河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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1988- ダナエの愛、東京二期会、準・メルクル、東フィル、2015.10.2

2015-10-03 01:08:15 | コンサート・オペラ

2015年10月2日(金) 6:30-9:55pm 東京文化会館

東京二期会 プレゼンツ
シュトラウス 作曲
深作健太 プロダクション

ダナエの愛  (舞台上演日本初演)
 第1幕 37′
 Int
 第2幕 44′
 Int
 第3幕 67′

キャスト(in order of appearance)
1.ダナエ、 林正子 (S)
2.ポルクス王、 村上公太 (T)
3.クサンテ、 平井香織 (S)

4.ゼメレ、 山口清子 (S)
4.オイローパ、 澤村翔子 (Ms)
4.アルクメーネ、 磯地美樹 (Ms)
4.レダ、 与田朝子 (Ms)

5.ミダス、 福井敬 (T)
6.ユピテル、 小森輝彦 (Br)

7.メルクール、 児玉和弘 (T)


二期会合唱団
準・メルクル 指揮
東京フィルハーモニー交響楽団


演奏会形式ではなく舞台としては、この日が日本初演。演出は深作健太、映画監督・脚本家・演出家。
舞台での日本初演がこの日ですから、世界的にも上演がかなり限られているものだろう。そのような中でひねりをいれた演出だと、観た経験がレアなだけにわかりにくい部分も出てきそうな気配があったのですけれど、色々とおもしろいところはありつつ、シーンは音楽に合わせた象徴的なスタイルを前面に出したもので、それなりにわかりやすかったと思います、第2幕までは。
見た目は1,2幕は基本的に同じつくりであまり動かない。3幕はそれに若干手を加えたような感じ。
第一印象は、幕毎に段々良くなるオペラ。


幕が上がるといきなり牢屋みたいな格子の部屋の中にさらにくさりにつながれたダナエが横たわっている。借金に追われている父のポルクス王はちょっと元気が良すぎる気もするが、活動的だから借金も増えるのだろう。
ミダスがミダスの使者、ユピテルがミダスとなって出てくるのでちょっと混乱するが、字幕を追っていればだいたいわかる。
林ダナエはきれいな声で斉唱。今一つ声に伸びがなく、これだ、という決め手に欠ける。最終的には終幕30分の絶唱となりましたけれど。
福井ミダス(ここではミダスの使者)は、これはワーグナー他のときも同じことをいっているのであまり繰り返しませんが、喉が横広といいますかそのような幅の声で、それにビブラートがかなりかかります。自分の持っているテノールのイメージとは少し異なります。
1幕大詰め、舞台奥が割れ階段の上から黄金のまるで、マグマ大使の様な衣装のユピテル(ここではミダス)が下りてきて、ひと声あり、幕。
シュトラウスの音楽はかなり渋め、メルクル棒がきれいにそろえてすすんでいくのでこれはこれでわかりやすい。共感の棒ですね。


2幕は1幕と同じセットで、真ん中はベッド。
この幕ではミダスがダナエに触れ黄金になってしまうのですが、ミダスとダナエの二重唱、そしてユピテルの独唱が圧巻。
舞台はダナエが黄金になるあたりの光の具合がいいです。それから舞台手前で両手を差出し黄金色に光るミダスの手、象徴的な場面です。
ダナエ、ミダスの二重唱は3幕までひきずっている感触で、同じような重唱が続くがもはやこれは前置きみたいなもので、優に30分を超えたと思われるミダスとユピテルの対話。ここが圧巻でした。

第2幕まではシュトラウスの持っているしなやかな音楽が、ヴェルディ的にうなって幕、そんな感じでまことに不思議な音楽の流れ。


その2幕エンディングの二重唱をひきずった終幕は、廃墟の中、投棄された冷蔵庫、壊れかけた傘立ての前でダナエとミダスの熱い二重唱、ユピテルは槍も含めなぜか完璧なヴォータンスタイル理解できない、メルクールはガイガーカウンター片手にオレンジ色の放射能防護服、それを脱いだら聴診器をぶら下げた医者モード、ダナエとユピテルの30分に及ぶ圧巻の対話二重唱のあとの幕切れではミダスが背中に大根やらごぼうやら背負って廃墟の奥から出てきて、ダナエとハッピーエンド。

第1幕終盤のユピテル扮する黄金のミダスが現れた時は、この演出はマグマ大使的方向に行くのかなと思ったのだが、結局この奇怪な第3幕はフクシマ後の廃墟と後で知る。
この第3幕は1,2幕の演出とまるで馴染まないだけではなくて、オペラの底辺に流れるなにかそのようなものもまるでないものであって、フクシマの問題提起がオペラダナエと一致する線も点もないと思う。
オペラの前史としてではなく2幕の後、カタストロフィが起きたということなのだと思うが、あえていうならば、この3幕まででは解は無い。演出をした方が追加の幕として第4幕を例えばパントマイム的に解決方法を示すといった趣向があったなら奇抜ながら創作の妙を感じたかもしれない。日本での舞台初演でそこまでリスクを冒すこともないと思うが、冒したと同じぐらい不可解な演出ではありました。


シュトラウスのややウェットな歌の伴奏メロディーを透明に流れるように、メルクル棒はそこにとどまることなく波が高くなったり低くなったり、音楽がうねっていく。素晴らしく生きた演奏でいい味付けでした。
特に、30分におよぶダナエとユピテルの対話2重唱、見事に美しい準メルクルの伴奏棒、なにも言うことはない。

メルクルCDの無理配布あり

ありがとうございました。
おわり