河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2235- セビリアの理髪師、新国立、アンジェリコ、東フィル、2016.12.7

2016-12-07 23:54:38 | オペラ

2016年12月7日(水) 2:00-5:30pm オペラパレス、新国立劇場、初台

ロッシーニ 作曲
ヨーゼフ・E.ケップリンガー リヴァイヴァル・プロダクション
セビリアの理髪師

キャスト(in order of appearance at Act)
フィオレッロ、桝貴志(T)
アルマヴィーヴァ伯爵、マキシム・ミロノフ(T)
フィガロ、ダリボール・イェニス(Br)
ロジーナ、レナ・ベルキナ(Ms)
バルトロ、ルチアーノ・ディ・パスクアーレ(Br)
ドン・バジーリオ、妻屋秀和(Bs)
ベルタ、加納悦子(Ms)
隊長、木幡雅志(T)
合唱、新国立劇場合唱団

フランチェスコ・アンジェリコ 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団


(duration)
Ov.  6′
ActⅠ 90′
Int
ActⅡ 57′


ロッシーニ・クレシェンドとともに人達が増え、舞台は騒然となってくる。
ケップリンガーによる圧巻のプロダクションです。

この演目はこれまで、1998/9シーズンから断続的に4種のプロダクションで6シーズン上演されていて、7シーズン目となる今回はケップリンガーによるもの。彼の舞台は4回目(2005/6)、5回目(2006/7)、6回目(2012/3)と3シーズンにわたり取り上げられていて今回が4回目。演目同様、あたりの演出ですね。今日のキャストもこれまで同様ほれぼれするもので大当たり。


演出、動き、衣装、歌、揃った内容で大いに楽しめた。
序曲で幕が開き、奥にある舞台セットが前に移動、そのまま回り舞台となるあたり新国立の仕掛けの規模を感じないわけにはいかない。
8人衆、序曲が始まると前に横一列にそろい踏みしパントマイム風なパフォーマンス、ときおりみせるストップモーションがしゃれている。幕中でもたびたび出てくる。
登場人物は一人を除き8人衆のキャラクターがものの見事にきまっていて素晴らしすぎる。序曲からいい感じ。バジリオ妻屋が一番たっぱがありそうな雰囲気で頼もしい。

奥の舞台がグイーンと前にせせり出てくる。1階2階、真ん中に廊下風な間仕切りがあって右左に2部屋ずつ。原色系のカラフルさがお見事で、8人衆の衣装の具合とよくマッチしている。観ているだけで楽しくなる。かみてにはネオン小屋。これは何かと。

序曲でこれだけ派手に色々あると、歌い手も、もはや、劇をしなければならない。その覚悟は十分すぎるほど伝わってくる。やるしかないよね、役者になり切る、見ものです。

ケップリンガーによるシチュエーションは、フランコ政権下の1960年代。
とりあえず、これを頭の中にインプット。なるほど、回り舞台左サイド1階のリビング風な部屋のテレビはザラザラした白黒映像。何が映っているのかよくわからない、なんか建物風な感じ。
かみてのネオン小屋el cambio、これは家政婦ベルタ加納が経営する娼家なんだろう。わりと目立たない衣装だったベルタがギラギラ衣装で歌う第2幕のベルタのアリア、あれは素晴らしいもので加納さん最高の歌唱、そこでの演技はお金を周りにあげること。お金と愛情のやりとりはこの舞台でのテーマであるのだなと強く感じさせる。


キャラクターのはまり具合、演技、歌唱、どこに目をやっていればいいのかわからなくなるぐらいのもので、特にロジーナのベルキナさんには歌ってなくても目がいってしまう。体当たりの演技。観てる方としては痛し痒し。自然で大胆でバレエチックな滑らかダンス、どれをとっても素敵。カヴァティーナ、アリアの大らかさも合わせ、シビレマシタ。素敵ですね。

伯爵役のミロノフは半端ない容姿で、あれなら誰でもコロリだろうね。リンドーロ、アロンソ、色々と演技はするものの、彼らには化けきれないほれぼれスタイルだものね。
2幕大詰め、嵐の舞台の見事さ、そしてそれを経て3重唱のあとの伯爵のアリア、もう逆らうのをやめろ。テノールのコロラトゥーラを満喫。ミロノフさんにも唖然茫然です。

フィガロとロジーナはなんだか仲の良い恋人っぽい雰囲気。友達感覚越えのアトモスフィアを感じさせる演出。まぁ、このフィガロ、そのままモーツァルトに飛んで行ってもまるで違和感なし。
体躯といい、俊敏さといい、ウィットにとんだ演技といい、言うことなしですな。同じバリトンのバルトロと張り合う歌唱、このサイズにしてこの歌唱。バルトロをやりこめるのは伯爵のすることではなくフィガロの役目と認識。
頭のところフィオレッロに続き、いきなりの登場アリア。圧巻でしたね。最初から圧巻という話です。

バルトロのキャラは大まじめ人物風味満載の初台初出演のパスクアーレさん。まるでオペラを歌うために生まれてきたようなお名前。
大真面目になればなるほどブッファ風味が出てくる感じなんだが、まぁ、こけない、夢見る医者といったところか。よくとおる声でバリトンの魅力をこれまた満喫。このオペラはバルトロのウエイトが高いですね。歌い切れないアリアは煮え切れない役どころ我慢強く。
大詰め、ロジーナに振られ、みんなに騙されと散々なお医者さん、ブーケトスならぬ投げやりほっぽり投げのお花をしっかり受け止めたのは加納ベルタさん。なんだろう、この決まり具合は、笑。このシーンだけでなく、工事やぐらへの財布投げなど、トスが良くきまっていた舞台で、こういうあたり締まった良い舞台と感じさせてくれるひとつのポイントでもあって、すっきり。鮮やかな舞台。

バジリオ妻屋、チャリライダーになったり、ホップステップジャンプ、細かい動きで大いに見せてくれました。カーテンコールでは中心人物なのではないかというくらいの重力を感じさせてくれた。
キャラクターで魅せてくれました。まぁ、もっと歌を聴きたかったというのがこちらの本音。

あと、隊長さんは憲兵のような雰囲気。時代設定より前の時代の日本を感じさせてくれた。


ケップリンガーの演出は歌い手の動きが非常に多い。歌手兼役者といったところを求めていて、一瞬、昔の東ドイツ風なやり口がかすかに頭をかすめる。あの頃と違うのは歌い手が手堅さを越えたものになっているということ。
動きが歌い手と別なところでもたくさんあるので、目移りするシーンも結構多い。棒立ち演技オペラの真逆をいく感じでこれはこれで多く楽しめる。痛し痒し的なところは観る側のものだろう。
原色的なカラフルな舞台、それに衣装。目にしっかり焼き付く。それに、嵐のシーン。嵐と言ったら嵐なんだと。原色的な解釈、ここらへんもすっきりしますね。秀逸な演出で大いに楽しめました。
完成度が高い演出にひとつ穴は必要なもんなんだよ、とケップリンガーが思ったのかどうか知りませんけど、9人目は違和感あり過ぎて声も出ない。これはこれで印象的ではあった。
おわり

 


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。