まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

熟女のたくらみ

2019-10-31 | 日本映画
 「よこがお」
 訪問看護師の市子は、派遣先の家の娘である基子、サキ姉妹と親しくしていた。そんな中、サキが誘拐される事件が起きる。逮捕された犯人は、市子の甥だった…
 やっと観ることができました~公開2日目の昼過ぎ、劇場はほぼ満席の盛況ぶりでした。同じ深田晃司監督&筒井真理子主演の「淵に立つ」では家族が崩壊しましたが、今回は女の人生が崩壊してました。他人の不幸は蜜の味的な怖さと面白さ、という点で2作は共通しています。深田監督らしい独特な心理描写は不変だけど、今作にはワイドショー的な俗悪さ、下世話さがあって、前作よりわかりやすくとっつきやすい仕上がりになってたような。事件捜査ではなく、犯罪をめぐる相克や愛憎を描いていた80年代の良質な2時間ドラマっぽかったです。

 一寸先は闇、好事魔多し。生きてると思いもよらぬ不運、不幸に見舞われることもありますが、市子の場合はまさに神も仏もない理不尽さ。自業自得な転落ならまだしも、市子は何も悪いことはしてない、むしろ善徳を積んでる聖女のような女なのに、どうしてあんな目に遭わねばならなかったのでしょう。前世ではよほどの極悪人だったのでしょうか。

 他人に優しすぎ、他人を信じすぎな市子を見ていて思ったのですが。あんまり穏やかに優しく生きてたら、悪意や歪んだ愛情など邪なものが入り込む隙ができてしまうのかな。善良さって、人間をユルく弱くしてしまうのかもしれません。ある程度の意地悪さとか猜疑心は必要なのかも。あの時ちゃんと正直に言ってたら。あの時あんな話を気軽にしなければ。もうちょっと市子が用心深く計算高い女だったら、あんな悪夢は避けられたかもしれません。でもでも、絶対に失敗なんかしない、自分に傷がつくようなことはしない、不運も不幸も寄せ付けない、鉄の鎧のような自己防衛で自分を守ってるガチガチな女なんか、ほんとつまんないです。破局や破滅とは無縁なヒロインよりも、市子のように不幸を手繰り寄せてしまう女のほうが魅力的です。

 あれよあれよと社会的信用も女の幸せも失ってしまう市子、その原因を作った者への復讐を企てるのですが。憎い女から男を寝取るという、何ともショボい復讐。しかも結果的に復讐にならず、骨折り損で終わってしまうというトホホさ。もっと冷酷で残忍な方法とか、狂気的な大暴走とかにしてほしかった。でも、そんないかにも作ったようなサスペンスやホラー復讐ではなく、悪女にはなれない善良な女の、疲弊し破綻した精神状態での精いっぱいな自暴自棄って感じが、返って生々しい悲惨さで暗澹となりました。それにしても。被害者が殺されたわけでもない誘拐事件に、マスコミってあんなに執拗に騒ぐものでしょうか?

 市子役の筒井真理子が、またまた魅力的な好演。美人だけど美人すぎない、高嶺の花的な大女優ぶってないところが、親しみを抱けて好きです。ふんわり優しそうなところが素敵。熟女ヘアヌードを披露する大胆なエロさも、きれいなだけ、可愛いだけな女優とは違います。邦画には貴重な大人の女優です。基子役の市川実日子の個性的な容貌が、愛しさあまって憎さ百倍になる女心の怖さ、切なさによく合っていました。

 市子が接近する美容師役は、これまた邦画の至宝男優である池松壮亮。「だれかの木琴」でもイカレた熟女に迫られる美容師役でしたね。相変わらず若いくせに倦怠感と色気がハンパないです。雰囲気とか喋り方とか、もう人生に倦んだ熟年みたい。でも髭があっても隠せない童顔と、少年っぽい笑顔が可愛くて市子と動物園や美術館でデートするシーンの彼、落ち着いた大人の男っぽくてカッコよかった市子とのセックスシーンは大したことなく、濡れ場とは言い難くて残念。でも押し入れでの市子との全裸対面座位は、なかなかエロかったです。おかしな熟女が近づいてきてもあまり意に介さず、簡単に寝たりする無防備で投げやりなアンニュイ青年役が似合う壮亮くんは、やはりワラワラいるイケメンなだけの若手俳優たちとは一線を画してますね。ちょっとフランス男っぽい退廃が独特で素敵です。
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仮拘束

2019-10-23 | フランス、ベルギー映画
 「Garde à vue 」
 大晦日の夜。刑事のガリアンは、連続少女強姦殺人事件の容疑者として公証人のマルティノを拘留、取り調べを始める。頑として無実を主張するマルティノにガリアンは手を焼くが、マルティノの妻シャンタルの証言により事態は一転することに…
 原題のgarde à vueとは、警察勾留︰捜査の必要のために、罪を犯し又は犯そうとしたと疑うに足りる徴表のある者を警察庁署に留置する措置、という意味だそうです。これもずっと観たいと思ってたフランス映画です。日本では「レイプ殺人事件」というひどすぎる邦題でビデオリリースされてるみたいです。
 サスペンス、ミステリーと思って観ると、ん?え?と当惑するかもしれません。日本の2時間ドラマやアメリカの捜査ドラマファン向けではなく、どちらかといえば舞台劇が好きな人が楽しめる内容になってます。物語はほぼ取調室だけで進み、登場人物も刑事二人と容疑者の3人以外はあまり出てきません。限られた空間とキャラの息詰まる緊密な密室劇になってます。

 緊迫した空気、火花散る攻防、そして不気味で不可解な謎に惹きこまれます。本当に面白いのは、視覚的に派手なアクションや奇想天外な話ではなく、欲望や愛憎でドロドロした人間の心。この映画ではそれが、シミのようにジワジワと滲み出るように描かれています。取り調べが進むにつれて明るみになる、マルティノの正体、というか、性癖がおぞましくも悲痛。コントロールできない欲望に支配された人って、怖いけど気の毒でなりません。決して悪人ではないのに、欲望のせいで道を踏み外してしまう。悪魔のような欲望って、多くの犯罪者に共通する悲劇です。そして、本来なら他人が知る由もない夫婦の秘密が、のぞかれて暴かれてしまう恥辱。ある意味、殺人よりも恐ろしい。だからこそマルティノは、ラスト近くに殺人者にされてしまう道を選んだのでしょうか。

 暴き暴かれる人間の暗部と恥部が、どこか不思議な瑞々しさ、抒情的な雰囲気の中で描かれているところが独特な魅力。時おり挿入される少女の死体遺棄現場シーンは、死体をはっきり見せず遠くから映していて、陰惨な強姦殺人にはそぐわない神秘的な美しさをたたえた風景など、映像美が印象的。撮影監督は、後年「カミーユ・クローデル」で監督デビューしたブルノ・ニュイッテンと知って納得。撮影もですが、演出も役者も極上の一級品です。「なまいきシャルロット」などで知られるクロード・ミレール監督は、どんな題材の映画でも透明感があるところが好き。リノ・ヴァンチュラとミシェル・セローというフランス映画の超大物がW主演で、がっぷり取っ組み合うような演技対決。

 ガリアン役のヴァンチュラ氏は、ギャングの親分みたいなコワモテな貫禄、それでいて人情的で悲哀もあって、いつまでもカッコつけてるだけの若作り中年俳優が見習うべきおっさん。マルティノ役のセロー氏は元々は名コメディアンだけあって、忌まわしい殺人容疑者役だけどそこはかとなく可笑しい、これぞエスプリな複雑かつ絶妙な演技。洒脱ながら目つきが厳しくて怖い。気障なポーズもエレガントですごく似合ってるところも、まさにフランス俳優。彼はこの作品でセザール賞の主演男優賞を受賞しています。ミレール監督はこの映画の次に撮った「死への逃避行」でも、セロー氏を主役に起用しています。

 この映画、ラスト近くに急転直下の展開、そして衝撃的な結末を迎えるのですが、それをもたらす運命の女、マルティノの妻シャンタル役として、ロミー・シュナイダーが登場。出演は後半だけ、登場シーンも少ないのですが、大女優のオーラ半端ないです。気高い貴婦人感、倦怠感あるミステリアスさが、ハリウッド女優にはない魅力。亡くなる1年前の作品なのですが、暗闇の中でほのかに妖しく灯った、消える寸前のロウソクの炎のような美しさが、彼女ご自身の悲しい運命を暗示していたようで、それが役に活かされていたのも悲しかったです。シャンタルみたいな役ができる大女優、日本でもハリウッドでも思いつかない。私生活が幸せで心身ともに健康な女優は、やはりロミーのように不幸も悲しみも魅惑的に演じることはできません。
 ちなみにこの映画、後に「アンダー・サスピション」というタイトルで、モーガン・フリーマンがガリアン、ジーン・ハックマンがマルティノ、モニカ・ベルッチがシャンタルでハリウッドリメイクされました。こちらもなかなかの豪華キャスト!
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良人の闇を知った…

2019-10-20 | フランス、ベルギー映画
 「Une part d'ombre」
 愛する妻子や良き同僚たちに囲まれ幸せな人生を送っていたダヴィッドは、バカンス中に湖畔で起きた殺人事件の容疑者となってしまう。濡れ衣を晴らそうとするダビィッドだったが、彼には誰にも言えない秘密があった…
 原題は闇の部分、と訳せるでしょうか。殺人事件の真相や犯人はあまり重要ではなく、事件をきっかけにじわじわと壊れていく人間関係、信頼関係に身につまされる内容となっています。堅牢なはずの愛も友情も、一度亀裂が入るともう修復不可能、あがけばあがくほど大きく醜くひび割れていくのですね。私たちの多くが穏やかに和をもって尊しな社会生活、家庭生活を送っていますが、もしダヴィッドのような不運に遭ったら…そして、もしダヴィッドの同僚、そして妻だったら…果たしてそれまで通りの関係、生活を何事もなかったかのように営むことができるでしょうか。私にはその自信はないので、この映画の人々の疑心暗鬼や偽善、手のひら返しな態度を卑怯とは思えませんでした。

 そして、二面性のあるダヴィッドを見ていて、彼ほど深刻でもないし卑劣でもないけど、いかに上っ面だけ善人として生きてるか、私も我が身を振り返ってしまいました。それにしてもダヴィッド、叩けばホコリが出過ぎ。人間誰もが生きていれば何らかの隠しておきたい秘密や悪癖、事情はあるでしょうけど、ダヴィッドみたいにバレなきゃそのままシレっと生きるなんてこと、私にはできそうにありません。厚顔無恥もいいとこなダヴィッドですが、絶体絶命に陥った時に必要なのはその厚かましさ、、精神力の強さかもしれません。ナニハトモアレ、隠し事がある人はそれを墓まで持っていけなかった場合に備えての覚悟とか、善後策を用意しておいたほうがいいかもしれません。

 実際の凶悪事件でも、逮捕された犯人にまさかあの人が!と驚愕するのはよくあることですが、ダヴィッドのような男はある意味、とんでもない殺人鬼とかテロリストとかいった特殊性、危険性がない分、関わる可能性が高いので怖いです。ラストも、これからものうのうと、むしろ堂々と生きていくんだろうな、と思わせるダヴィッドの毅然とした風情に、清く正しい人間よりも薄汚い卑劣漢のほうが長生きするよな~と、軽い戦慄を覚えてしまいました。
 キャストは日本ではほぼ無名俳優ばかりですが、みんななかなかの迫真、生々しい演技。ダヴィッド役は、ダルデンヌ兄弟監督作の常連で、「サンドラの週末」ではマリオン・コティアールの夫役だったベルギー人俳優のファブリツィオ・ロンジオーネ。若いのかおっさんなのか年齢不詳な容貌。男前ではないけど優しそうでシブい。汚い本性など全然気づかせない、無実の罪を晴らそうと奮闘する冤罪被害者にしか見えない演技が秀逸でした。
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熟女刑事の手ほどき

2019-10-15 | フランス、ベルギー映画
 「Le petit lieutenant 」
 警察学校を卒業したアントワーヌは、パリ警察の殺人課に配属される。アルコール中毒を克服し仕事に復帰したキャロリーヌは、熱意にあふれたアントワーヌを自分が率いる捜査チームに加える。いつしか彼女は、アントワーヌに死んだ息子の面影を重ねるように。そんな中、浮浪者の他殺死体が川原で発見される。キャロリーヌの指揮の下、アントワーヌたちは捜査線上に浮上したロシア人の行方を追うが…
 だいぶ前からすごく観たかったフランス映画、念願かなってついに。大好きなナタリー・バイが、4度目のセザール賞を受賞した作品です。数年前のフランス映画祭で、団長として来日したナタリーおばさまの作品特集が開催され、そのレアで貴重なラインナップはフランス映画ファンにとってかなり垂涎ものだったのですが、残念ながらお江戸は遠く…この作品も、上映作品のひとつでした。ほとんど諦めてたので、観られることになりほんと驚喜でした。

 「神々と男たち」が高く評価された、俳優としても知られるグザヴィエ・ボーヴォワ監督作品。原題は若い警官、新米警官という意味でしょうか。刑事ものとはいえ、派手なアクションも奇抜な事件、どんでん返しな展開もなく、とても地味な内容です。日本の刑事ドラマやアメリカの捜査ものが好きな人からすると、ひどく退屈な映画かもしれません。でも、警察ドラマ、人間ドラマとしてはリアルかつシビアで、見応えあります。刑事部屋や取調室、留置所など、署内の様子や刑事たちの日常が、まるでドキュメンタリーのように撮られてます。出てくる刑事たちも、見た目もファッションも本物みたい。すごいモサくて野暮ったいおっさんばっか。こんな刑事いねーよ!な、日本やアメリカのドラマみたいなイケメンや、パリっとしたスーツ着てる刑事なんか一人も登場しません。

 相棒とかみたいな、バカバカしいまでに奇をてらったな事件や犯人で面白おかしく作った刑事ものとは違い、事件も捜査も現実的で地道。刑事同士の対立とか上下関係の軋轢とか、刑事もののお約束もほとんどありません。ベタベタしい暑苦しい人間関係がないところは、いかにもフランス的ですが、アルコール中毒とか夫婦の溝とか人種差別とか、ひとりひとりが抱えているプライベートの問題は、かなり切実で深刻。他人や組織を巻きこんでゴタゴタ騒がず、淡々としたドライな対応の仕方なども、邦画や日本のドラマでは見られないフランス人らしい感じで興味深かったです。ラストの事件の決着も、刑事たちの人生も苦く厳しく、ありきたりな一件落着には残せない静かなる深い余韻。

 アントワーヌ役のジャリル・ルペールは、ブサイクではないのですがすごい面長顔で、ルーキー刑事らしい初々しさや爽やかさがなかったのが残念。こんな刑事いねーよ!と嗤いつつも、やっぱイケメン刑事のほうがいいですね若い頃のブノワ・マジメルとかタハール・ラヒムとかだったらさぞや♡
 主役はどちらかといえばアントワーヌなのですが、じわじわとキャロリーヌの存在が濃ゆくなってきて、後半ある悲劇が起こって以降はキャロリーヌ中心に話は展開されます。キャロリーヌ役のナタリー・バイが、やはり素晴らしかったです。セザール賞受賞も納得。いかにも大熱演してます!な演技や、痩せり太ったりや特殊メイクで別人に化けたり演技や、風変わりな役より、誰にも見せない気づかせない内面の破綻や虚無を抱えたキャロリーヌのような役を、静かにかつ痛ましくも魅力的に演じるほうがはるかに難易度が高いので、竹内U子とか篠原R子とかが主演女優賞を獲るような日本アカデミー賞とは大違い

 キャロリーヌのキャラは、ちょっとだけヘレン・ミレン演じる「第一容疑者」のジェーン・テニスンに似てるのですが、キツくて冷酷なテニスンと違って、優しく柔和な感じ。女だからってナメんじゃないよ!なギスギスした力みもなく、いつも温和で冷静。でも、心はテニスン以上に乾いてて虚ろ。ヒステリックに取り乱すこともできない、狂気に落ちて自滅することもできない女の強さが悲痛。そんな孤独な中年女の暗い深淵を、ナタリーおばさまがフランス女優らしい憂いとエレガンスで演じてます。年齢を重ねた女の魅力に憧れます。顔のシワとか、ナチュラルなアンチエンジング無縁さ。地味な役でも、やはり美しい!どこで誰といても、大勢のエキストラの中に混じっていても、大女優にしかないオーラびんびんで、観客の目をすぐに自分のほうに惹きつけるんですよね~。日本やアメリカのドラマの女刑事とは違って、地味だけどセンスのいいファッションもトレビアン。キャロリーヌの独り住まいも、簡素だけどカーテンとかベランダでの朝食とか、フランスらしい趣味の高さ。それが似合うところもさすがフランス女優。
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ロンドン探偵物語

2019-10-11 | イギリス、アイルランド映画
 「シティ・オブ・タイニー・ライツ」
 ロンドンの裏町で小さな興信所を営むトミーは、失踪したロシア人娼婦の行方をつきとめる依頼を受ける。調査の最中に娼婦の常連客だった男の他殺死体をホテルで発見したトミーは、やがて土地開発をめぐる陰謀や宗教団体の不穏な動きに行き当たるが…
 最近ハリウッドの大作に立て続けに出演し、知名度もじわじわ上がってきてるイギリス俳優のリズ・アーメッド主演作です。出ずっぱり、バリバリの主役な彼を見たのは初めて。会うたびに美男になっていってるような気がします。彼を初めて知った「ナイトクローラー」では、フツーのインド系青年としか認識しなかった、ほぼ気にもとめなかったのですが、「ジェイソン・ボーン」の彼にはイケメンレーダーがビビビと反応。ナイトクローラーの青年と同一人物と知って驚いた記憶が。「ヴェノム」の彼も洗練された美男だった。男優も女優同様、売れるとあか抜けますよね~。

 この映画のリズは、下層階級の移民でショボい仕事で食いつないでる3流探偵役なのですが、全然うらぶれ感とか荒んだ雰囲気とかがなく、ちょっと愁いがあって粗野だけど、どちらかといえば爽やかな優しい好青年って感じ。ハードボイルドな探偵役には、ちょっとイケメンすぎるかなとも。インド系移民の役といえば、白人や金持ちから怪しまれたり冷たくされたりするのがパターンなのですが、聞きこみするリズを誰も邪険にしたり無視したりしないんですよ。イケメンってやっぱ得!

 まだ若いせいもあるけど、一匹狼的な哀愁とかニヒルさは希薄。でも、雨の中で煙草を吸う姿とか、すごくフォトジェニックな美しい佇まい。インドに行ったことがあるM子にリズの画像を見せて訊いてみたのですが、こんなイケメン全然見なかった!と即答されました。インドだろうがイギリスだろうが、やっぱそんじょそこらにはいないイケメンなんですね。今回も思ったけど、リズってピエール・ニネに似てる!超小顔(坊主頭なので余計に小さく見えた)と大きな美しい瞳、優しそうな雰囲気など、ニネっちとカブる部分が多い。でもリズは意外と小柄?そういうところも、無駄な威圧感がなくて親近感。

 イギリスでは犬も歩けば棒ではなくスパイとテロに当たる。今回も事件の裏にその二つの影が浮かび上がってくるのですが、実は…な真実。スパイとテロを無理やりミスリードに使った感じがしないでもなかったけど、ロンドンを舞台にした犯罪ドラマにはもはやお約束、イギリスならではの魅力にもなってます。ロンドンが舞台といっても、観光名所にもなってる有名な場所はほとんど出てこず、生活感たっぷりな庶民の家とか店とか、イギリスといえばの貴族や名家とは真逆な底辺社会が主な舞台となっています。「マイ・ビューティフル・ランドレット」の頃から変わってない、人種や宗教の問題で物騒、不穏なロンドン。やっぱ住むのは怖いな~。

 事件の謎と並行して、トミーの少年時代の話も挿入されるのですが。あまり必然性を感じなかった。初恋の女とのロマンスとかも、かなり取ってつけたかのようだった。ヒロインとは呼び難いほど、見た目はニューハーフでキャラはビッチな女だったのも残念。トミーがどんな経緯で探偵になったのかが、全然説明がなかったのも気になった。

 ↑ 新作の“Sound of Metal”では、肉体改造して熱演してると評判!早く観たい!
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僕も恋した父の愛人♂

2019-10-06 | 中国・台湾・香港映画
 「先に愛した人」
 台北の中学生シエンは、父親が愛人のもとへ奔ってから自分に過保護、過干渉になった母親にうんざりしていた。そんな中、父が病死し保険金を愛人に遺したことを知った母が激高、愛人のもとに怒鳴り込む彼女にシエンは同行する。父の愛人はジエという若い男だった…
 今ではすっかり市民権を得た感があるBLですが、それはあくまでリアルでは関係ない映画や漫画の世界、ファンタジーだから。実際に自分の夫や息子が男を好きになったら、ノーテンキに萌えたり理解を示すことができるでしょうか。シエンの母親が陥った境遇って、ほんと女にとっては屈辱的で理不尽。何にも悪いことなんかしてないのに、神も仏もない呪われた運命だわ。あまりにも無情な仕打ち。いきり立って憤慨し、大騒ぎする気持ちもよく解かります。それが滑稽に描かれてるのですが、笑えない悲痛さも。やり場のない怒りと悲しみ、何かにぶつけなきゃ生きてられない。そのはけ口にされる息子と愛人も哀れ。でもギャーギャーうるさすぎ。あれじゃあシエンじゃなくとも家出したくなるわ。

 ゲイがフツーに生きたいからと、セクシャリティを隠して女と結婚し子どもをもうける。家族を大事にするならいいけど、やっぱ男のほうがいい!と妻子を捨てるなんて、とんでもなく卑劣で卑怯なゲスゲイだと思う。シエンの父、あまりにも無責任で不誠実。誰もが自分を偽らず自由に勇気をもって生きるべきだとは思いますが、そのためには人を傷つけてもいい、悲しませてもいい!な生き方は、勇気ある選択ではなく単なる人でなしの所業。シエンの父がガンで苦しんで死んだのは、彼を愛した人たちを傷つけたバチとしか思えません。

 それでも夫を愛したシエンの母も、まさに死が二人を分かつまで一途に添い遂げたジエも、そこまで人を愛せるなんて…と、怖くもあり崇高でもありました。特にジエの献身は、そこまで愛されるに値する男なの?と首を傾げたくなるほど。若い男が病人の下の世話まで迷いなくする姿が衝撃的でした。自分に恨みがましくつきまとうシエンの母にも、自分の生活に入り込んでくるシエンにも、うんざりしつつ耐えて受け入れるジエの優しさも痛ましかった。あれは彼なりの、夫と父親を奪ってしまったことへの罪滅ぼしだったのでしょうか。母が金のことで浅ましく騒いでいたのではないこと、父とジエが心の底から愛し合っていたことを知ったシエンが、みんなを許して元の生活に戻る姿が爽やかに感動的でした。BL映画というより、少年の成長物語かもしれません。よく考えたら始めっから最後まで、シエンがいちばん冷静で大人な言動してたけど。

 ジエ役のロウ・チウが、なかなかのイケメンでした。舞台劇の演出家役なのですが、ちょっと〇◯組の若いチンピラ風な風貌とキャラがカッコよかったです。シエンの父親と出会った頃の80年代男性アイドル風な髪型も可愛かった。チンピラファッションにしても、スタイルがいいので何着ても似合います。ちょとだけ脱いでますが、いいカラダしてました。シエンの父とはキスシーンはあったけど、ドキ♡なラブシーンなどはなし。相手がフツーのおっさんだったのが残念。シエンもぜんぜん美少年ではなく、どちらかといえばブサイク男子なのですが、ちょっと少年時代の太賀に似てて私は好きなタイプ。シエンのジエへの態度はかなりツンデレで、もし二人までもがBL関係に発展したら、さぞやドキドキな内容になってたことでしょう。って、それっていくら何でもドロドロすぎるか父子と親子どんぶりなんて、刺激的すぎる背徳関係ですね
 ゴミゴミした街の裏通りやアパートなど、やはり日本とは趣がまったく違う、どこか東南アジア風な猥雑さ。台湾の庶民の風景も興味深く撮られていました。台湾といえばの小籠包、屋台のチキンとかも美味しそうでした。
 
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イケメンに授乳

2019-10-04 | ドイツ、オーストリア映画
 「スリーブラザーズ&ベビー」
 亡き両親から受け継いだ洋裁店を営む兄サミ、ミュージシャンを目指す弟メセトと暮らす無職のセラルは、交通事故で意識不明の重体となった元恋人アナの赤ん坊を預かり面倒を見るハメに陥る。兄弟で育児に悪戦苦闘する中、滞納した家賃を払うため母の貴金属を売って工面した金を、セラルはギャンブルに使ってしまい…
 大ヒットした懐かしのフランス映画「赤ちゃんに乾杯!」そのハリウッドリメイク「スリーメン&ベイビー」のドイツ版。前2作は優雅な独身男たちが主人公でしたが、この作品はサエないトルコ系3人兄弟になってました。

 可愛い赤ちゃんにも動物にもあまり興味がないので、その手の映画はあまり観ない私。仏版も米版も未見なのですが、この独版はスルーできませんでした。赤ちゃんではなく、イケメンに食いついてしまいました次男セラル役のコスティア・ウルマンが、めっちゃイケメンインドとドイツのハーフであるコスティアですが、どこからどう見てもインド男って感じではなく、それでいて適度に濃ゆいスウィートスパイシーなイケメンで、口当たりのよいカレーみたいな男なのです。「5%の奇跡」の彼は真面目で優しい善い子な役でしたが、今回の彼はちょっとロクデナシなチョイワルキャラで、そんな彼もなかなかチャーミングでした。

 大きな美しい瞳、小柄なところとか、やっぱちょっとガエル・ガルシア・ベルナルに似てるコスティア。兄と弟がブサイクなので、よけいコスティアの美男ぶりが際立ってました。カジノでのタキシード姿、カッコよすぎ!ロクデナシどころか、インドの貴公子にしか見えんかったぞ。それにしても兄弟間顔面格差、ありすぎ!私が兄か弟だったら、親を恨むわ。美男なだけでなく、濃ゆいエロフェロモンもガエルと共通してます。浅黒い肌がセクシー。小柄だけどいいカラダしてます。濡れ場とかはないけど、衝撃(笑撃?)の全裸シーンあり。

 銀行から金を借りるため、意を決して言われるがままストーリーキング、すっぽんぽんで白鳥の湖を踊ったり、卑猥に腰を振るコスティア。あれ、よくやったな~。お笑い芸人だってあれは易々とはできませんよ。日本のイケメン俳優にはまず無理でしょう。コスティアのイケメンぶりと役者魂に、ファンは感激するのみ。

 でも、セラルのキャラには共感も魅力も感られず残念。切羽詰まったらギャンブル、ババア相手の男娼、あげくは泥棒とか、まっとうに生きるという選択肢がないクズっぷりが不愉快だった。兄と弟も笑えないアホ男で、とにかく他人の迷惑とか事情なんかどうでもよく、常に自分たちのことだけな思考回路と言動。3人そろって知人の家に転がりこみ、遠慮も恐縮もしない厚かましさにも不快感しか覚えませんでした。人種ネタが多かったけど、インド人やトルコ人のそういった図々しい国民性を皮肉ってたのかな。ドイツの白人からしたらインド人もトルコ人もアラブ人も同じで、テロリストかカレー屋のどっちか、みたいな扱いがブラックな笑いを。

 あと、下品な下ネタも多かったです。そういうの好きなので、私は笑えました。金持ちのエロばあさんとセラルの、お下品な言葉攻め会話がなかなか愉快でした。ラスト近くにこのバアさんが意外な形で兄弟に幸運をもたらすのですが、それもこれもセラルがイケメンだったおかげ。イケメンってやっぱ得!セラルが怠惰で不真面目になったのは、イケメンゆえにいろいろ甘い汁を吸うこともあったからでしょうか。肝心の赤ちゃんは、可愛いし演技ができることに驚異!だったのですが、意外と早くママの元へ戻ってしまい、3兄弟がドタバタと育児に奮闘したりとか、赤ちゃんによって心も人生も変化が、みたいな笑いや感動はあまりなかったです。

 ↑ ドイツのコスティア・ウルマンと、イギリスのリズ・アーメッドが、いま私の中でのインド系イケメンの双璧です
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