駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

澄輝日記3

2015年04月06日 | 澄輝日記
 宝塚バウホール宙組公演『New Wave!-宙-』の前半遠征から戻りました。
 初日から4日7回の観劇(折り返し点の1回は花組大劇場公演を観劇)、大・充・実(まぁ様ブリドリナクストふう)。ホントは、チケットがない回もあるかもしれないし、あるいは観ない回とかを作ってどこかでゆっくり、たとえば行ったことのないナチュールスパに行くとか観光するとかしてもいいかな…とか思っていたのですが、結局チケットもがっつり手配しちゃったし入り出もみっちり行っちゃったしで、ホントに劇場周辺にしかいませんでした。まあ気になっていた南口のバーとかには行けて、ごはん屋さんのアタリなどもいろいろつけられてきたのは、後半遠征の楽しみにできてよかったのかもしれません。
 というワケで、正式(?)な感想は例によって千秋楽観劇後に書きますが、とりあえず現時点で言いたいことだけ言う回を作らせてください、すみません。イヤ誰に断り入れることでもないんだけどさ…
 『NW!宙』脳内企画会議についてはこちら。澄輝日記についてはお恥ずかしながらその1がこちら、その2がこちらです。

 なので私はもちろん楽しかったです。
 でももちろんいろいろアレなのもわかっています。
 花や月ほどに熱くない、というご意見に関しては、甘んじて引き受けましょう。一本ものが続いてショーの経験が足りないから、とか、そもそもちょっとお上品なところが組の持ち味なのよ私はそこが好きなのよ…みたいなことはみんな言い訳だとも思っています。
 でも後半はもっと絶対アゲてくると思うのです。それが求められていると伝われば、ポテンシャルは十分にあるメンバーなので、熱く激しくオラオラになってくると思います。てかなんなきゃダメ。そういうこともできるようにならなくちゃダメ、新しい引き出しを作らなくちゃダメ。そのためにもらったチャンスだし、そういう修行の場です。
 ファンもがんばって生徒を育てなきゃダメですね。苦言を呈するのもひとつだし、拍手や手拍子で客席を温め舞台を支え、大丈夫もっとやって素敵だからと安心させ、さらに燃え上がらせてくれと強く要求していくのもひとつの方法ですね。宙組ファンも組の上品さに慣れ愛し育ててきたのだと思うのだけれど、生徒はもっともっといろいろなことができていいはずだし、我々ももっといろいろなものを見せてもらったら楽しいはずなのです。我々も一皮剥けなければなりません。
 でも私、金曜マチネとかホント感動したんですよね。初日は舞台も客席も探り探りだったのが、もう手拍子や拍手がバンバン入るようになっていて、やっと周りが見えてきた私はそのソワレからは俄然自分もやらねば!と拍手バンバン切っていました。
 本公演では初日や新公にしか入らない開演アナウンスへの拍手だってバンバン入れちゃう。バウだもん、初主演(便宜上。ホントは「主な出演者」の筆頭だってわかってます!)だもん、一回しか観ないお客さんだっているしホントはみんな拍手したいはずなんだから、誰かが切ったら安心して続く。そういう空気、知ってます。だから私がてらいもなく切る、初日からリピートしている身の責任として切る。入れていい間があるのがどこか、音楽や場面の切れ目がどこか、わかってるんだもん。
 歌い終わりへの拍手だけじゃなく、「アイ・カランバ」の手拍子も、ロケットの手拍子も、ピンスポ当たったときの拍手も、「銀河の覇者」の手拍子もガンガン切る。そうやって舞台も客席も乗せる。そうしたら絶対に生徒も嬉しくて、今度はあっちから煽ってくるぐらいになるはずなんです。ならなきゃダメ。なります!
 だからすみません少し時間をください、遅生まれの小さい子たちみたいなものなんです、スロースターターなんです、甘いとわかっていますけど花月みたいなエリートと違うんです、温かく見守ってください…(でもあっきーが挨拶で実際「温かく見守ってください」と言っちゃったときは「それじゃあかんがな」って思いましたけどね! ホントすんません…)
 うむ、帰京したばかりだが「熱くなれ!」と手紙を書こう。入り出ではときめきを伝えるので精一杯の、褒めるばかりの手紙を書きすぎたわ、反省…

 タカスペみたいで退屈する、みたいな意見については、純粋にミキティの老化・劣化が原因だと思うので、早急に改善できるものでもないのが問題ですが…
 私は『NW!』についてだけでなく普段のショーについても「黒燕尾こそハイライト!」とはあまり思っていないのですが、(特に『NW!』は今までの流れからして「Amazing Grace」から「If It’s Over」、そして主題歌でラスト、というのが見えていて、かつ今回も踏襲すべきだと思っていたので)1幕の「Jupiter」と2幕のたとえば「月光」を入れ替えるなどして、黒燕尾を後半に持っていった方がよかったのかもしれません。
 後半の歌謡ショー・パートは月組でもそうだったと思うんだけれど、今回のメインメンバーがりく以外意外や意外歌えちゃうので、先生がシックでメロウな大曲を歌わせたくなりすぎちゃったんだろうな、という気がします。聴かせてよかったと思うんだけれど、気持ち長かったかもしれない、とは思います。
 あとは結局は生徒の使い方かなー。私は歌があおいちゃん一辺倒になることをけっこう心配していたのだけれど、ちょうどいい案配だったと思います。上手いあいこちゃんが存分に使われて、せとぅーもさよちゃんも起用されて。男役の歌手はメイン四人の他はマキセルイと瑠風くん、かける。まっぷーやエビちゃんゆいちゃんはダンス専科になっちゃってるけど、それでもいいと思えたし。
 だから結局は女装のもっていきかたですよ、ええ。
 「ミュゼット」のずんちゃんが自分でもびっくりするくらい個人的には大ヒットだったのですが、しかし相手がりんきらってのはいかにも地味すぎないか?
 それからゆいちぃの脚は確かに武器だしダルマにさせたい気持ちもわかりますが、ひとつのショーに二回も女装はいりません。新進男役の育て方として間違っていると強く説教したい。「月光」の女装は余計だったと思うし、たとえば「チュニジア」はあきりくでやったらよかったんですよ、もちろんりくが女装ってことです。それなら花のあきるな、月のたまちな場面くらいのインパクトが作れたと思う。
 それか、ゆいちぃの男役にあっきーの女装での「チュニジア」。あっきーのアコルディオニストにりんきらが恋人の「ミュゼット」。これだったらりんきらの色気ももっともっと出たと思うんだけどなー。
 そういう妖しさを作っておいて、一方であきゆうりの正統派美男美女カップルで「巴里万博」や『ガイズ&ドールズ』メドレーをやるなら、おもしろいな宙組って多彩!ってなったと思います。もったいないなー。
 演出家の先生にはもっと生徒のキャラクターを見て、フレッシュさとオリジナリティあふれる萌え素敵場面を捻出してもらいたい、と切に願います…

 なのでそういういろいろなアレについては承知しているつもりですこれでも!
 それでも嬉しくて嬉しくて愛に目がくらむのがファンってもんですよね!?
 ホント、トップスターの代変わりとスターの組替えと公演日程の予定とのいろいろな兼ね合いがあって、当初は花月だけの予定だったと言われるNW!が宙に転がり込んできて、かつ「主な出演者」がほとんど棚ボタのように降ってきただけだって、わかってます。先行画像がピンだったのもたまたまで、ポスターの扱いがひとり別格なのもたまたまだって、わかってます。
 それでも…こんなにも、「主演」扱いしてもらえるなんて思ってもいませんでした。だってぶっちゃけ花のときのだいもんより月のときのみやちゃんより、扱いが良くないですか? ひとりだけ飾りのある黒燕尾、ひとりだけ飾りのある白燕尾、ひとりだけ飾りのある白タキシード。板付きのセンター。カテコの挨拶。ラテンの白と金のお衣装とラストの黒と銀のロックオンお衣装は四人一緒だったけれど、あとはメイン四人で出てもいつも一番いいところをもらっていました。並び順ということだけでなく、ひとりと他の三人なの。
 そりゃこの中では最上級生ですよ? でもぶっちゃけだいもんやみやちゃんに比べたら、学年より何より今までのキャリアが、踏んできた場数が、全然違うと思うんですよ。全然足りてない。だって最近スカステでブリドリが決まってアンケート募集してますけど、ファン以外に書ける「印象的な役、歌、ダンス」なんてありますか? 組ファンでも怪しくない?
 そりゃ新公主演はやってますよ? でもたとえばショーで一場面もらったこともない、歌のソロもないんじゃない? 銀橋だって四組のカップルで途中まで出て引き返すとか、下級生男役をふたり連れてセンターで渡ったことはあるけど、娘役ちゃんを連れたこともなければましてひとりで渡ったこともない。全ツに参加したのがこの間の『ベルばら』で初めてって人だから全ツのショーで番手が繰り上がって活躍した、なんてこともないし、バウの芝居では微妙な三番手格までしかしたことがない。今まで何してたのって言われるとホント困っちゃうくらいの人だと思うのです。
 でも、私は映像でしか観ていないのですが『クライタ』新公の歌が大健闘していたと思っていて、変わった声なんだけどもしかして歌はもっとイケるんじゃないかなあ、とずっと思っていたんですよね。DSもイシちゃんとともちんのと二回呼ばれてるんだし。りんきらやずんちゃんが歌えるのは知ってたんだけど。
 だからまあなんとかなるのだろう、とは思ってはいたのですが…
 まさかあんなに歌が普通に上手いとは思いませんでした。イヤああいうのは上手いとは言わないのかもしれません。下手じゃないというかちゃんとしているというか、だから「普通に上手い」。癖がなく、伸びやかで、明るく温かい声音がある。だいもんとかびっくとかまゆぽんとかみっちゃとんかまこっちゃんとかマキセルイみたいな歌ウマな歌手ではない、でも全然十分、十分以上。特に「If It’s Over」は普通レベルではなかなかああは歌えないと思うし、難しいアレンジを施されていた(「月光」はまんまのくせにミキティ!)「運命よ、今夜は女神らしく」をああも歌いこなすのはたいしたものだと思います。そして「A New World」ではその前の場面で超絶コーラスを披露した歌手たちをアンサンブルダンサーにしちゃうんですよ? 「星に願いを」では舞台にひとりだけで歌っちゃうんですよ? それで保つ、すごくないですか?
 かつ…ホントに全場面でセンターを務め、それで立派に成立していました。していました…よね? 欲目? 贔屓目? 正直自信ない。でも私はもっともっとダメダメなんかじゃないかと予想していったのですよ、私は傷つきたくないので期待を下げて臨む癖があるのです。ダメでも私は大丈夫、それでも好きだから、と考えて、自分のハートを守ろうとして行ったのですね。でも全然普通にちゃんとしていた。イヤむしろキラッキラだった。四回目くらいから舞台が狭いなとすら思いました私。すぐ調子に乗るんですすみません。でも場数も経験も全然足りてないのに、やらせたらできるんだ…!と心底感動しました私。
 また本人が、気負ったりプレッシャーに感じて潰れるようなタイプじゃなくて、「ちょっとホントにこの公演の意味わかってる?」という方向で心配になるくらいにのほほんとしておっとり恬淡とした性格の、ただの天然のいい子なので(あくまで私にはそう見えている、というだけの話で、実際のところはわかりませんすみません)、それがよかったのかもしれません。
 本当に純粋に楽しいんだと思います。だからどんなに痩せちゃっても元気だし、全然手を抜かない。楽しみすぎちゃってて向上しないとか爆発しないとかはあるのかもしれません、それは本当に課題。でもなんとかするようにしてもらいます、だからみなさんもうちょっとだけ待ってて!って言いたいのです。今までもさんざん待たせた気はしますが。ホント今まで何やってたのって話なんですが。

 でもこれでホントに弾けたら、さらに期待したいことがもっともっとあります。私はやっぱりもっとお芝居が観たい。
 たとえば『ガイズ』メドレーで、もちろん間に台詞が入っているせいもありますが、ただ歌を歌うのではなくちゃんとストーリーを作ろうとしている、キャラクターの感情で歌って場面を作っているのがわかるのです。これまた贔屓目だったらすみませんが。
 だから全編観たい、と思ってしまう。やっぱ『王家』と『ガイズ』は星宙逆の方がよかったんじゃないの?とかはまた別の問題ですが、たとえば秋の全ツの裏の演目が未だ発表されていませんが、たとえばそこです。普通に考えたらゆりかか愛ちゃんの東上付き主演作だと思うし、でもバウしか抑えてないから現在いろいろ算段しているんだろうな、と思っています。そこに二番手として入って、白い主役を食えるくらいの黒い悪役をやってくれるのが理想。観てみたいし、飛躍するだろうし、新たな扉が開くと思います。
 でももっともっと贅沢を言わせてもらうならば、東上付きであき愛ダブル主演って形はダメかな、とすら夢想してしまうのです。すでにバウ主演を果たしている愛ちゃんの格を落とさない形で、なんとか。ちょうどカチャがバウ主演デビューのあと、組替えがあったこともあるけれど二作目は同期との東上付きダブル主演作だったように。それで作品に恵まれてふたりともに人気がさらに出たら、やっぱり組にとっても大きいと思うのです。贅沢かな、わがままかな、夢かな? でも願いたい、望みたいの。
 とりあえずもっと使われてほしい。今回の公演で他の演出家の先生たちにもいい子がいるね、がんばってるね、できるんだねって認めてほしい。私は新参ファンだから私が知らないだけで過去にごく早いうちにチャンスを与えられて生かせなかったことがあるとかなのかもしれませんが、とりあえず今回はホントにがんばっているので、できたら続けてもう一度チャンスを、と願ってしまうのです。
 そういうホップステップジャンプする例を、最近身近で知っていますからね。ポテンシャルが違うとか努力の量が違うとか言われてしまったらそれまでですが、がんばりますから! いいものありますから、マジで!!
 最終的には本人が幸せであればそれでいい、というのがファンですし、何かを無理強いしたりはしたくないのだけれど、本人だっていったんこの楽しさを知ったらさすがに欲が出てくるだろうと思うし今まで以上に努力するだろうし、だからそれを発揮する場をきちんと与えてほしいのです。それは下級生にとっても同じです。やらせて、育てて、使ってほしい。でないとホントにスカスカの組になっちゃいます。
 生徒をよく見て、組にふさわしい演目を与え、ファンを魅了し喜ばせ増やさないと、未来はありません。
 大波にする!と宣言したからには、広い海を用意してもらわないと困るのです。この波を信じてくれて大丈夫ですから。そういう歌詞の新曲だったでしょう? どうかよろしくお願いいたしますです…
 …どこに向かって何を書いているのかわからなくなってきました。すみません…
 今週あとちょっと働いて、また旅立ちます…ムラなんて隣町みたいなものですすでに、ハイ。






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中山可穂『男役』(角川書店)

2015年04月06日 | 乱読記/書名あ行
 トップになって二日目に舞台事故で亡くなった50年前の伝説の男役スター・扇乙矢は大劇場の奈落に棲みつく宝塚の守護神ファントムさんとして語り継がれてきた。今、月組トップスター・如月すみれのサヨナラ公演の幕が開き、その新人公演の主役に抜擢された永遠ひかるの前に現れる…男役という稀有な芸への熱いオマージュを込めて著者が描く、恋愛幻想譚。

 帯キャッチは「中山可穂版『オペラ座の怪人』!」で、ニュアンスとしてはこちらの方が正しい気がしました。つまりタイトルが合っていないと思います。この作品は別に男役の物語ではない。
 どちらにせよストーリーとしてはかなり凡庸で、これが宝塚歌劇のファン以外にもわかる話、おもしろいと思われる作品になっているかというとかなり微妙だと思います。
 そして宝塚歌劇ファンにとってどうかといえば、芸名の感じとか演目の感じとか「ああ、わかるわかる、あるある」というのはあるけれど、残念ながらそれ以上ではなく、素人のドリーム小説の域を正直出ていないのではないかと思いました。
 一番気になったのはひかるから話を始めておいてすみれで話を終えることです。それから一人称文体でもないのに地の文に「本役さん」「代表さん」「作曲家の先生」と尊称が入ることと、力不足という意味で「役不足」という言葉を使っていること。素人か! これは見逃した担当編集、校閲も悪いと思います。
 それから私だったら、視点人物をひかるにするなら「千夏は」と書くけどなあ。本名の千夏がひかるという芸名のタカラジェンヌとしてお稽古なり舞台なりに出ていて、ファンや上級生からは愛称のナッツで呼ばれている、のでは?
 まあでも、たまたま宝塚歌劇ファンでかつ小説家だった人が、特に企画とか注文とかということでなくただ百周年を寿ぎたくて自由に好きなように書いた、というならこれはこれでいいのかもしれません。現にうっかり買っている私とかがいるわけで、商売としては成立しているのでしょうし。ただしこの作品が彼女の小説家としての今後のキャリアに貢献するかどうかはまったくもって怪しいとは思いますが。

 以下余談。
 そんなわけで読みたいものが読めないんなら素人だろうがなんだろうが自分で書くしかないんだな、とちょっと前後していろいろあったのでちょっと考え出しちゃったんですけれど、これが楽しくて仕方ありません。キャラクターの本名と芸名と愛称を考えているだけで至福…(バカ)
 日の目は見ないかもしれませんが、ひとつのきっかけになったということで、覚え書きに残しておきます。


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