鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

「北海道で発掘された国宝の土偶は偽物である」と聞いて驚いた

2010-01-18 | Weblog
 先日の朝、野焼き土器つくりでお世話になったKさんから電話がかかってきて、「是非お話したい」ということでで、1時間くらいしてお出でになった。お一人か、と思ったら、お連れさんがいて、「北海道の兄です」と紹介された。上がっていただいて、お話を伺おうとしたら、手元からお手製の50ページくらいの書き物を取り出した。表紙に先日、東京・上野の東京国立博物館で開催されていた「国宝土偶展」で見た土偶の写真が載っている。「これ、見ました。面白かったですね」と言って、買ってきたカタログを取り出したが、お兄さんは固い表情を崩さず、話し出したのにびっくりした。
 K兄さんは北海道南茅部町著保内野で1975年に発掘された土偶が国宝に指定されているが、これが真っ赤な偽物である、というのだ。「土偶展」は昨秋に大英博物館で展示されたものを里帰りして展示したもので、3つの国宝の土偶を中心に土偶や縄文式土器類を並べてあり、土偶に国宝として指定されているののがあるのだ、と初めて知った。その貴重な国宝に指定されている3つの土偶のうち、北海道で発掘されたものが偽物である、というのだから驚かざるを得ない。そういえば、10年くらい前に土器の発掘の際に藤村真一氏が捏造をしていたとして大きな記事が掲載されたことがあったし、作家の松本清張が邪馬台国論争に加わり、注目を集めたこともあったことを思い出した。
 K兄さんは北海道で長らく小中学校の教師をしていて、かねて考古学ファンとして北海道から出土された土偶について関心を持ってきた。問題の土偶は農家の主婦が畑仕事をしているなかで偶然に発見したものであるが、当初はそんなに貴重なものとは思われていなかった。こうした年代物の発掘にはそれなりの専門家なり、鑑定士の同席がないと認められないことになっており、「不時発見」は参考程度にしか扱われないのが通例だった。
 K兄さんによると、発掘された周辺からは他に大したものが出てきていないし、発掘調査も大慌てで杜撰なものであったし、土偶そのもののデザインも縄文時代のものではない菱形模様があるし、高さも41.5センチと縄文時代のものとしては異常に高いことなど不審な点は多々ある、という。発掘当初は注目されていなかったのにある日、新潟県立博物館長で考古学界の重鎮の小林達雄氏のお墨付きを得たことから、とんとん拍子に評価が高まり、遂には07年3月には国宝に指定され、英国に凱旋展示されるまでになってしまった。丁度、芸能事務所がアイドルタレントを発掘し、売り出してトップアイドルになるかのような感じである。
 北海道と東北を縄文文化圏として世界遺産に登録してもらおう、との動きがあり、件の土偶は格好の支援材料となったようで、関係者の意見が一致したようでもある。もともと正義感の強いK兄さんはこうしたことが許せないようで、偽作を証拠立てる告発文書を作成し、こうして関係先に配布している、というが、いまひとつ相手が乗ってこない、と嘆く。
 新聞社にも配布したが、新聞社からは「だれがか、どこかを訴えれば記事になる」と言われた、といって頭を抱えていた。確かにこの土偶が国宝指定されたことで被害を被ったわけでもないし、名誉を棄損されたわけでもない。裁判の起こしようがない。
 国宝に指定されたからといって、それで実際にお金が支給されるわけではない。保存したり、展示するのに補助金が出るようなことはあっても、それで私腹を肥やすような人がいるわけでもなく、世間的には注目されるようなものでもない。
 純粋に考古学会に申し立てるしかなさそうだが、考古学会に知己のないK兄さんでは勝ち目がないことだろう。正義感から腕を振り上げたものの、打ちおろし先のないK兄さんの心の落ち着きどころを探ったが見つからなかった。ただ、こうした話をするなかでもK兄さんが淡々としていたのが救いだった。
 
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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2020-04-03 17:46:07
記事を見て驚きましたが、中空土偶は偽物だったですか?ぜひ詳細を聞きたいです。

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