世界変動展望

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ソウル大学姜秀庚の論文捏造を認定!

2012-12-07 00:13:50 | 社会

幹細胞:ソウル大女性教授が論文捏造

 ソウル大学は、今年5月に提起された姜秀庚(カン・スギョン)獣医学部教授(46)=女性=の幹細胞論文14本の捏造(ねつぞう)疑惑について「姜教授が14本全てを自ら捏造(偽造・変造)したことを最終的に確認した」と4日に発表した。姜教授は2005年、黄禹錫(ファン・ウソク)ソウル大教授(当時)による胚性幹細胞(ES細胞)関連論文の捏造疑惑が浮上した際、真相究明を訴えた若手教授の一人で、黄氏のライバルだった康景宣(カン・ギョンソン)教授(49)に近い。

 調査の結果、姜秀庚教授は10年にがん専門誌『国際がんジャーナル』に投稿後、写真の捏造が発覚した論文にデータを加え、新たな論文のように見せ掛けて学術誌に提出していたことが分かった。姜教授は当時「単純なミス」と釈明して論文を取り下げ、大学内の調査委員会から「警告」処分を受けた。また、写真を不正に流用していたことも明らかになった。

 姜教授は大学側の調査中も、捏造の責任を研究員や大学院生に転嫁したり、虚偽の説明資料を提出したりと、調査を意図的に妨害していたという。事情を聴かれた研究員や大学院生に対し「どうしてそんな風に(私に不利になるように)話したのか」などと脅迫まがいのメールを送っていたことも把握された。ソウル大は、問題となった姜秀庚教授の論文の一部に共同著者として名を連ねた康景宣教授の論文捏造疑惑についても、近く調査結果を発表する予定だ。

 今回の論文捏造が発覚したきっかけは、5月初めに複数の学術誌に寄せられた匿名の情報提供だった。論文の撤回を取り上げるブログ「リトラクション・ウオッチ」やポステク(旧浦項工大)生物学研究情報センター(BRIC)のインターネット掲示板などによると、この情報提供者は姜教授が論文を掲載した10の学術誌に70ページのパワーポイントファイルを送り、同教授が14本の論文に使った実験結果の写真を比較しながら、同じ写真を重複して使用したと主張した。

  情報提供を受けた各誌は姜教授に説明を求め、このうち米国の国際学術誌『坑酸化および酸化還元信号伝達(ARS)』は同氏の論文を撤回した。姜教授はこのとき「データに誤りはあったが、わざとやったことではない。追加実験を踏まえてデータを提出する」と釈明していた。また、論文捏造疑惑を提起した情報提供者を名誉棄損で告訴し「ソウル大獣医学部の黄禹錫支持者たちに仕組まれた」などと主張した。

 ソウル大の関係者は「調査中に釈明を聞いたが納得できなかった」と話している。姜教授は「ミス」だったことを強調したとされるが、調査を受けた研究員や大学院生に脅迫まがいのメールを送ったことが明らかになり、調査担当者たちの信頼を失ったとのことだ。

 大学側は姜教授の論文捏造を「深刻かつ重大な問題」と受け止め、懲戒委員会で処分を検討する方針だ。大学関係者は「捏造の故意性や態度からすると、重い懲戒は免れないだろう」と話している。

 一方、ソウル大のある教授は「今回の事態は獣医学界の派閥争いや行き過ぎた実績競争が招いたもの。(教授たちは)完成度が7割ほどの論文も発表している」と打ち明けた。

ヤン・スンシク記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

[1]』

この問題は発覚後に本ブログでも紹介した[2]。当時も疑惑の多さからいって不正だろうと思っていたが、やはりその通りだった。被疑者はお決まりのように過失だったと主張し、自分を貶めるために告発されたと主張し告発者を名誉毀損で訴え圧殺をはかった。名古屋市立大医学部の岡嶋研二や原田直明の捏造事件のときも、被疑者は大量の捏造疑惑を「学会発表の練習用の資料に仮に載せたデータをうっかり訂正せずそのまま投稿した」などという信じ難い創作的な弁明で責任を逃れようとし、告発者を裁判で訴える姿勢を示して圧殺をはかった。どこもやることは同じということか[3]。

調査機関が適切に動いた場合のことだが、疑惑がたくさんある場合は被疑者が過失と主張してもアウト。これは至極当然といえよう。姜秀庚も岡嶋・原田の事件も同様のデータ流用や加工の事案で、そのような流用や偽装が複数の論文にわたってたくさん起きる様は過失ではなく、故意といわれても仕方ないだろう。逆にいえば、こんな事案で不正を認定しないなら調査機関は不正を握りつぶしたと言われても仕方ないだろう。

問題なのは調査機関が適切に動かない場合だ。京都府立医大の松原弘明らの事件や三重大の青木直人らの事件で不適切な調査がなされなければいいと思っているが、日本の場合研究者や研究機関の保身のために、そのような不適切なことが行われるのは珍しくないのは以前も述べた[4]。さらに悪いことに、監督機関の文科省や資金配分機関である学振の無責任さのために、調査機関の自浄作用がはたらかない場合不正を放置せざるを得ず、驚いたことにそれでよしとする学界や役人の風潮がある。改善しなければならないことはあきれるほど主張してきた。

もう一つ注意すべきなのは、この事件は2年前に一度誤って過失と処理してしまったことだ。被疑者が単純ミスと釈明してそれを鵜呑みにしてしまったが結果的に不正を握りつぶすことになってしまった。おそらく疑惑の量が少なかったので誤って判断したのであろう。今回は疑惑が大量にあり、他をあわせて考えると故意の不正と判断するのが自然ということになった。被疑者が脅迫まがいの行為をしたことで信用を失ったのも痛手になったのは確かだろうが、一番の決め手は疑惑の量が多く、それらに偽装工作がなされていたことだろう。

このように一部だけをとらえると判断を誤る。過去に過失と認定された事案でも他をあわせると故意と判断するのが当然というケースは十分あり得る。もともと被疑者は保身のために嘘をつく可能性が非常に高いから、盲目的に弁明を信じるべきでないのに信じたから愚かな結果になった。他でも本当は故意なのに間違って過失で済ませている事例は山のようにあるだろう。文科省のガイドラインでは「被疑者が自らの説明で不正の疑いを覆せない場合は不正行為とみなされる」とあるが、ほとんど守られていない。

今回の事件は韓国の事件で、発覚が5月、調査結果の公表が12月だから約7ヶ月で決着している。東大の加藤茂明事件や京都府立医大の松原事件は昨年の11月か12月に告発され、いまだに調査中。対処が遅い印象を受ける。ガイドラインでは予備調査が1ヶ月以内、本調査が3~5ヶ月程度だから、遅くとも合計半年程度で調査結果が出るはずだが、約1年たっても何ら調査結果が公表されない。日本は韓国に劣っているということか。さらに近いうちに井上明久事件で空前のスキャンダルが日本の学界を襲う。世界最高記録の捏造論文数の達成(藤井善隆事件)で名を落とした日本の名誉はさらに下がっていく。

問題点や改善はあきれるほど主張しているけれど、何の改善も感じ取れないのは悲しい。

参考
[1]朝鮮日報日本語版の記事 2012.12.5
[2]世界変動展望 著者:"ソウル大学姜秀庚、康景宣、論文捏造疑惑!" 世界変動展望 2012.6.5
[3]「学会発表の練習用の資料に仮に載せたデータをうっかり訂正せずそのまま投稿した」という創作的な弁明ですらジャーナルは鵜呑みにし訂正で済ませていた。なぜ自分たちで調査しないのか理解できない。加藤茂明らのネイチャー論文の捏造といい、学会は被疑者の言い分を盲目的に信じて過失で済ますことが通常といえよう。
[4]世界変動展望 著者:"未解決の研究不正事件と学界の現状の酷さについて" 世界変動展望 2012.12.6