まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

ひと目逢ったその日から

2021-03-12 | フランス、ベルギー映画
 「女ともだち」
 1952年のフランス、リヨン。子どもたちの学芸会で出会ったレナとマドレーヌは意気投合、親友同士となって家族ぐるみの付き合いをするように。二人は一緒にブティックを経営したいという夢を抱くようになるが、親密すぎる彼女たちにレナの夫は不満を募らせて…
 以前から観たいと思ってたフランス映画、やっと観ることができました!\(^o^)/アカデミー賞の外国語映画賞にもノミネートされた1983年の佳作。W主演のイザベル・ユペールとミュウミュウが、わ、若い!きれい!二人とも30代前半、最も美しかった、そして演技に円熟味が増した時代の彼女たちではないでしょうか。「バルスーズ」では可愛くて大胆不敵なギャルだった二人が、年月を経て素敵な大人の女性に。大人の女性だけど、可愛さと大胆さは失っていないところが驚異です。大人カワイイといっても、日本の30代女優のようないい年してブリっこ、人工的な可愛さ若さとは大違い。ナチュラルでありながら、生々しい女でもある。この映画のユペール&ミュウミュウが、今の綾瀬はるかとか新垣結衣とかとより年下とか、ほんと信じられないし、なぜか何か絶望的な気分になってしまいます。

 女性の自由や権利、生きづらさや歓びを描いた映画は、えてしてフェミニズムが強すぎたり深刻すぎたりしがちですが、この映画は明るく軽妙、それでいて心に刺さる痛みもあって。それはやはり、ユペール&ミュウミュウのフランス女優ならではの個性と魅力によるところでしょう。とにかく二人とも、しなやかで軽やか。ハリウッドや日本ではありえない、同じことやればとんでもない悪妻たち、身勝手でふしだらな悪女になってしまうかもしれないヒロインたちなのですが、ユペール&ミュウミュウだと黙って耐えるとかバカらしい、自分らしく生きないなんて間違っていると思わせてくれる、強く自由なヒロインになるのです。

 レナ役のイザベル・ユペールは、この映画でもクールでドライ、そしてやっぱシレっとしてます。どんな状況にあってもジタバタしたりウジウジ悩んだりは絶対しない、けれども必死になってる力みも全然ない、冷ややかに泰然自若なところが好き。愛してない男との結婚にも、夫の金をくすねる時も、それを夫に打ち明ける時も、嘘をつく時も、常に何喰わぬ顔してるところが笑えます。夫に対してかなり非情で薄情な仕打ちをするのですが、夫に対して悪意とか害意とかは全然なく、自分がやりたいようにやる、ただそれだけ、それの何が悪いの?という軽やかな図太さ、したたかさがチャーミング。「主婦マリーがしたこと」のヒロインとかなりカブります。楽しそうな大笑い顔や元気いっぱいに動き回る姿も多く、出演作の中では最も明るいユペりんかもしれません。
 マドレーヌ役のミュウミュウは「読書する女」など、可愛い熟女ってイメージですが、この作品では美人!颯爽と闊達だけど繊細で、どこか脆さも感じさせる演技、雰囲気が、いつもの彼女とちょっと違った感じで新鮮でした。ユペールへのちょっとした視線やスキンシップに、ひょっとして友だち以上の感情を?を思わせる妖しさがあって、それがまたすごくさりげない。ああいう自然な感じも、さすがフランス女優。

 二人ともかなり過酷な戦中生活を送ったのに、苦労も悲しみも引きずっておらず、幸せな今を謳歌し未来を夢見る前向きさに好感。二人のマダムファッションも素敵。小柄で華奢なユペールは少女っぽい可憐さ、ちょっと宝塚の元男役っぽいミュウミュウはマニッシュな感じ。服の趣味同様、性格も生い立ちも違うけど、初めて出会った瞬間から運命的なもの、男とか女とかいった範を超えた愛情で結ばれた関係が、優しいときめきと高揚感で描かれていました。結婚とかセックスとか必要ない、魂が優しく触れ合うような愛情が尊かったです。妻であることよりも、母であることよりも、女性にとって大切なことがある。自由をあきらめて埋没することを拒む女たちに共感。同時に、彼女たちに振り回される夫たちには同情。ヤボ亭主だったりダメ亭主だったり、欠点だらけとはいえ根は超善人な夫たち、特にレナの夫は妻のことをすごく愛していて、彼女のために一生懸命働いて尽くしていただけに、裏切られてブチギレし大暴れ、ブティックをメチャクチャに破壊する姿が可哀想すぎて胸が痛んだ。愛って努力では報われないものなのですね。

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悪魔退治の聖拳

2021-03-07 | 韓国映画
 お松の韓流いい男映画祭⑦
 「ディヴァイン・フューリー 使者」
 幼い頃に父親を事故で亡くし信仰心を失った格闘家のヨンフは、自身の右手にあらわれた奇怪な現象に悩まされる。エクソシストであるアン神父は、悪魔を祓う力が神から与えられたとヨンフに告げる。ヨンフはアン神父とともに、邪悪な悪魔崇拝集団との闘いに身を投じることになるが…

 パク・ソジュン主演のオカルト映画。オカルトといっても、名作「エクソシスト」や「オーメン」のような目を背けてしまうほどの恐怖や、おどろおどろしい禍々しさなどは全然なく、ジャンプとかで連載してる少年漫画の実写化みたいなアクションファンタジーな映画でした。ぶっちゃけ、オカルトファンが観たらトホホな内容。かくゆう私もがっかりしました。全然怖くないのが致命的です。悪霊に憑かれた者たちが、ブリッジ歩行や天井・壁歩きなど、ほとんどエクソシストのパロディで失笑。主人公が不思議な力が宿った手で戦うのも、何だか地獄先生ぬ~べ~みたいだった。悪魔崇拝集団がこれまたわけのわからない連中で、いったいどういう組織なのか、何がしたかったのか、ヨンフがなぜ悪魔を祓う能力を授けられたのか説明不足すぎなのも、薄っぺらい映画にしてしまった要因かもしれません。

 韓国はキリスト教の国なので、悪魔がテーマのオカルトが製作しやすく、かつ馴染み深いのでしょうか。「プリースト」もでしたが、エクソシストのパクリみたいになっちゃうのが惜しい。キリスト教のもつヨーロッパの洗練が、韓国に合ってないというか。韓国らしいエグさや不気味さを活かしたオカルトは、どちらかといえば非キリスト教の土着系新興宗教を扱った系統のほうに多いように思えます。でも、この映画を観た人のほとんどは、そんなのどーでもいいのです。みんなオカルトではなくパク・ソジュン目当てなんだから!

 ヨンフ役のソジュンくん、カッコよかったです。彼をカッコよく見せるためだけの映画なので、彼のファンなら満足できます。格闘家役ということで、人気を博したドラマ「梨泰院クラス」では封印していた肉体美も惜しみなく披露してます。やっぱ韓流男優は脱いでナンボですから。鍛えぬいた、でも不自然な人工的バキバキシックスパックではなく、肉厚・堅肉な筋肉が素晴らしい。キレッキレの格闘にも瞠目。韓流男優ってほんとに強そうですよね~。カラダがすごいというのもあるけど、アクションの迫力と俊敏さも並大抵ではない。あんなキック、日本の俳優には無理ですもんね。

 服を着るとスラっとスマートでスタイル抜群なモデル風に。手足が長くて顔が小さい!ほんと恵まれた肉体の持ち主なソジュンくん。まさに非一般人な風貌。ラブコメが多い彼ですが、顔はイケメンというより個性的というか、酷薄で冷酷そうな面立ちなので、悪役とか似合いそう。彼の無表情って結構怖いもん。素晴らしい肉体と個性を備えた俳優なのに、アイドルタレントにやらせてもいいような役ばかりなのが惜しい。ヨンフの死んだ父ちゃんを追慕するファザコンぶりとか、父ちゃんが夢枕に出てくるとか、梨泰院のセロイと同じ。似たような役、無難な役ばかりではなく、若いうちに役者生命を賭けるような役や演技に挑戦してほしいものです。

 アン神父役は名優アン・ソンギ。アン先生、久々に見ましたが、すっかりおじいさんになりましたね~。もう悪魔と戦う力がなくなってきてる老人の悲哀がよく出てました。孤独な者同士、父子のような情愛をはぐくむヨンフとアン神父なのですが、個人的にはもっと年齢が近い俳優同士の兄弟的ブロマンス、な設定だったらな~と腐願望。

 悪魔崇拝集団を率いる謎の青年社長役のウ・ドファンは、冷酷そうで薄気味悪い悪人顔で役に合ってました。アン神父の助手役の俳優、どっかで見たことあるな~と思ったら、ソジュンくんが友情出演した「パラサイト 半地下の家族」のチェ・ウシクだった。今度は彼が友情出演?ラストに悪魔が登場するのですが、手下をやっつけただけで終了、これから真の戦いの始まり、to be continuedな終わり方は、かなり消化不良な余韻。続編なんかないと思うし、あってもそんなに観たくないし、すっきり一件落着な結末にしてほしかったかも。

 
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こじらせ娘の殺人

2021-03-03 | 日本映画
 「ファーストラヴ」
 公認心理師の由紀は、父親を刺殺した女子大生環菜についての本を執筆するため、拘置所で彼女と面会する。環菜の不可解な言動に戸惑う由紀は、さらに環菜の弁護人が夫の弟である迦葉であると知り狼狽する。由紀と迦葉にはある痛ましい過去があったが…
 最近作品の映像化が多い島本理生の直木賞受賞作の映画化。同じく島本センセイ原作の映画「Red」よりは、こちらのほうが幾分かは面白かったです。刺激的な事件や映像に狎れているせいで、原作を読んだ時はそんなに衝撃も感銘も受けなかったのですが、小説の中で起きてたことの実写を観るとかなり胸がザワつきました。他人の顔についてる汚いもの、そんなもの見たくないという不快感、そして気づかないふりして沈黙する罪悪感、というか。

 目を背けたくなるような性的シーンや虐待シーンなどは全然ないのですが、男たちの幼い少女に向けられる欲望、そしてそれを黙殺しようとしたり察知できなかったりする大人たちや社会の非情さや鈍感さが、忌まわしく許しがたかったです。つくづく痛感しました。女性って、本当に苦痛だらけで生きづらい。この映画で由紀や環菜が苛まれる苦しみや痛みは、男性には理解できないものでしょう。イタズラとか強姦されたわけではないのに大げさな、なんて思う男性も多いのでは。環菜が父親にされてたことなんか、立派な性的虐待ですよ。犯罪として告発や糾弾ができない形の虐待だったのが、本当に卑劣で残酷だった。あんな目に遭えば、環菜じゃなくても人格も人生も歪んじゃいます。幼い環菜を自分の部屋に連れ込んでた男も、東南アジアで少女買春してた由紀の父親も、普通に善人として社会生活に埋没してたのが気持ち悪かった。表面化しない性的虐待の被害者のことを思うと胸が痛み、加害者を思うと憤懣やるかたないです。

 環菜と由紀の父親は、気持ち悪い!と唾棄すべき存在ですが、母親たちはさらに悪質かも。傷ついてる娘を救えず、守ろうともせず、それどころかさらに傷つけるようなことをする毒母たちの悪意と無神経さには、男たちの汚らしい性欲よりもゾっとしました。すべての母親が子どもを愛するわけではないんですね。同じ性である母と娘の関係は、特にこじれやすい。環菜の母親も非道かったけど、由紀の母親も相当な性悪だった。私が由紀なら、父親は軽蔑と嫌悪ですむけど、母親には一生拭えない憎悪と恐怖を抱くでしょう。無神経な人がいちばん怖い。
 かなり深刻でデリケートなテーマなのですが、映画も小説同様にかなりライトな感じ。息苦しくなるほどにヘヴィなものになるよりはいいのかなとは思いつつ、ちょっと物足りなさも否めません。キャストもライトな面々。ヒロインの由紀役の北川景子、やっぱすごい美人!

 ショートヘアも似合ってて、小顔が際立ってました。いつもどこでも完璧なメイク、趣味も値段も高いファッションなど、まさにザ・女優。こんな公認心理師いねーわ!と苦笑。私が環菜なら、あんな美人には何も喋りたくない傷ついても苦しんでも、優しい男たちが近づいてきたり支えてくれる。美人はやっぱ得だね、みたいなヒロインでしたが、いかにも仕事ができます的カッコつけたキャリアウーマンではなく、優しく柔らかく演じていたところに好感。険がとれた感じになってたのは、実生活が幸せなおかげなのでしょうか。たまに演技がオーバーで、目ひんむいた顔とかほとんどホラーな景子さんでした

 迦葉役は中村倫也。ちょっと最近、いろいろ出すぎ?とは思うけど、可愛いので好きです。私が初めて彼を知ったドラマ、高校生役だった「とめはねっ!」の頃とあまり変わってないのが驚異。それにしても。彼ってイケメンなの?いい感じにブサカワ顔だと思うのだけど。童顔すぎて大人の敏腕弁護士に見えん!小柄で痩せてるので、スーツがまるで七五三!ミスキャストと言わざるを得ません。でも大学時代のシーンは違和感なし!髪型が可愛かった。由紀とホテルで初めてセックスするシーンで上半身裸になってるのですが、プヨプヨした子どもみたいだった韓流男優の肉体美を見慣れてるせいか、日本の俳優の裸ってほんと残念。

 由紀の夫、我聞役は窪塚洋介。久々に見たけど、今でも可愛いですね!可愛いおじさん。若い頃の角とか特異ぶったところがなくなって、すっかり落ち着いた感じになりましたね。すごい棒読みが気になったけど。我聞みたいな、すべてを見透かしててすべてを許す仏様みたいな男、返って怖いと思った。ヨースケ&倫也のツーショットはラストだけでしたが、可愛い兄弟!

 環菜役の芳根京子は、有名な女優なの?初めて知りましたが、難しい役を熱演してました。彼女もオーバーな演技が多く、特に何もしなくても複雑な感情や心の闇を感じさせる演技って、やっぱ難しいんだな~と彼女を見て思いました。木村佳乃(環菜の母)、高岡早紀(由紀の母)が毒母を好演。実際に淫行事件を起こした板尾創路が環菜の父役とか、よく引き受けたな~。環菜の元カレ役の清原翔は、綾野剛そっくり?東京の風景が夜も昼もオシャレで、大都会への憧れをかき立てられました。
 取材するヒロインVS堀の中の女殺人犯、といえば柚木麻子の「BUTTER」も面白かったので、ぜひ映画化してほしいものです。木嶋佳苗をモデルにした被告人役は、吉本新喜劇の酒井藍か、3時のヒロインの太った人にやってほしいかも(^^♪
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