まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

運命の出会い系

2011-04-01 | 日本映画
 「悪人」
 吉田修一の小説の映画化。
 長崎の漁港で祖父母と暮らしている祐一は、出会い系サイトで知り合い関係を持った若い女に辱められ激昂、彼女を殺してしまう。その後、再び出会い系サイトで知り合った光代という年上の女と、祐一は本気で愛し合うようになるが...
 吉田修一の原作を読んだ時は、祐一と光代の孤独と運命が切なく哀しくやるせなくて、静かな痛みのようなものを胸に感じましたが、映像化されたものを観ると...なぜだろう?ウィークエンダーか週刊文春の黒い報告書みたいな、男女のアホな痴情のもつれの再現ドラマ、みたいだった。
 悪人、というのは、運が悪い人、という意味としか思えない、祐一と光代の出会いのタイミングの悪さです。あと、祐一の頭の悪さ、光代の男運の悪さも。もうちょっと小器用に生きろよ~と説教したくなった。まあ、小器用に生きようとするあまり、大した不運も幸運もなく、本当の愛の悦びも痛みも知らないまま死んでいくだろう私のほうが、よっぽど愚かで損な人間でしょうけど

 祐一役を妻夫木聡が演じると聞いた時は、素敵なミスキャストだなと思った。ブッキー大好き、でも全然イメージに合わない、みたいな。でも、ブッキーは他の同世代の俳優たちに比べたら、演技に対しては果敢なチャレンジャー。濡れ場とかも頑張ってくれるでしょうと期待は大でした。いざ見てみると...ブッキー、年齢不詳っぽくなってますねえ。若者なのかおっさんのなのか判別が困難な顔。でも、やっぱ可愛い暗くて冴えない金髪ヤンキーな田舎DOKATA青年役でも、全然イケてます。あんな男が出会い系で来たら、ぶっちゃけ嬉しいですよヒモにしたいわ。

 ブッキーの演技力は、デビュー当時とそう変わらない。世間が褒め称えるような演技派男優では決してないと思うのだけど、すご~く頑張ってる!っていう気合が感じて、それが大根の原因となってる半面、すごく好感を抱ける魅力にもなってるんですよね。だいたい、ブッキーには最強の武器があるから、演技なんか二の次でいいのです。

 ブッキーの武器といえば、もちろんエロいフェロモン。今回も、なかなか遺憾なくエロさを発揮してました。裸も、そんなに肉体美ではないのに、何か色気があるんですよねブッキーって。可愛い顔とギャップのある、モサっとした腋毛とかもエロい。ディープキスでの唇や舌づかい。女を突いてる時の表情、あえぎ声、腰の動き。最近人気の若い男優やジャニタレには、絶対できない性演に拍手大胆すぎる濡れ場!ってほどではないけど、最近のオコチャマ邦画とは一線を画してたとは思います。もうちょっとジメっと情念深い映像にしたら、70年代の邦画っぽくなって良かったかも。

 光代役の深津絵里の熱演も印象的です。後半は彼女が完全主役化し、映画を自分のものにしていました。ちょっとブリっ子な喋り方が苦手だけど。あんたらみたいな美男美女なら、何も出会い系使わなくても?と思わずにはいられないブッキー&深津のカップルでしたが。でもまあ、フツーの男女だと画にならないもんね。
 金持ち大学生役の岡田将生が、なかなかの好演でした。最低最悪なバカ坊っちゃんぶりが笑えた。女を助手席から真夜中の山道に蹴降ろしたり、女の老父に蹴りを入れたり、鬼畜のキック連発(笑)。ダルビッシュを酷薄にしたような顔は、ちょっと苦手ですが。
 被害者役の満島ひかりも、深津に劣らぬ熱演でインパクトあり。チープな女の愚かさとか悲しさがよく伝わってくる演技でした。あと、祐一の母役の余貴美子も良かった。チョイ役なのに、祐一の不幸の元はここにある、と観客に納得させるダメ母ぶり。さすが余さんです。
 私が一番タチが悪いなあ、怖いなあと思ったのは、バカ坊っちゃんの取り巻きみたいな連中。弱い立場の人たちを平気で貶めたり傷つけたりできる心の持ち主こそ、真の悪人なのではないでしょうか。
コメント (14)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする