対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

楕円軌道の発見5

2017-07-20 | 楕円幻想
5 目覚めの段階論

山本義隆の図は「ケプラーの第1法則(楕円軌道)の発見」と名づけられている。

これは、ケプラーが59章で示している図とは違っている。

もっとも大きな違いは、ケプラーの図では太陽Nと離心円上の点E,Kが実線で結ばれているのに対して、山本の図では太陽Aと離心円上の点E,Kが結ばれていないことである。どうしてこのような図を基礎にしたのかよくわからない。この図では構造的にケプラーの推論をたどれないと思えるからである。(ケプラーの視覚的均差に対して誤解があるのだろうか。)
まず山本の説明を確認してみよう。
(引用はじめ)
さらなる新しい局面への突破口は、ここで火星-太陽間の距離が、先に述べた「直径距離」で与えられることに偶然気づいたことにある。そのことをケプラーは、離心アノーマリーが90度になり火星軌道が円からもっとも外れたときの三日月の幅(図のEF間の距離)が離心円の半径a=BFの0.00429倍であること、そのとき∠BFAが5度18分で、そのセカント(余弦の逆数つまり1/cos5°18′)が1.00429であることからひらめいたと証言している。つまりFB=(1-0.00429)aにたいして
FA=FBsec(5°18′)=(1-0.00429) (1+0.00429)a≒a=EB
に気づき、この「新しい光に眠りから覚まされた」のである。
(引用おわり)
半径はBFではなくBEである。これはたんなる誤植である。5度18分は最大の視覚的均差だが、∠BFAではない。図に明示されていないが∠BEAである。∠BFAは誤植ではない。このように想定しているのである。もちろんこの角度はほとんど同じである。FAとFBはセカントで関係づけられるが、このセカント(正割)はケプラーを覚醒させたセカントではない。ケプラーのなかではEAとEBが結びついていたのである。ケプラーは次のように述べていた。「平均的な長さを取る所で正割の代りに半径を用いると観測結果のとおりとなる」。山本の説明には「正割の代わりに」がまったく抜けている。そして半径EBと観測結果FAだけがFBを媒介にして等号で結ばれる。これはいわば2段階(EB→FA)の目覚めである。これに対してケプラーの目覚めは3段階(EA→EB→FA)だった。「平均的な長さを取る所で正割EAの代りに半径EBを用いると観測結果FAのとおりとなる」。

山本の図にEAとKAを描きくわえて、さらに立ち入ってみよう。


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