28日の全国のコロナウイルス感染者は2685人と過去最高を記録した。うち東京都は土曜日にも拘わらず561人と前日の過去最高の570人に並ぶ感染者数で、もはや感染爆発寸前といっていい状態になっている。米ワシントン大の予想では日本の感染者数はすぐに15倍に増加する、との見通しも出ている。29日の東京都の新規感染者数は日曜日としては過去最高の418人にのぼった。なのに菅首相は相変わらず感染防止対策に本格的に取り組もうとせず、記者からの質問に答えようともせずに「ゴーツートラベルで感染が広がっているエビデンスはない」と言い切っている。こんな見解を事実と受け止める人がいるはずがないのに、菅首相は一体どこを向いて政務に取り組んでいるのか、わからない。
テレビに映る菅首相の表情は首相官邸のぶら下がり会見ですら、手元にあるメモに視線を移していかにも秘書が予め用意した原稿を読んでいるのがはっきりとわかる。ぶら下がり会見なので、記者から当面する話題について聞かれているのにそうした姿勢は崩さない。自らの頭の中で答えを考えながら話しているのではなく、手元の紙、もしくはiPadにある回答メモをなぞっているのである。それと、経済諮問会議など主要閣僚を交えた広い会議室での会議で首相見解を述べる際に時々、目線をテレビカメラ、もしくはあらぬ方向に向いたような眼つきで見回すことが見受けられる。しかもその目線はだれか不審者がいるのではないか、と探るか、自ら後ろ暗いことがあるのを隠すような異様な眼つきでもある。ネットで菅首相のこうした眼つきを公安顔とか、特高顔と表現していたが、およそ一国のトップがするような眼つきではない。
菅首相は安倍首相のもとで永く官房長官を務めてきたので、こうした目付きが身についてしまったのであろうが、首相の座にある人がこんな眼つきをするのは決して許されることではない。菅首相は横浜市議会議員の時にはこんな眼つきをして、横浜市役所の役人を牛耳ってきて、いまでも神奈川県下では影響力を発揮しているようだが、首相になったいまもそのやり方を続けているのでは付いてくる人も離れていってそいまうことだろう。トップに立つ人が人を見下すような眼つきをしているのは見たことがない。もっと鷹揚に構えて、閣僚が行うことや官僚の業務を温かい目で見ていってほしいものだ。
菅首相は就任以来、記者会見を一切開いていない。日本学術会議の会員任命拒否問題で記者会見らしいものを開いたが、あれは一部のマスコミだけで新聞テレビ全社の記者を呼んだものではなかった。記者からコロナウイルス感染防止やら、日本学術会議の会員任命拒否、それに再燃した桜を見る会などについて際どい質問をされるのを避けているのが本音のようだが、記者会見に公安顔で臨んだりしたら、一挙に支持率が落ちるのは目に見えている。
加えて菅首相がゴーツートラベル推進の構えを降ろさないのは自らもそうだが僚友の二階俊博幹事長がトラベル業界にしっかりと根を下ろしていることがあるのだろう。二階幹事長がいち早く菅首相を推してくれたことが今日の首相の座を築いてくれた、と恩義を感じているから、ゴーツートラベルをやめるわけにはいかない、と固く思っているのだろう。こんなことを続けていたら、日本は破滅への道をたどるのは目に見えているのに一体どこまで突き進むのだろうか。