2016年12月7日(水) 7:00-9:00pm 小ホール、東京文化会館
バンジャマン・アタイール タクディマ(日本初演) 29′
ラヴェル マラルメの3つの詩 4′5′3′
ソプラノ・アルト、半田美和子
Int
ブーレーズ ル・マルトー・サン・メートル 2′5′2′5′5′5′1′6′9′
ソプラノ・アルト、半田美和子
板倉康明 指揮 東京シンフォニエッタ
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素晴らしい企画のプログラム。
東京シンフォニエッタと書いてあるが、ごく少人数による演奏。プログラムノートに楽器編成が書かれていない。特に日本初演ものもあるし、ちょっと痛い。
1989年生まれのアタイールの日本初演もの、タクディマ。アラビア語で「贈り物」。ブーレーズ90才の際の贈り物ということだから、彼にデディケートされたものと推測される。
楽器編成は左から、vn-hrp-pf-ob-trb
これら5人でそれぞれの楽器と近くに置いたパーカス類を叩く。
中身はプリ・スロン・プリ等々オマージュもののようです。4つのセリーを使用。シリアルものですね。
初めて聴くのでよくわからないが、順番ありそうな構造、最後のまとめ上げなど、わりと明瞭に聴ける。
30分というロングなピース。現代ものの弱点のひとつは長く続く曲を書けないというあたりにあると思うのですが、タクディマはそこらへん克服しているようだ。ユニークなインストゥルメント活用で多彩な響きとしっかり構造からくる音楽の出来具合の良さというのが大きい。ウエットな流れと時折見せる立ち上がりの良さが音楽に変化を与えている。
師としたブーレーズが横で見ているのかもしれない。
マラルメ
半田さんのクリーミーで柔らかく伸びのある声が魅力的。作曲者これ以上精緻な音楽はありそうもないといった細やかな音の運び、歌が情感を湛えつつ進行。なんだか積分も微分も因数分解もこれ以上は出来そうもない。
マラルメのためいき、あだな願い、躍り出た、膨らみと上昇から。この3ピース。詩を味わいながら聴く。神経細胞の直聴き(じかぎき)みたいな雰囲気ですね。コンパクトなホールで味わうラヴェル最高ですな。
主なき槌
ブーレーズの傑作。何度か聴くと構造が見えてくる。書くときは相応な時間をかけて工夫を凝らして策を練って作品に仕上げていくのだと思うが、出来上がった作品というのは一瞬のひらめき技のようにも聴こえてくる。メシアンのトゥーランガリラなんかもそうですね。一筆書きのような一気作品のように聴こえてくる。スバラシイ。
研ぎ澄まされた音符。都度、ストンストンと切れ味鋭いイディオム。さえわたるブーレーズのひらめき技。キレキレのプレイも腕前良くこれまたさえわたる。
声の扱いも含め最後の9曲目は大きいですね。濃縮ジュースを圧縮したようなおもむき。
生で聴くブーレーズ作品の味わいは深い。
最高の企画でした。ありがとうございました。
おわり