まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

革命女子

2020-06-28 | フランス、ベルギー映画
 「マイ・レボリューション」
 共産主義者の両親に育てられたアンジェルは、仲間たちとの社会運動や恋愛、家族関係にも行き詰まり、田舎に移り住んだ母に会いに行く。活動と思想だけでなく自分も捨てた母に対して、アンジェルは長年わだかまりを抱いていたが…
 渡辺美里?と思った人は立派な高齢者です昨年のフランス映画祭で上映された作品。掘り出しもの的な佳作でした。社会や周囲の人々に激怒しまくってばかりのヒロインが、どことなく滑稽でクスっと笑えるユニークなコメディでした。

 何でもかんでも社会のせいにして、俗な生き方をしてる周囲の人々を否定したり責めたりするアンジェル。人間って生きてれば少々のズルいことやセコいこと、汚いことも避けられないじゃないですか。好きでそうしてるわけじゃないけど妥協も必要。それをヒステリックに指摘して糾弾するアンジェルの偏狭さ狭量さには、俗まみれな私からすると聞き苦しいキレイゴトとしか思えませんでした。あまりにも感情的で偏執的ともえいる頑固さなので、これって左思想礼賛映画ではなくその逆、左の人たちってこんなに変なんです!と嗤う内容なのかな、と思えました。

 でも、すごく真面目で一生けん命で、まったく私利私欲がないアンジェルのバイタリティや純真さには、好感と敬意を覚えました。私なんか一緒にいたら怒られてばかり、全否定されてばかりだろうけど、彼女みたいに大多数に流されない、長いものに巻かれない人も必要。史上最悪なアベ政権をうかうかと許してしまったことを、もしアンジェルに責めれても私たちには言い返す言葉もありません。それにしても、フランス人ってほんと議論好きですね!疲れる人たちですが、日本人ももっと自分の意見や信条をもって議論や行動をしてもいいのでは、とも思いました。ただし過激なのは反対。公共物に落書きをしたり、銀行で騒いで営業妨害するなど、迷惑行為も辞さないアンジェルの行動力は、やっぱ間違ってると思います。

 以前、左な人と親しくしていたことがあったのですが。すごい立派な理想や小難しい理論を滔々と語るくせに、平気で煙草の吸殻や空き缶をポイ捨てして私を呆れさせてくれました。大言壮語と矛盾するモラルのなさ、他人に厳しく自分に甘い、これって左の人に多いような気がします。エコロジストとして知られるレオナルド・ディカプリオとかも、政府や大企業には厳しいけどご自分はパーティー三昧、豪華ヨットやジェット機使用で、大量のゴミや排気ガスをまき散らしてるわけだし。

 アンジェル役のジュディス・デイヴィスは、この映画の監督も兼ねています。吉田沙保里を美人にした感じの顔?アンジェルに恋する保育園の園長さん役で、大好きなマリク・ジディが出演してます。マリくん、すっかりおっさんになっててちょっとショック。このハゲー!と豊田真由子に罵られそうな薄い髪が切なかった。顔も干しブドウみたいにカサカサシワシワ。でも、やっぱ可愛いです。少年っぽい可愛さと、大人の落ち着き、優しさがあわさった魅力。なにげなく、さりげなく女性を褒めたり意味深に見つめたりするところは、さすがフランス男。子どもたちと仲良しなシーンも微笑ましかったです。ヘンな踊りも笑えた。

 ↑こんなに可愛かったマリク・ジディも、すっかりおじさんに…でも、老いた容貌に逆らう若づくりや役をする日本の某スターと違って、若い雰囲気を保ちつつ包容力のある大人の男を演じるマリクは、やっぱハゲても素敵です
 
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サッカー&ジェントルマン

2020-06-17 | 欧米のドラマ
 Netflixのイギリスドラマ「ザ・イングリッシュゲーム」を観ました。全6話。
 19世紀末のイギリス。労働階級の青年ファーガスは才能を見込まれ、親友のジミーとともにダーウェンのチームに移籍するが、プロ選手が認められていない中、報酬を条件にやってきた彼らをチームメイトたちは白眼視する。一方、上流社会のチームを率いる銀行家のキネアードは、社会と同様にサッカーの運営やルールにもある格差に疑問を抱き始めていたが…
 大人気だったドラマ「ダウントン・アビー」と同じ制作チームの作品だとか。ダウントンアビーもゲーム・オブ・スローンズ同様、いまだに観られずにいるシリーズのひとつ。どんなに面白そうでも、長いドラマは苦手なんですよね~。その点このドラマは、6話で完結というコンパクトさ。集中力と持続力のない私でも何とか完観できる長さです。

 19世紀にイギリスでサッカー(イギリスではフットボール)がどのようにして庶民も親しめるスポーツに発展したのか、どのようにして現在のような形に組織化されルールが制定されたのかが、イギリス映画&ドラマではおなじみ(お約束?)の上流階級と労働階級との格差を通して描かれていました。サッカーファンではない私でも、当時の今とは異なる驚きのサッカー事情はとても興味深かったです。当時はまだ上流社会の紳士たちが運営を牛耳ってて、プレーで金を稼ぐプロ選手は認められておらず、まるでラグビーのような荒々しく危険な行為もプレー中OKだったんですね~。

 サッカーの話も階級の格差の話も面白かったのですが、何だろう、あっさり薄口というか、いい人たちのいい話って感じで、誰が観ても差し支えのないポリコレなドラマだったのが、ちょっと物足りませんでした。悪人がまったく出てこない話って、やっぱ味気ないです。イギリスの上流社会ものって、優雅さの下に隠された冷徹で底意地の悪い欺瞞や偽善が魅力だと思うんですよね~。イギリスの上流社会ならではのスノッブさを楽しみたかったのに。

 プロのスポーツについていろいろ考えさせられました。お金で他のチームに移籍するファーガスが、カープから金満球団へ鞍替えする選手たちとカブって複雑な気持ちに。ファーガスにとって、サッカーは趣味でも娯楽でもなく、貧しい生活から脱し家族を養うための生活の手段。上流社会の紳士たちが唱える清く正しい精神論なんかクソくらえ。それはすごく理解できる。カープを捨てた選手たちも、きっとファーガスと同じなのでしょう。でもね~。ファーガスを信じてチャンスを与えたオーナーや、不平等さに目をつぶって彼を受け入れたチームメイトや、地元の新しいスターとして応援したファンにとっては、それはないんじゃない?!な悲しい裏切りですよ。スポーツは非情なビジネスでもある、そのことをあらためて思い知りました。

 キネアード役で、若手バイプレイヤーなエドワード・ホルクロフトが、ついに主演!威風堂々とした体躯と優しそうな雰囲気が素敵!19世紀のフォーマルなスーツとタキシードがすごく似合う!英国俳優はやっぱそうでなきゃね。サッカーのユニフォーム姿も爽やかでカッコよかった。誇り高いけど思慮深く思いやりにあふれている理想の紳士を好演していました。すごい美男ではないけど、ふとした瞬間にハっと魅入ってしまうほど美しく見える顔。ちょっと顔デカですが(奥さん役の女優の2倍ぐらいあるように見えた)威厳と知性を備えた風格ある人物の役は、小顔俳優よりもデカ顔俳優のほうが合ってます。誰かに似てるよな~と前から思ってたのですが、あ!元カープのエルドレッドだ!エルドレッド、カープの外国人選手屈指のイケメンでしたよね~。

 ファーガス役のケヴィン・ガスリーも、よく見えると可愛いイケメン。大柄なエドワードと並ぶと子どもみたいに小柄に見えるところも可愛かったです。ファーガスのチームメイトでデモを扇動する若者役のサム・キーリーもなかなかイケメンでした。キネアードの上流社会チームには美男もイケメンもいなかったのが残念。

 イギリス映画&ドラマファンにはたまらない、美しく優雅な衣装や屋敷、庭園などもたっぷり堪能できます。私は食事シーンがすごく好きなんですよね~。でもいつもあんな風にきちんと正装して礼儀正しく食事は、憧れるけど庶民の私にはキツいかも。労働階級側の生活描写も丁寧。私もパブで楽しく飲んでみたいです。

 ↑ 主演だってイケるいい男&いい役者!最新作の“Corvidae”は、これまた注目の英国イケメン、ジャック・ロウデン共演作!早く観たい!
 
 
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必殺ママ 恐怖のお仕置き!

2020-06-14 | 北米映画 80s~90s
 「シリアル・ママ」
 歯科医の妻で高校生の娘と息子の母親でもあるベヴァリーは、明るく善良な良妻賢母。しかし彼女は、非常識な連中や愛する家族の平和を乱す者たちを次々に殺す連続殺人鬼だった。逮捕され裁判にかけられたベヴァリーは、いつしか全米の人気者となり…

 ヤバいエグいブラックコメディが大好きです。特にお気に入りなのは「殺したい女」「ワンダとダイヤと優しい奴ら」「ふたりにクギづけ」「トロピック・サンダー」でしょうか。ポリコレ無縁な傑作の中でもmy bestといえばやはり何といっても、怪作の巨匠ジョン・ウォーターズ監督のこの作品です。これ、気分が落ち込んでる時にすご~く観たくなるんですよね~。真っ黒でノーテンキな笑いが、沈んだ心を元気づけてくれます。人間の偽善や欺瞞、身勝手さや悪意を暴いて嘲笑う内容なのに、まるで澄んだ青空を見てるような爽快感を得られるのです。

 それは、この映画同様に私たちも非常識で利己的な連中や理不尽な出来事に囲まれ、日々ストレスに苛まれてるからでしょう。まるでゴキブリを退治するかのように不愉快な人々、迷惑な人々を抹殺していくママがとにかくスカっと愉快痛快です。ママに殺される人たち、確かにヤな連中なのですが、殺されて当然とは言えない、基本的には善人ばかりなところがこの映画の面白いところ。みんな無神経で自分本位なだけの善人。でも、そういう人たちのほうが真の悪人より怖い。

 私たちを破滅させたり死に追いやるような極悪人とはそんなに関わることはないけど、無神経で自分本位な善人は身近にたくさんいて、被害を被ることは日常茶飯事ですから。大したことじゃないのに、こいつ殺したい!死ねばいいのに!でも些細なことなので感情的になるほうが間違っているから我慢…という鬱憤を、ヒロインであるシリアルママを通して解消の疑似体験ができる…のが、この映画の魅力でしょうか。

 それにしても。ママに抹殺されてしまう人たち、いなくなってせいせいはするけど、すごい大したことない理由で殺されちゃうのが可哀想で笑えます。シートベルトしない、リサイクルしない、レンタルビデオ(死語?)を巻き戻さないで返す、駐車場の横入りetc.最も残虐な罰が下されるのは、家族の平和を乱す奴ら。息子を精神病扱いする教師、パパの休日を台無しにする患者夫婦、娘のスケコマシ彼氏のむごたらしい殺され方は、ホラー映画も真っ青なグロさ、かつ滑稽さでかなり笑撃的です。

 爆笑シーンのオンパレード、爆笑展開のつるべ打ちですが、中でも私にツボだったのは隣家のおばはんへのイタズラ電話。二人の下品すぎる応酬、何度観ても腹がよじれます。自ら検察側の証人たちを陥れ斥けて無罪を主張するママの弁護人ぶりも、珍妙で痛快です。下品な英語の勉強にもなる映画です。パワフルでノーテンキなアメリカ人が大好きになると同時に、彼らとアメリカ社会の歪みや醜さも炙りだしてるところが、凡百おバカ映画と違う点。よくできた社会派映画でもあります。ママに私の周囲にいるイラっとするムカっとする連中を抹殺してほしい!けど、もしママが近くにいたら、真っ先に殺されるのは私かも

 ママ役のキャスリーン・ターナー、迫力満点、圧巻の怪演です。かつては妖艶な美女として魅力を振りまいていた彼女が、すっかり貫禄もお肉もたっぷりなおばさんに。おばさんにはなってますが、美人であることは不変です。ご機嫌な時の朗らかなノーテンキさと、怒髪天の大魔神と化す時のギャップが強烈。お仕置きシーンも下品な台詞もノリノリで楽しそう。こういう役、演技って女優なら一度はやってみたいのでは。日本の女優はでもキレイカワイイが優先だから、キャスリーンおばさまみたいな過激で豪快なお笑い演技は無理でしょう。
 
 

 
コメント (2)
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