東京都のコロナウイルス感染者は24日の日曜日に986人と12日ぶりに1000人を下回ったのに続き、週明けの月曜日の25日に618人と4週間ぶりに低い数字となり一瞬、コロナ禍は一服か、と思わせたが、26日には1026人、今日27日にも973人再びほぼ1000人台に乗せ、しかも27日には重症者は前日より11人増えて159人となった。しかも26日のPCR検査数が5881件で、これでいくと陽性率は17.4%もの高率となっている。意図的にPCR検査を抑えているのか、相変わらず都内の保健所が目詰まりを起こしているのか、わからないが、意図的にこう図っているとしか思えない。
問題はいまだに日本全国のPCR検査数が極めて低水準の抑えられているという点である。一説にはいままでの我が国のPCR検査数は586万件で、人口の4.6%にしか達していない、という。26日での全国の感染者数は37万2488人なので、陽性(感染)率は6.35%にもなる。中国や台湾、韓国ではPCR検査を徹底して実施しておりそれが、感染拡大を防いできたのはよく知られている事実」である。なのに我が国ではいまだにPCR検査は拡充されていないまま放置されている。昨日の衆院予算委員会で与党議員の質問に対し、田村憲久厚労相は「いまの我が国万件のPCR検査能力は1日14万件で、昨年4月の1万件より増えている」と語っていたが、確か昨年4月時点で、当時の安倍首相は「PCR検査能力を1日40万件に増やす」と言い切っていたのは嘘だった、ということになる。米国では1日84万件、英国でも1日21万件のPCR検査が行われているのに日本はコロナウイルス発生当時のやり方をずっと続けている。
このように感染拡大が広がるなかで懸念されているのは感染しても病院はおろかホテルにも入れず、やむなく自宅に待機せざるを得ない人がざっと3万6000人もいることだ。なかには自宅療養中に病状が悪化して死亡してしまうのみならず、救急車を呼んで病院に向かう途中に亡くなってしまう人がわかっているだけで9人にも達している。警察庁の調べによると、昨年3月から全国でコロナウイルスに感染し、自宅で亡くなった人は197人にものぼっている、という。さらには英国で昨年9月に発生したコロナウイルスの変異株に感染した人が全国で51人にものぼっている、という。このなかには海外渡航歴のない人が5人いる。変異ウイルスは感染力が強く、英国株のみならず南ア株、ブラジル株と新しいものが見つかっており、不気味な様相すら漂っている。
こうした事態をもたらしたのは一重にもっぱら菅首相率いる政府の対応遅れによるもので、”政治の貧困”がもたらしたもので、人災といっていいだろう。安倍前首相からの負の遺産があったとはいえ、感染防止とゴーツートラベルによる感染拡大をもたらした政府の失政によるものと言っていいだろう。後手後手の対策がすべて裏目に出たのは「専門家の意見を聞いたうえで緊急事態宣言をした菅首相の責任である。25,26両日の衆院予算委員会で野党議員からの鋭い舌鋒に遭って菅首相は声も枯れて反省の弁を述べていたが、だからといってこの先の光明が見えたわけではない。
この先、欧米ではすでに接種が始まっているコロナワクチンに望みを託すことにしているようで、菅首相はワクチン担当大臣を行政改革担当の河野太郎大臣に託した。始まりから政府内部の足並みの乱れをもたらした。出だしから一大国家プロジェクトの様相を呈しているが、なぜ欧米で始まっている接種が日本はこんなに遅れているのか、疑問である。我が国の製薬メーカーがコロナワクチンの開発に名を連ねていないのか、IT分野ではGAFA(グーグル、アマゾン、ファイスブック、アップル)に大きく差をつけられているが、すでに製薬分野も出遅れている、ということなのか、だとすればまことに情けないことである。日本の未来はすっかり閉ざされてしまっていることは深刻な問題である。
追記1(1月29日)その後、日本にコロナウイルスワクチンを1億2000万回分供給することになっている英アストラゼネカ社が9000万回分を日本の製薬メーカーのJCRファーマに委託生産するとの報道が明らかとされた。兵庫県芦屋市に本社を置くJCRファーマなる企業がいかなる背景を持つ企業なのか、よくわからないが、すっかり外国勢に依存しているわけではないことだけははっきりとした。それでもこのJRCファーマなる会社が本当にそんな能力を有する企業なのかはっきりとしない。会社情報をたぐると、筆頭株主のメディカルホールディングス経由で武田薬品工業とつながりがあるようにも見受けられるが、そんな迂回路を辿っているのも釈然としない。日本の薬品工業会がどっしりと支えているとは言い切れない不安は残っている、と言っていいだろう。