散歩日記X

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2012東京紀行(8) 美術館・ギャラリー巡り

2012年06月23日 16時37分13秒 | ART
昼食を食べ終わり、取って返して「出光美術館」へ。今やっている展覧会は「祭 MATSURI」という祭や名所を舞台にした作品なのである。いくつか作品を紹介しよう。



「月次風俗図扇面」:御霊会や興福寺で行われた田楽図が描かれている貴重な作品。
「祇園祭礼図屏風」:単独で祇園祭を描いたものとしては最古の作品らしい(重文)。祭も凄く盛り上がっているというよりは、ひそやかな楽しみという感じがでている。
「洛中洛外図屏風」:三十三間堂から、大仏殿(昔京都にあった)、歌舞伎小屋、清水寺、金閣寺、二条城など京都の名所が描かれた作品。人々の様子も描くため、建物とのサイズバランスがかなりくずれている。

「江戸名所図屏風」:こちらは東照宮、浅草寺、不忍池、神田川、日本橋、江戸城、銀座、新橋と江戸の名所が勢ぞろいだ。神輿を担ぐ様子や(これは威勢がいい)、喧嘩? のシーンも描かれている。
「浄瑠璃芝居看板絵屏風」:首や胴体がぶった切られている、芝居のイメージ画らしい。
「草花蒔絵螺鈿手箱」:五段重に小皿が5枚、杯、酒が半升くらい入りそうな入れ物のセットで、お祭り気分が湧き上がってくる。

烏龍茶、煎茶、ほうじ茶の冷たいのと暖かいのが選べるサーバーで、冷たい烏龍茶を頂きながら休憩。




→皇居方面。

次は皇居方面に歩く途中、明治生命館という立派な建物(重文)があり、内部の見学ができるというので入ってみた。写真をそこそこ撮影したので、別項で紹介してみたい。しかし財閥系の建物は三井美術館といい、三菱一号館美術館といい、立派なものが多い。



皇居内に入り「三の丸尚蔵館」へ。現在は「内国勧業博覧会」という明治の日本で行われた博覧会に出品された作品の展示が行われている。ここでは、あまり有名ではない(知っている人は知っているのだろうが)こういう展覧会があるので、東京に来る時にはついチェックしてしまう。



西村總左衛門「塩瀬友禅海棠に孔雀図」:友禅でかなり精巧な絵図。凄い。
印藤真楯「古代応募兵図」:応募兵(実際は徴兵だろう)に子がすがり、妻が泣いている作品。前年に徴兵令が改正されたため描かれたので、戦争反対かと思ったのだが、こういう博覧会に出品されているということは、富国強兵の奨励なのだろうか。

松井昇「かたみ」:華美を自粛するために描かれた作品らしい。
西村總左衛門「天鵞絨友禅嵐ノ図」:今度は巨大な鷲を描いたもの。この人の作品はスケールが大きい。

こういう工芸作品はたまに見ると非常に面白い。ここで地下鉄に乗ろうと三越前方面へ。すると「GALERIE SHO」という現代アートのギャラリーが見つかった。ちょっと入ってみよう。



ELIZABETH CRAWFORD「THE DISH RAN AWAY WITH THE SPOON」:小さな瓶づめと缶、小さなスプーンが2本。静かな作品だ。
BRIGITTE ZIEGER「WOMEN ARE DIFFERENT FROM MEN」:銃をこちらに向ける女。紙には10発の銃弾で開けられたらしき穴があいている。蝶の燐粉や鉛筆で描かれたちょっとドキッとする作品。
湯浅加奈子「DREAM」:黒い宇宙にぎっしりとフルーツが描かれている楽しい作品。
高田茉依「パラサイトニッポン」:お面のような人面の口の中に、1~3つの顔が寄生している。親から離れられず、しかも栄養を吸い取る子供か。

さて、ここで清澄白河に移動。時間ができたので、こうなっては木村環さんの展覧会に行くのが当然ではなかろうか。ギャラリーがちょっとわかりにくかったので、しばらく周囲をうろうろしたが、何とか「深川番所ギャラリー」に到着することができた。


→この2階。ギャラリー名が開いた扉で見えなかったので、しばらく気がつかなかった。

「ケモノの棲む島2012-光」:夜の森で鹿たちが戯れている。その横からは白い光の球が次々と空へ昇っていく。鹿とは相いれない、何か新しい命が生まれたのか。
「ケモノの棲む島2012-2つの浮島」:高さが100m位の中空で向かい合う顔型の島。それぞれに鹿が棲み、島の間はかろうじて何本かの髪の毛で結ばれている。そこを1匹、2匹と渡ろうとする鹿がいるが…。左側の島は目を閉じており、島の下部には海のようなものがある。右側の島は目を開けているが魂がこもっているようには見えず、形は山というか、大地を表しているのだろう。この二つの間を命が通うことによって、何か新しい進化が生じるのだろうか。

この他には「長い眠り」シリーズが10点、無題の作品が2点展示されていた。無題のうちの1点では、眠っている顔がやがて半覚醒状態になり、最後には完全に目を覚ましている。そう、以下に長い眠りであっても、いつかは目が覚めるのではないだろうか。

ギャラリー主に聞くと、昨年東京で開催された木村さんの展覧会を見て、ぜひと声をかけたそうなのだ。私もはるばる見に来ることができて感慨深い。この建物をでて、川の方に階段を上っていくと、テレビでは何度か見かけている松尾芭蕉の坐像が置かれていた。そうですか、あなたはここにいたのですね。





ここで森下方面に歩いていた所、SAKuRA GALLERYという小さなギャラリーを発見。「たいせつにかんじるもの」という3人展をやっていた。中では小野有美子の作品がお気に入り。納屋のような部屋の窓から日が入ると共に、向こう側の壁が無く、そこには光を浴びた叢が浮かんでいる。ありそうで、あまり見たことのない風景だ。

長い長いギャラリー巡りを終えて、いよいよ飲みに繰り出そう。


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