鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

いまだに」なくならない黒人差別問題に大きな一石を投じた米アカデミー賞作品賞受賞の映画「グリーンブック」

2019-03-27 | Weblog

 27日は東京・日比谷の東宝シネマズで米アカデミー賞作品賞などを受賞した映画「グリーンブック」を観賞した。これまで毎年、米アカデミー賞を受賞した映画を見てきたが、大概はどうしてこんな作品がアカデミー賞受賞映画なのか、とがっかりさせられることが多かったが、この「グリーンブック」は1960年代のアメリカでまだ黒人差別が激しい米国南部を黒人ピアニストが白人の運転手兼マネージャーを雇って演奏慮旅行する様子を面白おかしく綴る映画で、見ていて楽しいうえ、風刺も効いていて、最後にホロっとさせてくれる心温まる一品であった。映画とはこんなに面白いものだったと実感させてくれる最高の映画であった。

 「グリーンブック」はニューヨークの高級クラブで主人公のトニー・バレロンガが暴れる客を一撃のもとに殴り倒し、店の外に追い出してしまう場面から始まる。腕の立つトニーはさながら用心棒みたいな役回りで重要な役を務めている。ところが、店の改装で一時的に職にあぶれてしまうことになり、愛用の時計を質に入れてしまう羽目に陥る。それでも昔のやくざな仲間の誘いにも乗らずにたまたま見つけた黒人ピアニストの南部への演奏旅行への運転手の募集に応募することにした。行ってみると、どうやら運転手兼雑用係で、週給も100ドルと希望より低いので、面談の席を立ってきてしまう。しかし、あとでそのピアニストのドクター、ドナルド・シャーリーから電話が掛かってきて、奥さんに代われ、と言われ、「旦那を8週間借りるが差支えないか」と問われ、トニーの希望の週給125ドルでいい、という。

 で黒人ピアニストとの8週間の旅が始まることとなった。最初はお互いに喫煙をしろとか、言葉遣いが荒いとか、音楽の趣味が違うことなどで言い合いをしたりして、旅を続けていく。トニーは最初の演奏を聴いてその素晴らしさに驚き、徐々にドクターに興味を持ち出し、いろいろ話しかけるようになり、時にはドクターが食べたことがないケンタッキー・フライド・チキンを食べさせることにも成功する。ただ、米国南部地域の黒人差別の実態はトニーの予想を超えるもので、ある日、ドクターが寄った酒場で3人の白人男性に取り囲まれ、迫害を受けようとしているのをトニーが割って入り、暴力沙汰になろうとしたことがあった。この時は店主が銃を構えて外に出るように怒鳴って事なきを得た。また、ドクターが町のテイラーに入って紳士服を試着しようとしたら、黒人だからか断れる一幕もあった。こうしたことから、トニーはドクターがどうして南部に演奏旅行に出かけるのか、不思議に思うがドクターには直接聞けなかった。

 旅を続けるうちに夜、雨の高速道路で突然パトカーに止められ、追及を受けるうちに後部座席にドクターがいるのを見つけられ、「ここでは黒人の夜間外出は禁止だ」と難癖をつけられ、挙句の果てにトニーの出自がイタリアでsるkとに及ぶと「イタ公」とののしられ、トニーは警官をぶん殴ってしまい、2人とも留置場に収監されてしまった。ドクターは檻の中から「弁護士に連絡させてくれ」と要求し、電話をかけて、実情を訴えた。数分してなんと時の司法長官ロバート・ケネディから署長に電話がかかってきて、2人は無事に釈放された。トニーはドクターの力を改めて見直した。

 そして最後の演奏地へ開始の1時間前に会場のホテルに着いたら、愛想よく出迎えられたが、ドクターが着替えに通された場所は物置だったし、食事をしようとレストランに入ろうとしたら、「ノー」と言われた。それでも押し問答を重ねたが最後まで入場は認められず、ドクターは」キレて「じゃあー、今日の演奏はキャンセルだ」と言い出し、2人はホテルを後にする。で、飛び込んだ黒人ばかりのクラブで食事をするうちにステージにピアノがあるのを見つけ、バーテンの要請で即席の演奏を始めると会場は一気にパーティ会場と変わった。最高に盛り上がったシーンであった。

 気分よく店を出た2人はいまから帰ればクリスマスイブに間に合うと言って、ドライブするこおとなるが、生憎の雪に見舞われ、おまけにトニーは連日の疲れからすっかりへたりこんでしまった。でも最後にはドクターがハンドルを握り、なんとかニューヨークの家までただりつき、トニーはクリスマスパーティに間に合った。ドクターも誘ったが一人で家に帰ったが、思い直してトニーの家に訪れる。トニーの妻はドクターの来訪に驚くものの、ハグで出迎え、ドクターの耳元で「お手紙ありがとう」と囁く。夫のトニーから何通も愛情あふれる手紙をもらっていたが、武骨なトニーにそんなことが4できるわけがない、と見破っていたのだ。そんなおちがついたところで、「グリーンブック」は幕となる。

 タイトルのグリーンブックとは黒人差別の激しい1960年代に黒人が南部を旅行する際に黒人が泊まれる各地のホテルを案内したガイドブックのことで、いかに米国の黒人差別が激しかったかを物語る証拠のものでもある。これは実在した2人の物語で、当時のドクターがなぜわざわざ南部を演奏旅行したのかは黒人がこうしたことをすることで、いつか人種差別がなくなる日がくることを期待していたのではなかろうか。事実、それから公民権運動が起こり、表面上は黒人差別がなくなった。それでもいまだに全米各地で黒人に対する偏見、差別は常にどこかで見られ、米国ではいまだに大きな問題となっている。その意味でこの映画は大きな意義があるといえそうだ。

 

 

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