対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

カタランの三角形を振り返る

2020-02-27 | パスカルの三角形
カタランの三角形とは、次のように対角線上にカタラン数が並ぶ三角形である。
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これは縦方向だけの単位数列をもとに、パスカルの三角形と同じように、対角線を超えない範囲で、公式nCrn-1Cr-1n-1Crの関係を満たしながら作られている。
この三角形の一般項を求めようと思った。パスカルの三角形でいえば、nCr=n!/(n-r)!r!に対応するものである。
調べていくと、ある記事(注)から、Cn,m=((n+1-m)(n+m)!)/(n+1)!m!であることを知った。しかし、これの導き方は書かれいなかった。どのようにこの公式を導けばよいのだろうか。これを課題とした。

パスカルは隣り合う2つの細胞の比例関係を帰納し、その比例関係から組合せの公式nCr=n!/(n-r)!r!を作った。これを手本にして、比例関係を見つけようとしたができなかった。カタラン数の導き方には、組合せと漸化式の考え方があった。カタランの三角形には漸化式は参考にならないように思えた。組合せを参考すればいいような気になっていた。求める公式は高校数学程度のような気もしたが、もっと高度な数学が必要な気もした。わからないまま、1週間ほど経過した。最短経路の総数に着目すればいいのではないかと寝床のなかで思いついた。
カタラン数を求める図

を参考にして、次の図を作成し、カタランの三角形の一般項を導いた。


カタランの三角形3、カタランの三角形4を参考。

導いてみると、高校数学程度でレベルは低いのだが、自分の身の丈に合っていて、感動したものである。カタランの三角形は、パスカルの三角形と対照したもので、わたしの命名である。対角線上に(n=m)カタラン数が並ぶところは面白いが、カタラン数自体と比べれば、魅力に欠けているような気がしている。

(注)カタラン数 山上滋 http://sss.sci.ibaraki.ac.jp/teaching/catalan.pdf


カタランの三角形4

2020-01-24 | パスカルの三角形
カタラン数の変数は1つ(n)だが、カタランの三角形の一般項(数列)を求める場合、変数は2つ(nとm)必要になる。変数mは0≦m≦nの変域をもつ。

カタラン数を導くとき、n×nの碁盤目状の経路を考えたが、ここではn×mの碁盤目状の経路を想定して、最短経路を求めよう。


上の図で、P から Q への最短経路の総数(n×mの碁盤) は、(n+m)!/n!m!通りある。ここから範囲外の経路を除く。
範囲外へ初めて出る点を R とする。P→R の経路(緑色)を赤い線で折り返すと、P'→R (橙色)となる。P→R→Q (緑色)の経路はP'→R→Q (橙色)の経路と 1 対 1 に対応する。P'→R→Q の経路数は、(n+1)×(m-1)の碁盤に着目して、(n+m)!/(n+1)!(m-1)!となる。したがって、求める最短経路数は、(n+m)!/n!m!-(n+m)!/(n+1)!(m-1)!となる。これを計算する。

(n+m)!/n!m!-(n+m)!/(n+1)!(m-1)!
=((n+1)(n+m)!- m(n+m)!)/(n+1)!m!
=((n+1-m)(n+m)!)/(n+1)!m!

これをCn,mとしよう。
すなわち、
Cn,m=((n+1-m)(n+m)!)/(n+1)!m!
である。これがカタランの三角形の一般項になる。

nが与えられたときのmは、0≦m≦nの範囲を動く。(n+1-m)の因子は項数を制約する因子となっている。
n=3で、具体的にみておこう。このときmは0≦m≦3で、4つの数列ができる。
C3,0=4・3! /4!・0!=1
C3,1=3・4! /4!・1!=3
C3,2=2・5! /4!・2!=5
C3,3=1・6! /4!・3!=5

m=nのときは、
Cn,n=((n+1-n)(n+n)!)/(n+1)!n!
=1・(2n) ! /(n+1) ! n !
=(2n) ! /(n+1) ! n !
=1/(n+1)・( 2n) ! /n! n!
=1/(n+1)・2nCn
となり、カタラン数となる。

いま、縦方向に0≦n , 横方向に0≦m をとろう。0≦m≦nで、
Cn,m=((n+1-m)(n+m)!)/(n+1)!m!
を計算していくと、カタランの三角形になる。
最初から順序よく計算しなくても、直接、任意の細胞(C)の数を求めることができる。例、C7,4=4・11! /8!・4!=165。
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カタランの三角形3

2020-01-22 | パスカルの三角形
ネピア数eが関連するオイラー公式が有名だが、カタラン数と二項係数をつなぐ
cn=1/(n+1)・2nCn
も、オイラーの公式とよばれているという。
カタラン数は、様々な場面で現れてくるが、n×nの碁盤目状の経路のうち、対角線以下の最短経路としても有名である。これを使ってオイラーの公式を確認しておこう。(「高校数学こぼれ話、第17話」参照)
n×nの碁盤目状の経路に現れるカタラン数は次のように範囲外の経路を除くことによって求められる。

上の図で、P から Q への最短経路の総数 は2nCn通りある。
ここから範囲外の経路を除く。
(引用はじめ)
ここで、範囲外へ出る経路を考えて、範囲外へ初めて出る点を R とする。P→R の経路を破線で折り返すと、P→R→Q の経路はP'→R→Q の経路と 1 対 1 に対応する。P'→R→Q の経路数は2nCn-1 であるから、全体からこれを除いて、2nCn2nCn-1となる。
(引用おわり)
あとは、これを計算する。
cn
2nCn2nCn-1
=( 2n) ! /n! n!-(2n) !/( n-1) !(n+ 1) !
=( 2n) ! (n+1-n)/n! (n+ 1) !
=( 2n) ! / n !(n+ 1) !
=1/(n+1)・( 2n) ! /n! n!
=1/(n+1)・2nCn

ここで2nCnは、パスカルの三角形の対称軸(正方形の対角線)に並ぶ数列を表している。これを最初の部分を並べてみると、次のようになる。
1, 2, 6, 20, 70, 252, 924, 3432, 12870, 48620, …
これをそれぞれ
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, …
で割ると、最初のカタラン数になる。
1, 1, 2, 5, 14, 42, 132, 429, 1430, 4862, …

これらはカタランの三角形の数列の特殊な値(正方形の対角線、直角二等辺三角形の底辺)である。
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こんどはカタランの三角形の一般項を求めてみよう。

カタランの三角形2

2020-01-21 | パスカルの三角形
カタランの三角形をもう少し拡大してみよう。
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1835110275572100114301430
11119144154
42910012002343248624862
パスカルの三角形では、三角形の対称軸(正方形の対角線)に並ぶ数列には、次のような関係が成り立っていた。
12=1
12+12=2
12+22+12=6
12+32+32+12=20
12+42+62+42+12=70

同じようにカタランの三角形でも、正方形の対角線に並ぶ数列(カタラン数)は、角行の動きに並ぶ数列の2乗の和で構成されている。
12=1
12=1
12+12=2
12+22=5
12+32+22=14
12+42+52=42
12+52+92+52=132

12+82+272+482+422=4862

参考  パスカルの三角形
1111111111
123456789
1361015212836
141020355684
15153570126
162156126252
172884924
18363432
1912870
11111111111111111111111111148620
12+92+362+842+1262+1262+842+362+92+12=48620


カタランの三角形

2020-01-20 | パスカルの三角形
碁盤の上のパスカルの三角形は、縦の単位数列と横の単位数列に対して、
11111
1
1
1111
111111111111
左隣と上隣を加えることによって、次のように配置されていく。
11111
1234
136
1420111
11111111111170

これに対して、碁盤の縦方向の単位数列だけを出発点として、
1
1
1
1111
111111111111
左隣と上隣を加えることによって、数列を配置していく。最初、パスカルの三角形で1(左)+1(上)=2のマスには、1(左)+0(上)=1が入る。対角線を越えない範囲で、左隣と上隣をたしていくと次のような配置となる。
1
11
122111
1355111
1111411911414

対角線上にカタラン数が並ぶ。
1, 1, 2, 5, 14, …
これをそれぞれ
1, 2, 3, 4, 5,…
倍したものが、
パスカルの三角形の対角線に並ぶ数列、
1, 2, 6, 20, 70, …
である。












対称軸の数列とカタラン数

2020-01-16 | パスカルの三角形
トーナメント戦の総数や最短経路の数などを求めるときに出てくるカタラン数cn
cn=1/(n+1)・2nCn
で求められる。
ここで2nCnはパスカルの三角形の対称軸に並ぶ数列を表している。これを最初の部分を並べてみると、次のようになる。
1, 2, 6, 20, 70, 252, 924, 3432, 12870, 48620, …
これをそれぞれ
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, …
で割ると、最初のカタラン数は次のようになる。
1, 1, 2, 5, 14, 42, 132, 429, 1430, 4862, …

カタラン数について調べてみよう。

三角形の対称軸にならぶ数列2

2020-01-15 | パスカルの三角形
三角形の対称軸にならぶ数列には次の関係が成り立っている。
nC02nC12nC22+……+nCn22nCn
これは
(1+x) n(1+x) n=(1+x) 2n
のxnの係数を比較することによつて導くことができる。
左辺(1+x) n(1+x) n
=(nC0nC1 x+nC2x2+……+nCnxn)(nC0nC1 x+nC2x2+……+nCnxn)

xnの係数は、
nC0nCnnC1nCn-1+……+nCrnCn-r+……+nCnnC0
となる。
ここで
nCrnCn-r
だから、xnの係数は、
nC02nC12nC22+……++nCn2
となる。
右辺の2nCnのxnの係数は公式そのまま
2nCn
である。
したがって、
nC02nC12nC22+……+nCn22nCn
縮めると、
k=0Σn(nCk)22nCn
となる。

エクセルには平方和の関数SUMSQ、組み合わせの関数COMBINがある。これを利用すると最初の数列は次のようになる。
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123456789
1361015212836
141020355684
15153570126
162156126252
172884924
18363432
1912870
11111111111111111111111111148620
12+92+362+842+1262+1262+842+362+92+12=48620

パスカルの三角形と母関数5

2020-01-10 | パスカルの三角形
フィボナッチ数列の母関数をFとすれば、
F=f1+x2f2+x4f3+x6f4+……
となる。
fn=(1-x) -nだから、Fは次のようになる。
F=f1+x2f2+x4f3+x6f4+……
=(1-x) -1+x2(1-x) -2+x4(1-x) -3 +x6(1-x) -4+……
これは初項(1-x) -1、公比x2(1-x) -1の無限等比級数である。(母関数表わす冪(ベキ)級数は形式的な級数なので収束条件は考えなくてもいいのだという)。
F=(1-x) -1 / (1-x2(1-x) -1)
=1/((1-x)-x2)
=1/(1-x-x2)
これがフィボナッチ数列の母関数である。

F=1/(1-x-x2)
=1+x+2x2+3x3+5x4+8x5+13x6+……
0C01C0x+(2C01C1)x2+(3C02C1)x3+(4C03C12C2)x4+(5C04C13C2)x5+……+(nC0n-1C1n-2C2+……+n-[n/2]C[n/2])xn+……
まとめると、次のようになる。
F=1/(1-x-x2)=n=0ΣCnxn
ここでCn
Cnk=0Σ[n/2]n-kCk
である。

(注)
1/(1-x-x2)を内的に展開してn=0ΣCnxnを導く方法もあるようだが、複雑でよくわからない。ここでは、以前の記事(フィボナッチ数列の確認、フィボナッチ数列の一般項)の結果を外的に結びつけたものである。



パスカルの三角形と母関数4

2020-01-09 | パスカルの三角形
次のように並べたパスカルの三角形において、水平方向は母関数(1+x) nによつて、垂直方向は母関数(1-x) -nで統一的に見ることができた。


これをオリジナルの数3角形で確認してみよう。
1111111111
123456789
1361015212836
141020355684
15153570126
162156126
172884
1836
19
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これは将棋盤のように見えるので、駒の動きを援用しよう。水平方向の母関数(1+x) n(二項展開)の係数(1,11,121,1331,14641,……)は直角二等辺三角形の斜辺に並ぶ。この動きは角行の動きに見立てることができる(左下から右上の方向)。
垂直方向の母関数(1-x) -nの係数は、水平方向と垂直方向のどちらにも並んでいる。上からも左からも
f1 , f2 , f3 , f4 , …
が並んでいる。これは飛車の軌跡に見立てることができる。

フィボナッチ数列はこの将棋盤を桂馬跳びすることによって作られる。左側の単位数列の1から桂馬跳びしていく。例えば、赤色で示された1,5,6,1はフィボナッチ数列の7番目(左の単位数列の上から7番目に対応する)の項13になる。桂馬跳びだから上に2つ移動するときに右へ1つ移動する。右へ移動するときf2 , f3 , f4 , …を横切り、その項を取り込んでいく。上に2つ移動するから取り込む次の母関数の項の次数は2つずれる。
桂馬跳びによって取り込まれていく数は次のようになる。最上段(111…)は縦のf1である。2段目(123…)は縦の f2、3段目(136…)はf3である。フィボナッチ数列の最初は次のようになる。
1111111111
12345678
136101521
141020
15
11235813213455
111111111111111111111111111111
桂馬跳びで取り込む項は、次の母関数の次数を2つずらして、同次になった項と言いかえることができる。
フィボナッチ数列の母関数をFとすれば、
F=f1+x2f2+x4f3+x6f4+……
となる。
これを求めてみよう。