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2041- 佐伯周子ピアノリサイタル、2016.1.6

2016-01-07 17:18:48 | リサイタル

2016年1月6日(水) 7:00pm 東京文化会館小ホール

オール・シューベルト・プログラム (曲目詳細は一番下に別記)

作品番号無しで生前出版されたピアノ曲全15群   28′

ピアノ・ソナタ第10番嬰ヘ短調D571+D570   9′3′8′
  (パウル・バドゥラ=スコダに拠る補筆完成版使用)

Int 20′

ピアノ・ソナタ第20番イ長調D959   17′10′5′12′

(enocre) 楽興の時  2′

ピアノ、佐伯周子


初めて聴くピアノストです。色々とシリーズもののリサイタルの一環のようです。
後半の第20番は最後ひとつ前のソナタ。45分ほどかかるヘビーな曲。前半の10番でも感じたが形式デフォのシューベルト。当時デフォの形式があらかじめ大前提にあるので、つまりルールがあってそれを見据えての作品ですから形式からの逸脱野望行為があまりなければ、それ以外のこと、主題や曲想をひたすら考えれば良くて多作なのもなんとなくわかる、といいますかピアノ・ソナタというぐらいですから、沿って色々なことができるし深みにはまっていくこともできると思えました。
20番の第1楽章はかなり長い。聴くほうとしては普段シンフォニーにばかり浸っていますのでソナタ形式の作品であればそれは主題からなんからよくわかるが、ピアノのソロ作品となると、そこらへんあまり慣れていないところ、プログラム冊子の解説が良く、おおむね理解の範囲内におさめることができた。ということであっという間の第1楽章17分を思う存分楽しむことができました。後続楽章の長さバランスが心配になるぐらいのロングな1楽章、ピアニストの好演で全体バランス良く、つまり最後までの見通しを最初から感じてプレイしているピアニストと思いましたが、彼女の好演により充実した楽章でした。
第2楽章は雰囲気似てますね、ベートーヴェン7番シンフォニーの第2楽章に。
聴いている間中、あれがイメージされました。ベト7の2楽章は以前であれば誰か指揮者とか演奏家が亡くなった時にその直後の演奏会などで追悼の意をこめて演奏されました。今はあまりそのようなことが無くて、あってもバッハのアリアが定番でしょうか。
それやこれや、シューベルトの2楽章、色々なことが頭の中をめぐりました。同楽章後半は別のシーンに展開していっているような気配ですね。
終楽章は第1楽章の主題回帰、そして割と思いいれたっぷりに終わる。見事な曲です。

佐伯さんのピアノというのは大変に形式感を意識した演奏のように感じました。シューベルト自身はからだの一部になっている形式感。そこの違いが色々なことを生み出している。
音楽の流れというのは形式を意識しなくてもよくなった時に自然に出てくるような気がする。形式とは定義であって音楽の構造の出来具合ということとはこれまた少し違う気がする。形式感を意識の中で保ったまま流れをうちだしていくには最初に構造の破壊を行なって再構築していく、まぁ、意識レベルでの話だが、それが、今出てくる音楽に自然なうねり、高まりをもたらし、結果として自然な流れが出てくる。この際、フォルムが乱れるように感じるのは幾何学的な話の外面現象なのであって、そこから見た空間のゆがみこそが正しい寸法なのかもしれないという生き物の音楽を認識できないからだと思う。これはFが自らの棒で実践し示したことでもあった。と話が大幅にそれましたが、突き詰めますと、形式感への深い寄り添いはそれによって何かを失うという話しではない。もう一つ深くはまれば音楽のうねりや高まり、そして自然な流れがそこに出てきたのではないかと。
理解してほしいという感じが割とあったように感じました。それによってシューベルトを大いに理解できたことは自分にとって良かったことではありました。

前半2曲目の10番ソナタ。最初の‘_ _ _ - _ ’という音の飛び跳ねが印象的な主題から始まり、いかにも短調のストイックなシューベルトの一面がよく見える作品で一緒に深みにはまっていくことができました。理解の深いコントロールの効いた良い演奏でしたし。

最初の全15群は、作品番号無しのピックアップと演奏順番も含めて色々な方々のちらかの集大成だと思いました。作品が羅列的展覧物としてではなくまるで関連があるかのようにチェーンされていて興味がどんどんつながっていく。最初のほうにかなり長いピースがあったと思いますが、全体に山をうまく作っていて楽しめました。照明が真っ暗というわけではないのでプログラムを見ながら追えたのも良かったですね。

全体として、第28回シリーズとか、ベーレンライター版とか、第20回リサイタルとか、全曲演奏会VOL.17といったあたりの記録カウント的なことはとりあえず横のほうに置いて、継続はちからなりとは言いますけれど、そこらへん全部一旦横に置いて、演奏会の中身だけで十分に満喫できました。
ありがとうございました。
おわり


(1)作品番号無しで生前出版されたピアノ曲全15群
(1-1)「ディアベリ変奏曲」ハ短調 D718(1821.03作曲,1823.06.09出版)
(1-2)「吟遊詩人の嘆き」変イ長調 D780/6(1824.12.09出版)
(1-3)ワルツ 変イ長調 D978 3/4 26小節(1825.12.29出版)
(1-4)「ロシア風の歌」ヘ短調 D780/3 Allegretto moderate 2/4 54小節(1823.12.19出版)
(1-5)2つのレントラー D366/6 + D146/2 3/4(1824.02.21出版)
第1番 ハ長調 24小節 第2番 イ長調 16小節
(1-6)ドイツ舞曲 ニ長調 D769/2 3/4 16小節(1823.12.19出版)
(1-7)トリオ付きドイツ舞曲ニ長調 D779/8 + D779/9 3/4 16+16小節(1825.02.07出版)
(1-8)2つのワルツ D980 3/4(1826.12.23出版)
第1番 ト長調 24小節 第2番 ニ長調 16小節
(1-9)ワルツ ト長調 D979 3/4 16小節(1826.12.23出版)
(1-10)3つのエコセーズ D781/4 + D782 + D781/7 2/4(1824.02.21出版)
第1番 ト長調 16小節 第2番 ニ長調 16小節 第3番 ト長調 16小節
(1-11)ワルツ ハ長調 D980D 3/4 16小節(1828.01.26出版)
(1-12)3つのドイツ舞曲 D971 3/4(1823.01.10出版)
第1番 イ短調 16小節  第2番 イ長調 24小節 第3番 ホ長調 24小節
(1-13)ワルツ 変ホ長調 D366/17 3/4 16小節(1824.12.22出版)
(1-14)コティヨン 変ホ長調 D976 3/4 24小節(1825.12.29出版)
(1-15)「グラーツのギャロップ」ハ長調 D925 2/4 24小節(1828.01.05出版)

(2)ピアノソナタ第10番 嬰ヘ短調 D571 + D570 バドゥラ=スコダに拠る補筆完成版使用(1817.07作曲)
第1楽章 Allegro moderato 嬰ヘ短調 2/2 ソナタ形式 141(+101)小節
第2楽章 Scherzo : Allegro vivace ニ長調 3/4 3部形式 41+30小節
第3楽章 Allegro 嬰ヘ短調 2/4 ソナタ形式 173(+128)小節

(3)ピアノソナタ第20番 イ長調 D959(1828.09作曲)
第1楽章 Allegro イ長調 4/4 ソナタ形式 357小節
第2楽章 Andantino 嬰ヘ長調 3/8 3部形式 202小節
第3楽章 Scherzo : Allegro vivace イ長調 3/4 3部形式 79+34小節
第4楽章 Rondo : Allegretto イ長調 4/4 ロンドソナタ形式 382小節

以上


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