対話とモノローグ

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「ネイピア対数を読み解く」2

2024-01-30 | 指数と対数
「ネイピア対数を読み解く」において、時間とともに減衰する等比数列が減衰する指数関数に変化する過程を次の2節で描いた。
  1 ネイピア対数の定義を導く
  2 ネイピア数eが現れる
 「ネイピア対数を読み解く」(PDF)
1はネイピアの対数の発想を端的に捉えたものとして、2は「運動現象の数学的取扱い」の端緒(ガリレイの先駆者)を明確にしたものとして、ある程度満足してきた。しかし、1と2には断絶があるような気がしてきた。それはネイピアが想定した等比数列を小数表記(小数点の位置を7桁左に移動する)する際の式変形の根拠があいまいなことではないかと思っている。ここを補完したいと思っている。

ネイピアの対数概念の提出以降、対数は2つの道に分かれている。常用対数と自然対数である。

ネイピアによる対数の提起は数計算を簡略することにあった。しかし、ネイピア対数は十進記法と相性が悪かった。例えば、同じ数字の配列の数で小数点の位置が違う数に対する補整が複雑になっていた。改善が求められた。数計算の方はブリッグスの常用対数にとって代わった。常用対数にはネイピアも関係していた。(このとき、ネイピアは等比数列と等差数列の対応というアイデアを放棄していると志賀浩二は述べている。)

常用対数は、底・指数・対数・真数の関係を明確にしていく契機となっていると思う。
  ab=c(a^b=c)、logac=b(log_ac=b)
において、aは底、bは指数=対数、cは真数である。これは等比数列のなかから、初項1、公比a、項の順番bの等比数列の項cに着目したものである。それは等比数列と等差数列の対応を1点で取り上げたものとみることができる。

他方、等比数列と等差数列の直接の連続的な対応は、数ではなく幾何(直角双曲線の面積と横座標)に現れてきた。ヴンセント(発見、端緒)にはじまり、メンゴリは区間縮小法によって対数の存在の実数上で確認する。また、メルセンヌは対数を無限級数で表し、双曲線のグラフの面積として与えられる対数を自然対数と述べる。そして、ニュートンは双曲線の面積を無限級数と積分を通して明確にした(志賀浩二『数の大航海』6章無限解析への序曲、参照)。こちらの方から、連続複利の形(ヤコブ・ベルヌーイ,1683 年)として、また,対数が1 となる数c(ヨハン・ベルヌーイ,1697 年)として、ネイピア数は出現してきている。

常用対数から底・指数・対数・真数への流れを「等比数列と等差数列の対応」の抽象としてみることができるとすれば、自然対数による双曲線の面積の把握は「等比数列と等差数列の対応」の「具体」化とみることができる。減衰していく等比数列の式変形によるネイピア数の出現はこの2つの流れが合流することによって行われたということができる。

1と2の間に1節挿入するか、1、2のまま、脚注で補完するか、迷っている。