駒子の備忘録

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『OPUS/作品』

2013年09月14日 | 大空日記
 新国立劇場、2013年9月13日ソワレ。

 弦楽四重奏団ラザーラ・カルテットはホワイトハウスでの演奏会が決まっているというのにメンバーのドリアン(加藤虎ノ介)を解雇、急遽オーディションを行うことに。選ばれたのはグレイス(伊勢佳世)という若い女性で、女の子が大好きなアラン(相島一之)は大喜び。だがリハーサルではリーダーのエリオット(段田安則)がミスを連発し、カール(近藤芳正)の抱える秘密も発覚して…
 作/マイケル・ホリンガー、翻訳/平川大作、演出/小川絵梨子。全一幕。

 休憩なし120分の舞台にハズレなし、というのが最近の私の感触です。
 浅野和之に次いで私が多く舞台を観ている気がするもはやファンを名乗っていい気がする段田安則の舞台、音楽もの、少人数ものときたら好みっぽすぎると思ってチケットを取りましたが大当たりでした。
 小劇場の客席中央に置かれた正方形のステージ、四脚の椅子と四本の譜面台、ふたつの扉という簡素な装置。観客に四方から見守られる異空間は照明のマジックもあって時と場所を自在に飛んで、カルテットの物語を紡ぎます。
 作家自身もヴィオラ奏者なんだそうですね。そう、「大きいヴァイオリン」と言われてしまうヴィオラが、キーの物語だったのでした。
 400年以上も時を経てきた楽器で、500年以上も昔の作曲家の楽曲を演奏する。それは永遠の美に近づこうとする真摯で敬虔な行為です。音楽家は芸術に身を捧げた存在です。
 一方で、ただの男であり女であり、平凡な父であり恋人であったりする。才能に惚れる一方でそれが足枷になったりもする。そして自らの命の期限を突きつけられたときに、芸術だの永遠だのそんなもんなんざ知らねえよ、という気持ちになるのも実によくわかります。だから…
 そこまでユーモアとペーソスで進められてきた物語なだけに、ラストの衝撃が刺さりました。そしてオチはない。
 数年前になされたインタビューで、アランが理想の未来を語るくだりが再生されて幕は下ります(幕はないけど)。そんな未来は来なかった、ということだけが残って、暗転。
 人も楽器もなくなっても楽曲は残り永遠である、ということなのでしょうか。でも人や楽器がないと音楽にならない。楽譜だけでは…
 そんなせつない、やるせない、怖い、でも嫌でない気分で観終えた舞台でした。
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