「できない」を「できる」に変えるマネジメント | |
クリエーター情報なし | |
セルバ出版 |
・細谷知司
本書に述べられているのは、「個体差」に着目した「違いのマネジメント」についてだ。要するに、みんなが「同じ」ようにできることを目指すのではなく、それぞれに今よりもできることを目指そうということである。そのための手段は「対話」だという。
そもそも一人一人が、能力も性格も違うのだ。金太郎飴のように同じ人間を作ることなどできる訳がない。金子みすゞではないが、「みんなちがってみんないい」を目指すことが現実的なのである。
本書では、まずこの「違いのマネジメント」について説明し、次にどういった「できない」が問題になっているのかを分類しその処方箋を提示している。さらに、具体的にはどのようにすればよいのかということで、実際の対話の場面を再現し、ポイントとなる部分を解説する。本書では、この具体例に全体の約半分が割かれているので、どのような場合にどのような対話を行えば良いかがよくわかるだろう。
ただ実際に本書にあるような対話を行えるようになるには、かなりの場数を踏むことが必要だろうし、口も旨くなくてはいけない。しかし、本書は個体差のマネジメントを重要視しているのだから、そもそも全く同じようにする必要もないのだろう。本書を参考に、自分なりのやり方を模索することが大切なのだ。心に留めておかなければならないのは、どんな場合でも、マネージャーとして逃げてはいけないということだと思う。
無能な経営者やマネージャーほど、「ベクトルを合わせる」などと意味不明のことを唱えて、自分の価値観を押し付けたがるものだ。みんなが経営者にベクトルを合わせた結果が、最近世間を騒がせている不祥事ではないのか。いま企業で必要なのは、本書で述べられていることからさらにもう一歩進んで、「同じ」人間を作ることではなく、「違う」人間を作っていくことなのだろう。
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※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。