文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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書評:(しししし) 2017 vol.1 特集:宮沢賢治

2018-01-21 12:03:28 | 書評:その他
(しししし) 2017 vol.1 特集:宮沢賢治
クリエーター情報なし
双子のライオン堂

・双子のライオン堂

 変わったタイトルの雑誌だが、本誌は東京赤坂にある「双子のライオン堂書店」というところが、年1回刊行予定の文芸誌だという。この号の特集は宮沢賢治だ。

 申し訳ないが、私はあまり文芸関係の人には詳しくないので、名前の方は存じ上げない方ばかりなのだが、本誌に寄稿した人たちは、それぞれが、賢治や彼の作品について熱く語っている。

 私も賢治の作品のいくつかは読んだことがあるが、どうにも彼の詩集(特に「春と修羅」)はよく分からないので、本棚の肥やし状態だ。彼の詩には、普通の詩人は使わないような理科用語なども多様され、なかなか一筋縄ではいかないのである。

 ただ賢治を語るには忘れてはならないことが二つあると思う。一つは、彼が法華経の信者であったことと、トシという最愛の妹の影響である。前者については、新潮文庫から転載されたという吉本隆明氏(残念ながら私が名前を存じ上げているのは吉本氏のみである)の「宮沢賢治『銀河鉄道の夜』」という一文に書かれていたが、後者については誰も言及していなかったのが残念である。

 山下聖美という人が、「宮沢賢治の<読み>をめぐって」という文章の中でこう書いている。
<二十世紀前半の東北の地は、<死>が近い場所であったと言える。・・・(中略)・・・賢治作品を読むことは、死を感じ、死について考えることであると思う。>(p29)彼の作品を読むことは<死>ということを意識すべしというのはこの通りだと思うのだが、その原因としては、東北という土地柄だけでなく、自らの病気や、最愛の妹であるトシの死の影響も強いのではないかと思う。

 また、読書会では、賢治の「銀河鉄道の夜」と「フランドン農学校の豚」という作品について参加者が熱く語っている。前者はあまりにも有名な作品だが、後者については本誌を読んで初めて知ったので、さっそく自分のキンドルにダウンロードしたのは余談。

 この雑誌に掲載されているのは、エッセイ、短歌、俳句、詩、小説からマンガまでとても幅広い。特集だけあって、宮沢賢治に関するものが多いが、後ろの方にはそれ以外のエッセイも結構収録されており、それらもなかなか面白い。

 ひとつ吹き出しそうになったのは、執筆者一覧に掲載されている高垣ぼすという人の肩書。なんと「遅読家」と書かれていた(p178)。なんやねん、「遅読家」って?

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

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