25日から始まった東京都議会選挙の前に健康上の理由から病院に逃げ込み、スルーした小池東京都知事が週が明けた28日になっても依然として医者の判断として、まだ入院、雲隠れしたまま都政を多羅尾副知事に預けたままとなっている。第一線の政治家が健康上の理由から姿を消すということは政治的生命を失くすことと同義で、今後の小池知事の政治的生命は無くなったことを意味する。今回の仕儀はこれまで数々の場面で、世話になった人を次から次へと切ってすててきた小池氏の当然の仕打ちといえなくもないが、これほどまで周りの人々の期待を全面的に裏切ったことはなかったことからみて再起不能としか見られないことである。
小池氏は都知事に就任した時から1日3時間しか寝ないことを広言し、馬車馬のように精力的に政務をこなしてきた。だから、今回の雲隠れも「疲れが出たのだ」と見る向きもあるが、今回は自らの政治的立場を築いてきた都民ファーストの会が都議会第一党の場からずり落ちて、その他大勢の少数党になるという局面で、それを支えるべき顧問としてあってはならないのに病気を理由に「我関せず」を決め込んだ。都民ファーストの会の荒木千陽代表はいまだにポスターでは小池都知事を全面に出して選挙運動を展開しているものの、その小池都知事が公示日の24日には第一声を放つどころか、病院のベッドの上でうなっているとあっては、もはや第一党の座を保つどころではなくなっている。
都民ファーストの会はこれまで小池都知事の下で、都政を切り回してきたのが情勢が思わしくなってきたと見るやあっさりと手の平をかわしたかのように切り捨てられてしまった。さぞや過去4年間、ずっと小池都知事を支えてきたのがこの始末では悔やんでも悔やみきれない心境であろう。小池氏の頭の中には来月末に開幕する東京オリ・パラリンピックの大会主催者の首長として華々しく振舞いたい、と思っているのに都民ファーストの会が東京オリンピックの開催には延期、もしくは開催しても無観客で行うべきとしていることがこうした事態を招いている、との判断があるかもしれないが、東京都議選のなかで大きな争点となっており、都議会選挙公示前までにはこの溝は埋まらなかった。それにしても都民ファーストの会が小池都知事と袂を分かったことは大きな岐路であった。小池氏はかつてテレビ東京のキャスターを務めていた時からともに仕事をしてきた人を平気で足蹴にしてのし上ってきた人で、政界でも同じように周りの人を右へ左へと蹴散らし、突き進んできたことで有名で、今回もその伝を実践したに過ぎない、といえなくもない。
ただ、今回は当の小池氏が病院に逃げ込んだ点がこれまでとは違う。とりあえず難局の都議選が終わるまで小池氏は姿を現さないであろう。そして、病院を出てきた小池氏が果たしてどんな第一声を放つかか、注目である。小池氏は東京都知事を辞めて、国政へ復帰する、それを支援するのは二階自民党幹事長である、そして小池氏が目論んでいるのは首相の座だと観測する向きもあるようだが、それは一部の政界スズメの囁きであって、実現性は極めて低いと思われる。今回の雲隠れの経緯はいままでにないもので、小池氏の政治生命を絶ちかねないものといえ、今後はまともなマスコミが相手にしない致命的なものだった、と思われる。
追記(7月5日)都議選は投開票日前日の3日の夕方に小池都知事が急遽、苦戦が伝えられ都民ファーストの荒木千陽代表ら10数人の立候補者の陣営を訪れる作戦に出たことが都民ファーストの会への票を呼び込んだかのように事前に予想されていた20人割れを防いで、自民党の33人に次ぐ31人の当選を果たし、かろうじて面目を保つこととなった。立憲民主、共産両党の議席伸長もあって、自公の合計獲得議席数は目論んだ過半の64議席には遠い56議席に留まった。投票率が過去最低に近い42.4%となったこと加え、コロナ対策、東京オリンピック・パラリンピックの強行開催で自民党への支持が大きく下がったことによるものと見るべきだろう。小池知事はあまりにも理不尽な行動から都民ファーストの会の主要陣営への訪問に踏み切ったのだが、これで都政運営は難しくなったうえ、自民党との距離も遠くなったわけで、今後の自らの立ち位置も微妙となったのは否定できず、小池氏の政治生命が終局に近づいたのは間違いないところだろう。