17日、第201回通常国会が閉幕となったが、いつもならその日の午後6時から首相官邸で行われる首相の会見が行われなかった。この2月以来、コロナウイルス下で緊急事態宣言で度々安倍首相の会見が行われ、その都度官僚の書いた原稿をプロンプターで棒読みし、まるで人間味のない会見を繰り返し行ってきて、国民から散々不評を買ってきたのを避けたのか、あるいは河井前法相の逮捕など触れたくない話題の追及を躱したのか理由はわからないが、野党からの国会の延長を求めるのを振り切って逃げを図ったのは間違いないところだろう。”逃げる”安倍の残された道はもう退陣しかなさそうだ。
安倍首相にとって、いま第2次補正予算で10兆円もの予備費を計上し、持続化給付金を電通などに丸投げし、黒川前東京高検検事長への退職金支給など野党から突っ込まれる案件が山積している状況にあって、国会を延長するなどとんでもないことで、かろうじて国会を閉会した後は1週間に1回は委員会などの場でコロナウイルス収束など懸案の事項を与野党間で協議することで、なんとか野党の了解は得られた。ただ、黒川前東京高検検事長の退任で目論んでいた河井夫妻への検察の追及の手を躱すことは叶わず、今日にも公職選挙法違反(買収)容疑で逮捕の運びとなっている。
さらには自らの政治生命をかけて取り組むと明言した北朝鮮への拉致問題はここへきて、拉致問題の象徴的存在であった横田めぐみさんの父親の横田滋氏が永年の夢であった愛娘のめぐみちゃんの生還を果たすことなく亡くなったことは改めて安倍政権が拉致問題の解決に向けて何もしてこなかったことを国民のもとにさらけだした。拉致問題の解決に米トランプ大統領を担ぎ出したりしていかにも努力しているようにみせてはいつものの、なんら前進していないことはもはや明らかな事実である。また、安倍首相はお得意と自慢する外交面でも、北方領土返還についてロシアのプーチン大統領と25回も会談を行い、その都度、明日にでも北方領土が返還されるような期待を抱かせながら、一向にその匂いすら漂ってこない。
かように国内、海外ともいまや八方ふさがりの状況にある安倍首相は満身創痍である。そんななか、通常国会を終えるにあたって、今国会では「かくかくの法案を成立させました」と胸を張って報告できる状況にないことはだれの目にも明らかである。いままで国会や首相会見にそれほど関心を持っていたわけだないので、はっきりと断言できないが、安倍首相以前には国会の閉会日に総理大臣が記者会見を開くことなどあまり聞いたことがなかった。それが、安倍首相になってから、毎回国会が閉会する度にその日の午後6時から記者会見を開催し、安倍首相は「今国会でこれこれの法案を通し、政府はかくかくなることを実現しました」と自慢げに語ってきた。果たしてこんなことが国民にとって必要なことなのか、とずっと感じてきた。
それが今回やっと平常に戻ることとなったら、喜ばしいことである。もっとも安倍首相本人も今回だけは記者からの鋭い質問を浴びたくないだろうし、官邸の取り巻き官僚もここはやめた方がいい、とでも判断したのだろう。出たがりのいいかっこしたがりやの安倍首相にとってはさぞかし断腸の思いであったことだろう。であるならば、恒例となっていた国会閉会の記者会見は今後は取りやめる、と一言でも伝えるべきではなかろうか。そんな当たり前のことにだれも思いつかないとしたら、首相官邸は崩壊の一歩手前であるのだろう。
追記 通常国会閉会の翌18日になって、午後6時から安倍首相は記者会見を開いた。この日は河井前法相夫妻に対し、検察は公職選挙法違反(買収)容疑で逮捕した。国会閉会で直ちに追及となったわけだが、そんなことは予想されたことだった。国会閉会の日を見送って翌日に記者会見をずらしたのは記者から当然」任命責任などを追及されると読んでのことだったのだろう。安部首相は会見の冒頭、河井夫妻の逮捕に触れ、大臣任命者としての責任と痛感しているとして、陳謝した。その後、会見の趣旨である19日からのコロナウイルス感染拡大を防ぐためのに求めてきた移動自粛の全面解除を表明し、あわせて国会閉会についても触れ、問題の北朝鮮拉致問題については冒頭では触れず、記者からの質問に対して「解決に全力を尽くす」と述べただけで、なんとも焦点の定まらぬ会見と相成った。会見では相変わらずプロンプターを見ての感情のこもらないお決まりの内容で、開く意味があったのか、極めて疑わしいものであった。