駒子の備忘録

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宝塚歌劇星組『ロミオとジュリエット』

2013年08月20日 | 観劇記/タイトルや・ら・わ行
 東京宝塚劇場、7月30日ソワレ、8月6日ソワレ、8日マチネ、13日マチネ。

 初演の感想はこちら。雪組版の感想はこちら。月組版の感想はこちら
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 他にこちらなど。

 なんといっても楽曲が素晴らしく、舞台としても練り上げられた作品で、堪能しました。
 そしてなんといってもロミオもジュリエットも役変りしない、絶大なカップル感がたまりませんでした。
 それでも…もう仕上がりきっている、出来上がり過ぎている、煮詰まり始めている…とも感じたかな。もちろんこちらがリピーターだからかもしれませんが。宝塚歌劇には未成熟なものがふさわしい、なんていう気もないのですが、それでも。飽きた、とまでは言わないけれど、それでも…という、ぜいたくな感想を持ちました。
 Aパターンを一度しか見られず、Bパターンを三度見ているため、印象がやや違うところもあるかもしれません。

 作品としてはほぼ完成されていてなんのつっこみどころも改善希望点もなく、さしたる変更もなかったと思うので、主にキャストの感想を。

 チエちゃんは、少年っぽいロミオがちゃんとできていたと思います。もともと私の彼女のイメージは「やんちゃな腕白坊主」みたいなものなので(だから今ふと思ったけれど、もっとずっと若い頃に、まったく毒っ気のないただおバカで元気なだけのマーキューシオとか見てみたかったかも)、男っぽいワイルドな役より純朴な青年みたいな役の方が好きなのです。
 明るい声の出し方もよかった。でもやはり「僕は怖い/リプライズ」とかでは、こてんと倒れる痛々しさとかすごく良かったんだけれど、やはり泣きの芝居・歌い方がうるさく感じたのですね。やりすぎている、というか…ううむ、難しいものだなあ。
 ネネちゃんはストレートの鬘がとにかく素晴らしい! そうよこれがジュリエットだと思うわー。歌が上手くなっていたのにも感動しました。誕生日SS席観劇した母はプログラムを見て「ジュリエットの方が大人っぽくてヘン」とのたまいましたが(私はチエちゃんの若者化けに感動した…)、舞台を観たらちゃんと若く見えてご満悦でした。

 ベニーは…まあ私がベニーには辛いというのもありますが…ティボルトは普通だったかな。そしてベンヴォーリオは期待していただけにちょっと残念でした。
 もともと、マーキューシオとかティボルトに向いてそうに思われて実はベンヴォーリオとかを落ち着いてやる方が上手く見えるタイプなのではなかろうか、とか勝手に思っていたのですよ。でも、人のよさそうなベンヴォーリオではあったけれと、なんか立ち位置が不鮮明に見えました。
 ロミオママの手前いい子ぶるくだりがブルギニョン声なのはともかくとして、このベンヴォーリオはロミオより年上なのか同い年なのかとか、どちらが性格的に兄さんっぽいのかとか、普段どんな関係でいるのかとかが、どうにもよくわかりませんでした。その場その場でけっこうおたおたしている感じに見えてしまって…最終的にはこの人が次の大公になってよりよい街を築くのね、なんてとても思えなかった。残念。
 しーらんとみっきぃは健闘していたと思います。どちらのパリスもとてもノーブルで、単なる「気取り屋のまぬけ」でなかったところがよかったと思います。だってあれはロミオの評価だもんね。威圧してくるティボルトに対し怯える一方ではなくなっていて、「なんだコイツ」って顔してみせるところとかもとても良かったです。愛がない、という以外は意外に理想の結婚相手、という正しいキャラクターになっていたと思います。
 マーキューシオは、しーらんは張り切り過ぎに見えたかな。でもみっきぃも上手いなあとは思ったけれどやはり力んでいて歌など上ずり気味なのが惜しかった。これは経験の問題なのかなあ。この先に生かされてくるといいですね。

 そして私はまっかぜーには甘いので…しかし死の衣装はキラキラさせ過ぎだろう! マオくんの死がオーラのないことが良い方に出ていい不気味さが出せていたのと逆で、まっかぜーの死とまこっちゃんの愛はもう饒舌になり過ぎていたと思いました。彼らは人間を支配し操る存在ではない。ただそこに漂う、気配のようなものであるべきだと思うので…
 ティボルトは…健闘していたのではないでしょうか。家長感が素晴らしい、しかしジュリエットにもホントに「ただのお兄ちゃん的存在」としか思われていなかったであろう感も素晴らしい。せつないわあ…歌もだいぶ頑張っていたと思います。
 まさこの大公は…変更加えてもらっていたけどやはりあの歌ではねえ…押し出しは素晴らしいんだけどねえ…
 まこっちゃんは、実はみんなが絶賛し出世作とも言える『めぐ愛2』が私としてはさっぱりだったため、今回のベンヴォーリオで初めて「ああ、上手いんだ」とは思いました。歌唱に危なげがないというのは素晴らしい。しかしこれまたどういうキャラクターなのかさっぱり見えなかったんですよね…ロミオのチエちゃんとは10学年も差があるだし、お兄さん的親友なんて作りはいっそ捨ててしまって、年下だけどしっかり者、みたいに作ってしまってもよかったのではなかろうか…
 というか私はもしかしてトヨコのベンヴォーリオに未だとらわれているのかもしれません。あの、明らかに年上だし外面はしっかりしているんだけどロミオべったりでもしかしたらロミオのことをこっそり愛していたかもしれない、しっかり者のせつないベンヴォーリオ…「決闘」のとき「♪誰が誰を好きになってもいい」にはっとなったあのベンヴォーリオ、あの「どうやって伝えよう」が、忘れられていないのかもしれません。
 ドイちゃんの愛は静謐で美しかった。キャピュレットの男として踊りまくっている時も素敵でした。

 役替わりはそんなところかな?
 これでご卒業のかぁさん、「憎しみ」はややつらそうだったけれど「罪びと」のまろやかな歌い出しはいつも涙腺決壊ポイントでした。
 そうそう、コロちゃんやじゅんこさんは変わらない感じがしたけど、ヒロさんがなんか歌に感心しなかったんですよねー、なんでだろう?
 歌と言えばさやかさんの乳母も歌は酔って歌い上げすぎではないか?と思えてしまったのですが、そのあとのジュリエットとの会話がもう爆泣きものでした。ジュリエットが帰りが遅いと言ってぷんすかするのも家族ゆえの甘えなら、「ありがとうなんて言わないで」も家族ゆえの言葉ですよね。
 のちにロミオを雑巾だと言ってパリスとの結婚を勧めるのも、今回初めて納得できた気がしました。パリスの作りが違っていたこともあるし、この乳母は愚かなわけでも世間ズレしているわけでもお嬢様しか見ていないわけでもなく、でもただ場当たり的なことを言っているだけでもなく、その全部みたいなものなんだな、と、すごく自然にすとんと思えたので…
 しかし初演はピーターでしたか…す、すごいなあ(^^;)。

 あ、ひばりの場面のカーテン、今まで片開きじゃなかったですか? 細かい点ですが、両開きになっていてちょっとイメージが違う、と思ってしまいました。
 あと仮面舞踏会でロミオとジュリエットが初めて出会うところ。パリスから逃げているジュリエットが、先に来ていたマーキューシオたちに手を振るロミオとぶつかって…というのは同じでしたが、そのあと、今まではジュリエットの方がパリスから隠れるためにロミオを無理矢理ダンスの相手に誘っていたと思うのだけれど、今回はロミオの方がジュリエットをダンスに誘っていましたね。これは違うと私は思うなー。それじゃロミオがただのナンパな小僧じゃん。ジュリエットが必要があってロミオを巻き込んで、そこから…としてほしかったわあ。

 フィナーレは圧巻でした。なんといっても振付が良いよね! てか小池先生がいつもやりたがるヤングスターのカジュアルなヒップホップ・ダンス!とかがなくて心底ほっとした。
 いつも私は一本立ての時は本編がメインなんだしフィナーレはパレード前のおまけ、くらいに思っているのですが(もともとショーよりお芝居、物語の方が好きなので)、今回は珍しく「短い! もっと見たい!!」と思いました。それくらい気持ち良かった。
 ビギナー向け演目ということで布教がてら初・宝塚な知人を何度か同伴したので、「ヘンなホストクラブみたいとかショーパブみたいとか思われちゃうだろうか、イヤそこも魅力のひとつなのだがしかし、もっとノーブルなものの方がウケが良かっただろうか」などとヒヤヒヤした、というのもありますが、もう一場面、空気のちがうものがあっても良かったかもしれません。でも尺がないよね仕方ない。何よりデュエダンが素敵だったんで満足です。
 でも、頭の小さいベニーや背が高いまっかぜーと並ぶとチエちゃんはそろそろ旧世代に見えると私は思う。円熟の五年目突入、ぼちぼちではありますな…

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