮に花束だとしたら、それは血まみれ、泥だらけのものです。

それで私は、この映画の内容は知っていましたが、実際の映画を見ていてその予想の落差に驚きました。それで「これは題名に問題がある」と思いました。あまりに題名が甘すぎる。この題名では、女性参政権活動家の活動は、きわめて平和的で平穏なものだと思えるでしょう。映画の中では、そのような活動では限界が生じたので過激な活動に転化したと言うことが語られますが、いずれにせよ映画の内容にそぐいません。

私個人にしても、「92歳・・・」のほうは、内容は承知の上で見ることができましたが、「未来・・・」のほうは、内容との齟齬を知らないで見ました(女性参政権の映画だということは知っていましたが)。このあたりちょっと配給会社その他も注意してほしいと考えて記事にしました。

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6 コメント

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Unknown (bogus-simotukare)
2017-04-01 07:30:23
コメント欄復活ありがとうございます。
それはともかく洋画の題名ってのも難しいとは思います。
この件とは直接関係ないですが、本多勝一氏が「クレイマー、クレイマー」について「せめてクレーマー氏対クレイマー夫人てタイトルにして欲しい、あのタイトルじゃ意味がわからない」と書いていたのを思い出しました。
返信する
>bogus-simotukareさん (Bill McCreary)
2017-04-02 20:40:13
さっそくのコメントありがとうございます。よろしくお願いします。

>本多勝一氏が「クレイマー、クレイマー」について「せめてクレーマー氏対クレイマー夫人てタイトルにして欲しい、あのタイトルじゃ意味がわからない」と書いていたのを思い出しました。

それ私も読みました。仰せの通り、確かによくわかりません(笑)。
返信する
やっぱ「未来を花束にして」の政治運動はテロですよねえ(非難ではありません) (bogus-simotukare)
2019-09-21 22:04:13
https://togetter.com/li/1024313
(様々なツイートでの邦題批判)
・サフラジェット公開決まったけどなんだそのタイトル
・日本に新語の普及で「SUFFRAGETTE(サフラジェット)」の方がいいわ。
・元々"Suffragette(サフラジェット)"という言葉は、今回主人公が影響を受ける、大女優メリル・ストリープ演じる実在の活動家、パンクハーストなどにつけられた言葉だけど、その手段が放火なども伴う暴力的なものだったとして恐れられていた、という人物なんだけど、花束にされちゃうのか…
・「サフラジェット」の邦題は久々に無視できないぐらいひどいなあ。だいたい「未来を花束にして」って意味不明だし。題名が意味不明でいいのはオリジナルの題である場合だけですよ。
・少なくとも邦題をつけるときは、映画の中身をちゃんと受け止めて、その精神を踏みにじるものになっていないか考えろってこと。
・ごまかして客を呼ぶかをはなっから考えているとしか思えない宣伝/邦題。それが一番腹立つの。
・日本にも(ボーガス注:テロはしなかったとはいえ、市川房枝、平塚らいちょうなど日本版の)サフラジェット=婦人参政権運動家がいたのだから、彼女らのスローガンを使えば良いのに。「原始、女性は太陽だった」とか。
・「サフラジェット」も「フィロミーナ」も、女性の怒りの物語なんだ。「あなたを抱きしめる」だの「花束」だの甘ったるい邦題は、怒りの無化なんですよ。わからんかな。
・サフラジェット、邦題が『未来を花束にして』だけど、近代以降の国家で参政権を得るのは社会的に武器を得る事に等しいんだから、我が手に拳銃を、くらいのノリでいいと思う。
・漫☆画太郎イラストで「ガハハハハ」と叫ぶババアのポスターにしたほうが原作のイメージは伝わるのだろうな
・映画の色を薄めて公報したい気持ちもわかる。海外の政治運動をガンジーやキングとかのイメージで考えるの日本人には絶対あわなそうな映画だもん
・単純に、「未来を花束にして」という日本語がどういう意味なのか、直感できない。
・フランス版ポスターだと花束どころか火焔瓶あたり飛んできそうな感じだなw
・原題のニュアンスとしては単純な参政権論者つうより「参政権を訴える女闘士達」位のほうが正しい(爆弾テロとか犯罪上等の闘争を繰り広げてたから)
・闘うイメージが全くわかないタイトルとポスターであるな
・「女が政治的アクションを起こしたり、権利を要求するのは、日本では嫌われる」という文化が Suffragette の広告・邦題にも表れているように思う。
(引用終わり)
https://www.iwanami.co.jp/book/b452042.html
■ブレイディみかこ『女たちのテロル』(2019年、岩波書店)
・武闘派サフラジェット,エミリー・デイヴィソン
・(ボーガス注:アイルランド独立を求めた)イースター蜂起のスナイパー,マーガレット・スキニダー
(引用終わり)

 サフラジェットてのはこの記事の「未来を花束にして」批評で「それ完全なテロじゃん」とid:Bill McCrearyさんが書いてる「映画に出てくる政治活動団体」です。
 なお、ウィキペディア「未来を花束にして」などによれば映画の原題は「Suffragette(サフラジェット)」です。これは下手にひねるより最近よくある『英語題名そのまんま(ユージュアルサスペクツ、ミリオンダラーベイビーとか)』の『サフラジェット』でよかったんじゃないですかね。
 やはりブレイディ氏やid:Bill McCrearyさんなどが批判するように「未来を花束にして」じゃダメでしょう。
 そしてブレイディ氏がいうように「イースター蜂起のスナイパー,マーガレット・スキニダー」同様に「テロ、武闘派=サフラジェット」ですよねえ(それが悪いとかいいとかいう評価はしていません)。
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>bogus-simotukareさん (Bill McCreary)
2019-09-22 20:22:18
どうもコメントありがとうございます。

この映画での運動は、まさに力づくですからね。対話とかそういうものではない。ガンジーやキング牧師ほどの非暴力ではないですね。むしろマルコムXやブラックパンサーに近いものがありそうです。ブレイディ氏も触れているアイルランドのイースター蜂起なんてまさに武装運動だったわけで、当時はアパルトヘイトからの脱却の際のような非暴力はなかなか難しかった時代だったと思います。それで「未来を花束にして」は、それはないよねと改めて思います。
返信する
『サフラジェット 命を懸けた女性参政権獲得への闘い』ほか (bogus-simotukare)
2020-05-20 21:48:53
http://www.iw-eizo.co.jp/sell/society/02/so_02_suffragettes.html
から一部引用してみます(注:BBCのドキュメンタリーのDVD化のようです)。
◆彼女たちは女性参政権を獲得するために、暴動、過激なプロパガンダ行為、ハンガーストライキ、放火、爆破などを繰り返し、暴徒化し闘い続けた。
◆政府と"サフラジェット"の間に歩み寄りがみられ一時体戦したが、またも議案が見送られ彼女たちは激怒し、暴徒化が一気に加速する。デモ、放火、爆破行為をロンドンの至るところで行い、巨大なテロ組織となる。
◆監修のことば
 日本語字幕版監修:法政大学法学部政治学科教授 衛藤幹子
 運動は海を越えて日本を含む多くの国に広がりました。彼女たちを語ることなく、女性参政権を論じることはできません。暴力的なやり方は決して容認できませんが、"サフラジェット"が世界の女性の地位向上に貢献したことは確かといえるでしょう。
(引用終わり)
 まあこっちの方が明らかに「未来を花束にして」より適切でしょう。はっきりと「暴徒」「テロ」と書いている点は俺的に大変好感が持てます。
 また以下のような記事も見つかりました。
http://www.news-digest.co.uk/news/features/16117-womens-suffrage-movement.html
◆なぜ石を投げることになったのか?:WSPUが戦闘的な行動を取るに至った理由
 1860年代には、既に様々な女性参政権運動が各地で行われ、集会の開催やチラシの配布、国会への嘆願書提出が行われていた。にもかかわらず女性参政権に関する法案は常に否決され、一般国民や政府にとって彼女らの運動は見慣れた行事のようなものでしかなかった。だが1905年に風向きが変わる。
 WSPUのメンバー2人が、マンチェスターで開催された自由党の集会に出向き「政権を取ったら、女性に選挙権を与えるのか」などと大声で叫び妨害。取り押さえた警官に唾をはきかけるなどして逮捕・投獄された。各新聞はこの「女性らしからぬ」事件を大きく報道。地方の一団体でしかなかったWSPUと、進展の見込みのなかった女性参政権運動は一躍脚光を浴びた。選挙権がない女性が政治に対して意見を言う方法は、もはや直接行動のほかにないとWSPUは考えた。こうして彼女たちは次々に過激な運動を展開するようになる。
◆サフラジェットによる直接行動の数々
◆投石
 1908年6月のデモ行進時、警官たちの暴力に怒ったメンバーが首相官邸の窓を破る。メアリー・リーとエディス・ニューはこれにより2カ月間、ホロウェイ刑務所に服役。その後も政府機関への投石が続くが、1911年以降は「デーリー・メール」紙などの新聞社やウェスト・エンドのショーウインドーも標的に。バーバリーやリバティーなどの英系ショップが狙われた。
(中略)
◆爆弾
 1911年12月、郵便ポストの中に自家製爆弾が放り込まれる。翌年11月にはロンドン中心部やいくつかの地方都市のポストに、インクやタールなどの黒い液体や酸などが注ぎ込まれ、何千通もの手紙がダメージを受けた。これまでWSPUは一般市民を対象にしなかったが、これをきっかけに市民を巻き込む方針に転換。次第に運動は激しさを増していく。
◆放火
 1912年7月、イングランド南東部オックスフォードシャーにあるハーコート植民地相の別宅と、アスキス首相が観劇中だったアイルランドのダブリンにある劇場シアター・ロイヤルが狙われた。別宅への放火は未然に防がれたが、犯人には9カ月の禁固刑が言い渡される。劇場では2人のメンバーがカーテンに火をつけ、燃えた椅子をオーケストラに向かって投げ込むなどして禁固5年の判決が下った。
◆自殺行為
 1913年6月4日、戦闘的なサフラジェットの中でも特に過激派と言われたエミリー・ワイルディング・デービソンは、国王の馬が出場するというエプソム・ダービーへ出掛け、レースの最中にコースへ飛び出し、馬に蹴られて頭蓋骨を骨折。数日後に死去した。デービソンが死を意図していたかは不明だが、公衆の前でショッキングな行動をとることで、運動に光が当たることを望んでいたとされる。
◆器物破損
 1914年5月、ロンドンのナショナル・ギャラリーに展示されていたスペインの画家ベラスケスの「鏡のビーナス」を含む5点と、ロイヤル・アカデミーに展示された作品1点が刃物で切り裂かれるなどの被害を受ける。さらに大英博物館では展示されていたミイラを覆っているガラスが破壊された。これにより、各地の美術館・博物館では女性の入場に条件を付けるところも出た。
(引用終わり)

 過激なことをやって注目を集めるというと「チベットの焼身自殺」もやってることは同じでしょうが、そういうと「自称チベット支援者(例:阿部治平)」は怒り出すんですかね?
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>bogus-simotukareさん (Bill McCreary)
2020-05-23 15:59:44
どうも、詳細なコメントありがとうございます。引用された記事にもあるように、彼女らの行動は相当に過激であって、米国の公民権闘争や反アパルトヘイト闘争よりかなりすごいですよね。世界の暦委でも、独立運動とかでない参政権獲得運動としてはほかに例を見ないというレベルじゃないですかね。

ただご指摘の

>チベットの焼身自殺

と比較すると、あからさまな自殺というのは少ないあるいはないですね。そう考えると、焼身自殺は由比忠之進やアリス・ハーズなどいますが、チベットほどまとまって自殺をしているのはもちろん焼身に限りませんが、ほかにはなかなか見あたらないですね。こういうことを肯定しているダライ・ラマほかにも怒りがわくし、見てみぬふりをしたり詭弁で擁護するどっかの馬鹿や教授にも改めて明かりを覚えます。
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