駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

Mono-Musica『BROTHER MOON』

2014年03月23日 | 観劇記/タイトルは行
 パフォーミングギャラリー&カフェ絵空箱、2014年3月23日マチネ。

 聖ステファン学院、大学進学を志す男子生徒たちが集まる全寮制のギムナジウム。卒業を控え、自分の将来を決める岐路に差し掛かった最上級生たちは、長い時間をともに過ごした友人たちとも離れ、これからはそれぞれの道を歩むことになる。自分の望むこと、望まれていること、望んではならないこと。この温かな場所を捨て、見据えなくてはならない新たな世界。やがてほんの些細な嘘と罪が、四人の歯車を少しずつ狂わせてゆく…
 脚本・演出/ヤマケイ、作曲/橋本かおる、振付/MIKU。全1幕の音楽劇。

 2004年に結成された女性キャストだけのオリジナルミュージカルを上演する劇団だそうで、知人に誘われて覗いてきました。
 私は日生とか帝劇とかでやるグランド・ミュージカルが好きで小劇場系はまったくくわしくなく、宝塚歌劇以外の男役を観ることにもなんとなく気恥ずかしさを感じるので(例えば私はOSKは微妙だった。スタジオライフもダメだった…)、誘ってもらって暇で安価でなければきっと行かなかったろうと思うのですが(すみませんすみません)すっごくよかった、おもしろかったです!
 誘ってくださった方によれば前回公演もすごく良くて、それはまた全然違った演目だったんだそうです。すごいなあ、興味湧きました。

 今回の演目は男役四人のみのギムナジウムものです。こういう言い方はアレかと思いますがあえて言うと、萩尾望都『トーマの心臓』とか竹宮惠子『風と木の詩』のエピゴーネンって世の中に腐るほどあると思うのですが、一定のクオリティに達しているものはごくわずかだと思いますし、これはその数少ない例外だと思いました。
 ちなみに本当のところは違うのかもしれません、まったく別のところから着想されたものなのかもしれません、それは知らない。でも今のこの年代の創作物でコピーのコピーということはあってもまったく無関係なんてことはありえないのではないでしょうか。その意味でもあえて言います。
 でもとてもちゃんとしていました。この舞台設定、この世界観で、でもきちんとオリジナリティがあり、役者のニンに合わせたキャラクターが描かれていて、きちんとした台詞で構成されていました。
 どのレベルかって言ったらこの言い方もまたまたアレですが上田く~みんレベルですよ。世の中にはきちんとキャラクターが作れてきちんと台詞が書ける書き手はけっこういるのかもしれませんよみなさん! 狭いところであの人だけを絶賛している場合じゃないのかもしれません! てかホントちゃんとして歌劇団!!
 脚本がしっかりしていたのはもちろん、演技もとてもしっかりしていました。ハコが小さくて舞台と客席の距離が近かったけれど、決してナチュラルな芝居ではないので、もう少し引いて観たかったかな、と思ったくらいです。
 男役に対する気恥ずかしさは当初こそありましたが、すぐ忘れてお話に没頭できました。そこまでスターシステムにはなっていないのだろうし、なっているのだとしてもそれは私が知っているものとは違うのだろうし、とにかく役者が演じている役がちゃんと立っているんだからなんの問題もなかったのでした。

 ボーイソプラノのソリストとして演奏活動を始めているルカ(MIKU)。
 ガリ勉ではないのに成績優秀で卒業生総代になる予定のマルコ(杏)。
 優等生で医師志望で、でも養家の要望で士官学校に進学予定のヨハン(弥生)。
 財産家の跡取り息子で幼なじみとの婚約も決まっているレビ(マナ)。

 だんだんにキャラクターと関係性とその奥の想いが見えてきて、複雑に絡み合っているのがわかってきて…今ちょっと自分が個人的に人生に疲れているので、こういう思春期特有の「いかに生きるべきか」みたいな悩みがちょっと可愛らしすぎて見えなくもなかったんですけれど、でも誰にでもある、あった、切実な悩みで、やっぱりせつなくて愛しくて…
 単純なハッピーエンドでもないし悲劇とも言い切れない、みたいな感じがよかったです。あと不必要にBLっぽすぎないのもとてもよかった。
 友情であれ愛情であれ人の想いというものは多かれ少なかれ一方通行の片想いなのかもしれないなあ…なんてことを考えたりもしました。そして何ものにも縛られず完全にひとりで生きていくことなんてできない。何かを抱えながら、何かに絡まりながら、生きていくものなのかもしれないな人生って…とか、とか。
 そんな余韻も残す、美しい舞台だったのでした。満足。



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