久野康成公認会計士事務所/株式会社東京コンサルティングファーム(TCF)の 【国際化支援ブログ】

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税理士にとっての国際税務

2006年05月03日 | ビジネスの感性

税理士の仕事は、今、非常に大きな転換期を迎えていると思います。

今までの成功体験が機能しなくなったといえます。
それは、会計や税務のコモディティー化が要因です。

しかし、これを単に悲観的な発想をしていると思ってはいけません。
むしろ、悲観的ではなく、リスクマネジメントと考えなければなりません。

経営者に必要なのは、単に楽観的な考えを持つのではなく、もっとも悲観的な状態を想定して、それを十分にカバーするだけの戦略を持った上で、楽観的に行動することが必要です。

『うまくいくであろう』と思っていると、うまくいかないものです。
うまくいかない要因をつぶしこんで、『絶対にうまくいく』と確信して始めてうまくいくと思います。

経営の大半は、うまくいかないものなのです。



さて、税理士の業務を考える上で、今までの『時流』を振り返ってみたいと思います。

ビジネスチャンスは、時代が動いたとき、つまりズレを調整する時に発生します。「時流」に乗ることと、経営の本質を追求することは異なりますが、「時流」に乗らない限り、ビジネスが大きくなることはありません。


(1)コンピュータ会計導入指導
TKCに代表されるように、中小企業にとってコンピュータが高価な時代に、コンピュタや会計ソフトをリースし、「共済」の発想で、コンピュータ会計を薦め成功した時代がありました。1980年代に全盛期を迎えました。

このビジネスモデルも、コンピュータが高価であったという、時代の「ズレ」を調整するもので、やがて、弥生会計に代表されるように安価なソフトが台頭したことによって、ビジネス・モデルの有効性が薄れていきました。

(2)資産税・医療特化型の会計事務所
1990年頃にバブル全盛時代を迎えると、土地の価格が高騰したことによって、相続が社会問題化していきました。これによって、資産税のニーズが高まり、資産税を専門とした会計事務所が注目されました。

しかし、バブル崩壊後、土地の価格が下落したことによって、資産税マーケットも小さくなってしまいました。税理士受験生の間では、いまだに資産税マーケットに幻想を抱く人が多くいますが、実際は、夢を見られるほどのものではないと思います。

医療専門型も医師の数が増加したことによって、病院の収益性が悪くなり、顧客単価が大きく落ち込んでいきました。

(3)企業再生リストラコンサル・SPC(証券化)
バブル崩壊によって、多くの企業が倒産し、これによって企業再生という新たなビジネスが興りました。

企業再生ビジネスは、景気回復によって終焉を迎えました。

しかし、資産税→企業再生→SPCは、全て「土地」というキーワードでつながっているのです。

企業再生では、土地の売買が必ず付いて回ります。資産税に強かった会計事務所が、バブル崩壊後、企業再生ビジネスやSPCに展開していったのは、まさに、強みを生かし「時流」にのったといえるでしょう。



私自身、独立したのは、1998年で、もっとも景気が悪いと言われていたときでした。このころ、企業再生ビジネスがもてはやされていましたが、このビジネスに入るためには、弁護士等との人脈が必要であり、何も持たずに独立した私にとっては、参入は困難でした。

私が選んだ「時流」とは、景気が悪いので「収益改善コンサル」は、ニーズがあると思い、経営コンサル業務に力を入れました。

ある意味、個人的にはこのビジネスは非常に成功したといえます。

しかしながら、経営コンサルティングを体系立てて、スタッフを直ぐに戦略化するには時間がかかりすぎるため、経営コンサルから、財務コンサルに独立後3年経って基軸を移しました。

つまり、私が行わなくてもスタッフでも出来るコンサルツールを開発したのです。


これもそこそこの成果は出ましたが、いかんせん、人の成長スピードが会社の成長スピードを決めてしまうため、爆発力は起きませんでした。


その後、2年前から人材ビジネスに着目しました。これは、多くの税理士受験生が、就職先がなく、実務経験を積むチャンスが得られていなかったためです。

これも税理士になりたい人は多いのに、就職先である会計事務所の募集が少ないという「ズレ」を調整したのです。


今は、景気も好転し、就職先も増えてきたので、ある意味、我々の社会的使命は、かつて程、高いわけではなくなっているといえるでしょう。

であれば、決して深追いする必要もありません。



では、これからの「時流」はなにか?

私は、これからの税理士業務の時流は、「国際税務」と思っています。

私が、PWにいたころ、クライアントの大半は、外資系だったので、PWの税務のほとんどは、国際税務でした。


当時、国際税務に強い会計事務所は、外資系監査法人しかなかったので、かなり高付加価値サービス(高い収益性)を展開することが可能でした。

しかし、このようなサービスは、監査法人内だけで使える「辺境の技術」で、独立や国内系の会計事務所に就職した場合は、あまり意味がないとも思われていました。


あえて、私が今後、国際税務にこだわろうと思うのは、「ボーダレス化」をキーワードにしているからです。国際化と言われて久しいですが、かつての国際化とは、少しニュアンスが異なります。



ある雑誌で、大前研一氏が、バブル崩壊後、日本人は、不況とデフレーションを混同してきたと指摘していました。

これは、非常に鋭い指摘です。

「不況・好況」とは、景気循環からくる概念です。不況は時が経つことによって好況に変わります。

これに対して、デフレーションとは、「物価の下落」です。
その最大の要因が、ボーダレス化による、安くてよい製品が、特に中国から日本に大量に流入したことが原因です。

つまり、デフレーションとは、物価の国家間の格差を調整するものだったのです。このように考えれば、デフレーションは、単なる物価の調整に過ぎず、時間が経っても、インフレに向かうわけではありません。

少し前に話題になった、「インフレ・ターゲット論」は、マネタリズムの観点からすれば、単に、通貨量の増加によって、名目価格を上昇させるのみで、これは、為替の調整(円安に向かう)によって、実需経済になんら影響を及ぼすものではありません。

むしろ、ハイパー・インフレーションを引き起こす要因にもつながります。



ここで我々が認識しなければならないのは、デフレーションとは、決して悪いものではなく、「ボーダレス化」による物価調整機能であったということです。

さらに、今後益々、「ボーダレス化」が進むと考えられます。


景気循環を読むことは難しいですが、ボーダレス化の進行は、ある程度読みやすいものです。
そうすると、今後の時代の流れがある程度見えてきます。


日本は、今後、アジアを中心に産業がボーダレス化していくのです。
私は、この波に取り残された企業は、企業使命も失うと思います。



今は、非常に大きく時代が動いています。

今年中に、東京税理士法人に「国際税務部門」を立ち上げます。



既に、中国人スタッフも3名採用し、今期末から来年にかけての中国での事務所展開の準備を進めています。


日本企業にとって、中国に設立された連結対象子会社は、早い月次決算と、正しい連結パッケージの作成が要求されます。



「ボーダレス化」の流れに従って、我々は、「日本発の国際会計事務所」として、今後の30年を見据えたビジネス展開を行っていきます。