ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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米国はデフォルトによる世界恐慌を避けよ4

2013-10-16 10:24:54 | 経済
●米国指導層は国際的な威信低下を自覚し、最善を尽くせ

 米国がデフォルトに陥る危機が迫るなか、オバマ大統領の指導力の低下が目立っている。議会は、民主党が上院、共和党が下院を握るという「ねじれ」状態になっている。それは国民の意見が分かれ、ほぼ拮抗状態になっているからであり、大統領が本来持っている強い権限を行使することができない。これが外交・安全保障に大きく影響している。
 シリアで化学兵器の使用により約1500人が死亡したとされる問題で、オバマ大統領は、アサド政権が化学兵器を使用したとして、9月10日にシリアへの限定的な軍事行動と外交努力の双方を進める立場を訴えた。演説の大半は軍事行動の必要性を語るものだった。だが、世論には武力行使への反対が多く、議会でも軍事行動の承認が得られそうになかった。そうした状況で、ロシアのプーチン大統領がシリアの保有する化学兵器を国際的な管理下に置き、来年半ばまでに完全廃棄するという枠組みを提案した。オバマ大統領は、これに乗っかる形で、外交決着に転じた。プーチン案はシリアがこれを受け入れ、多数の国々が賛同したので、米国の選択は国際的な合意に沿った判断となった。軍事行動は、正当な理由のあるものであれば、これを行わない場合のマイナスは大きいが、弊害もまた大きい。今の米国には、国際世論に背いてでも、軍事行動を起こす力は、もはやなくなっている。そえゆえ、オバマ大統領の結論への評価は、単純にはできない。だが、結果として当初軍事行動を訴えたオバマ大統領が方針を二転三転させたという印象を国内外に与えた。
 そのうえ、9月末までに予算を成立させることができなかったことが、米国の外交に影響し、米国の国際的な威信が低下している。10月1日から政府機関の閉鎖という事態になると、オバマ大統領は10月6~12日に予定していたアジア歴訪を、10月3日に急きょ取りやめた。歴訪の期間、大統領はAPEC、TPP、東アジア・サミット等の重要会議に出席することになっていたが、これをキャンセルして、議会との財政協議に専念する姿勢を示したものである。デフォルトに陥る危機への対応という国内問題が、大統領の外遊取りやめという形で、外交に波及したわけである。諸会議にはケリー国務長官が代理で出席したが、国際社会で米国への信頼感は揺らいだ。その機に乗じて、中国が諸会議を主導的に進めた。会議に出席した習近平国家主席は、アジアの覇王のような顔をしていた。ASEAN諸国には、中国を警戒する国が増えているが、このまま米国が態勢を整え直すことができなければ、米中のパワーバランスは米国劣勢、中国優勢に傾くことになるだろう。
 デフォルトに陥る危機が米国に迫っていることは、10月10~11日にワシントンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも、重大議題となった。G20は、米国に財政問題の解決に向けた「緊急行動」を求める共同声明を採択した。G20が米国政府に「緊急行動」を求めたのは、米国が連邦債務問題への対応を誤れば、リーマン・ショックからようやく立ち直りつつある世界経済が再び深刻な危機に直面し、世界恐慌にさえ陥りかねないとの強い懸念を各国が共有したためだろう。
 だが、今のところ、米国政府にも米国議会にも、こうした要望をどこまで受け止め、事態の収束を進めようとしているのか、見えない。米国の大統領、民主党・共和党の幹部に対し、デフォルトによる世界恐慌を避けるため、また自国のためだけでなく、世界全体の共通利益の実現のために、最善を尽くすことを期待したい。(了)
 以下は、関連する報道記事。

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●平成25年10月4日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/131004/amr13100422390007-n1.htm
オバマ外交迷走 信頼喪失で揺らぐ威信 東南アジア歴訪取りやめ
2013.10.4 22:38

 【ワシントン=青木伸行】オバマ米大統領の指導力が、国内外において低下している。内政問題では上院を民主党、下院を共和党が握る議会の「ねじれ」が足かせとなり、外交、安全保障は精彩を欠いている。シリア情勢に続く政府機関の一部閉鎖が、大統領の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)首脳会合などの出席取りやめという形で外交にまで波及し、米国への信頼感が揺らいでいる。
 米国は「世界の警察官」であり続けるのか-。これはシリア情勢への対応で迷走するオバマ大統領に、国内外から突きつけられた問いかけであった。
 大統領の答えは「米国は世界の警察官ではない」。ロシアの提案を「渡りに船」とばかり、大統領が外交決着に転じた背景の一つとして、消極的な世論の存在が指摘されている。
 シリアへの武力行使には、共和党議員を含む多くの議員が反対、あるいは消極的で、こうした議会と世論の動向ゆえに、米国の現状を「新孤立主義」と位置づける向きもある。「新」と付くのは、米国が第二次大戦前まで、モンロー主義に代表される孤立主義を原則としていたことを踏まえたものだ。
 米中枢同時テロに続くアフガニスタン、イラクでの「テロとの戦い」、そして経済危機で疲弊した国民と社会は、国防予算の削減も手伝い「内向き」の傾向を強めている。そこへ政府機関が一部閉鎖され、さらに米国債がデフォルト(債務不履行)に陥る事態ともなれば、「内向き」に拍車がかかることは間違いない。
 閉鎖の余波で、大統領が一連の外遊を取りやめたことは、政権のアジア重視戦略に水を差す。重要な国際会議と交渉だけでなく、米軍の展開に関する新軍事協定の締結交渉が進むフィリピン訪問を延期したことで、米国の外交、安全保障に与える打撃を危惧する声が、急速に高まっている。
 ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)のマイケル・グリーン元国家安全保障会議アジア上級部長らは、アジア太平洋地域における再均衡や、対中国戦略の観点から「米国を抑制することを模索する国家(中国)が、より挑戦的な態度を取るという結果を招く」と懸念を表明した。
 外交問題評議会のチャールズ・カプチャン上級研究員も「米、中いずれに傾斜するのか決めようとしているアジア地域に、重大な影響を及ぼす」と指摘する。

●産経新聞 平成25年10月12日

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/131012/fnc13101222040007-n1.htm
「危機感あるのか」米の政争打開へ結束 G20声明 “震源地”なお反応鈍く  
2013.10.12 22:03

 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が米国に財政問題の解決へ「緊急行動」を迫ったのは、世界恐慌の入り口という抜き差しならぬ状況が各国を結束させ、G20自らも事態打開へ動き出したことを示す。だが米側の反応はなお鈍い。
 G20の会場となった国際通貨基金(IMF)本部と目と鼻の先にあるホワイトハウスでは、デフォルト(債務不履行)回避に向けた協議が11日も続けられた。オバマ大統領は野党共和党の上院議員団と面会、ベイナー下院議長とも電話で会談した。
 共和党は前日に提案した6週間分の連邦債務の上限引き上げに加え、閉鎖された一部政府機関も暫定的に再開させる案を提示したとみられるが、合意には至っていない。
 麻生太郎財務相はG20閉幕後の記者会見で、米議会に迅速な行動を促す上で、「G20のメッセージが効果のある道具として使われるだろう」と指摘した。発言には、震源地のワシントンで開かれたG20が、膠着(こうちゃく)状態に陥っていた財政協議の打開に大きな役割を果たせるはずだとの読みがある。G20の議長国ロシアのシルアノフ財務相も「米国は可能な限りのことを実行すべきだ」とたたみかけた。
 シルアノフ氏によると、ルー米財務長官とバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長はG20で、デフォルトに直面するとされる17日までに「問題を解決する」と明言。米国は国際社会の圧力の前に、約束手形を切らされた格好だ。
 だが、注目のルー氏は記者会見すら開かず「大統領は政府機関の再開と債務上限引き上げを議会に要請している」と木で鼻をくくったような声明を出しただけ。一方で欧州や日本に構造改革や成長の加速を促し、「本当に危機の自覚があるのか」と白い目で見られても仕方なさそうだ。
 一時は進展の兆しも見えた財政協議も、大統領と共和党が駆け引きに終始。カーニー大統領報道官が記者会見で、債務上限の6週間分引き上げという共和党提案について「(11月下旬の)感謝祭休暇を前に全く同じことが起きる」と急場しのぎに過ぎないと指摘するなど、双方の溝はなお深いままだ。
 デフォルトが現実となれば、世界経済の大混乱とともにG20の威信まで地に落ちるだろう。米国もG20も剣が峰に立たされた。(ワシントン柿内公輔)
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