まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

2021年my cinema lifeを総括する

2021-12-31 | 映画雑記
 みなさま、ご機嫌いかがですか?大晦日ですね!お正月を迎える準備は整ったことでしょうか。あと数時間で2021年も終わり!今年も無為だったけど無事でもあったことに安堵、感謝しながら独り新居で年越しを迎えている私です(^^♪
 今年もいろんな映画を観ました。いったいどんな作品を映画館まで足を運んで観たのかしらん?

  1月 南山の部長たち
     さんかく窓の外側は夜
  2月 藁にもすがる獣たち
     ファースト・ラヴ
  3月 21ブリッジ
     ミナリ
     太陽は動かない
  4月 ジェントルメン
  6月 アンモナイトの目覚め
     キャラクター
     ノマドランド
     AVA エヴァ
  7月 SEOBOK ソボク
     ゴジラVSコング
     ファーザー
  8月 孤狼の血 LEVEL2
     ワイルド・スピード ジェットブレイク
  9月 Summer of 85 
 10月 白頭山大噴火
     ノー・タイム・トゥ・ダイ
     最後の決闘裁判
     恋の病 潔癖なふたりのビフォーアフター
 11月 アナザーラウンド
 12月 ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ
     ドライブ・マイ・カー
     キングスマン ファースト・エージェント
     
 26本!けっこう観に行ったつもりだったけど、意外と少なかった。最近はネット配信で最新話題作を観る機会も多いので、たくさん観た感じになってるのかも。でも、映画はやっぱ映画館で観るのが好き。来年は100本は観に行きたいです!って、お約束の決して守られない公約
 毎年恒例、僭越ながらmy best movie, best actor and best actressを発表ぢゃ~!

🎥 my best movie top 5 in 2021
 
 1位 ドライブ・マイ・カー

 感動したとか、面白かったとかとは違う、静かで深い心の深淵に気づけば引き込まれてハっとなったり考察させられたり、そういう映画ってなかなかないので新鮮な驚喜でした。幼稚な邦画ばかりじゃなく、こういう大人の邦画がもっと観たいです!

 2位 パワー・オブ・ザ・ドッグ

 まさかのウェスタンBL愛憎劇!滑稽なまでにイタすぎる人間関係、息苦しいまでに切なく報われない愛、サイコな衝撃の結末。すべてがよくできていて、感嘆するばかりでした。

 3位 アナザーラウンド

 人生ままならぬことばかりですが、それでも捨てたもんじゃない、そう教えてくれる映画が好きです。
 
 4位 ファーザー

 戦慄の認知症体験!脳内ラビリンス!老いの悲しみをこんな風に描くなんて、すごく斬新!

 5位 恋の病 潔癖なふたりのビフォーアフター

 キッチュでポップなコメディ、かつ愛や社会に対するシビアな問題提議もしているユニークな作品でした。

 「アオラレ」「カポネ」「茲山魚譜 チャサンオボ」「ジョゼと虎と魚たち」を観に行けなかったのが心残り!
 
 🎥 my best actor top 3 in 2021

 1位 ベネディクト・カンバーバッチ  「パワー・オブ・ザ・ドッグ」

 バッチさんが素晴らしい俳優であることは以前から知ってましたが、これほどまでとは!ただ驚嘆、圧倒されました。オスカーは彼に!

 2位 西島秀俊 「ドライブ・マイ・カー」

 あの濡れ場だけでもう今年のベスト俳優入り決定ですわ奇をてらわぬ静かに深みのある演技も、いい役者になったな~と「あすなろ白書」世代なら感慨深いものが。同じあすなろ出身者でも、あの人はいまだにアレですからね~。日本を代表する俳優は今後は彼で決まりだネ!

 3位 マッツ・ミケルセン 「アナザーラウンド」

 母国に戻って久々に本領発揮したマッツ。リアルで切ない中年男のペーソスと、生きる歓びを取り戻した輝きと軽やかさに、私の心の琴線は大いに揺さぶられました。

 次点 アンソニー・ホプキンス 「ファーザー」

 今年最恐、最強インパクトの演技といえば、29年ぶりにオスカー受賞という快挙を遂げたホプキンス爺さまです。すごい名優!と、あらためて畏怖!

 今年は大混戦!かつてないほど迷った!この4人にはすぐに絞られたけど、順位をつけるのが難しかった!みんなそれほど最高の演技でした。男優は今年も百花繚乱で、「南山の部長たち」「白頭山大噴火」のイ・ビョンホン、「21ブリッジ」のチャドウィック・ボーズマン、「ミナリ」のスティーヴン・ユアン、「ジェントルメン」「AVA エヴァ」のコリン・ファレル、「SEOBOK ソボク」のコン・ユパク・ボゴム

 「孤狼の血 LEVEL2」の松坂桃李鈴木亮平、「Summer of 85」のバンジャマン・ヴォアザン、「ノー・タイム・トゥ・ダイ」のダニエル・クレイグ、「恋の病 潔癖なふたりのビフォーアフター」のリン・ボーホン、「最後の決闘裁判」のマット・デーモンアダム・ドライバー、「ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ」のトム・ハーディ、「さんかく窓の外側は夜」「ドライブ・マイ・カー」の岡田将生、「ドント・ルック・アップ」のレオナルド・ディカプリオ、「キングスマン ファースト・エージェント」のハリス・ディキンソン、が印象に残る好演でした。

 
 🎥 my best actress top 3 in 2021

 1位 ユン・ヨジョン 「藁にもすがる獣たち」「ミナリ」

 韓流ファンにはおなじみの売れっ子BBA女優ユン女史が、まさかのオスカー女優に!すごい快挙!アメリカ映画やドラマにちょっと出ただけでハリウッド進出!とか言ってる日本の俳優がいますが、ミナリのユン女史のような役や演技でハリウッドに認められて絶賛されてこそ、真にハリウッドで成功を収めたと言えるのではないでしょうか。

 2位 フランシス・マクドーマンド 「ノマドランド」

 3度目!のオスカー受賞。現代アメリカ映画界最高の女優といえば、いまやメリル・ストリープではなくマクド姐さんかもしれません。他の女優の追随を許さぬ絶対的な個性と存在感、でも力みのないユーモア。この作品でも魅せてくれました。
 
 3位 三浦透子 「ドライブ・マイ・カー」

 日本の映画、ドラマはもういつも同じようなキレイカワイイだけ女優ばかりなので、初めて知った彼女のすべてが新鮮でした。余計なことは言わない寡黙さ、クールでニヒルな役と演技が男らしいまでにカッコよかったです。

 その他には、「藁にもすがる獣たち」のチョン・ドヨン、「アンモナイトの目覚め」のケイト・ウィンスレットシアーシャ・ローナン、「ファーザー」のオリヴィア・コールマンの好演も忘れ難いです。

 今年もこうしてつつがなくmy cinema lifeを総括できました。来年も平穏無事に、でも何か素敵なことが起きますように!と祈願しながら本年度最終更新。今年もお世話になりました!また来年もよろしくお願いいたします!よいお年を!See you soon!
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ボクの姉貴は霊能力者

2021-12-30 | フランス、ベルギー映画
 師走のbeau garçon映画祭⑤
 「社会から虐げられた女たち」
 19世紀末のパリ。上流階級の令嬢ウジェニーには、霊が見え霊と話すことができるという霊能力があったが、それを狂気と見なした家族によって精神病院送りとなってしまう。厳格な看護婦長ジュヌビエーヴは、ウジェニーにも厳しく接するが…
 邦題が内容と合ってないし、センスが悪いと思います。精神病院での治療が確かに虐待、いや拷問に近い非道さでしたが、これは女性だけでなく男性も同じ扱いを受けたはずだし。当時の女性の社会的地位の低さや不自由さ、生きづらさがウジェニーの過酷な運命を通して描かれていましたが、虐げられたというより軽んじられたというほうがしっくりきます。でもほんと、づくづく思いました。今の時代に生まれてよかったと。もちろん現代にだっていろいろ問題はありますが、昔に比べたら権利も声高に主張できるし、よりよい人生を送る手段やチャンスもありますもん。

 ウジェニー、不幸なことに生まれるのが100年早かった。美しく聡明で、向上心と好奇心が旺盛で行動的な女性だったのが、返って仇となりました。バカでブスで従順だったら、あんな目に遭うことはなかったでしょうし。それにしてもウジェニー、利発なのに不器用というか性格がまっすぐすぎるというか、あんなに気味の悪いオカルト言動したら、誰だって怖がるし怪しむし警戒もしますよ。もっと静かに心霊と向き合えばよかったのに。周囲をごまかす機転や知恵があればよかったのに。自分に正直に自由に生きることを目指したいけど、そればっかギャーギャー求めてると単なるヒステリーと見なされます。自分を抑えたり韜晦する術も必要だと思いました。

 女性の生きづらさを訴えるフェミニズム、心霊現象や霊との対話などオカルト、狂気の治療と人体実験のホラー、ちょっと詰め込みすぎな感がなきにしもあらず。監督は抑圧された女性の苦しみ、試練を描きたかったけど、一般受けのためにオカルトとホラーの要素も加えたのでは、と観ていて思いました。ウジェニーとジュヌビエーヴがそれぞれ自室で夜に衣装を脱ぐシーンがあるのですが、下着だけになるまでにすごい時間と手間がかかって、毎日毎日死ぬまでこんなことしなやきゃいけないなんて、ほんと大変!可哀想!

 ヒロインのウジェニー役は、「J'aime regarder les filles」や「ブラックボックス」でピエール・ニネの相手役を演じたルー・ドゥ・ラージュ。ヒラリー・スワンク+戸田恵梨香、みたいな顔の美人です。時代劇でも現代的な魅力の女優。すごい気が強そうなので、メンタル強靭な不屈の女役が似合います。霊が降りてきてイタコ化する狂乱ぶりや、検査や治療シーンでは一糸まとわぬ全裸姿にも堂々となるなど、女優魂も相当なものです。Wヒロインである看護婦長ジュヌビエーヴ役は、この映画の監督も兼ねているメラニー・ロラン。まだ若く見えるので、厳格で支配的なベテラン看護婦役にはちょっとそぐわないと思ったけど、鬼女かと思いきや実はいい人だとわかったら、優しそうで賢そうな彼女には合ってる役だと思い直しました。ラスト、可哀想なことになったけど、何でそうなるの?とも。当時だとああなっちゃうのでしょうか。

 ウジェニーの弟役が、「Summer of 85」でキラキラBLを演じたバンジャマン・ヴォアザン。可愛い!やっぱ彼、ちょっと竹内涼真似?紳士ファッションにおひげ、大人な風貌ですがまだ少年っぽいです。20代前半ですからね~。若さは隠せません。Summer of 85同様、可愛いけどねっとり眠たげな目つきがエロい。自分の容姿に自信がないみたいな発言してましたが、何言ってんのと思いました。弟はブサイク設定?なら、すごいミスキャストです。美人の姉ちゃんに甘える姿も可愛い!シスコンなのかなと思いきや。姉ちゃんが真夜中に、ドアの隙間から目撃したのは何と!男と抱き合い熱い口づけを交わす弟!BLキター!またしてもBLなバンジャマンくんでした。彼のBLそのものは話にまったく関係なく、弟くんの出番もそんなに多くないのが残念でした。弟のBLを知って驚きつつイタズラっぽい微笑みを浮かべるウジェニー、そういうところも当時の常識にとらわれない女性だということが分かります。精神病院での地獄メニューな治療が怖すぎ。特に氷風呂。あんなん死ぬわ!

 ↑ 期待のボーギャルソン、バンジャマン・ヴォアザン。まだ25歳。アラフォーになったら色っぽい男になりそうですね。新作の“Illusions perdues”は、バルザック原作の時代劇で、グザヴィエ・ドラン、ヴァンサン・ラコスト、ジェラール・ドパルデューらを脇に従えた堂々の主演作です!
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公開処刑!自由か死か

2021-12-28 | フランス、ベルギー映画
 師走のbeau garçon映画祭④
 「Un peuple et son roi」
 1789年のパリ。政府への不満を爆発させた民衆はバスティーユ牢獄を襲撃し、フランス革命の火蓋が切っておとされる。赤ん坊を亡くしたばかりのフランソワーズは、浮浪の男バジルと出会い共に革命に身を投じるが…
 フランス革命の顛末を、庶民の目を通して描いた作品です。ベルばらみたいに華やかでドラマティックなドラマや恋愛はなく、ドキュメンタリータッチで史実を追ってるような内容になってました。庶民の生活の様子がリアルでした。貧しさや弾圧に苛まれながらも、革命に向かって闘志を燃やして行動する市民たちが逞しい。まさに不屈。平和に狎れた私たちにはないバイタリティ、精神力です。でも、あまりにも苦しみや悲しみが伴いすぎ。当時のフランス市民に生まれなくてよかったと心底思いました。あんな常に張り詰めた生活、ぜったい無理。苦しみや悲しみで強くなるよりも、楽なせいで弱いままのほうがいいです

 当時のフランス市民にもですが、王族や貴族にも生まれなくてよかった!イギリス王室時代劇もですが、贅沢三昧、栄耀栄華を享受しても一寸先は闇、急落して斬首刑だもんね。うまく立ち回らないと悲惨な末路。その盛者必衰、有為転変が面白いのだけど、当事者にはまさに気が休まることがない薄氷人生ですよね~。それにしても。すごい痛み、そして生贄が時代を変えるためには必要なのですね。フランス革命はその典型的な例。とにかく殺伐と混沌としていて、そして血なまぐさい。軍と市民の激突や、ラストのルイ16世の処刑など、まさに血まみれの悲劇。王のギロチン処刑シーンが克明すぎて怖かったです。バスティーユ襲撃、ヴェルサイユ宮殿への行進、三部会など有名なエピソードも描かれてます。

 キャストはなかなか豪華で、フランス映画ファンには嬉しいメンツをそろえてます。クレジットのトップはバジル役のギャスパー・ウリエルになってるのですが、ギャス男よりもフランソワーズ役のアデル・エネルのほうが主人公っぽいです。ギャス男はボロボロな野良犬っぽい風貌とキャラで、ほぼ小汚いままです。貧民役なので当然な役作りなのですが、往年のイケメンぶりを期待すると裏切られます。最近は脱イケメンで個性派俳優へと進化したギャス男ですが、たまにはイケメンに戻ってほしいものです。アデル・エネルは若いのに、いつもニヒルで逞しい!戦う女の役が似合います。おんなおんなしてない、男より男らしいので、男とのラブシーンが何だかしっくりこない。バジルとは恋というより、はじめは単なるエッチの相手、だんだん同志愛、みたいな関係。ベタベタしい男女の関係じゃなかったのがよかったです。フランソワーズをはじめ、女性たちがみんな強く勇ましい。フランス革命は、女性が立ち上がった契機にもなったんですね。

 市民のリーダー的な鍛冶屋役にオリヴィエ・グルメ、マラー役がドニ・ラヴァンといった個性派男優が。ベルばらでも人気のロベスピエール役がルイ・ガレル、サン・ジュスト役はニルス・シュナイダー。若手二人は少ない出番ながら、印象を残す存在感でした。ルイ16世役は、「エル Elle」のローラン・ラフィット。ルイ16世のイメージとはちょっと違うのですが、残酷な運命にも毅然としている姿が悲しくもカッコよかったです。

↑ ギャス男の新作は意外や、マーベルのTVシリーズ“Moon Knight”!彼はミッドナイトマンという悪役!を演じてるみたいです。楽しみ!
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残酷な天使の縁結び

2021-12-27 | フランス、ベルギー映画
 師走のbeau garçon映画祭③
 「ソーリー・エンジェル」
 1993年のフランス。劇作家のジャックは、仕事で訪れたレンヌで大学生のアルチュールと出会い、二人は強く惹かれ合う。パリに戻ったジャックは、エイズで余命いくばくもない元恋人マルコを自室に引き取とる。一方アルチュールは、年下の恋人ができるもののジャックのことを忘れられずにいた…
 久々にこれぞフランス映画!なフランス映画を観た感じ。同じクリストフ・オノレ監督の「ジョルジュ・バタイユ ママン」はあまり面白くなかったけど、この作品は佳かったです。ハリウッドのド派手な娯楽作も大好きですが、こういう人生の悲喜こもごもを誇張も飾りもなく描く映画も好き。あまりにも非ドラマティックで淡々としすぎると、かったるい退屈な映画になってしまいますが、この作品はがっつりBL映画ということで、そこはクリア。男たちの軽やかな恋愛と優しい友情、重く厳しい現実が、知的で軽妙な会話とセンスのいい音楽、ちょっと名作「男と女」を思い出させる流麗な演出、パリの街並みや地方の風景を美しく撮ったカメラワークで描かれていました。

 フランス映画に出てくるパリのアパルトマンが好きです。決して豪華でも最新式でもないけど、外観の古めかしさが趣深く、室内のインテリアとかも高価なものではないけどナチュラルにおしゃれで、マネしたいな~といつも思ってしまいます。窓から見える景色も素敵。ジャックの病室の窓からの景色とか、とてもフォトジェニックでした。パリのレストラン、セーヌ川岸、橋の上etc.どこも絵になる。撮り方も、外国人が撮った観光地パリではなく、そこも生粋のフランス映画です。映画で見るパリって、こんな街で暮らしてみたいと思わせるけど、実際に行った時は騙された!とガッカリしたものです
 90年代といえば、エイズの時代。当時は恐怖の死病として世界を震撼させ、ゲイへの差別偏見が激化、そしてゲイの権利を求める運動が盛んになった時代です。それらは数々の映画やドラマで描かれてきました。「BPM ビート・パー・ミニット」で主人公たちが参加したアクトアップもチラっと出てきますが、この作品ではそういうゲイの苦闘やムーブメントはほとんど描かれていません。あくまでその時代を駆け抜けたゲイたちの、自由と喪失の日々の物語です。

 軽やかで奔放な恋愛には憧れますが、ハッテンバでセックスの相手を漁って不特定多数の相手と所かまわずヤるとか、それじゃあ病気にもなるよな~と呆れ戦慄さえする無謀さ、不用心さです。ジャックとアルチュールも出会った夜にヤルのですが、映画館での初めての出会いと、夜の街や公園を散歩しながら二人が交わす会話が洒脱でした。ちなみに観ていた映画は「ピアノ・レッスン」でした。芸術や哲学、人生を、インテリぶってではなくフツーに日常会話として話すのがカッコいい。でもそれはフランス人だからであって、日本の俳優がやると似合わないし鼻につくだけかも。ジャックとアルチュールはずっと友だち以上恋人未満のままで、その距離感とか駆け引きもフランス人っぽくて好き。二人とも相手にドハマリしないところが心地よかったです。

 日本では考えられないほど、フランス人の自由なライフスタイルに驚かされます。ジャックには10歳ぐらいの息子がいて、その母親(元妻って感じではなかったけど)ともども同性愛を理解、ていうか、特別のことだと思ってなさそうなんですよ。ジャックも元カレに続いてエイズを発症し、余命いくばくもなくなるのですが、そんな中で出会ったアルチュールの若さの輝きは、救いでもあり苦痛でもあったのでしょうか。会いたいけど会わない、というジャックの態度は、大人の悲しい思慮だったのかな。軽やかに、時に愉快に物語は進行するのですが、ジャックがある選択をし実行に移そうとするラストは悲痛でした。何も知らずジャックからの連絡を待つアルチュールの姿も切なかったです。一緒に未来を歩める関係になれたはずなのに。天使の残酷なイタズラのような、二人の出会いと恋でした。
 ジャック役は、「湖の見知らぬ男」でもゲイ役だったピエール・ドゥラドンシャン。地味イケメン。ルックスよりも、大人の優しさと落ち着きが魅力的。なにげないジャケットやシャツでも洗練してるところが、さすがフランス俳優。キムタクの悪趣味な“いい年してファッション”とは大違い。アルチュール役は、「アマンダと僕」での好演も忘れ難いヴァンサン・ラコスト。ファニーフェイスで可愛いんだけど、たまに吉岡秀隆、またはピーウィーハーマンに似て見てて主演二人ともスゴい脱ぎっぷりのよさ、ヤリっぷりのよさで、有名俳優がBLものをやるならあれぐらいは!と思う良い例でした。

 ↑ 地味イケメンのピエール・ドゥラドンシャン、邦画出演経験あり!某人気女優&俳優主演の大コケ映画ですが

 
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イケメンがサンタクロース♡

2021-12-24 | フランス、ベルギー映画
 師走のbeau garçon映画祭②
 「サンタクロース」
 6歳のアントワーヌは、サンタクロースのソリに乗って天国のパパに会いに行きたいと願っていた。クリスマスイヴの夜、アントワーヌの部屋のバルコニーに、サンタの扮装をした泥棒が落ちてくる。アントワーヌは彼をサンタクロースと信じ込んでしまい…
 クリスマスイヴですね!年の瀬になって、恐ろしい事件や悲しいニュースが連続し、心も凍てついてしまいそうになりますが、こんな時のこそ心温まる映画を観たいものです。でも私、ご存じの通り冷血人間なのでどんな映画を観ても、感動の涙なんて一滴もこぼしたことがない。そうなると自己嫌悪に陥るので、感動の涙を売りにしているような映画はあまり観ないようにしてます。あと、子どもと動物の映画も苦手。どうしても感動の押し売り、あざとさを感じてしまって…心温まる映画がほとんどなクリスマス映画も、何だか興ざめしてしまう。家族や恋人たちの愛とかに、あまり興味がないからでしょうか。他人の幸せを見せつけられても…ああ、こんなひねくれた自分がイヤ!そんな荒んだ私の心を癒してくれるのは、感動的な話ではなくイケメン!この映画も聖夜のぬくもりではなく、イケメン目当てで観ました(^^♪大好きなタハール・ラヒムが、相変わらずカッコカワいい!

 こんなイケメンサンタが窓から忍んできて、一夜だけの甘く熱いプレゼント♡なんて妄想、でも実際に入ってきたら、大声出して110番でしょうけどタハール、サンタに扮装した泥棒役なのですが、白髭で顔を隠していてもイケメンなのは一目瞭然。男くさいワイルドな風貌なのですが、童顔なので可愛いんですよね~。この映画の時はもう30後半だったはずですが、まだ若者っぽいです。笑顔の可愛さは映画界屈指!ほんとに人が善さそうで無邪気なんですよ。アントワーヌがまったく警戒せず、彼の言うことを何でも信じ込んでしまうのも理解できる。老若男女問わず篭絡してしまう人たらし笑顔。見た目も言動も粗野で怪しいけど、善人であることは隠せない役がピッタリなタハールです。

 タハールといえば、社会底辺でもがく小悪党、というのがオハコな役。今回も、厳格な格差社会の中で底辺生活から脱却できず、生きるために犯罪者になるしかなかった、みたいな悲しみを背負った役でした。生活や人生は荒んでるけど、心までは腐ってない役をやらせたら、世界一イキイキする俳優かも。アントワーヌに狼狽したりイライラしたりしつつ、彼のペースに乗せられて楽しそうな様子がコミカルで、喜劇もイケてるタハールでした。アントワーヌとは疑似父子みたいな感じになるですが、タハールが若く見えるので年の離れた兄弟にも見えた。

 クリスマス、少年と泥棒といえば「ホームアローン」ですが、ケビンもマコーリー少年も苦手!大人を出し抜こうとする小賢しいガキは好きじゃない!この映画のアントワーヌと演じてたヴィクター・カバル少年は、とにかくピュアで可愛い!純真すぎて大丈夫?な子でしたが、そこが笑えました。これはサンタの弟子になるための修行と信じ込んで、泥棒の言いなりになって空き巣の片棒を担ぐアントワーヌ、夜に屋根から屋根を移動したり、ロープを使って窓から侵入したり、その度胸と身体能力の高さはダタ者じゃない!ヴィクターくんは、可愛いんだけどちょっとK室M子さん似て見えた。M子さんとその亭主のほうが、この映画の二人よりよっぽど凶悪な(税金)泥棒ですよ!

 偽サンタとアントワーヌの泥棒コンビネーションがコミカルに楽しく描かれてるのですが、子どもを騙してあんな危険な目に遭わせて窃盗させて、よく考えたら泥棒どころか悪質な児童虐待です。アントワーヌが夜中にいなくなってることに気づかないママンもどうかしてる!ラストにはほっこり。やっぱあの二人は運命で結ばれた仲だったんですね。アントワーヌが高校生ぐらいになったら、父と子みたいな関係ではなくBLに発展してほしいものです(^^♪
 世界一美しいと言われているパリのクリスマスの風景が、心をときめかせてくれます。エッフェル塔やシャンゼリゼ通りなど、高い屋根の上から見渡せる聖夜のパリの街並みがファンタジックでした。

 ↑ 「モーリタニアン 黒塗りの記録」こっちでは年内公開されなかった😢来年も母国フランスだけでなく、英語圏の映画の公開も控えている国際俳優タハールです
コメント (3)
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男の子が好き

2021-12-22 | フランス、ベルギー映画
 師走のbeau garçon映画祭①
 「J'aime regarder les filles」
 ミッテランが大統領に選ばれた1981年のパリ。18歳のプリモは大学で落第寸前、家賃も滞納し、金に困ると地方の実家に戻って母親から小遣いをもらい、父と兄から小言やイヤミを言われながら冴えない生活を送っていた。そんな中、客のふりをして入り込んだパーティで、ブルジョアの娘ガブリエルと出会い恋に落ちるプリモだったが…
 ずっと観たかったピエール・ニネの旧作を、やっと&ついに(^^♪私が初めて彼を見て恋に落ちた「キリマンジャロの雪」と同年の作品、今から10年前の当時22歳の初主演作。32歳の今でも十分若いけど、当然ながらさらに若い!か、か、可愛い!まさにピチピチ&キラキラしていて、ま、まぶしい!目が潰れる!そして思った。やっぱニネっちには、コメディがいちばんしっくりくると。もちろんシリアスな彼もトレビアンですが、コメディだとまさに水を得た魚のようにイキイキして見えます。顔がもうコメディ顔だもん。すごい美男子だけど、正統派とは違う個性的なファニーフェイスといい、アホなことやってもビンボー人役でも決して下品にならず、どこか優雅で高潔な雰囲気をまとっているところとか、やはりオードリー・ヘプバーンとカブります。女優ではなく男優にオードリーの後継者が現れた感じです。

 パリのどこにでもいるフツーの男の子、ていうか、ダメボーイなニネっちが笑えて愛おしいです。ヘタレのくせに強がりでプライドが高い男子、いるいるこんな子、な共感。金持ち連中にナメられたくなくて、有名カメラマンの息子だとウソをついたり。ヘタレのくせにケンカっ早くて、強そうな相手にかかっていくのはいいけど、えいっと後ろからヘナチョコなキックしかできないとか。ボコボコにされて顔がタヌキみたいになって、日本人ギャルたちから日本語でカワイイーカワイーと騒がれて照れてる様子とか、もう殺人的な可愛さでした。たまにメガネをかけると「イヴ・サンローラン」っぽくなって、インテリキュート❤

 プリモってヘタレでお人好しだけど、女に不慣れな童貞っぽさは全然ない。ヤリチンではないけど、タイトルのJ'aime regarder les filles(女の子が好き、という意味の”80年代にフランスでヒットしたポップスの曲名)の通り。女の子にも優しいけどシャイではなく、臆さず積極的にアプローチするし、キスもエッチも上手。女の子たちもプリモをスルーできない。まあ、あんな優しそうな美男子が自分の近くでウロウロしてたら、気にならないほうが変ですが。パーティーでガブリエルと踊るシーンが好き。ニネっち、ダンスも巧い!ヘタレだけど恋愛に関しては情熱的なところが、さすがフランス男。ガブリエルに一方的にフラれて、納得できず未練がましく彼女に執着し、夜中に窓から彼女の部屋の侵入!ほとんどストーカーです。ガブリエルが乗ったタクシーに追いすがり、彼女の名前を絶叫するシーンも好き。ニネっち、声も美しいんですよ!さすが舞台出身!

 ずっとユニクロかGUみたいな服を着てるニネっちですが、彼が着ると安物に見えない。80年代の庶民ファッションもおしゃれ!ほっそりしてるニネっちですが、脱ぐと筋肉質。きれいな細マッチョです。
 プリモの落ち着きのない生活を見ながら、くだらない!気力と体力の無駄遣い!でもそれが青春!と、呆れつつも羨ましく思いました。みっともないことも恥ずかしいことも輝いていて醜く見えない、それが若さというもの。もう傷ついたり傷つけたりもしない、損得ばかり考えて有益なことしかしなくなる。それが老いなのですね…

 庶民のプリモとブルジョアのガブリエルとの格差とか、プリモの隣人が受ける人種差別とか、フランスの社会問題もサラリと描かれていました。クールにビッチなガブリエル役のルー・ドゥ・ラージュと、プリモに片想いするちょっと不思議ちゃんなデルフィーヌ役のオードリー・バスティアンもチャーミングでした。プリモの隣人役のアラブ系俳優は、「誘惑 セダクション」や「Five」でもニネっちと共演したましたね。同じ事務所か何かなのでしょうか。

 ↑この映画のプロモーション当時のニネっち。か、可愛い

 ↑イケてるニネっち画像、集めてみました~(^^♪2022年陽春、彼の新作「ブラックボックス 音声分析捜査」が日本公開!久々にニネっちと大きな銀幕で会えます!邦題が日本の2時間ドラマみたいなのがちょっと…
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トムハに寄生したい♡

2021-12-19 | 北米映画 15~21
 「ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ」
 地球外生命体ヴェノムに寄生されたエディは、食人衝動が抑えられないヴェノムとの共同生活に四苦八苦していた。そんな中、収監中の連続殺人鬼キャサディから指名を受け、彼の独占インタビューをする機会を得たエディだったが…
 「ヴェノム」待望の続編!でも、前回どんな話だったかキレイさっぱり忘れてしまってた💦トム・ハーディとリズ・アーメッドが(今となると豪華な競演!)カッコよかったぐらいしか覚えてない💦ヴェノムがどこから来てどんな経緯でエディに寄生するようになったかとか、殺人鬼のキャサディがエディとどういう関わりがあったのかとか、忘れ果ててたのでちょっとついていけなくなることもありました。

 観る前に前作のおさらいをしておくべきだった、けど、まあぶっちゃけ内容はそんなに重要じゃないんですよね~。アメコミ映画なので、そんなことは気にしなくていいんです!アメコミ映画に中途半端な人間ドラマとか要らんし!アメコミ映画が大好きな理由のひとつは、難しいことはいっさいなくてただもう面白いだけ、という点。アメコミ映画の中でも、ヴェノムは屈指の内容のなさ。この続編、第1作よりもさらに内容がなくて、ただもうヴェノムとカーネイジがプロレスみたいに大乱闘してるだけ。ラストの教会でのバトルが最大かつ唯一の見どころとなっています。迫力だけでなく、手間と金がかかってそうで細部まで凝っているVEXも、相変わらず驚異です。これだけはハリウッド映画でしか味わえないマジカルさ。

 設定も展開も、愉快痛快に強引で雑です。アメコミ映画はだいたいがコメディ調なのですが、ヴェノムはとりわけお笑い濃度が高いです。ヴェノムとエディのやりとりが豪快な漫才みたいで笑えます。前回よりもさらにおバカ化、そしてかなり人間っぽくもなってたヴェノム。大暴れしつつも、人間界のルールを守ろうと努力もする素直さや、エディとケンカしてスネたり寂しがったり、エディ大好きなところが可愛かったです。まぎれこんだ仮装パーティ中のクラブで、コスプレイヤーと思われて人気者になりご機嫌なヴェノムも微笑ましかったです。

 エディ役のトム・ハーディ、相変わらずゴツカワ(ごつくて可愛い)!さすがにちょっと老けたかな?と、アップになると思ってしまいましたが、可愛いおじさん化してます。イカレた役が多いトムハですが、このシリーズではオロオロジタバタしてる受け身な役なのが新鮮。見た目とギャップのあるちょっとヘタレな言動も可愛いくて。こぎたない一歩手前なラフな服装にも好感。車ではなくオートバイかっとばすのが、ワイルドでカッコよかった。すごいガニ股でののしのし歩きも、男っぽくて素敵。トムハは今回、脚本にも携わっていて、おバカさが荒っぽくなってたのはトムハのアイデアなのかな、とも。

 カーネイジに変身する死刑囚キャサディ役は、怪優ウディ・ハレルソン。ほとんど忘れてた前作ですが、ウディがちょっと出てたのは覚えてました。気持ち悪いけどどこか憎めない陽気なサイコパスを、楽しそうに演じてました。キャサディの恋人で超音波?攻撃をするフランシス役は、007のマネーペニー役でおなじみのナオミ・ハリス。フランシスが謎すぎるキャラ。彼女、何者?人間じゃない?あの超音波はいったい?高音が苦手なヴェノムとカーネイジに、うるせえ!とウザがられるのが笑えた。

 ラストに、あの人物が怪物化する兆しを見せたけど、次回の敵キャラになるのかな?さらに、もうすぐ新作が日本でも公開される某アメコミヒーローがチラっと登場。いずれヴェノムと共闘するのかな?アメコミ映画、マイティ・ソーやガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの最新作もたのしみ(^^♪

 ↑ 嫁や美人女優よりも、犬と一緒の時のほうが嬉しそうで幸せそうなトムハが可愛い
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カウボーイの秘密!

2021-12-14 | オセアニア、アフリカ、中東、その他のアジア映画
 「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
 1920年代のモンタナ州。牧場を弟のジョージと経営するフィルは、ジョージと未亡人のローズとの結婚に動揺し、ローズとその連れ子ピーターにつらく当たるが…
 「ピアノ・レッスン」のジェーン・カンピオン監督久々の新作は、Netflix配信の西部劇。西部劇といってもカンピオン監督なので、もちろんドンパチ活劇ではありません。飛び交うのは銃弾ではなく、濃密で激しい愛と憎しみ!厳しくも美しい自然を背景に、複雑な人間ドラマが描かれていました。まず、主人公フィルとその弟ジョージの兄弟関係がどこか奇矯。その異様さで冒頭から掴みはOK!勇猛で聡明、牧場に君臨する王のようなカリスマな兄フィルと、朴訥で心優しく愚鈍なところもある弟ジョージ、正反対な人間性ながら兄弟愛は強く深く、互いに依存し合ってるような関係。うるわしい兄弟関係とは思えず、その息苦しさと薄気味悪さは不吉で不幸な予感を抱かせます。強い兄ちゃんのほうが弱い弟よりも依存度が高く、束縛してくるフィルをジョージは明らかに重いと思っていて、その不協和音が砂埃のように観る者の心にもたまります。

 それでも保っていた平和な均衡が、ジョージの結婚によって崩れてしまい、そこから地獄がスタート。愛する弟を、貧しく不美人なコブつきの未亡人に盗られた!ショックと屈辱、そして怒りから兄ちゃん大魔人と化し、恐怖の弟嫁いびり!とはいえ、おしんや渡鬼みたいにわかりやすく壮絶ないびりではなく、嫌悪と軽蔑に満ちた氷のように冷たいいびりなんですよ。ほぼガン無視、たまに底意地の悪い言葉を投げつけたり、人前で恥をかかせたり。玉の輿どころか針のむしろ。あれじゃあローズじゃなくても心が壊れます。男の中の男なはずのフィルなのに、憎悪と嫉妬の質が女性的。そう、それこそこの映画の核の部分なのです。男らしさという鎧の下に隠された本当の自分…ああ、腐心がザワつく…

 フィルの懊悩の炎にガソリンをぶっかけるのが、ローズの連れ子であるピーター。単細胞な荒れくれ野郎どもの世界に舞い降りた、見た目もキャラも妖精?宇宙人?な男の子。ひょろひょろした体、色白の肌、女の子のような顔と優しい物腰は、ものすごい異彩を放って面妖でもある。牧場の男たちからオカマ扱いされいじめられるピーターですが、オタオタオロオロしつつも怯えることなく動揺しないメンタルの強さ。ママを慰めるために可愛いウサギを捕まえたのかと思いきや、え!?なウサギの末路に衝撃。こいつタダもんじゃないなと、このあたりから観る者はピーターを警戒するようになります。

 ピーターもいじめるフィルですが、ローズへのいじめと違い、フィルのピーターを追う目には明らかに妖しい想いが宿っています。フィルの秘密を偶然ピーターが知ってしまったことがきっかけとなり、二人は親しくなっていくのですが。だんだんとピーターのほうが優位に立つようになる関係の変化が、スリリングな心理戦のようでした。ピーターによって、今まで固く封印していた弱さや苦しみが解かれ、戸惑いながらも開放感を得られるのが心地よさそうなフィル、愛し愛されるという希望もピーターに対して抱き始める。それを優しく静かに受けとめるピーター。二人が距離を縮め親しくなっていく姿は微笑ましく、そのまま幸せなBLに発展…は、もちろんしません。

 ラスト近く、真夜中の馬小屋で二人きり。ピーターの誘うような妖しさに魅入られたように引き込まれるフィルは、まさにヘビを前にしたカエルのようでした。やがて必然のように訪れる死、その衝撃の真実!怖っ!何という綿密で冷酷な抹殺でしょう。死に至るまでの伏線の回収や小道具の使い方など、サスペンスとしても脚本は優秀でした。それにしても。フィルがローズに対してあそこまで狭隘じゃなかったら。フィルがローズも受け入れてくれるよう、ピーターが忍耐強く努力してくれたら。タラレバせずにいられませんが、そんな結局みんないい人な雨降って地固まる的な話ではなく、戦慄のサイコサスペンスとして静かに幸せに幕を下ろしたのが、この映画の非凡さでしょうか。
 フィル役のベネディクト・カンバーバッチが、これまでで最高の演技とインパクト!

 頭脳明晰、そして性格が悪い、けど魅力的という役は、シャーロックをはじめバッチさんのオハコ。フィル役はその集大成ともいえるような役でした。常にエラソーな態度、ローズ母子をイビるイヤ~な奴なんだけど、不思議と不愉快じゃないんですよね~。ちょっとシニカルな笑いを誘うところは、イケズなシャーロックとかぶります。豪快ぶったマッチョ言動も、そこはかとなく滑稽だったり。鬼のような厳しい険しい表情、たまに狂気の深淵をのぞきこんでるような空虚な目つきがホラーですが、誰といても寂しそうな孤独の影が、傷つきやすい少年のようで胸キュン。特に印象的だったのは、ロープを作ってやるとピーターに申し出るシーン。まるで勇気を出して好きな子に告白してるみたいで可愛かった!馬を乗りこなす姿もカッコよかった。イギリス人なのにアメリカのカウボーイに自然になりきってました。とにかく荒々しくも超デリケートなバッチさんの、驚愕の全裸シーンなどまさに燃える役者魂の演技。こういう演技を堪能してしまうと、自分のことを“役者”と称している日本の俳優が恥ずかしくなります。来たるオスカーの候補は確実、受賞もありえる、いや、受賞すべき!

 バッチさんも強烈でしたが、ピーター役のコディ・スミット・マクフィーもディープインパクト!見た目だけでもう出オチに近い。美青年とかイケメンとかとはちょっと違う、かなり不思議で不気味でもある顔。たまに昔の松じゅん+サカナくん、みたいに見えたのは私だけ?ナヨナヨしてるけど強靭な精神力、そして冷酷さを秘めた魔少年、優しいサイコパス役にぴったりな妖しい風貌です。彼の演技もオスカーに値します。ローズ役のキルスティン・ダンストの好演も讃えたい。初代スパイダーマンのMJ役とか、じゃがいもみたいな顔して美人扱い、美人振る舞いに納得できず、長らく苦手な女優だったのですが、すっかりおばさんとなり心が病んでアル中になってしまうみじめな女を演じた彼女は、いい女優になったな~と心から思わせてくれました。ジョージ役のジェシー・プレモンスとは、実生活でも夫婦とか。派手でチャラいイケメン俳優ではなく、実直で堅実そうなブサイク俳優を選んだところにも好感。
 牧場の生活や仕事も興味深く、荒涼とした西部の自然も美しく撮られていました。「ピアノ・レッスン」もですが、ジェーン・カンピオン監督が描く男女の業は、残酷で醜悪で気持ち悪いんだけど、甘っちょろくて感傷的な映画よりも私は好きです。

 ↑まずはゴールデングローブ賞ノミネート達成!👏オスカーもウィル・スミスとの一騎打ちでしょうか。「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」のドクター・ストレンジも楽しみ(^^♪バッチさんにはコテコテのコメディに出てほしい!

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汝は二十歳で死ぬ

2021-12-10 | オセアニア、アフリカ、中東、その他のアジア映画
 「You Will Die at Twenty」
 ナイル川のほとりにあるスーダンの小さな村。ムザミルは生まれてすぐに、イスラム教の聖者から20歳で死ぬと予言される。敬虔な母同様、それを信じて育ったムザミルは20歳になる直前に、村はずれに住む老人スレイマンと知り合い親しくなる。世界を放浪したスレイマンとの交流は、ムザミルに広い世界への憧れを抱かせるが…
 珍しいスーダン映画。スーダンといえば、アフリカにある内紛がおさまらない物騒な国、というイメージ。自衛隊派遣が物議を呼んだPKOとか思い出されます。映画どころじゃなさそうなスーダンで、こんな美しい佳作が製作されるとは。失礼ながら意外でした。

 アフリカの国といえば、飢餓とか貧困、伝染病に民族紛争、不衛生で危険、ぜったい住みたくない生き地獄、なんて先入観と偏見を抱いてしまいますが、この映画の舞台となった村は、そんな苦患には満ちておらず、村人たちは素朴なシンプルライフを静かに平和に営んでいて、スマホもネットもないけどみんな特に不自由もなく、おかしな知識や情報に惑わされることもなく清らかに生きている。私たちが心身ともに、便利だけど不要で有毒なものに踊らされて歪められてるか、つくづく思い知らされました。東南アジアの後進国と違い湿気がないからか、ハエがぶんぶん飛んでたりとか暑さでぐったりしてたりとか全然なくて、光も青空も空気も乾いて澄んでるところも印象的でした。まばゆいまでに明るいけど、のんきでユルい陽気さはなく、みんなどこかストイックな感じなのは、信仰が生活の、人生の中心にあるからでしょうか。

 現代社会に毒されてはないけど、村人たちは古くからの因習や厚い信仰心に囚われ縛られていて、その閉鎖的な狭い世界はかなり窮屈にも思えました。そんな世界のしがらみと、未知の広い世界への憧憬との狭間で揺れるムザミルの20歳の決断と行動は、アフリカという特殊な国だけの特異なものではなく、どこの国の若者にも重なる青春の痛みと希望に衝き動かれてのもので、静かだけど大きな感動をもたらしてくれました。ナイル川や砂漠など静謐な悠久の風景や、神事などが醸すスピリチュアルな雰囲気、エスニックな衣装と家屋なども、アフリカの神秘や風趣を伝えてくれました。ムザミルのガールフレンドの髪型とか部屋とか、アフリカらしからぬモダンさで面白かったです。スレイマンの家のインテリアとか置物とか、同じものがほしい!と思いました。

 聡明で生真面目、どこか虚無的で内省的なムザミル、20歳で死ぬ運命(と周囲も自分も信じている)なのに、自暴自棄にもならず親孝行な優等生で、ほんといい子!私がムザミルなら、絶望的になってグレて身を持ち崩すでしょうし。ムザミル役の俳優がかなりイケメンで、美しい肉体のセクシーな男の子だったのもポイント高し。さらにこの映画、ほのかにBLのかほりがするんですよ。同性愛者は誰一人出てこないのですが、ムザミルひょっとして?と思わせたりする言動や、男たちとの絡みが多いんです。ガールフレンドから性的な誘いをされると嫌悪に近い表情で拒んだり。若くて男前な神官に裸になれと命じられ、美しい上半身を愛撫のように撫でられたり。お父さんやスレイマンとのスキンシップも、親子や友人以上のものが感じられた。

 子どもの時ムザミルをいじめていた幼馴染もイケメン!当時を悔いて謝る彼にスゲなくするムザミル、あのシーン何か萌えたわ。あの後二人がBLになるのかと期待してしまいました。映画のポスターも、ショタとイケメン青年のBL映画っぽいですし。この映画の監督、ゲイなのかな?と思わせる感性が、そこかしこに散りばめられていました。
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天才作家の罠!

2021-12-07 | フランス、ベルギー映画
 「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」
 謎の小説家オスカル・ブラックの世界的ベストセラー小説「デュダリス」シリーズ最新刊の翻訳のため、9人の翻訳家がフランスの田舎にある豪邸に集められる。出版社の社長アングストロームは、小説の流出を防ぐために地下に9人を軟禁状態にし翻訳作業を行わせるが、彼とオスカル・ブラック以外には門外不出の原稿がネットに流出、その直後に脅迫メールが届いて…
 世界的ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズの最新刊の翻訳が、一か所に各国の翻訳家を集めて厳戒態勢のもとで行われた、という実話にインスパイアされて創作された映画だとか。いくら何でもあんな非道でカオスことが行われたはずはなく、かなり盛ったフィクションだとは思いますが、甚大な手間とお金をかけて翻訳作業がなされたことは想像にかたくありません。それを補って余りある巨万の富を生むのが、世界的ベストセラーなのですね。昔と比べて本が売れなくなったと言われていますが、今も当たればデカいビックビジネスではあるようです。

 軟禁状態とはいえ、高級ホテルのようないたれりつくせりの環境で仕事に励んでた翻訳者たちが、脅迫事件を機に心身とも追い詰められていく様子がサスペンスフルに描かれているのですが、さすがにあんな人権蹂躙に等しい扱いはありえないとしても、小説や映画がファンに届くまでにはいろんな汚くて非情なことが横行しているのでしょうね。それにしても。アングストローム社長のベストセラー出版への執念、妄執が凄まじくて、ほとんどお笑いの域に入ってました。手段選ばず、殺人さえ辞さないクレイジーさが笑えた。翻訳者や秘書など家畜同然なパワハラ&モラハラ、狂気的な支配も非道すぎて笑ってしまった。そんなイカレ社長を演じてるのが、フランスのダンディ俳優ランベール・ウィルソン。

 まさに理想の熟年であるムッシュウ・ウィルソン。凶悪で狂悪な役なのですが、そんな風には全然見えないエレガントさ。人もなげな傲慢で冷酷な言動も、スマートで気高いんです。食事をしてる姿なんか、ほとんど貴族。俗悪の極みな役なのに、何でしょうあの高貴さは。ハリウッドスターにはない魅力ですね。フォーマル&カジュアル、どっちのファッションも趣味が高く高級感ハンパないです。フランス語と英語を自在に操る語学力も相変わらずカッコいい。この映画、ランベールおじさま以外の出演者も、演技や個性だけでなく語学に堪能なところがスゴいです。各国から集められた俳優たちが、みんな会話は基本フランス語で、母国語と英語も駆使して熱演してます。

 イタリアからはリッカルド・スカマルチョ、スペインからエドゥワルド・ノリエガ、元イケメン俳優二人もすっかりおじさんになりましたが、味のある風貌と演技の熟年俳優に。もっとも目立っていたのは、9人中最年少、イギリスからのアレックス・ロウザー。こないだ主演作の佳作「Departure」を観たばかりだったので、その成長ぶりに驚喜。並みいるキャリアある国際俳優たちに気圧されることなく、彼らを牽引するリーダーのような存在となって、ほとんど主役な活躍ぶりでした。彼、フランス語が得意なのかな?「Departure」同様、流暢なフランス語での演技でした。

 成長したとはいえ、顔に無精ひげが生えてるぐらいの変化で、まだまだ少年っぽいロウザーくん。細くて小柄なので、他の出演者に囲まれてると子どもみたいだった。脱力系のイマドキな若者と見せかけて実は…な役をミステリアスかつ可愛く演じてます。賢そうだけど、スカした生意気な若造って感じではなく、憎めない愛嬌がありつつ一歩引いた落ち着きがあるところが好きです。ファッションもロンドンっ子らしくておしゃれでした。意外な彼の正体にも驚かされます。ロシア語翻訳者役のオルガ・キュリレンコとちょっといい感じな関係になるのですが、どう見ても熟女と子どもでほとんど犯罪!違和感ありまくりでした。

 謎めいたオスカル・ブラックの正体、そして真犯人と犯行の動機もなかなか意外で、少々破天荒ながらもミスリードやドンデン返しの仕方もトリッキーで、脚本もよくできていたと思います。犯人設定がアガサ・クリスティの某有名作と同じで、劇中でその作品名が言及されていたのも興味深かったです。犯人の犯行計画実行が、まるでスパイのミッションみたいで面白かったです。地下の軟禁仕事場が贅沢で快適そうで、私が翻訳家なら文句言わずに仕事します。それにしても翻訳者たち。社長は翻訳家の分際で!みたいな扱いしたり、彼ら自身も作家になりたかったのにただの翻訳家にしかなれなかった、みたいなコンプレックスを抱いてたりしてたけど、私なんかからしたら翻訳家ってスゴい人たちです。

 ↑ アレックス・ロウザーくん、イケメンでも美男子でもないけど、優しそうで賢そうで可愛い魅男子です。イギリスの男の子っぽいファッションも好き。TVドラマ版「ハワーズ・エンド」や、豪華キャストの「フレンチ・ディスパッチ」などにも出演してます
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