ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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イスラム過激派が進めるグローバル・ジハード運動の危険性1

2015-01-13 08:52:09 | 国際関係
 1月7日フランスの風刺週刊紙「シャルリー・エブド」のパリ市内の本社が銃撃され、同紙の編集者や風刺画家を含む12人が死亡、20人が負傷した。
 「シャルリー・エブド」は、たびたびイスラムの預言者ムハンマドの風刺画を掲載し、イスラム教徒の反感をかっていた。事件当日発売された最新号は、イスラムの聖戦を風刺する漫画と記事を掲載していた。また襲撃を受ける直前には、イスラムのスンニ派過激組織「イスラム国」の指導者バグダーディを風刺する漫画をツイッターに掲載していた。
 私もその風刺漫画を見たが、挑発的かつイスラム教徒にとっては冒涜的な表現となっている。もともと反感を持っている者が激怒し、凶行に及んだものと思われる。もちろんテロによって生命を奪うことは、許される行為ではない。だが、表現の自由は絶対的なものではない。他の自由権とのバランスが必要である。自由は「他者に危害を与えない限り」という原則にのっとったものでなければならず、またその行使には社会的な責任を伴う。
 仏紙銃撃テロの犯人らはフランス生まれのイスラム教徒と見られる。事件には、2009年にイエメンとサウジアラビアの武装組織が合併して成立したアルカーイダ系武装組織「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」が関与している模様である。同時に、犯人らがイスラム国への忠誠を表明していることから、イスラム国との関係もありそうである。イスラム国を称する組織は、その過激さのためにアルカーイダから破門された。昨年6月に「カリフ制国家」の樹立を宣言し、他のアラブ諸国や欧米から多数の戦闘員や資金を集めて急成長している。アルカーイダ系勢力は、新興のイスラム国との間で、ジハード(聖戦)の主導権をめぐって競合している。だが、個々のテロリストは、組織の論理とは別に自己の信念で行動するだろう。
 今回の事件によって、宗教への批判を含む表現の自由を重んじる欧米諸国の価値観と、神や預言者のあらゆるものへの優先性を認めるイスラムの価値観の対立が、改めて鮮明になった。今後、テロの連鎖的な発生、報復に継ぐ報復、キリスト教とイスラムとの文化的摩擦の増大、EU諸国における移民政策の見直し等が予想される。イスラム過激派は、アルカーイダ系を中心とする活動から、イラク・シリアにまたがるイスラム国を根拠地とする活動へと規模を拡大している。イスラム国に対しては、米欧諸国が空爆を行っている。これに対する反撃は、テロの形で行われる。イスラム過激派のテロが前例のないほど国際的に拡散・激化するおそれがある。

 私は昨年7月、「イラクが過激派武装組織の進撃で内戦状態に」を書いた。
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion12.htm(目次から56へ)
 イスラム国についてその後のことを補足すると、昨年8月、オバマ米国大統領は、イスラム国に対して、限定的な空爆に踏み切った。その後、米国を中心とする有志国連合が、イスラム国への国際的な包囲網を結成している。今回の事件が起こったフランスはイスラム国への空爆に参加している国の一つでもある。イラクでの掃討作戦は、米軍などの有志連合軍が空爆や情報収集、イラク軍への作戦計画支援などを担い、地上戦をイラク軍とクルド人部隊「ペシュメルガ」が遂行している。空爆は大きな成果を上げておらず、地上戦は長期化の様相を呈している。
 オバマ大統領は地上戦闘部隊を派遣しない方針を繰り返し表明しているが、いまだかつて空爆だけで、国際テロリスト組織を殲滅できたことはない。昨年11月13日米軍制服組トップのデンプシー統合参謀本部議長は、下院軍事委員会の公聴会で、イラク北部モスルやシリアとの国境地帯に、小規模の米軍地上部隊を投入することも選択肢として検討していると証言した。投入するのは、戦闘部隊ではなく、イラク軍を支援するアドバイザーの派遣と見られる。「投入を(オバマ大統領に)進言するか、現時点では予測できない」と述べたと伝えられる。
 一方、イスラム国には、中東だけでなく、東南アジアや欧米等からも、戦闘に加わる賛同者が集まってきている。イラク軍とクルド人部隊が善戦すればしたで、イスラム国を支援する外国人戦士が増えるだろうから、簡単に終結するとは思われない。仮に空爆で最高指導者のバグダーディを殺害または致命傷を与えたとしても、別の指導者が継続して報復戦を行うだろう。

 次回に続く。

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