第二回『ジェンダーと法』講義
課題が、アファーマティブアクションに関することがらでした。
以下のような形で、X先生側主張、Y県側主張の回答例が出されました。
米国の判例からすると、現実の実務では、2)の手法が、アファーマティブアクションとして採用することが、まず、できることかもしれません。1)3)のやり方では、裁判になった場合、違憲の判断が出される可能性があるやもしれません。
******** 『ジェンダーと法』講義 課題************
Y県では、公立高校における男女共同社会の実現を目指して「基本計画」を改定し、教頭全体における女性の比率が20%になるまでの間、次のルールに従って教頭を任用することにした。
男性Xが220点、女性Aが202点であった場合において、それぞれ1)、2)、3)の適用をうけて、XではなくAが任用された場合、XとYの立場から、主張と反論を、憲法の問題として考えてください。
1)毎年、合格者の3割を女性にするように割り当てる(クオーター制)
2)「選考試験」において成績が同等である場合には、女性であることをプラス要素として重視する。
3)「選考試験」の成績順で任用すると、女性が一人も任用されない結果となる場合、女性の候補者の中で最も成績がよい者に対して20点を加点する。
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1)の場合
X先生側主張
逆差別を生むような強制的、絶対的硬直的な優遇措置であり、平等違反であり、違憲。(厳格な基準、または、厳格な合理性の基準)
侵害されるX先生の利益は、憲法13条に謳われる自分のキャリアを上げていきたいという幸福追求権など。
Y県側主張
性別による差別を容認してきた歴史がある。クオーター制は、男女共同参画の実現というやむにやまれぬ利益の実現のための合理的な手段。 したがって、目標に達するまでの時限的措置である限り合憲。(合理性の基準)
参考:米国の最高裁判例:大学医学部でマイノリティに特別選考の枠を設けた事案
パッキ判決→「人種的多様性の確保」は「やむにやまれぬ利益」しかし、本学の入試制度は違憲。
パウエル判事「教育の場においてさまざまな人種からなる多様性のある学生環境は必要である。しかし、今回問題となった入試制度はその多様性を確保するために必ずしも必要であるとは言い難い。」
2)の場合
X先生側主張
目的がやむにやまあれぬ重要であるとしても、Xのほうが高い得点をとりながら、その被った不利益が大きいことを鑑みれば、手段が必要最小限度であるとは言えない。よって、違憲。
侵害されるX先生の利益は、憲法13条に謳われる自分のキャリアを上げていきたいという幸福追求権など。
Y県側主張
女性であることを一つの要素として斟酌した結果、総合判断においてXよりもA先生が上位になったものにすぎず、硬直的な施策ではない。3)との比較しても穏健な手段。男女共同参画という政治的利益のための必要最小限度の手段であり合憲。
参考:米国の最高裁判例:大学院入試で、マイノリティであることを一つのプラスの考慮要素として個人を総合的に評価して選考した事案
グラッター判決:「人種的多様性の確保」は「やむにやまれぬ利益」。大学院入試制度は、大学院の人種的多様性を確保するために限定的に用いられていると判断し、合憲。
3)の場合
X先生側主張
目的はやむにやまれぬ重要であるとしても、硬直的なプラス要素方式であり、手段は必要最小限ではない。違憲。
侵害されるX先生の利益は、憲法13条に謳われる自分のキャリアを上げていきたいという幸福追求権など。
Y県側主張
クオーター制に比較して、穏健な手法。やむにやまれぬ目的を達成するために合理的な手段。合憲。
参考:米国の最高裁判例:大学入試で、マイノリティに一律20点を加点して選考した事案
グラッツ判決:「人種的多様性の確保」は「やむにやまれぬ利益。」しかし、本学の入試制度は違憲。
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