文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

誤解を招く企業の内部留保と言う言葉

2009-01-10 11:04:21 | 経済学
 最近のニュースでは、非正規労働者の雇用問題に関連して、企業の何兆円もの内部留保がやりだまにあげられることが多い。

 たしかに、雇用を継続できる能力のある企業は、景気を支えるために、できる限りの雇用確保をすることが社会的責任であろう。

 ただ、気になるのは、この「内部留保」という言葉が正しく伝わっているかということである。どうも「内部留保」というと、企業がお金を銀行や金庫にそのぶんだけお金をため込んでいるというように思っている人が多いのではないかと思う。

 実は「内部留保」=「ため込んでいる現金」ではない。簿記を少し勉強すれば分かることだが、内部留保とは、企業が保有している土地や建物・設備を買ったり製品を作るためのお金の出どころのひとつにすぎない。企業は設備投資や製品を製造するためのお金を集めるためには、借金するか、増資して株式を発行するか、企業活動によって出た利益(内部留保)をつぎ込むかである。

 だから、内部留保は、現金の形である場合もあるが、土地や建物・設備あるいは製品などに既に変わってしまっている場合も多い。そして、今のご時世では、このような資産は、いつ評価損を出さなければならないかもしれない。そうすると次の会計年度には、本来の企業活動の成績に関わらず、利益が減り、内部留保自体も減ってしまうリスクがあるのだ。更には、企業は運転資金として、ある程度の現金を保有しておく必要もある。それらをすべて考慮しながら、余裕のある企業は当然社会の公器としての役割を果たすべきであろう。しかし、そのあたりの情報は十分伝わっているとは言い難い。

 マスコミは、もっとこのあたりに踏み込んで、国民に正しい情報を与えていかないと、有益な世論の形成につながらないのではないだろうか。


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6 コメント

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そうなんですよね! (簿記)
2009-01-24 19:33:46
内部留保は損益計算書上の数字でイコール「現金」ではないんですよね。しかも、現金の可能性は低く、土地、設備、売掛金、債権、株式等々の可能性が大きいんですよね。

やっとまともな意見を読むことができました。
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Re:簿記さん (風竜胆)
2009-01-24 20:36:02
何かを議論するときは、使う言葉の意味をお互いに確認しておかなければ、有意義な議論はできないと思います。
しかし、自分で勝手に言葉を定義しているような例があまりにも多いですね。
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Unknown (とおりすがり)
2010-02-18 01:35:33
大東亜戦争にしろ、林業崩壊にしろ、医療崩壊にしろ、地方経済破綻にしろ。トリガーを引いたのはメディアによって形成された「間違った問題認識を共有する世論」ですからね。
ここまで来ると、有益な世論形成をさせない事がこの国のマスコミの仕事だと思えてきますよw
じゃなきゃ麻生自民党が鳩山民主に負ける事なんてありえなかった訳ですし。
返信する
Re:Unknown (とおりすがりさん) (風竜胆)
2010-02-19 08:28:49
確かに今のマスメディアには色々問題が多いと思います。

>じゃなきゃ麻生自民党が鳩山民主に負ける事なんてありえなかった訳ですし。
これは、メディアのせいというよりは、国民の2者択一の究極の選択だったのではなかったかと思っています。
返信する
Unknown (Unknown)
2010-02-20 17:42:01
内部留保課税がなにかについて、ちゃんと定義されていないんだけど?

内部留保課税は志位さんによれば、大企業に対するもの。
大企業はさいきん新たに設備投資せずに、株や国債社債ばかり買ってる。
古い設備に新たな内部留保はいらないし。
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Re:Unknown (Unknownさん) (風竜胆)
2010-02-21 21:55:00
そりゃそうでしょ。内部留保課税が話題になる前に書いたんだから。
それにしても、人のブログに書き込みをする際は、礼儀を心得なさい。
返信する

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